第二百三十四話 土砂崩れ現場の復旧作業
バタパタパタ。
「ピィ!」
休憩していると、一足早く鉱山に向かっていたピーちゃんが姿を現した。
どうやら、何か進展があったみたいだ。
ふりふり。
「ピィピィ」
すると、ピーちゃんはスラちゃんと何やら話し合っているのです。
何を話しているのかなと思ったら、今度はスラちゃんがアイテムボックスから紙とペンを取り出してスラスラと何かを書き始めた。
「「「「「これは……」」」」」
スライムが紙に文字を書く光景に、初めて見る人達は理解が追いつかなかった。
スラちゃんはというと、文字を書き終えた紙を持って僕達の所にやってきた。
「何々? 『無事に鉱山の坑夫の所に合流し、食糧提供や治療などをしている。鉱山に向かう道中、六ヶ所で崖崩れなどが発生』。取りあえずは、急ぎの状況から脱したか」
ナッシュさんが代読し、他の人達も安堵の表情を浮かべていた。
坑夫曰く、鉱山の中に異常は出ていないという。
「どうやら、フォレストタイガーなら土砂崩れ現場を乗り越えられるみたいだな。今日はこのまま出来る範囲の対応を進めて、明日は作戦通りにケンに鉱山まで行ってもらうとしよう」
「ピィ」
予定通りに作戦を実行できそうで、僕も一安心だ。
ピーちゃんも、方針を確認して直ぐに鉱山へと飛んで行った。
みんなでどうするか改めて話し合っていたら、調査部隊が町まで戻ってきた。
「報告します。確認できる範囲の場所は、全て復旧しておりました」
「それどころか、以前よりも綺麗になっただけでなく丈夫にもなっております。信じられない結果です」
「そうか、報告ご苦労」
ブレッド様は落ち着きを取り戻していた為、冷静に兵の報告を聞いていた。
一方、調査部隊の兵はかなり興奮しながら報告を行った。
兵の話を聞いた町の人も、信じられないという表情をしていた。
さて、僕達も十分に魔力が回復したので行動を開始しよう。
その前に、ブレッド様は規制線の向こう側にいる領民へ話しかけた。
「【蒼の治癒師】様の大魔法により、こうして街道が復旧した。鉱山へ続く山道への対応は引き続き行うが、一先ず山道を除いて規制を解除する」
「「「「「おおー!」」」」」
領民は、ブレッド様の話を聞くなり大きな歓声を上げた。
やはり、周囲の領地へと続く街道が復旧した影響は大きいようだ。
規制線が変更されると、さっそく移動を開始する領民の姿もあった。
僕達は、用意された馬車に乗って鉱山へ続く山道へと進み始めた。
「ここが、町に一番近い土砂崩れ現場ですね」
「グルッ」
馬車に乗って五分もすると、山肌が大きく崩れている現場に到着した。
高さ二十メートル、幅五十メートル程崩れており、山道は流出した土砂で完全に塞がれていた。
普通なら、スコップを手にして人海戦術で土砂をかき分ける必要がある。
土嚢も沢山必要だ。
勿論、この世界にユンボ等の重機は存在しなかった。
「じゃあ、先ずは土砂を山肌に戻しますね」
シュイン、ズゴゴゴゴ……
僕達は、単に土砂を山肌には戻さなかった。
何も対策をしないと、土砂崩れが再発する可能性があるためだ。
最初に、山肌の崩れそうな所を敢えて崩した。
その上で、圧縮して固めた土の塊を、土のうの様に互い違いに積み上げていった。
しっかりとした土台を作ってから、最後に少し固くした土を被せた。
「ふう、取り敢えずこんな感じで行いました。大きい岩石は……」
「大きい岩石は、私が粉々にするわね」
シュイン、ズバッ、ズバッ。
ドサッ……
僕の背の高さよりも大きい岩石は、クリスが魔法剣であっという間に粉々に斬り裂いた。
砕いてできた土は、邪魔にならない様に端に寄せた。
最後に、山道を土魔法で直せば復旧作業完了だ。
「だいたい、一カ所三十分以上はかかりますね。行っている工法は、軍の災害復旧作業と変わりないですよ」
「軍の作業と変わりないとはいえ、やっているレベルが桁違いだな」
僕の作業目安の報告を聞き、ナッシュさんは思わず苦笑していた。
一緒についてきた工兵は僕の作業を見て度肝を抜かれていたが、何とか気を取り直してメモを取っていた。
今日はもう一箇所の土砂崩れ現場の作業を行い、シェイク子爵家の屋敷前に戻った。
なお、ピーちゃん達は今夜はこのまま鉱山に残る事になった。
「【蒼の治癒師】様の噂は、過小評価だと改めて実感した。こんなにも凄腕の魔法使いは、私も見たことがない。改めて、感謝する」
ブレッド様は、明るい表情で僕と握手をした。
一時は、どうすれば災害復旧ができるのかと悩んでいたはずだ。
しかし、肝心の鉱山へ続く山道の復旧がまだ終わってはいない。
僕達は、明日朝から作業を再開する予定だ。
こうして、僕達は馬車に乗って軍の基地へと進んだのだった。
「ナッシュ、お前の義弟はとんでもないな。直轄領での地震復旧作業も聞いていたが、予想の何倍も凄かったぞ」
「俺も、国境での活躍を見ていなければ信じられなかっただろう。あの時も、物凄い勢いで活躍したぞ」
軍の基地に戻っても、司令官は興奮気味にナッシュさんに話しかけていた。
しかも、食堂で話をしていたので周りにいた兵にも丸聞こえだった。
「蒼の治癒師」様は、一体何をしたのかとザワザワとしていた。
そして、明日実際にどんな事をしているのか見てみたいと同行を希望する者が沢山現れたのだった。
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