第百三十九話 帝国の再度の攻撃と兄を討伐
「うん、うん?」
翌朝、僕はむっくりと身体を起こした。
えーっと、ここは司令官室のソファーだ。
打ち合わせ中に寝ちゃって、誰かが毛布をかけてくれたんだ。
スラちゃんも僕の胸の上で寝ていたが、僕が起きた時にコロコロと転がって起きてしまった。
スラちゃんはそのまま僕の頭の上に飛び乗り、僕は司令官室護衛の兵に一言言ってから食堂へと向かった。
「あら、ケン君じゃないの。早いわね」
「疲れて寝ちゃったから、こんな時間に起きちゃいました」
「そうかい。まだ仕込み中だから、ジュースでも飲んでいな」
まだ夜も明けたばっかりなのに、食堂のおばちゃんは既に仕込みを始めていた。
僕とスラちゃんはパンとジュースをもらい、もぐもぐと食べていた。
「今日も何かありそうだけど、酷くなければいいなあ……」
「うーん、中々難しいね。こういう時は、色々と起きちまうのよ」
長年この国境の基地に勤めているおばちゃんの勘は、直ぐに的を得ていると分かった。
ウーーー! ウーーー!
「あっ、警報です! パン、ありがとうございました」
「気をつけて行ってくるんだよ」
突然の警報に、僕とスラちゃんは急いで食堂の外に出た。
すると、まさに今帝国側から防壁目掛けて強烈なカノン系魔法が撃ち込まれようとしていたのだ。
「僕が迎撃します!」
「ケンか、やってくれ!」
シュイン、ズドーーーン。
現場責任者の兵の声もあり、僕は風魔法のカノン系魔法で帝国側からのカノン系魔法を相殺した。
更にバレット系魔法なども撃ち込まれたが、防壁の上に移動したスラちゃんが相殺した。
ズドドドドーン、ズドドドドーン。
「かなり激しく攻撃してきますね」
「帝国側は、一気に飽和攻撃で押し切るつもりだな」
僕は魔法を撃退しながら、指揮を執る兵の幹部と戦況を分析してきた。
ぐっすりと寝たのもあり、魔力は満タンだ。
お陰で、かなり余裕を持って魔法を撃退できていた。
「すまん、遅れた」
「ケン、大丈夫?」
ルーカス様とクリス、そしてチビスライムたちが急いで僕たちのところに駆けつけた。
ナッシュさんは、ジーグルト様と共に指揮経路の担当をするという。
アクアちゃんとリーフちゃんは防壁の上に異動して魔法の撃退に向かい、シロちゃんとレモンちゃんは負傷兵の治療に備えた。
そして、僕はルーカス様にある提案をした。
「ルーカス様、帝国側陣地にサンダーバレットを撃ち込んでもいいですか? 今なら、まだ余裕があります」
「ケン君、可能ならやってくれ。そろそろ、帝国を黙らせないといけない」
ルーカス様の許可を得て、僕は左手で帝国側からの魔法を撃退し続け、右手を上にあげて複数のサンダーバレットを発動した。
シュイン、シュイン、シュイン。
「ルーカス様、準備できました」
「うむ、それでは作戦開始だ」
「ケン、いったれー!」
周りにいる兵も、帝国側の攻撃にちょっとやけくそ気味だ。
そんな光景にちょっと苦笑しながら、僕は帝国側に向かって複数のサンダーバレットを撃ち込んだ。
シュイーーーン、ズドドドドーン!
「あっ、魔法攻撃が明らかに減少しました」
「よし、では第二陣の準備をはじめるように」
放ったサンダーバレットは非殺傷だけど、そこそこ威力があるように放っていた。
直撃すれば、暫くは身体が痺れて動けないはずだ。
シュイン、シュイン、シュイン。
「第二陣、準備できまし……」
そして、僕が第二陣のサンダーバレットを放とうとした、その時でした。
「ケン、テメー! テメーのせいで、こんな時間に起きちまったじゃねーか! ケン、ぶっ殺す!」
ブオン、カランカラン……
何と、顔面が腫れ上がっている兄が、突然遠くから僕に向かってナイフを投げてきたのだ。
兄は雑兵扱いなので、帯剣が許されていない。
だから、僕に手ごろなナイフを投げつけてきたのでしょう。
兄の投げたナイフは僕のいる場所より遥か手前に落ちたのだけど、ナイフを投げたことは重大な事実です。
なぜなら、僕の側にはルーカス様やクリスもいるからです。
そして、遂にこの人の堪忍袋の緒が切れたのだ。
「クリス、反逆兵の腕を斬り落とせ!」
「はい!」
ガチ切れしているルーカス様が、同じくガチ切れしているクリスに指示を出した。
シュイン、ボッ。
ダッ。
そして、怒り心頭のクリスは魔法剣の一種である火炎剣を発動し、身体能力強化魔法も使って一気に兄に接近したのです。
「ケンに何をした!」
ザシュ、ボウッ!
「うぎゃーーー!」
クリスは、気合一閃で兄のナイフを持っている右腕の肘から先を一気に斬り落とした。
更に、魔法剣の作用で、兄の右腕の断面から炎があがった。
兄は腕を斬られた痛みと切断面が燃えるという痛みで、叫び声をあげながら地面をころがっていた。
「ルーカス様、任務完了しました」
「うむ、良くやった」
クリスは、ルーカス様の前に戻ると膝をついて簡単に報告した。
そして、ルーカス様はクリスに返事をすると激痛のあまり地面に転がる兄に歩み寄って冷たく見下した。
更に、兄の周囲を剣を手にした兵が取り囲んだ。
あっ、そうだ。
僕は僕でやることがあるんだ。
「ルーカス様、準備できました」
「ケン君、やってくれ」
シュイーーーン、ズドドドドーン!
「更に、魔力攻撃が減衰しました。これなら、スラちゃんたちだけで迎撃できます」
「よし、それなら更にサンダーバレットを撃ち込む用意をするように」
シュイン、シュイン、シュイン、シュイン。
ルーカス様の指示を受け、僕は思いっきりたくさんのサンダーバレットを宙に浮かべた。
更に、兵も各班に分かれて突撃の準備を進めた。
すると、ルーカス様はゆっくりと拘束されている兄の直ぐ近くまで歩み寄った。
ドスッ。
「がはっ!」
ルーカス様は激痛で顔が歪む兄を無理矢理うつ伏せに組み伏せ、更に髪の毛を持って無理矢理顔を上げさせた。
「良く見ることだ。これがお前たち親子が蔑んでいた、ケン君の、【蒼の治癒師】の魔法だ。ケン君、やってくれ」
「ぐっ……」
どうやら、ルーカス様は強引にでも兄に僕の魔法を見せたいらしい。
しかし、兄は無理矢理視線をそらして意地でも僕の魔法を見たくないらしい。
「いきます!」
「ケン、いったれー!」
周りの兵の声に応えるように、僕は多数のサンダーバレットを帝国側陣地に撃ち込んだ。
更に、指示を受けてもう二回多数のサンダーバレットを撃ち込んだ。
もはや帝国側陣地から魔法が撃ち込まれることは無く、通常兵も身体が痺れて大多数が動けなくなっていた。
「全軍、隊長の指示に従って突撃開始!」
「「「「「うおーーー!」」」」」
ルーカス様の指示に従って、王国軍は一気に行動を始めた。
きっと、これからまた忙しくなるだろうと、僕は直ぐに気を引き締めた。
「これが、お前たち親子が認めようとしなかった、王国の英雄であるケン君の力だ。もはや、お前が存在すること自体が王国にとって害だ。反逆兵を厳重に拘束して、完全武装解除した上で魔導船で王都に送るように」
「「「「「はっ」」」」」
「ぐっ……くそ、くそーーー!」
兄は、無理矢理パンツ一丁にさせられてから更に縄でぐるぐる巻きにされていた。
猿轡までする念の入れようだ。
しかし、僕にはやることがある。
運ばれてきた負傷兵を治療するため、僕は意識を切り替えたのだった。
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