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神のい(ら)ない世界  作者: ..
4.1. 光救出編
12/16

不可視の脅威

「御二人とも大丈夫かしら」

「ああ。……残って足止めしてくれてる二人のためにも、早く光さんを救出しよう」


 三人は頷き合い、建物の中へと足を踏み入れる。

 中は静まり返っていた。

 生活の気配はなく、長く使われていないことが一目で分かる。

 三人は手当たり次第に部屋を開け、奥へ奥へと進んでいく。


「それにしても……」


 綾人がぽつりと呟く。


「さっきの奴ら、多分外国人だったよな? なのに普通に日本語として聞こえてたぞ」

「それは――桃ちゃん先生が下さったこれのおかげですわね」


 嶺花は耳に触れる。

 そこには、白いイヤホン型の装置が装着されていた。


―――――――――――――――――――――――


 ――出発前 校長室


「それから、みんなにはこれを渡しておくね♩」


 桃が差し出したのは、小型のイヤホンのような機械だった。


「これは?」

「生活補助用多機能翻訳機――通称“シノニム”だよ☆」


 楽しげに説明する。


「相手の言語を自動翻訳してくれる優れもの♪ 今回、相手が誰か分からないからね。一応つけておいて♬」


―――――――――――――――――――――――


「確か、相手の言葉を自動で翻訳してくれるんだったか」

「それだけではありませんわ。言い間違いの補正や会話補助もあるそうですが……」


 嶺花が周囲を警戒する。


「今は、それどころではなさそうですわね」


 やがて三人は、建物の最奥へと辿り着く。


「……この部屋が最後か」

「分からない」

「油断は禁物ですわ。光さんがいたらすぐに保護して撤退しますわよ」


 三人は視線を交わし、息を整える。

 ――次の瞬間。

 扉を蹴破るように開け放った。

 室内。

 中央。

 椅子に縛られた少女――光。

 そして、その傍らに立つ長髪の男。

 それを視認した瞬間。

 綾人が動いた。


「――ッ!!」


 床を蹴り、一直線に突っ込む。

 斧を構え、迷いなく振りかぶる。

 だが。


「……いくらなんでも無警戒すぎないか?」


 長髪の男は、呆れたように呟いた。


「武器も持ってない相手に、何を警戒しろってんだよ!」

「丸腰かどうかの問題ではない。無防備に突っ込むな、と言っている」


 男は、ゆっくりと腕を伸ばした。

 ――その瞬間。


「がっ……!」


 綾人の体が、急に止まる。

 何かに阻まれたかのように、その場で硬直した。

 次の瞬間。

 腹部に、血が滲む。


「……っ!?」


 遅れて、吐血。

 そのまま崩れ落ちた。


「綾人さん!?」

「何が……起きたんだ……?」


 見えない何か。

 触れた瞬間に、斬られた。

 理解が追いつかない。


―――――――――――――――――――――――


 ━━━その頃 空き家前


 恒星と徹は、依然として兄者と弟者と対峙していた。

 見えない武器。

 音のない接近。

 厄介な連携により、膠着状態が続いていた。


(このままでいい……俺たちは足止めが目的だ。時間を稼げればそれで――)


「すまない恒星君! 抜けられた!」


 徹の声。

 振り返ると、弟者が背後から迫っていた。

 反応。

 回避。

 反撃――

 だが、その瞬間。

 兄者の暗器が飛ぶ。


(チッ……!)


 防御を強いられる。

 再び距離を取られる。


(こうやって、崩される……このままだと――)


 恒星は一度下がり、徹の隣へ。


「徹、今から10秒何もできないが、なんとか出来るか?」

「……大丈夫さ」


 即答だった。


「任せてくれ」


 軽く頷く。

 それを見て、恒星は目を閉じた。

 深く、呼吸を整える。


「こんな時に居眠りとは!! 舐められたものだ!!」


 兄者が笑う。

 暗器が一斉に放たれる。

 同時に、弟者が死角から接近。

 だが――

 ドンッ!!

 徹の槍の石突が地面を打つ。

 展開される障壁。

 全方位防御。

 すべてを防ぎきる。

 ――そして。

 ちょうど十秒。

 障壁が消えた瞬間。

 恒星の目が、開いた。


「ありがとう、徹」


 一歩。

 消えたように、踏み込む。


「――終わりだ」


 兄者の懐へ。

 暗器を投げるよりも早く。

 鳩尾へ、鞘での一撃。

 衝撃。

 意識が飛ぶ。


「兄者ぁ!!」


 狼狽える弟者。

 隙だらけのその体を――

 徹の槍が薙ぎ払う。

 地面に叩き伏せる。

 即座に拘束。

 ――決着。


「助かったよ、恒星君……」

「いや。徹が時間を稼いでくれたおかげだ」


 短く言葉を交わす。


「それより――どうする?」

「行ってくれ」


 徹が言う。


「ここは僕が抑える。君の方が戦力になる」

「……分かった」


 恒星は頷き、建物の中へ駆け出した。

 ――その直後。

 地面に、靄が現れる。


「……おや」


 そこから現れたのは――カノア。


「ウッド兄弟は……まさか、負けたのかい?」

「違うんだよぉ!!」


 弟者が慌てて言い訳をする。


「もう一人いて、二人がかりで――」


 二人だとしても子供に負けたのかと言いたげに少し不機嫌な表情をするカノア。

 そんなカノアの不機嫌さを察したのか、弟者は兄者の暗器が見破られていたから負けたんだと言い訳がましく伝えた。


「へぇ、インビジブルを見破ったのか。彼かい?」


 弟者は首を振り、先へ進んだもう一人だと告げる。


「そうか……フフッ、さぁ急いでジェイルを迎えに行こうか」


 カノアは目を大きく開き、嬉しすぎて上がりそうになる口角を抑えながら恒星の後を追って行った。

 その場に残ったのは、セバスたち。


「カノア様行っちゃったけど」

「まぁ、心配する必要はございませんでしょう……さて」


 静かに徹へと向き直る。


「申し訳ありませんが、彼らを解放していただけませんか?」

「……断る」


 即答。

 だが――


「我々はこれ以上、戦うつもりはありません。すぐに退きます」


 落ち着いた声音。

 威圧もない。

 だが――人数差は明らかだった。


(……ここで戦えば、負ける)


 逡巡。

 そして。


「……分かった」


 徹は拘束を解いた。

 ノアが兄者に触れる。

 すると――

 気絶していたはずの兄者が、何事もなかったかのように立ち上がった。


「ケインは?」

「大丈夫ですぅ~」


 軽くやり取りを交わし。


「ここでの用事も済みましたし、あまりお嬢様をお待たせするわけにもいきません。ノアさん頼みます」

「またぁ?? もう今日はへとへとだよ」

「帰ったらしばらくの休息とたくさんのお菓子を差し上げるようにお嬢様に掛け合ってみようと思うので、もう少しだけお力をお貸し頂けませんか?」

「ぶー、分かったよー」


 不満そうに出現させた靄に入る。

 消える。

 静寂が戻る。

 そして。


「……はぁ」


 緊張が切れた。

 徹は、その場に崩れ落ちる。

 そのまま――深い眠りに落ちた。

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