第二百二十話 二人で迎える初めての朝
チュンチュン、チュンチュン。
「うん……うん?」
結婚式の翌朝、僕は普段とは違うベッドで目が覚めた。
ムクッとベッドから体を起こして周囲を見回すと、僕のすぐ近くから別の寝息が聞こえてきた。
「すー、すー」
そこには、まだスヤスヤと寝ているクリスの姿があった。
段々と色々思い出した。
昨日は新婚初夜だったけど、アイちゃん達が僕のベッドで先に寝ていたからクリスの部屋に来たんだっけ。
クリスは初めて会った時も整った顔つきだったが、成長した今はまさに美人顔だった。
だが、寝ている表情はまだあどけなさが残っていた。
「うん……」
そんなクリスの頭を優しく撫でていると、クリスは少し体をもぞもぞと動かした。
そして、クリスが少し目を開けたタイミングだった。
ドン!
「「「あー! ここにいたー!」」」
「えっ! なになになに!?」
突然ドアが開いたと思ったら、不満たらたらなアイちゃん達が部屋に入ってきた。
間違いなく、僕とクリスと一緒に寝れなかったからだろう。
まだ幼い子に、新婚初夜とかを説明するのは難しいだろうな。
クリスは、大きな物音に驚いてガバッと起き上がった。
キョロキョロと周囲を見回していたが、不機嫌な三人を見つけるなり直ぐに状況を把握した。
ちびっ子達の足元にいるスラちゃん達は、頑張ってちびっ子を止めたとアピールしていた。
でも、こればかりは仕方ないだろう。
僕は、苦笑いしながらベッドから降りてプンプンな三人のところに向かったのだった。
「ははは、新婚早々子どもと寝る場所で揉めるとは。ケンは中々やるな」
王城に仕事に行って陛下やアーサー様に昨日のお礼を言うと、昨晩の件で大笑いされてしまった。
新婚子持ちっていう貴族は、殆どいないだろう。
なお、今夜は僕とクリスとアイちゃん達と一緒に寝るという事で決着した。
まだまだ一人では寝れない年頃だし、当分は仕方ないかも。
「何にせよ、無事に結婚式が終わって良かったといえよう。パレードも、この国の歴史上一番の盛り上がりだった」
「うう、アーサー様よりも盛り上がってすみません……」
「ケンが気にする事はない。それだけ、町の人に愛されているという証拠だ。来賓も貴族から平民まで大勢集まっていた。あれだけ楽しい結婚式は、余も初めてだ」
陛下だけでなく、アーサー様や執務室の職員も僕にニコリと頷いた。
これだけの人が集まってくれて、僕も本当にありがたかった。
使用人も応援の人も含めてよく働いてくれ、僕は追加でお給金を払った。
陛下が来たのは予想外だったが、問題なく対応できただろう。
すると、陛下は僕にある事を伝えた。
「そうそう、帝国のビクトリア皇女の結婚式の招待状が届いた。王国からは、ヘルナンデス、ルーカス、ケン、そしてクリスの四人を派遣する。クリスは、ビクトリア皇女が是非にと書いてあった。予定は来年の春で、帝国の帝都までは国境の町から魔導船で移動する。移動に計四日間、帝都に滞在三日間だ」
おお、いよいよビクトリア皇女の結婚式の日程が決まったんだ。
王国も、帝国の皇女様の結婚式という事でそれなりの格の者を派遣する必要がある。
「ケンは、来年の謁見で伯爵となる。上位貴族で宮廷魔導師なのだから、格も全く問題ないだろう」
「あの、もう陞爵とかお腹一杯です……」
「ははは、ケンはそう言うが大きな功績を挙げたのだから何も問題はない。それに、ケンの功績に対して文句を言うのは不可能だろう。ケンと同じ事ができるかと言えば、否としか言えない。まあ、批判の急先鋒は昨日捕まったがな」
陛下は上機嫌に話していたが、僕は子爵になったばかりだ。
僕に文句を言ってくる貴族は絶対にいるだろう。
そんな事を思いながら、僕はせっせと書類の確認を進めたのだった。
「結婚式での演出はとても良かったわ。ケン君とクリスちゃんが多くの子どもに祝福されていて、本当に幸せそうだったわ」
「ええ、そうですわね。ルーカスの結婚式の演出にアレンジを加えたものですけど、是非他の結婚式でも取り入れたいですわね」
昼食の時間になると、僕は王家の食堂に招待された。
王太后様と王妃様は、いわゆるフラワーボーイとフラワーガールの演出をとても気に入っていた。
間違いなく、アリアちゃんやブライトちゃんの結婚式でも採用するはずだ。
「みんなも、昨日の結婚式はとても楽しかったよね」
「「「たのしかったー!」」」
「ウォン!」
王家のちびっ子三人も、メアリーさんに元気よく返事をした。
ルートちゃんやアイちゃん達もとても楽しそうにしていたし、演出として大成功だったのだろう。
実際に、この演出をみんなに教えたのはスラちゃんなんだけどね。
「しかし、ケン君もクリスちゃんも新婚なのにとても忙しいわね。この後は学園の教師として対応するし、来年は帝国の皇女様の結婚式出席があるわ。優秀なのも、少し考えものね」
「そうね、どうしても優秀な者に頼ってしまうわ。ケン君とクリスちゃんは今までも頑張ってきたのだから、他の者も頑張らないといけないわね」
「「「もぐもぐ」」」
王妃様と王太后様は、こうして今でも僕やクリスの事をとても気にしてくれた。
僕も、ちょっと頑張ろうとする意識が強いのかな。
ちびっ子三人にご飯を食べさせながら、そんな事を思ったのだった。
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