第百六十三話 強制捜査先で大爆発が!
昼食前に捜索は一旦中断し、僕は軍の偉い人たちと会議室でランチミーティングをする事になった。
因みに、捜索を頑張ったピーちゃん達には、食堂のおばちゃんが美味しい料理を作ってくれた。
僕も食堂の方が良いなと思いつつ、会議室でサンドイッチを食べながら話を聞くことになった。
スラちゃんは僕と一緒に話を聞くことになり、食堂の方が良かったとちょっといじけていた。
更に、この人も会議室に姿を現した。
「本件だが、軍への反逆罪から国家反逆罪へ対応レベルを上げる。意図して、余や王族が座る席に爆発型魔導具が仕掛けられていた。これは、捕縛した工事関係者からの供述である」
陛下は、むしゃむしゃと肉サンドを食べながらこう言った。
今回の爆発型魔導具設置事件は、式典を利用した事件だった。
わざと王族を狙っていて、かなり悪質性が高かった。
「この後、ルーカスをトップとした特別部隊が、主犯である貴族家に突入する。万が一の際には魔導具を凍結させる必要があり、ケンとスラちゃんも作戦に参加する。犯罪組織への対応にも、スライム達を参加させる」
軍の基地内の捜索と並行して、工事業者への取り調べが行われた。
工事業者自体は問題なかったが、日雇い作業員に問題があった。
お金を受け取りに来たので直ぐに捕まえる事ができ、あれこれ聴取を受けた。
すると、ある貴族の関係者から爆発型魔導具の設置を依頼されたという。
本人は音響魔導具だと聞かされており、話が違うと叫んでいたらしい。
そして、関係者も捕まえたという。
なお、軍の施設内や王城から爆発型魔導具は発見されなかった。
「父上、明日の式典は如何しますか?」
「勿論行う。ただ、警備は厳重にする。スライムを使った出入りの監視も継続する」
陛下は、ルーカス様へやるべき事をやると言った。
他の人たちも、陛下の言葉に頷いた。
過激派に屈しないという姿勢を見せる必要もあった。
その他にも過激派への対策強化を指示して、陛下は王城へと戻った。
その間に、令状発行と部隊準備が整った。
「では、ケン君行くぞ」
ルーカス様に促され、僕とスラちゃんは席を立った。
会議室からグラウンドに移動すると、結構な人数の兵が待っていた。
「今回は、まさに軍や国家への攻撃といえよう。許すことのできない大罪だ。重要な任務になるので、気を引き締めるように」
「「「「「はっ」」」」」
ルーカス様の訓示に、兵も大きな返事をした。
そして、直ぐに部隊は目的地である、とある貴族家へと向かった。
軍の施設から馬車で僅か一分ほどの所に屋敷を構える伯爵家で、僕たちが到着する前から既に多くの兵が周囲を取り囲んでいた。
ザッザッ。
「王国軍だ。国家反逆罪により、マヌ伯爵家に強制捜査令状が発行された。速やかに開門せよ」
「「えっ?」」
ルーカス様が門番に令状を突きつけると、当の門番は何のことだか理解できなかった。
しかし、直ぐに周囲にこれだけの兵が集まっている理由に気がついた。
開門後は、一斉に兵が屋敷の庭になだれ込み、僕たちは屋敷の玄関に向かった。
「スラちゃん、やってくれ」
ガチャガチャ、ガチャ。
スラちゃんは、ルーカス様に敬礼をした後にササッと玄関ドアを開けた。
僕たちが玄関ホールに入ると、使用人達はかなり驚いた表情を見せた。
「マヌ伯爵はどこにいる?」
「あ、あ、し、執務室に……」
ルーカス様に話しかけられた使用人は、わなわなとしながら何とかマヌ伯爵のいる方を指さした。
そして、屋敷内に一気に兵がなだれ込み、各部屋の捜索に入った。
僕とスラちゃんは、ルーカス様と共に執務室へ向かった。
ガチャガチャ、トントントン。
「ルーカス様、鍵がかけられています」
「予想通りだな。スラちゃん、ドアを開けてくれ」
ガチャガチャ、ガチャ!
スラちゃんは、またまた綺麗な敬礼をしてから素早くドアの鍵を開けた。
そして、執務室に兵がなだれ込んだ。
「マヌ伯爵、身柄拘束の令状が発行された。大人しく、連行されるように」
「ぐっ……」
執務室では、マヌ伯爵と執事が驚愕の表情で僕たちを出迎えた。
どうして、悪人は皆太っているのだろうか。
マヌ伯爵も例に漏れず、頭頂部が剥げていて横にかなり大きな体だった。
ルーカス様は、スラちゃんに視線で資料を集める様に指示を出した。
この対応が、後にかなりの成果を上げることになる。
「先に聞いておこう。何故、式典会場に爆発型魔導具を仕掛けたのか?」
「ぐっ……」
ルーカス様の威圧的な質問に、マヌ伯爵は完全に気圧された。
そして、とんでもないことを言い出した。
「そ、そんなもの決まっている! 王家を殺して、再び戦乱の世にするのだ。戦乱にならないと、儲からないのもいるのでな」
マヌ伯爵が何とかニヤリとしながら放った内容は、本当にとんでもない事だった。
ルーカス様は、努めて冷静に話を続けた。
「それは、傘下にある軍事工場が儲からないからか?」
「きき、決まっているだろうが! そこの【蒼の治癒師】のせいで、あっという間に戦いが終って俺たちに儲けがまるでない。帝国も同じだ!」
つまり、戦争が続かないと兵器が売れなくてまるで儲けがないと。
でも、ルーカス様はもう一つの理由を指摘した。
「マヌ伯爵家傘下の軍事工場から納品された物が基準に達してなく、入札の指名停止を受けたのもあるだろう」
「そ、そうだ! ちょっとくらい精度がわるくて、何が悪い!」
うわあ、凄い殿様商売なんだ。
真面目に製品を作っている工場もあるから、当然の様にそっちの工場に納品が切り替わった。
色々な恨みがあるみたいだけど、結局真面目にやっていれば問題なかったのではないかな。
そして、こっそりと資料を回収していたスラちゃんもこっちに戻ってきた。
もう、長話をする必要もない。
「マヌ伯爵、もう一度宣告する。素直に降伏する事を勧める。手荒な拘束はしない」
「ぐっ、こ、ここまで来て、引き下がれるか!」
マヌ伯爵は、どこからか分からないが爆発型魔導具を取り出してガチャガチャと弄りだした。
更に、執事が胸元からナイフを取り出して突っ込んできた。
執事も、目が血走っていてかなり様子がおかしかった。
「うおおおー!」
「ちぃ。ケン君、魔法の準備を!」
僕は、スラちゃんから受け取った書類を魔法袋に入れて、直ぐに魔力を溜め始めた。
しかし、その僅かなタイムラグの間にとんでもない事が起きてしまった。
ガチャガチャ。
「あれ? うむ? これで……」
シュイーン。
マヌ伯爵があれこれいじっていた爆発型魔導具が、突然嫌な音と共に光りだしたのだ。
マズイと思い、僕とスラちゃんはみんなを守る様に全力で魔法障壁を展開した。
シュイーン、ズドーーーン!
「うぉ……」
爆発型魔導具は、大音響と共にマヌ伯爵を巻き込みながら大爆発を起こした。
マヌ伯爵の叫び声が途中で途切れて、ある意味かなり怖かった。
爆風と衝撃を魔法障壁でやり過ごすが、爆発はこれだけではなかった。
ズドーーーン! ズドーーーン!
何と執務室内にはもう二つ爆発型魔導具が置いてあり、誘爆して更に大爆発を引き起こした。
執務室の天井から瓦礫が落ちてきて、もう何が何だか分からなかった。
「ケン君、助けてくれてありがとう。しかし、これは酷いな……」
三回の大爆発により、執務室は木っ端微塵に砕け散った。
天井や壁も砕け散っており、二階も吹き飛んでいた。
勿論マヌ伯爵も跡形もなく消し飛んでおり、執務室内の執務机や調度品なども消え去っていた。
スラちゃんが資料を証拠を集めてくれなければ、大変な事になっていた。
「これでは、証拠を探すのは不可能ですね……」
「いや、調べられるだけ調べさせる。あと、屋敷がこの状態だと強度にも問題があるな」
ということで、兵が行なっている各部屋の捜索は手短に行なわれた。
執務室も、瓦礫を片付けて何か資料が残っていないか急いで確認した。
使用人やマヌ伯爵家の者は庭に避難させられ、そこで事情を聞かれる事になった。
読んでいただき、誠にありがとうございます
ぜひブックマーク、下の評価を5つ星よろしくお願いします!
作者のモチベーションも上がります!




