第百三十五話 新年の謁見とマネー伯爵家への暫定処分
暫く応接室で話をした後、僕たちは新年の謁見に臨む事になった。
双子ちゃんは謁見に参加するのだが、ジョセフちゃんとビアンカちゃんは応接室に残ることになった。
その為、クリスと使用人で赤ちゃんと幼児の面倒を見る事にした。
「陛下と話をすることがあるけど、謁見の間の切れ目で膝をついて話を聞けばいいですよ」
「色々気を使って頂き、本当にありがとうございます」
ミュウさんの側には僕とヘルナンデス様とエレンお祖父様が一緒についているし、他の貴族が何か言ってきても問題ないはずだ。
という事で、さっそく謁見の間に移動した。
「うーん、ジロジロとミュウさんを見ている人がいますね……」
「我々が見知らぬ貴族令嬢を連れているのだ。しかも、ミュウは人目を引く美貌だ」
ヘルナンデス様は、さらりと凄いことを言った。
確かに、ミュウさんはマネー伯爵の血を引いているとは思えないくらい綺麗で美人だ。
とはいえ、僕たちががっちりとミュウさんを固めているので知り合いの貴族しか近づいて来なかった。
そんな中、ビースリーさんとマーシャルさんが僕たちの方に歩み寄ってきた。
「ケン君、クリスとナッシュが世話になっているね。後で一緒に話をしよう」
「私も、そこのお嬢さんに話がある。後で話をしよう」
軍人貴族はあの女性を知っているのかという空気が流れる中、係りの人のアナウンスがあった。
僕たちは、一斉に臣下の礼を取った。
袖口から王族が入場し、陛下も玉座に座った。
「一同、面をあげよ」
陛下の厳かな声で、僕たちは一斉に顔をあげた。
陛下は周囲の貴族を見回した後、一呼吸置いてから話し始めた。
「昨年は、我が子ビアンカの出生もあり王家にとってはとても良い年だった。しかし、国に目を向けると様々な諸問題を抱えていると再認識する年だった。帝国との小競り合いは続き、国境警備の強化も順次行っている」
僕が国境に行った際の衝突は、あくまでも小規模なものだった。
そう考えると、六歳の時に起きた帝国との衝突は本当に大規模だったんだ。
「国内も、優秀な貴族ももちろん多いが不正を行った貴族もいる。希少種のブローカーを行い、不正に金品を得ていたものが年末に捕縛された。現在も捜査継続中だが、厳しい処分は免れないだろう」
国の法律で明確に保護しないといけない魔物が決まっていて、キングレオとフォレストタイガーはまさにその中に入っていた。
因みに真っ白なフォレストウルフとサンダーホークは、保護対象ではないけど取引が制限されているという。
そして、ミュウさんが陛下の前に進み出た。
「マネー伯爵家へ暫定処分を言い渡す。屋敷は、強制捜査完了並びに判決が出るまで国が接収する。強制当主交代を言い渡し、更に廃嫡とする。夫人や親類など、拘束されたものは貴族権限を制限し資産没収とする。そして、暫定当主をミュウとし、引き続き魔物と共にアスター男爵家での保護とする」
「陛下、並びに皆さま、この度はマネー伯爵家が大きな犯罪を犯し大変申し訳ございません」
ミュウさんは、陛下に深々と頭を下げた。
マネー伯爵家へのかなり重い処分に、一部の貴族はざわざわと騒めいていた。
僕がミュウさんを治療したとはいえ、上位貴族が下級貴族に保護されるのは異例らしい。
そして、ミュウさんがマネー伯爵家令嬢だと知って更に驚いていた貴族もいた。
「他にも複数の貴族家が捕まっているが、貴族家のほぼ全員が捕まっている。処分に関しては、裁判終結後に改めて周知する」
「「「「「はっ」」」」」
こうして、謁見は何とか終了した。
さっそくミュウさんに接近しようとする貴族がいたので、僕達でがっちりと囲んでそのまま応接室へ向かった。
「さっそく、下賤な目でミュウさんを見ていた貴族がいましたね」
「マネー伯爵家は、貴族家の中ではかなり裕福な方だ。厳しい処分を受けたとしても、それなりの財産が残る。ミュウに婿を送り込めれば、人生バラ色だと下手な打算をしているのだろう」
応接室に着くなり、ヘルナンデス様がミュウさんに近づこうとした貴族をバッサリと切り捨てた。
今回の事件で相当の資産や金品が押収されているが、それでもまだまだ沢山ある。
生活が苦しい貴族家にとっては、何とか一発逆転のチャンスだと思っているのかもしれない。
とはいえ、既にミュウさんは僕たちや王家からも気にされている存在となっている。
そう簡単に、下世話な考え方をする貴族の手にはかからないはずだ。
「そうそう、判決が出てからになるがミュウさんを息子の結婚式に招待しよう」
「娘も、ミュウさんのことをかなり気にしていた。今は大変だが、ケン君の保護にあるのなら大丈夫だ」
「わざわざ招待頂き、本当にありがとうございます」
ナッシュさんはマネー伯爵家への捜査指揮をしていたし、コリーナさんもミュウさんと接している。
ビースリーさんとマーシャルさんの申し出も、そういう繋がりから来ていたものだった。
「では、シンシアの結婚式にも招待しないとならないな。財務官僚も、ミュウがしっかりと当主を務めれば長期的に見れば税もしっかりととれると考えている」
エレンお祖父様は、ある意味財務官僚らしい考え方だった。
ミュウさんが散財するとは考えにくいし、キチンと税金を納めると思った。
「まあ、そういうことだ。また、マネー伯爵は財務担当だったからノーム準男爵から色々と教わると良い。初級官僚試験を本年中に受験し、合格後は財務官僚として働くように」
「畏まりました。精一杯頑張ります」
「ミュウは聡い子だ。きっと大丈夫だろう」
陛下も、ミュウさんならきっと問題ないと思っていた。
僕も、ミュウさんの官僚試験のサポートをしてあげないと。
ヘルナンデス様から勉強の本をたくさん貰ったし、僕はもう使うことはない。
ということで、僕達は一旦屋敷に戻ることにした。
「ということで、ミュウさんは暫くこの屋敷にいて官僚試験や当主としても勉強をすることになったよ。みんなも、ミュウさんのことを応援してあげてね」
「「「「「ガルッ!」」」」」
屋敷に戻って魔物にあれこれ説明すると、スラちゃんも通訳してくれたお陰もあって直ぐに納得してくれた。
これなら大丈夫だと、僕も確信したのだった。
因みに夜会にミュウさんが参加せず、気合を入れていた貴族は空まわっていたのだった。
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