第二百十七話 文句を言ってきた貴族を成敗
パカパカパカ。
「とまーれ!」
「「「「「はっ」」」」」
ゴードン様の合図で、馬車部隊はピタリと玄関前に止まった。
僕、クリス、スラちゃんは、馬車から降りて部隊の兵に頭を下げた。
「「皆さん、本当にありがとうございました」」
「二人は律儀だな。ほら、屋敷の使用人が待っているからさっさと屋敷の中に入るように」
ゴードン様も、ニコリとしながら僕達に声をかけた。
既に大教会から屋敷の敷地内に入ってきた馬車もあるので、僕、クリス、スラちゃんはペコリと頭を下げてから玄関ホールに入った。
ガチャ。
「お帰りなさいませ、ご主人様、奥様」
「お、奥様……」
玄関ホールには使用人が一堂に介しており、僕が初めて屋敷に入った時のように一斉に挨拶をしてきた。
クリス、奥様という言葉にニマニマしないの。
「皆さん、僕とクリスは無事に夫婦になることができました。まだ新米夫婦ですので、これからも宜しくお願いします」
「私も一生懸命頑張りますので、これからも頑張りますので宜しくお願いします」
「「「「「宜しくお願いいたします」」」」」
僕、クリス、スラちゃんがペコリと頭を下げると、使用人もペコリと頭を下げた。
そして、僕とクリスは着替えをするためにそれぞれ移動した。
来賓の出迎えは、暫くスラちゃんが対応してくれることになった。
ゴソゴソゴソゴソ、ゴソゴソゴソゴソ。
「髪も、セットし直します」
披露宴用の服に急いで着替え、使用人が髪をササッと整えた。
準備が整うと、僕は急いで披露宴会場となる玄関ホールに向かった。
「エレンお祖父様、フリージアお祖母様、ケーラさん、お待たせしました」
「おお、ケン君か。そこまで急がなくても良かったのだぞ」
玄関ホールの入口で出迎え対応をしている三人に駆け寄ると、エレンお祖父様が僕の頭を撫でながら返事をしてくれた。
そして、エレンお祖父様はある場所を指差した。
「「「「いらっしゃい!」」」」
「ウォン」
「ピィ」
そこには、張り切って出迎えをしているルートちゃん、アイちゃん達、シルバ、ピーちゃんの姿があった。
ちびっ子達の元気の良い挨拶に、来賓も思わず笑顔になっていた。
王家の方々は既に席についており、ユキちゃんとミュウさんのところの魔物がガッチリと護衛していた。
とはいえこの屋敷の中にいる人は良い人しかいないので、特にキングレオは暇そうにあくびをしていた。
僕も来賓への挨拶をしていたが、皆が良い結婚式だったとにこやかに
言ってくれた。
トトトト。
「ケン、お待たせ」
着替えを終えたクリスが急いで僕のところにやってきた。
クリスは髪色と同じ真っ赤なドレスを身につけており、来賓もクリスのドレス姿に感嘆の声を上げた。
ほぼ来賓が揃ったので僕とクリスも席に着こうとしたタイミングで、まさかのトラブルが発生した。
「ケン様、門のところで先程の貴族の方が『俺も中に入れろ!』と大暴れしております」
「「「「「えっ!?」」」」」
使用人の報告を聞き、僕だけでなく来賓もかなりびっくりしてしまった。
一回引き下がったと思わせておいて、再び強引に屋敷に入ろうとしたんだ。
すると、遂にこの人達の怒りの炎が燃え上がったのです。
「食前の運動にもならないかと思うが、ちょっと行ってくるか」
「そうだな。これ以上あの馬鹿がいると、せっかくの美味い食事が不味くなってしまうぞ」
「「「「「ガルルル……」」」」」
軍の兵に加えて、キングレオやフォレストタイガーなどもおもむろに立ち上がったのです。
更に、ヘルナンデス様も一緒に立ち上がった。
「あー、今日はめでたい場だ。死者は出さずに、病院送りくらいに留めておく様に」
「「「「「畏まりました」」」」」
「「「「「ガルッ」」」」」
立ち上がった兵と魔物達は、陛下に恭しく頭を下げた。
そして、勇んで玄関ホールを出て行ったのだった。
チビスライム達も一緒に行ったけど、シロちゃんとレモンちゃんがいるから何かあっても直ぐに治療はできると思いたい。
「ああいう馬鹿は、中途半端に対応するよりもガツンと言ってやった方がいいのよ」
「そうそう、何事も中途半端が一番いけないのよ」
「ヘルナンデス様も一緒だから、ある程度のところで止めるはずだよ」
軍の調理室のおばちゃんも、呆れながら玄関ホールのドアの方を見ていた。
他の人達も、おばちゃんの話にうんうんと頷いていた。
どうやら門の前で大暴れしている貴族は、この場にいる全ての人に喧嘩を売ってしまったようだ。
そんな中、僕はある人がいない事に気がついた。
「クリス、ビーズリーさんはどこにいるの?」
「お父様、さっきまでまだグスグスとしていたのに兵と一緒に門のところに行っちゃったの。『娘の結婚式を邪魔するものは許せない』って、滅茶苦茶怒っていたよ……」
まさかの、新婦の父親まで参戦中ですか。
これでは、ヘルナンデス様とビーズリーさん達が帰ってくるまで披露宴を始めるのは不可能だ。
「じゃあ、今のうちに最終チェックしちゃいましょう」
「そうね、やることをやらないとね。ほらほら、二人は席について」
チャンスと言わんばかりに、フリージアお祖母様とケーラさんが再び忙しく動き出した。
うん、僕とクリスは邪魔だね。
僕達は、スラちゃんと一緒に席へと向かったのだった。
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