第二百十二話 いよいよ結婚式当日です
いよいよ、結婚式当日となった。
僕達も、早朝に起きて色々と身支度を整えていた。
「クリスは、ある程度化粧と髪型を整えてから大教会に行くんだよね?」
「大教会の控室では、ウェディングドレスに着替えるだけにする予定よ。ウェディングドレスって、着るのが大変なのよ」
同じ部屋で、僕とクリスは髪を整えたり化粧をしたりしていた。
僕の髪は、ハンナおばさんが綺麗に梳いてくれた。
「あの幼かったケン様も、こうしてとても大きくなられたのですね。月日が経つのは、本当に早いです」
ハンナおばさんも、感慨深そうに櫛で髪を梳いた。
思えば、僕が実家にいた頃はハンナおばさんに命を助けられた。
僕にとって、ハンナおばさんは命の恩人だ。
「ハンナおばさん、今まで本当にありがとうございました。これからも、宜しくお願いします」
「ケン様……ええ、宜しくお願いします」
ハンナおばさんは、目尻に浮かんだ涙を拭いてから再び櫛を手にした。
そんな僕とハンナおばさんに、クリスと使用人もニコリとしたのだった。
「では、僕とクリスは先に大教会に行ってきます」
「「ええ、気をつけてね」」
「「「いってらっしゃーい!」」」
ある程度準備が整ったところで、僕とクリスはスラちゃんとハンナおばさんなどと共に馬車に乗って大教会へと向かった。
フリージアお祖母様とケーラさんは昨晩僕の屋敷に泊まっており、今朝も早くから披露宴準備であれこれ動いていた。
アイちゃん達も今朝は早くから起きており、後ほどフリージアお祖母様と一緒に大教会に来る予定だ。
屋敷内も多くの使用人が忙しく動いており、多くの人に支えられて結婚式が行われるのだと実感したのだった。
パカパカパカ。
「な、何だか昨日よりも町の装飾が凄くないかな?」
「目の錯覚だと思いたいけど、どうやら間違いないみたいだよ」
僕、クリスは、馬車の窓から見える町の様子に唖然としてしまった。
店頭の飾りは、どう見てもアーサー様の結婚式よりも豪華な装飾だ。
何故か、スラちゃんやハンナおばさん達はこのくらい当然だという反応だったが。
大教会の馬車置き場に着くと、僕達は裏口から入った。
今日は安息日なので早朝の祈りが行われており、僕達の結婚式はその後に行われる。
「「本日は、宜しくお願いします」」
「皆様、ようこそ大教会にいらっしゃいました。控室へご案内いたします」
僕達をシスターさんが出迎えてくれ、直ぐに控室に案内してくれた。
勿論控室は男女別で、僕も男性用の控室に入ってモーニングに着替えた。
「うーん、試着もしていたからあっという間に着替え終わった。どうやって時間を潰そうか……」
クリスはウェディングドレスを着るのに時間がかかるので、迂闊に女性用の控室には入れない。
そこで、僕とスラちゃんはチラッと教会内の様子を見に行った。
ザワザワザワ。
「あっ、ちょうどお祈りが終わったところなんだね」
人々が長椅子から移動し始めたところだったので、僕はそのまま教会内に入った。
そして、結婚式の準備をしているサイオン枢機卿様に話しかけた。
「サイオン枢機卿様、おはようございます。今日は、宜しくお願いします」
「おお、ケン君か。今日も挨拶にきたのじゃな。こちらこそ、宜しく頼むぞ」
サイオン枢機卿様は、満足そうに僕を見ていた。
すると、まだ教会内に残っていた町の人も微笑ましい光景を見たとニッコリしていた。
「ケン君は礼儀をわきまえておるのう。貴族の中には、挨拶もろくにせぬ馬鹿者がおる。そういう者とは違うのじゃ」
町の人達も、サイオン枢機卿様の話を聞いてウンウンと頷いていた。
いやいや、挨拶をするのは普通だと思うぞ。
でも、貴族主義の貴族などは教会側が色々やって当たり前だと思っているのかもしれない。
本当に面倒くさい連中だ。
すると、ここで予想外の事態が起きた。
ダダダダ。
「あ、あの、治療ができる人はいませんか? 子どもが熱を出してしまって……」
若い母親が、ぐったりとしている子どもを抱いて教会内に駆け込んできた。
子どもはかなり体調も悪そうで、これは緊急の治療が必要だ。
僕は、急いで魔力を溜めた。
シュイン、シュイン、ぴかー!
「治療は終えたのですが、胸の悪いところが多かったのでだいぶ体力を消費しています。数日は、治療施設で様子をみた方が良いかと」
「直ぐに手配しよう」
サイオン枢機卿様の指示を受け、シスターさんが子どもを抱く母親を案内した。
母親は、静かな寝息になった子どもを抱きながら何度も頭を下げた。
治療が上手くいって本当に良かった。
「怪我人や病人はどんな時でも発生するので、こればかりはしょうがないですね」
「そうじゃのう。こればかりは致し方ない。それに、儂から見ても子どもは重症だった。正直なところ、ケン君がいて良かった」
僕とサイオン枢機卿様は、足早に治療施設に向かう面々の後姿をホッとしながら見ていた。
さて、教会内に貴族も集まるだろうし、僕も再び控室に戻らないと。
僕とスラちゃんが足早に控室に戻ると、控室にはこの子達の姿があった。
「「「きたよー」」」
「ウォン!」
何と、王家の子ども達が結婚式に一番乗りでやってきたのです。
これには僕も予想外で、子ども達と同じくニコニコしている王太后様に話を聞いた。
「もうみんなワクワクしていてね、早く行こうってずっと言っていたのよ。そうしたら、ちょうどケン君が教会内で急病人を治療しているって聞いたのよ。だから、控室で待っていたのよ」
「「「まってたー」」」
どうやら、先程の急病人騒ぎは中々の騒動だったみたいだ。
まだ教会内はざわざわとしてるし、王家の者は控室にいて正解かも。
すると、ちびっ子三人が僕のところにやってきたので。
「「「かっこいいふくだねー!」」」
「ウォン!」
「みんな、ありがとうね」
僕が三人とユキちゃんの頭を撫でると、ニコニコな笑顔になった。
さて、もうそろそろ他の貴族も来るかなと思いながら、僕は控室でちびっ子達の相手をしていたのだった。
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