第二百四十話 王都への帰還とコリーナさんの出産
シェイク子爵領の暴風雨被害対応も無事に終わり、僕達は魔導船に乗って王都へと向かった。
「はあ、赤ちゃんはとても可愛かったね。コリーナお義姉様も、もうそろそろ出産なんだよね。とっても楽しみ!」
「「「「ピィ!」」」」
「ギャウ!」
魔導船内では、ダンちゃんにメロメロになっていたクリス達がいた。
シンシアお姉様の赤ちゃんも生まれたので、確かに順番で言うと次はコリーナさんだ。
しかもコリーナさんはもう間もなく出産を迎えるし、ナッシュさんも父親になるのか。
「お兄様も、赤ちゃんが生まれた時の気持ちが分かったんじゃないかな?」
「何となくな。知り合いの所だったから、余計にそう思ったのかも」
ナッシュさんは、通信用魔導具を操作しながらクリスに返事をした。
ナッシュさんも、赤ちゃんを見て感じるものがあったのかもしれない。
僕は、通信用魔導具で仕事をしていた。
ちょうどいいので、リモート勤務の検証を兼ねていた。
決して、話に巻き込まれない様にしている訳ではないのだ。
そんな感じで、僕達を乗せた魔導船は無事に王都郊外の軍の施設に着陸した。
「皆様、長旅お疲れ様です。王城に来るようにとの指示を受けております」
「では、馬車を準備するように」
「はっ」
ナッシュさんが代表して迎えの兵に指示をしたが、この後は謁見をして終了なはずだ。
ところが、王城に到着すると予想外の事を教えられる事になる。
「まずは、この度の災害対策は大義である。シェイク子爵領の鉱山が使えなくなると、我が国の経済に大きなダメージを被る事になる。早期復旧は何よりだ」
「ありがたきお言葉です」
王城に到着すると、僕達は玉座の間に案内された。
最初は、ナッシュさんが陛下に到着の報告をしていた。
ここまでは、普通のやりとりだった。
「シェイク子爵も、無事に跡取りが生まれてホッとしているだろう。モーニングも、かなり喜んでいたようだな。ナッシュも、もう間もなく父親になる。気持ちも分かるだろう」
あれ?
陛下の、ナッシュさんがもう間もなく父親になるって言葉に引っかかった。
それって、もしかして……
真相は、玉座の間から応接室に移動して教えてくれた。
「先程、コリーナの陣痛が始まったと連絡があった。ビーズリーも、謁見が終わったら直ぐに駆けつけると言っていた。ナッシュも、この後直ぐに屋敷に戻るように」
「は、はい……」
ルーカス様から色々話を聞いたが、当のナッシュさんはまだ実感が湧いていなかった。
どうしたらいいのか迷っている表情ですね。
まあ、突然の事だから仕方ないかもしれない。
「お兄様、直ぐに帰らないと。お義姉様に顔を見せて、安心させて上げないとね」
「お、おう……」
クリスに色々とせっつかれても、ナッシュさんの反応は鈍い。
間違いなく、頭の処理が追いついていないんだ。
「お兄様が心配だから、私も一緒に行くね。ケンも、後から来てね」
「ギャウ」
「「「「ピィ!」」」」
そして、クリスはナッシュさんの手を引っ張って急いで応接室から出た。
スラちゃんやトラちゃんたちも一緒についていき、応接室内は一気に静かになった。
「ふふふ、何となく気持ちは分かるわ。屋敷に着いて落ち着いたら、ナッシュもきっとワタワタし始めるわよ」
ニコニコしながら話す王太后様の予想は、何となく当たりそうな気がした。
でも、クリスも一緒にいるし、スラちゃん達も向かっていたからきっと出産は大丈夫なはずだ。
「ケンも、今日はこれで終わりだ。出産で男が出来ることは少ないが、将来の参考に行ってくると良い」
「ご配慮頂きありがとうございます」
僕は、陛下をはじめとする面々に立ち上がって頭を下げた。
とはいえ、もう夕方です。
赤ちゃんが生まれるのは、恐らく明け方になるんじゃないかなと思っていた。
そして、馬車に乗ってダイナー男爵家に向かうと、この子達が出迎えてくれた。
「「「あかちゃんだよー!」」」
何故か、アイちゃん達が僕の屋敷ではなくダイナー男爵家の屋敷にいたのだ。
三人は満面の笑みで僕に抱きついてきたが、久々に会えてとても嬉しそうだ。
でも、何で三人がここにいるのだろうかと思ったら、この人が理由を教えてくれた。
「ケン君、お帰りなさい。念のために、ケン君のところにいるレモンちゃんたちに来てもらったのよ。そうしたら、一緒に行くと三人がついてきたのよ」
ケーラさんは満面の笑みで理由を教えてくれたが、念のために屋敷にレモンちゃんを残しておいて本当に良かった。
しかも、コリーナさんが産気づいたのは今朝だという。
「ふふふ、実はちょうどナッシュとクリスが着いたタイミングで出産したのよ。とても可愛い女の子よ」
「「「おんなのこー!」」」
おお、まさにナイスタイミングで赤ちゃんが生まれたんだ。
無事の出産を聞き、僕も思わずホッとした。
ギュッ。
「「「いこー!」」」
そして、アイちゃん達は僕の手を握って赤ちゃんがいる部屋へと案内した。
三人は、僕に一刻も早く赤ちゃんを見せたいんだね。
ガチャ。
「つれてきたよー!」
「あら、みんなありがとうね」
僕が部屋に姿を現すと、ベッドに腰かけているコリーナさんがニコリとしながら出迎えてくれた。
ベビーベッドには栗毛の女の子が産着に包まれており、クリスが満面の笑みで赤ちゃんを見つめていた。
だが、僕はそれ以上に気になった人がいた。
「「うう、うぅ……」」
なんと、ビーズリーさんとナッシュさんが赤ちゃんを見ながら大号泣していたのだ。
コリーナさんも、号泣している二人に困惑気味だ。
えーっと、これはどういうことだろうか。
ガチャ。
「あら、二人ともまだ泣きやまないのね。赤ちゃんが生まれた瞬間、何故か二人とも号泣したのよ。コリーナも赤ちゃんが無事に生まれた喜びもあるけど、それ以上に二人の号泣に困惑しているわ」
部屋に入ってきたケーラさんが理由を教えてくれたが、もしかしたら不安もあったのかもしれない。
それに、ナッシュさんはシェイク子爵領でも赤ちゃんが生まれたのを体験しているし。
「レモンちゃんのお陰で、本当に安産だったわ。明日からまた忙しくなるだろうし、今日くらいは感動に浸らせてあげないとね」
「「うう、うぅ……」」
ケーラさんは、未だに号泣している旦那と息子を見て苦笑していた。
ともあれ、こうして元気な赤ちゃんが生まれて僕もホッとしたのだった。
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