第二百四十五話 悪い人を一網打尽
翌日、学園の仕事を終えてから王城のアーサー様の執務室に戻った。
自分の席で書類整理をしていると、アーサー様からこんな事を言われた。
「ケン君、今やっている書類を終えたら軍の施設へと向かってくれ。オオクズ伯爵との関与が認められた貴族家への強制捜査を行う」
謁見も延びたしてっきり昨日押収した証拠品の整理整頓かと思ったけど、それはそれで大変な仕事だ。
ちびスライムの半分が証拠品の整理整頓のお手伝いをしているが、流石にピーちゃんやトラちゃんには難しい。
昨日はアイちゃん達の護衛をしていたので、ピーちゃんやトラちゃん達はその分頑張ろうと張り切っていた。
さっそく、僕達は馬車に乗って軍の施設へと向かった。
「おっ、来たな」
軍の施設に着くと、ナッシュさんが僕を出迎えてくれた。
強制捜査前に、僕を軍の倉庫に案内した。
ガサゴソガサゴソ。
「わあ、改めて見るととんでもない量の証拠品を押収したんですね」
「これでも一部だ。高価なものは、もっと厳しい警備の倉庫にしまってある」
木箱だけで二十個以上あり、兵や職員に混ざってレモンちゃんたちも手伝っていた。
財務職員としてミュウさんも加わっており、手伝いができないキングレオ達が暇そうにしていた。
という事で、ここでその暇そうにしているキングレオ達にやり甲斐のある役目を与えてるという。
「よし、じゃあケンも来たから行くぞ。クリスと手分けして、馬鹿な屋敷に強制捜査だ」
「「「グルル!」」」
おお、キングレオ達はみんな待ってましたと言わんばかりにやる気になっていた。
クリスも別の屋敷を捜索するそうで、半分に分かれて行くことにした。
なお、クリスにはゴードン様がついてくれる事になっていた。
準備ができたので、僕とナッシュさんは部隊を引き連れながら目的の男爵家へと向かった。
「同時に五家を捜索する事になった。だから、事情を知っているケンも呼ぼうという事になった。本当は、ケンには書類整理をやってもらおうかと思ったのだが、スラちゃん達が張り切っていて予定よりもかなり早く進んでいる」
馬車内で、ナッシュさんが色々と教えてくれた。
ナッシュさん自身も、今回の事件の大きさは凄いと語っていた。
「それと共に、ノーム準男爵の評価が爆上がりだ。最初は些細な数字の不一致から、本件を見つけ出した。それくらい頭が切れると評判だ」
ナッシュさんの言いたいことは、僕もよく分かった。
ただ、貴族主義勢力がエレンお祖父様に逆恨みをする可能性もあった。
そこで、アルファちゃんをエレンお祖父様の臨時護衛とし、職場にいる時はミュウさんの魔物もエレンお祖父様の側にいた。
元々エレンお祖父様はミュウさんの魔物にもとても優しく接していたし、キングレオ達もエレンお祖父様に慣れていた。
そもそも財務職員全員が貴族主義勢力から狙われる事になるので、キングレオ達は張り切って職場を守っていた。
ある意味、安全な職場になったと言えよう。
ガチャ。
そして目的地であるオオクズ男爵家にやってきたのだが、やはりというか門が閉まっていた。
解錠の魔法を使おうと思ったけど、もっと効果的な方法があるという。
「王国軍が命ずる。これよりオオクズ男爵家に対して強制捜査を行う。速やかに解錠するように。門を開けないと……」
「「「ガルルルル!」」」
「わ、分かったから。開けるから、そいつを下げてくれ!」
ナッシュさんの横で、キングレオやフォレストタイガーが一斉に大きな唸り声を上げたのだ。
門番は腰が抜けそうになるほど驚いており、何とか門の鍵を開けた。
ただ、門番は腰が本当に抜けてしまい、屋敷の方まで歩くことができなくなった。
そこで、屋敷の玄関ドアの鍵は僕が解錠魔法で開けることに。
あれ?
何故か玄関前に複数の馬車が止まっているよ。
ガチャ。
「王国軍だ。これより、執行命令書に基づきオオクズ男爵家に対して強制捜査を行う」
「「「ガルルルル、ガルルルル!」」」
「「「「「ひ、ひい……」」」」」
屋敷の中にキングレオとフォレストタイガーの大きな唸り声が響き渡り、屋敷の使用人は真っ青な顔で思わず腰を抜かしてしまった。
大汗をかきながら食べないでと言っているが、勿論キングレオ達は人は食べない。
悪いことをすると、物凄く怒るけど。
「じゃあ、フォレストタイガーは兵とレモンちゃんと一緒に屋敷の中に潜んでいる悪いものを捕まえるように」
「「「ガルッ」」」
ナッシュさんの命令を聞き、二頭のフォレストタイガーはレモンちゃんと兵と共に屋敷の中を歩いていった。
階段もスイスイと登っていくし、何よりもやる気満々だ。
キングレオは、僕とナッシュさんと共に執務室へと向かった。
シュイン、ガチャ。
「王国軍だ!」
「ガルルルル!」
「「「「「ひぃ!?」」」」」
応接室の中にいたオオクズ男爵などは、キングレオの唸り声に度肝を抜かれていた。
おや?
豪華な服を着た人が思っているよりも多いかも。
念のために、探索魔法で調べてっと……
シュイン、もわーん。
「ナッシュさん、他の強制捜査先の貴族が全て集まっています」
「そうか、なら好都合だ」
さっき玄関前で見た馬車は、他の四人の貴族のものなんだ。
オオクズ男爵家に集まって、いったい何をしているのだろうか。
「大方、オオクズ伯爵が捕まってこれからどうすればいいのかと話し合っていたんだろう。悪巧みもここまでだな」
「「「「「ちくしょう!」」」」」
ナッシュさんが言った内容が図星だったのか、オオクズ男爵をはじめとする五人がナイフを手に突っ込んできた。
キングレオの唸り声を聞いても動ける点は褒められるが、やっていることは最悪だ。
「駄目ですよ、そんな事をしては。余計に罪が積み上がりますよ」
シュイン、ズドドドン!
「「「「「うぎゃー!」」」」」
僕のサンダーバレットを受け、五人はあっという間にノックアウトしていた。
本当に、こんな真似をしない方がいいんですよ。
「ガルルル……」
「ひ、ひい!? く、食われるー!」
オオクズ男爵夫人と思われる横に大きな女性は、キングレオにゆっくりと迫られてヘタヘタと腰を抜かしていた。
でも、キングレオ曰く香水臭くて、鼻が大変なことになっているそうだ。
「はあ、郊外の貴族主義勢力の領地への逃走計画か。更に、不正に得た金品も何処かへ隠そうとするとはな。まあ、全てぱーになったな」
「「「「「あばばばば」」」」」
五人はなおも体が痺れて動けないでいたが、僕達は動かない証拠を掴んだ。
通信用魔導具で各所に連絡し、このオオクズ男爵家には追加で兵が投入されることになった。
「ナッシュさん、次から次へと証拠品が出てきます。金品も凄いですね」
「こりゃ大量だな。ここまで凄いのは、俺も久々だ」
「ガルッ」
ナッシュさんも呆れるほど、とんでもない量の証拠品が執務室内のあちらこちらから出てきた。
僕も一生懸命探しており、キングレオは執務室の入り口で門番の様にドーンと座っていた。
すると、兵からとんでもない報告を受けた。
「ほ、報告いたします。不正をした使用人が、問題ない使用人を盾にしてフォレストタイガーから逃れようとしていました。サンダーホークにより、逃げようとした使用人は倒されました」
まさか、別の人を盾にして逃げようとするとは。
そりゃ、ピーちゃんも怒るはずだ。
盾にされた使用人は気絶してしまったため、教会の治療施設へ運ばれたという。
「また、運ばれた使用人は全身にアザがあったため、ポーションで治療を行いました。アスター子爵のスライムの鑑定魔法により、複数の使用人から他の使用人への虐待が発覚しております」
「はあ、何とも嘆かわしいことだ。主人の性格を、一部の使用人が受け継いでいたのか」
使用人虐待は、それこそミュウさんが当事者だった。
僕もナッシュさんもミュウさんや魔物を保護した現場におり、だからこそこの事実に憤慨したのだった。
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