第二百十八話 賑やかな披露宴です
三十分後、門へと行っていた人達が戻ってきた。
気のせいか、皆さん疲れているような気がするよ。
「ヘルナンデス様、大丈夫でしたか?」
「大丈夫かと聞かれれば、そうではないな。あの馬鹿、酔っぱらっている上に頭に血がのぼって私に殴りかかってきたのだよ。勿論、現行犯で捕まえて連行した」
うわあ、まさか軍の大幹部であるヘルナンデス様に殴りかかるとは。
そりゃ、ここまでの大捕物になるはずだ。
でも、これで披露宴も何とか開けるはずです。
全員が席に着いたところで、乾杯の音頭をするルーカス様がグラスを手にして立ち上がった。
元々陛下が披露宴にも参加するとは聞いていなかったけど、それでも僕はルーカス様に挨拶をしてもらいたかった。
「父上を差し置いての挨拶となるが、そこはご了承頂きたい。ケン君と初めて会ったのは、それこそケン君が父親と兄に言われて物資として軍の施設に行けと言われた時だった。痩せ細った小さな少年を見て、そして手紙を見て私は今までにない衝撃を受けた。こんな事があって良いのだろうかと、憤慨もした。しかし、その少年は幾度も奇跡を起こした。間違いなく、ケン君は王国を救ってきたのだ」
僕も、ルーカス様と出会って運命が大きく変わった。
父親からの手紙を渡したのがルーカス様で、本当に良かったと思った。
「あの小さかったケン君が、こうして大きくなって結婚式を迎えると思うと本当に感無量だ。九年間ケン君の成長を見守ってきたが、身体だけでなく心も大きく成長した。だからこそ、今日この場に多くの者が祝福に駆けつけたのだろう。パレードに詰めかけた多くの町の人を見れば、ケン君が今まで国のために人々の為に一生懸命やっていたのだと直ぐに分かる」
エレンお祖父様とフリージアお祖母様、そしてシンシアお姉様も僕の小さい頃を思い出してか少し涙を浮かべていた。
「そんなケン君の側には、いつもクリスの姿があった。最初は治療対象として出会い、お互いに良いライバル関係になった。そして、かけがえのない存在へと変わっていった。こうして、二人が夫婦になったのは必然の事だろう」
あっ、再びビーズリーさんが泣き始めちゃった。
クリスは、家族に溺愛されていたもんなあ。
でも、ダイナー男爵家の方々は本当に良い人ばかりだ。
「それでは、二人の将来と王国の発展を祈願して乾杯とする。乾杯!」
「「「「「乾杯!」」」」」
ルーカス様の乾杯の挨拶で、いよいよ披露宴が始まった。
すると、ちびっ子達と王太后様が僕とクリスのところにやってきた。
「じゃあ、お祝いをしましょうね」
「「「「「おめでとー!」」」」」
ちびっ子達の元気のよい声に、僕もクリスもスラちゃんも思わずニンマリとした。
周りにいる人達も、ちびっ子達の挨拶にほんわかとしていた。
「ふふ、あのケン君とクリスちゃんがいよいよ夫婦になるのね。私も、とっても嬉しいのよ。後は、二人の赤ちゃんを抱っこするのを待つばかりね」
王太后様は、前から僕とクリスの赤ちゃんを抱きたいと言っていた。
今も、とってもニコニコしながら言っており、ちびっ子たちも赤ちゃんに会いたいと盛り上がっていた。
「じゃあ、この後大変かと思うけど頑張ってね」
「「「「「がんばってねー!」」」」」
王妃様の視線の先には、この後行われる挨拶の順番に並ぶ多くの人の列があった。
今回は何回かに分けて挨拶をする事になっているのだが、それでもかなり大変なのは間違いない。
僕とクリスとスラちゃんは、意を決して席から立ち上がったのだった。
「「疲れた……」」
「ケン様、クリス様、お疲れ様でした」
一時間を超える挨拶対応を終え、僕、クリス、スラちゃんはハンナおばさんの入れてくれたジュースを飲んでいた。
嗚呼、甘い物が疲れた身体に染み渡るよ……
総じて挨拶対応は問題なく進み、貴族から調理室のおばちゃんまで和やかに挨拶をしていた。
僕の小さい頃を知っている人達は本当に結婚を喜んでおり、ヘルナンデス様、ゴードン様、付き合いの長い兵、調理室のおばちゃん達は凄く喜んでくれた。
今度学園で教える事になるヘルナンデス様の息子さんとも顔を合わせたが、僕よりも年上に見える体の大きなガッチリした体格の好青年だった。
聖職者の方々は、僕の母親を引き合いに出す事が多かった。
王妃様やメアリー様も、僕の母親が一緒にいればと言ってくれた。
なお、ちびっ子達は勉強部屋にあるベッドでみんな揃ってお昼寝中だ。
今日は、朝からとっても張り切っていたもんね。
「もう帰路についている人もいるんですね」
「半分以上の方々が、既に帰られております。国王陛下も、一足先にお帰りになられました」
陛下は、堂々とお酒を飲める機会だとヘルナンデス様と一緒にもの凄い量のお酒を飲んでいた。
今日来た来賓の中で、陛下が一番お酒を飲んだんじゃないかな。
「ビーズリーさんも、客室で寝ているんだよね?」
「ビーズリー様は、お酒を沢山飲まれましたので。シロちゃんが回復魔法をかけた上で、念動で客室へ運んでおります」
ビーズリーさん、感情が爆発したのもあってもの凄い量のお酒を飲んだもんなあ。
回復魔法のおかげで急性アルコール中毒にはならないかと思うけど、それでも明日は二日酔いなのは間違い無いだろう。
他にも、陽気にお酒を沢山飲んでいた人が複数いた。
まさか、多めに用意していたお酒が一気に減るとは思わなかった。
「うう、気持ち悪い…」
「スラちゃん、こっちもお願いね」
スラちゃん、シロちゃん、レモンちゃんは、お酒を飲みすぎた人の治療でてんやわんやだった。
今も、使用人に呼ばれて急いで治療をしていた。
僕も治療を手伝おうとしたら、今日は主役なのだからとスラちゃんに断られてしまった。
スラちゃんも、僕の結婚式を成功させようと本当に頑張ってくれた。
僕にとって、本当に恩人の一人だと思ったのだった。
読んでいただき、誠にありがとうございます
ぜひブックマーク、下の評価を5つ星よろしくお願いします!
作者のモチベーションも上がります!




