第二百五十三話 今日は学園生と共に軍の施設を見学です
ようやく捜査関係が落ち着く中、今日は学園の校外学習が行われる。
軍の施設が目的地で、一度学園に集まってから馬車に乗って移動した。
「皆さん、ようこそ軍の施設へ」
「「「「「おはようございます」」」」」
僕とクリスは学園生の付き添いなので、シーリアさんが案内役をしてくれた。
スーザンちゃんはトコトコと歩き始めたのだが、今日は王城で面倒をみてもらう事になった。
きっと、お兄ちゃんお姉ちゃん達が張り切って面倒をみるはずだ。
最初に事務棟に移動し、会議室でルーカス様から話を聞くことになった。
「未来ある諸君の来訪を歓迎しよう。諸君は、国を背負って、また領地を背負って立つべき存在だ。そして、執務の先にあるのは国民だ。今回の見学が、諸君の将来に役立つ事を期待する」
「「「「「はい!」」」」」
ルーカス様の訓示を聞き、学園生は元気よく返事をした。
ルーカス様は国における軍の役割などを説明し、学園生も真剣にメモを取った。
学園生の真剣な姿に、ルーカス様もとても満足そうにしていた。
「シーリア様、最初にケン先生と会った時はどんな感じだったのですか?」
「ぷっ、け、ケン先生……」
改めて軍の施設の案内となったんだけど、学園生がシーリアさんに質問したらシーリアさんが吹き出しているよ。
シーリアさん、僕だって頑張って先生をしているんですから。
クリスも、シーリアさんと一緒になってクスクスとしないの。
「ケン君と会ったのも、もう十年前になるのね。物凄く小さくて痩せていて、髪も服もボロボロの男の子だったわ。そうしたら、あっという間に大部屋に入院している人を治療し、大怪我を負ったヘルナンデス様を治療したわ。今まで会った中で、ぶっちぎりに凄い魔法使いだったわ」
「「「「「おおー」」」」」
そういえば、僕が物資として軍に送られてから十年が経ったんだ。
学園生がシーリアさんの話を聞いて感嘆の声を上げる中、僕は少し懐かしさを覚えていた。
その後、機密に関わる場所は避けながら説明は続き、軍の訓練所にやってきた。
「剣技や魔法の訓練を、この訓練場にて行います。軍は国を守るため、常に厳しい訓練を積んでいます。ご存知の通り帝国と講和条約を締結していますが、未だに過激派によるテロなどが懸念されます。また、街道の安全を確保するために、定期的に害獣駆除も行われます」
訓練所では、ちょうど厳しい訓練の真っ最中だった。
シーリアさんの説明を聞きながら、学園生は真剣な訓練の様子に驚いていた。
体を鍛え、常に最善の状況にする事が大切だ。
「訓練は、言わば貯金と同じです。トレーニングも剣の訓練も、いきなり上手くなる訳ではありません。しかし、少しずつ続ける事で段々と上達していきます。勉強も同じですね。ケン君みたいな天才なのは、本当にごく一部です」
「「「「「あー」」」」」
あの、シーリアさんも僕を特殊例みたいに言わないで下さい。
学園生もクリスも、シーリアさんの意見に同意しないでよ。
僕だって、一生懸命訓練して勉強をしたんだからね。
今度は、後方支援部隊の施設へと向かった。
「軍に限らず、色々な部署も前線と後方支援が連携しないと上手く活動できません。しかし、中には後方支援を軽視している人もいます。全体の役割を把握し、それぞれの役割を一生懸命こなしましょう」
「「「「「はい!」」」」」
こうして施設の説明を終え、今度は訓練を終えた訓練所に戻った。
実は、あることを兵にお願いしていた。
「それでは、これより質問タイムとなります。兵に色々聞いてみましょう」
「「「「「はい!」」」」」
ただ施設を見るだけじゃ学びは少ないから、せっかくだから生の声を聞こうと思った。
来年入隊の学園生もいて、真剣な表情で兵に質問していた。
「兵も、普段どれだけの知識を持っているのか確認する良い機会よ。このくらいの質問なら、普通の兵なら答えられないと駄目ね」
シーリアさんは、バインダーを手にして兵がキチンと質問に答えられているかチェックしていた。
口下手な兵もいるんだから、あまり厳しくチェックしないでね。
こうして、無事に軍の施設の見学を終えることができた。
学園生は迎えの馬車が来ており、そのまま帰路に着いた。
シーリアさんとクリスは軍の施設に残るそうで、僕は二人と別れて馬車に乗って王城へと向かった。
「だー!」
「はいはい、抱っこですね」
昼食の時間となり、僕は王家の食堂へと案内された。
スーザンちゃんは、僕のところにトコトコと歩いてきて抱っこをねだった。
メアリーさんに抱っこされているイリスちゃんも、僕に抱っこしてもらいたそうな視線を向けているぞ。
「ほらほら、スーザンはお母さんのところに来ましょうね」
「やー」
「何で嫌なのよ。そんなに、ケン君のところが良いのね……」
一方、スーザンちゃんを迎えに来たシーリアさんは、ニコニコ顔で僕に抱きつくスーザンちゃんにちょっと困り顔だ。
あの、僕だってこの展開は予想外なんですけど……
「ジョセフ、スーザンは泣かなかったかしら?」
「一回も泣いてないよ。みんなで絵本を読んであげたんだ!」
「そ、そうなのね……」
お肉を頬張るジョセフちゃんも、元気よく説明した。
どうやら、スーザンちゃんは赤ちゃんから幼児にランクアップしたばっかりだけど、度胸がついているみたいだ。
「簡単な公務に連れて行っても、スーザンはどっしりとしているわ。逆に、イリスの方が泣くことがあるわよ」
王妃様も、ニコリとしながら裏話を教えてくれた。
因みに、一番お姉ちゃんのアリアちゃんよりもビアンカちゃんの方が肝が座っているらしい。
そのビアンカちゃんは、ご飯をもりもりと食べていた。
「まあ、育てるのに全く手がかからないのは助かっているわ。ジョセフは、とにかく体が弱かったし、ぴーぴー泣いていたわ」
「あぐあぐあぐ」
ようやくスーザンちゃんもシーリアさんのところに戻り、美味しそうに離乳食を食べていた。
ジョセフちゃんは体が小さかったのもあって、成長も少し遅れた。
でも、今は元気いっぱいだ。
赤ちゃんでも、これだけ生育に差が出るのは何だか不思議だと思ったのだった。
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