第二百十六話 パレードに文句を言ってきた貴族
「開門せよ!」
「「はっ」」
ギギギギ……
遂に部隊は僕の屋敷前に到着し、屋敷の門番はゴードン様の命を受けて門を開けた。
やっとパレードが終わると、僕もクリスもホッと胸をなで下ろした。
なお、僕の屋敷周辺に人が集まる可能性が高かったので、念の為にと軍の兵が配備された。
みんな顔見知りの兵で快く任務を引き受けてくれたが、まさか兵の配備が役に立つ事が起こるとは思わなかった。
ザッ。
「「「「「うん?」」」」」
急に人混みの中から、豪華な服を着た横に大きな貴族っぽい三人の人物が護衛を引き連れて現れた。
そして、ちょうど屋敷の庭に入ろうとした僕を指さして叫んでいたのです。
「けっ、何でぽっと出の新興下級貴族のクセしてパレードなんてやるんだ!」
「「そうだそうだ!」」
あっ、あの貴族は見覚えがある。
確か、王太后、エレンお祖父様、ビーズリーさんが真っ先に結婚式の招待から除外した貴族だ。
貴族主義勢力の中でも贅沢派に限りなく近く、僕の存在を毛嫌いしている人達だ。
直ぐに周囲にいた兵が集まっていた人達の護衛に入り、ゴードン様も騎馬状態のまま文句を言う貴族の前に移動した。
「アスター子爵のパレードは、正式な手続きを経て閣議にて決定しているものだ。問題は……」
「貴様も新興下級貴族じゃないか! 騎馬上から歴史ある貴族の俺に指図するなんて、失礼じゃないか!」
あっ、今度はゴードン様に貴族の文句が飛び火してしまった。
うーん、何というか自分が偉いから下級貴族は黙れって言っている。
周りの人も、かなり不穏な空気となっていた。
そして、文句を言っている貴族は遂にこんな事を言ってしまったのだ。
「けっ、コイツの父親と兄は大犯罪者じゃねーか! なのに、なんでコイツは優遇されるんだよ!」
「「そうだそうだ!」」
騎馬隊、護衛の兵、そして周りにいる人達が一気に静まり返った。
それと同時に、怒気が一気に膨れ上がっている。
文句を言っている貴族は、残念ながら周囲の状況の変化に気がついていない鈍感だけど。
「ケン、あいつ真っ二つにぶった斬っていいかしら……」
「わあ、クリスもスラちゃんも落ち着いて!」
僕はというと、今にも馬鹿な事を言っている貴族に飛びかからんとしているクリスとスラちゃんを抑えるのに必死だった。
そのため、ある意味僕が一番冷静だ。
このタイミングで、ある意味救世主が現れた。
ギッ。
「話を聞いてみれば、やはり貴様だったか。しかも、勝手な事ばかり言っているな」
「「「へ、陛下!」」」
騎馬隊の後ろに豪華な馬車がついたと思ったら、馬車から陛下が降りてきたのだ。
うわあ、陛下か今まで見たことのないレベルで怒っているよ。
更にアーサー様も馬車から降りてきて、別の馬車からはヘルナンデス様とルーカス様も降りてきた。
僕も、なんとか落ち着いたクリスとスラちゃんを馬車に残したまま降りていった。
「ケンのパレードは、本人が申請した訳でもなく周りにいる人から自然発生的に起きた。それに、ギャイン騎士爵家が起こした問題は、ケンがギャイン騎士爵家から分離独立した後だ。貴様が言う件は、何も問題にならない」
「ぐっ……」
陛下の圧のある言葉に、貴族は完全に気圧されていた。
しかし、陛下の話はまだ続いた。
「貴様らは、問題行為を犯した罰としてルーカスの結婚式にも呼ばれなかった。そして、今度はケンの結婚式にも呼ばれなかった。貴様らは屈辱的な扱いを受けたと思っているみたいだが、自ら自滅したに過ぎない。これ以上狼藉を働くのなら、分かるな?」
「「「く、くそ……」」」
ダッ!
陛下の圧に屈し、文句を言ってきた貴族はとうとう脱兎の如くあっという間に逃げていった。
体が大きいのに、逃げ足だけは速いんだ。
「「「「「帰れ帰れ!」」」」」
町の人達も、逃げていく貴族に罵声を浴びせていた。
何というか、本当に迷惑な相手だ。
「陛下、ご迷惑をおかけし申し訳ありません。集まった人達も申し訳ないです」
「ケンは何も悪くない。あの馬鹿どもが余計なことをしただけだ」
「「「「「そうだ、【蒼の治癒師】様は何も悪くないぞ!」」」」」
ペコリと頭を下げる僕に、陛下も集まった町の人達も大丈夫だと声をかけてくれた。
クリス、スラちゃん、ヘルナンデス様、ルーカス様も、僕達の様子を見て安堵の表情を示していた。
「ケンは、この後披露宴が待っている。屋敷に入って着替えをする様に」
「「「「「おおー!」」」」」
陛下の声に、何故か僕ではなく町の人が盛り上がっていた。
ということで、僕は急いで馬車に乗り直した。
もう、屋敷まで歩いていてもいいんだけどね。
「披露宴頑張っていけよ!」
「しっかり、クリスちゃんをエスコートするのよ」
町の人達は、再び僕とクリスに声をかけた。
僕達を乗せた馬車は、僕とクリスが改めて町の人に手を振ってから進みだした。
「ふふ、ケンは町の人達に愛されているわね」
「本当にありがたい事だね」
「それも、治療とかを一生懸命頑張ってきたからだよ」
クリスだけでなく、スラちゃんまでニコリとしながら僕の頭を撫でていた。
僕の方こそ、町の人達にとても良くしてもらった。
そんな和やかな雰囲気で、馬車は屋敷へと向かった。
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