第百四十二話 再び新人魔法兵に魔法を教えます
翌朝の新人魔法兵への訓練には、クリスとチビスライムたちも参加した。
昨日訓練に参加できなかった分、クリスたちはかなり張り切っていた。
「私も、最初は魔力循環とか上手くできなかったんだよ。でも、今は何とかできるようになったんだ」
「「「「「へえー」」」」」
クリスは、自らの体験談を話しながら魔力循環を披露していた。
話をしながら魔力循環や魔力制御ができるようになると、かなり良い感じになったと言えるでしょう。
そして、魔力循環と魔力制御だけでなく、剣技の手合わせも披露することになった。
カンカン、カンカン!
「「えい、やあ!」」
「「「「「凄い……」」」」」
新人魔法兵だけでなく、多くの新兵が僕とクリスの手合わせに見入っていた。
僕たちの脇でスラちゃんたちも手合わせをしていて、こちらも凄いという声がでていた。
「おっ、丁度良いところを見れたな。ケン君とクリスは、確かに類稀な魔法の才能がある。しかし、その力に溺れることなくこうして地道に研鑽を積んでいる。とても大切なことだぞ」
「「「「「はい!」」」」」
ルーカス様の激に、新兵が元気よく返事をした。
努力って言葉が嫌いな人がいるかもしれないけど、強さって直ぐには身につかないんだよね。
せっかくなので、少しの間僕、クリス、スラちゃんで新兵の剣の指導をしていたのだった。
「よしっ、行くぞ!」
「あれ? クリスは勉強しなくてもいいの。ナッシュさんは、勉強すると言っていたよ」
新人魔法兵に防壁の強化を見せてあげようとしたら、やる気満々のクリスもついてきた。
今日も食堂で勉強中の兄がいるけど、大丈夫なのかな?
「模擬テストみたいなのをやったら、合格ラインに届いていたんだ。だから、今日は気持ちを切り替える為にケンについて行っていいって」
おお、クリスはとっても頑張ったんだ。
スラちゃんたちも、クリスの頑張りを褒めていた。
因みに、今日はアクアちゃんがナッシュさんの側にいることになった。
ということで、さっそくみんなで防壁に移動した。
「「「「「凄い、改めて見ると大きい……」」」」」
「王国を守る砦だ。そりゃ頑丈にできているぞ」
ついでなので、新兵全員が防壁の見学に来た。
付き添いの兵も、新兵の反応に少し苦笑していた。
そして、僕は工兵と話をして防壁をどのくらいの硬さの土魔法で覆うかを確認した。
シュイン、ズゴゴゴゴ。
そして、サンプルとして一メートル四方の土の塊を発生させた。
工兵に硬さを確認してもらうと、思わずニヤリとした。
「おい新兵、この土の塊を叩いてみろ。剣でもいいぞ」
「えーっと、え、ええー!? 金属みたいに硬い?」
「剣が全く刺さらない。一体どうなっているんだ?」
「つ、土だよな? これが、【蒼の治癒師】の土魔法……」
新兵は、まるで信じられないものが目の前にあると思っていた。
不純物を取り除いて極限まで圧縮したので、雨が降っても全く平気な機能もあった。
工兵のオッケーも出たので、僕は早速防壁をカチンコチンの土で覆い始めた。
シュイン、ズゴゴゴゴゴゴゴ……
「「「「「凄い、一瞬で終わってしまった……」」」」」
新兵はまたまた信じられないという表情で防壁を見ていたが、土の硬さと範囲指定がきちんと出来ているから実はそんなに難しいことではなかった。
すると、予想外に早くこの人が姿を現したのだ。
「うむ、流石はケン君だ。きちんと検証を行ってから作業を行っている。こうして確認をしてから作業を行うことはとても大切だ。諸君も、よく覚えておくように」
「「「「「はっ」」」」」
ヘルナンデス様は、防壁を触って満足そうに頷いた。
僕の中でも、中々の仕事だと思った。
シュイン、どさどさ。
「「「「「い、一瞬で消え去った……」」」」」」
サンプルを直ぐに土に戻すと、新兵はまたまた驚きの声を上げた。
うーんどうしようか、防壁の強化作業が一時間もかからずに終わっちゃった。
すると、ヘルナンデス様は新兵にこう命じた。
「諸君は、二日間貴重な経験を積んだ。国境ではいつ何が起こるか分からない。そこで、諸君はこれからどうやって自己訓練を行うかレポートを作成するように。用紙などは用意してある」
「「「「「はっ」」」」」
自分の訓練スケジュールを作るのは、とってもいいアイディアだと思った。
毎日の筋トレ方法とかを教えても良いかもしれない。
ということで、僕たちは施設に戻ることになった。
そして、明日の下交渉について話し合うため、ナッシュさんも司令官室に集まって話をすることになった。
「皆、本当によくやった。確かにケン君が打ち立てた成果は大きいが、皆がキチンと役割を果たしたことも大きな成果だ」
「「「「「ありがとうございます」」」」」
最初に、ヘルナンデス様から僕たちにお褒めの言葉があった。
僕だけでなく、色々な人が頑張った成果だと思った。
「ルーカスとケン君は知っているが、基本は私が話すようにする。ただ、ルーカスとケン君は前回と同じく質問を入れて構わない。ナッシュとクリスは、基本見ているだけだ。疑問があったら、私、ルーカス、ケン君に伝えるように」
「「「「はい」」」」
六歳の時に参加した停戦交渉と、ほぼやることは一緒だ。
スラちゃんも参加していいということになり、チビスライム達は国境の施設に残ることになった。
交渉自体は数日間続くはずだから、その間は同じ対応になる予定だ。
そして、ヘルナンデス様はこんなことを言って来たのだ。
「ナッシュも上級官僚試験の勉強をしているらしいな。ルーカスから連絡を受けて、受験手続きを済ませておいたぞ。いやあ、優秀な兄妹だ」
「「あ、ありがとうございます……」」
ナッシュさんとクリスは、かなりがっかりした表情でお礼を言っていた。
これで、官僚試験の勉強はずっと続けないといけなくなったね。
こうして打ち合わせは終わったのだが、ナッシュさんとクリスは午後も官僚試験の勉強をすることになった。
しかも、クリスはまだ初級完了試験に合格していないのに上級官僚試験の勉強をするようにと言われてしまったのだ。
僕とスラちゃんも食堂で新人兵のレポート作成指導をしていたが、ナッシュさんとクリス兄妹はちょっと落ち込みながらカリカリと勉強をしていたのだった。
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