第二百十一話 結婚式前日の墓参り
結婚式前日となり、僕の屋敷にフリージアお祖母様とケーラさんがやってきて色々と準備をしていた。
主に披露宴対応なのだが、僕の屋敷には大きな冷蔵魔導具があるので料理は幾つか作り始めていた。
「フリージアお祖母様、披露宴はどうしますか? 護衛の関係で玄関ホールにしていますけど、屋外の方がいいですか?」
「玄関ホールのままでいいでしょう。沢山の人が来るけど、ホールなら全ての人を収納できるわ」
僕とクリスは、今日休みを貰って結婚式の準備を進めていた。
机や椅子などは倉庫に沢山あったが、綺麗に拭いて装飾をしないとならない。
玄関ホールには全ての机と椅子が並べられて、一部では設置も始まっていた。
なお、流石に僕の屋敷の使用人だけでは足りないので、ノーム準男爵家とダイナー男爵家から応援に来てもらっていた。
勿論、手伝ってくれた全ての使用人に臨時報酬を出す事にした。
「「「わあ、すごーい!」」」
アイちゃん達も、玄関ホールに沢山並んでいる机と椅子に大興奮だ。
みんなも、保護した時よりもとっても明るく元気になったね。
「みんなも、明日色々な人が来るから元気よく挨拶をするのよ」
「「「はい!」」」
フリージアお祖母様も、元気いっぱいな三人にニコリとしながら話しかけていた。
三人の衣装もバッチリと用意しているし、きっと張り切って動くはずだ。
「ふう、これで準備できたわ」
「後は、本番を迎えるだけね」
程なくして、クリスとケーラさんも玄関ホールにやってきた。
クリスはお色直しもするし、衣装合わせが大変だ。
クリスは、明日は早朝から化粧をしたり髪をセットしたりしないとならない。
僕も髪などはセットするが、女性は大変だと改めて感じた。
「パレードもやらないといけないんだよね。うぅ、見るだけならいいんだけど……」
クリスはというと、未だに結婚式でパレードするのに気が引けていた。
僕も流石にパレードには慣れてはいないけど、七歳の時に国境から王都に凱旋した時とアーサー様とメアリーさんの結婚式で似た経験をした耐性があった。
とはいえ、主役としてパレードに参加するのだから立場は全く違った。
「あっ、そういえば貴族用のスタンドも用意すると聞きました。しかも、アーサー様の結婚式よりも大きいそうです」
「国を救った【蒼の治癒師】様の結婚式よ。知名度で言えば、王太子殿下よりも凄いわ」
ケーラさんもニコニコとしていたが、沿道に集まる町の人の数も凄そうだ。
スタンド建設にかかる費用は、勿論僕が支払う事になっていた。
チビスライム達が交代でスタンド建設現場や周囲の監視をしていて、不審な物が無いか念入りに確認をしていた。
「じゃあ、そろそろ大教会へと行きましょうね」
「「「はーい!」」」
フリージアお祖母様の声に、アイちゃん達は元気よく手を上げた。
僕達は、明日の結婚式で大教会に挨拶に行く事になっていた。
スラちゃんとケーラさんも一緒についていく事になり、みんなで馬車に乗って大教会へと向かった。
パカパカパカ。
「わあ、沢山の飾りが出ているね!」
「とっても綺麗だね!」
「すごーい!」
何と、教会の周りにあるお店などが、アーサー様の結婚式みたいに綺麗に飾り付けしていたのだ。
まさかここまでしてあるとは思わず、はしゃいでいるアイちゃん達をよそに僕とクリスはかなり驚いてしまった。
馬車の窓から見る景色の驚きと共に、僕達は無事に大教会に到着した。
早速大教会の中に入ると、教会内にいた人が僕の姿を見てザワザワとしていた。
うん、背中に沢山の視線がチクチクと刺さっているよ。
そんな僕達の事を、サイオン枢機卿様がニコニコしながら出迎えてくれた。
「サイオン枢機卿様、おはようございます。明日は、よろしくお願いします」
「宜しくお願いします」
「「「おねがいします!」」」
僕とクリスがサイオン枢機卿様に頭を下げると、アイちゃん達も真似をしてペコリと頭を下げた。
ほんわかとする光景に、サイオン枢機卿様だけでなく教会内にいた人達も思わずニンマリとしていた。
「こちらこそ、宜しく頼むぞ。【蒼の治癒師】様の結婚式の神父役を出来るなど、逆にとても名誉な事だ」
「そう言って頂き、本当にありがたい事です」
「明日は、宜しくお願いいたします」
ニコニコなサイオン枢機卿様に、フリージアお祖母様とケーラさんもニコリとしながら話していた。
その間に、僕に治療で知り合った顔見知りの人が話しかけてきた。
「あの小さくて可愛かったケン君も、いよいよ結婚式を迎えるのね。本当に楽しみだわ」
「今まで治療してくれたお礼にって、町の人も張り切って飾り付けをしているのよ」
「まあ、ケンは国を救った英雄だからな。きっと、明日は凄い人数が集まるぞ」
つまり、あのお店などの飾り付けは、町の人が僕とクリスの結婚式を祝おうと自主的にしてくれたんだ。
奉仕活動などを一生懸命やってきて、本当に良かったと思った。
その後も、沢山の人が僕達に話しかけたりニコニコしながらお祝いの言葉を言ってくれた。
王都の人達は、本当に良い人ばっかりだ。
そんな町の人にわちゃわちゃされる僕達を、サイオン枢機卿、フリージアお祖母様、ケーラさん、シスターさんは和やかに見ていたのだった。
「ふう、お墓に到着するまでとても長かったです……」
「私も、ちょっと疲れちゃいました……」
僕達は、町の人達から解放されると大教会にあるお墓に向かった。
勿論、僕の母親の墓参りに行くためだ。
町の人と沢山話をして若干疲れているが、ここはキチンとしないといけない。
僕は魔法袋から花を取り出して、お墓に捧げた。
そして、みんなでお祈りをした。
母親は、決して幸せな結婚生活ではなかったのかもしれない。
それでも、こうして僕を産んでくれてありがとうとお礼を言った。
「ここが、ケンお兄ちゃんのおかーさんのお墓なんだね」
「「ここなんだ」」
アイちゃん達も、祈りを捧げた後に僕の母親の墓をマジマジと見ていた。
すると、フリージアお祖母様が僕に母親に関する事を教えてくれた。
「イリスはね、周りの人を守ってあげて欲しいと願って『ケン』と名付けたのよ。剣は、一歩間違えれば人を傷つけるわ。でも、ケン君は大きな魔法の力がありながら常に周りの人の事を思っていたわ。ケン君は、イリスの願い通りにとても優しい子に育ったわ」
フリージアお祖母様は、まだ膝をついている僕の頭を微笑みながら優しく撫でた。
僕には母親の記憶はないが、それでも母親に接した様な気持ちになったのだった。
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