93.パミランの町には合成関連の本が充実しているようです
「ゴンはどうなんだい?」
「…………経験、入ってくる。…………おれ、強くなる」
なるほど。
記憶が入ってくるという事は、つまりはその合成された魔物の経験も得られるという訳か。
ゴンは相手に対して隙のない鋭い動きをしていたけど、それはゴンに合成された数々のゴブリンやオーガの経験の賜物と言えなくもないんだろうね、きっと。
「アタイもゴンと似たような感じかな。アークに合成をしてもらうと、合成されたヤツの記憶と経験が入ってくる。そのおかげで、もっとこうした方が効率的に動けるとか、こういう動きはしてはいけないみたいな教訓的なものも分かったりするね」
「なるほどね。学んだ結果だけでなく、その過程や失敗までも学ぶ事が出来るという事か。というか、そんな膨大な記憶が入ってきて、よく大丈夫だね?」
「最初は戸惑ったけど、今はもう慣れたかな。それにそういった情報は明確に覚えている訳じゃないからね。そういう経験が身についていて、いつの間にかそれが役に立っている。そんな感じだからさ」
まあ、そうなるだろうね。
入ってくる膨大な記憶を全て覚えていたら大したものだ。
僕は自分自身の記憶でさえ、忘れている内容も結構あるというのにさ。
きっと何かしらの方法で、無意識のうちにいる記憶といらない記憶の判別が出来ているんだろう、ホク達は。
「ウルはどうなの?」
「オレも似たような感じだな。ただ、生き方がどいつも似たり寄ったりでつまんねえんだよ。いかにオレがアークのおかげで恵まれた生活をしているかが分かるってもんだな!」
そう言って微笑むウル。
幸せそうな表情からして、僕達との旅を本当に楽しんでいるんだろうな、きっと。
でないと、わざわざ同種に逆らってまで僕達と一緒に来ないだろう。
「さて、ラス達によれば、合成されるっていう事はこんな感じみたいだね。みんなの言葉から考えるに、合成されると膨大な記憶が入ってくるが、その大半は覚えていない。だけど経験などは身に染み付いており、いざという時にそういうものが役立っている。そんな所で間違いないかな?」
「うん、あってるとおもうよー」
「…………さすがアーク」
「そんな感じだね。だから合成って良いものだよ、本当に!」
「オレもそう思う。……あっ、でもアークは無理するなよ!? オレのせいでアークが倒れるのは二度とごめんだからな!?」
ラス達の意見が一致しているようだし、合成というのはそういう内容で間違いないんだろう。
合成をされる度に合成による不安定さが減るのは、きっとその現象に対する慣れみたいなものがあるのかもしれないな。
ラス達の話を聞き終わった所で、それから少しみんなと今後の予定について話し合った。
そしてメルは店を見て回り、僕とテイニーは本屋に行く事になった。
テイニーはせっかくこの町に来たので、合成についてちょっと勉強してみるとの事。
予定が決まった所で僕達は宿屋の前で一旦解散。
そして早速本屋を訪れる。
「す、すごいですね。ここもあそこもみんな合成関連の本でいっぱいです……」
本屋にある本のラインナップを見て、思わずそうつぶやくテイニー。
実際テイニーの言う通り、どこを見ても合成関連の本で埋め尽くされていて、さすがは合成の町といった所か。
そしてそんな本屋で一番人気の本とされているのは、”これで完璧! 魔物の合成組み合わせまるわかりガイド”というものだった。
テイニーは早速その本を手に取っている。
さて、僕は呪い関連の本を探さないとね。
僕は本屋の隅々まで探してみたが、呪い関連の本は見つからなかった。
というのも、この本屋、合成関連の本しかなく、そもそも呪いジャンルの本が存在しなかったのだ。
そこまで合成に特化しているとは、やるな、パミランの町……。
ただ、合成に特化しているだけあって、興味深い本を発見する事はできた。
その本のタイトルは”ノーム合成による効果考察”というもの。
中身を読んでみると、そこにはノームを合成したら合成元の魔物にどのような効果があるのか詳しく考察されているものが書かれていた。
そしてその効果の中には、幻覚を見せ、自分の存在を誤認させる能力が手に入る事もあるという。
すごい効果だよね、本当。
ちなみにそれ以外には特にめぼしい本がなかったので、僕は本を読んでいるテイニーに近付く事に。
テイニーはどうやらまだ先程の本を読んでいるようだ。
「何か良さそうなものは見つかった?」
「はい! アークさん、これを見て下さい。可愛くないですか?」
テイニーが見せてきたのはケットシーとピクシーが合成された魔物について書かれたページだった。
そのページにはケットシーの容姿を残しつつ、その背中にピクシーの羽根が生えていて、まさにネコの妖精みたいな風貌をしているようだ。
「うん、確かに可愛いよね」
「ですよね? これを見ていると、異種との合成も悪くはないのかと思ってしまいます。アークさんだったら合成のスペシャリストですし、アークさんにならこういうのもお願いしてみたくなるかもしれないです」
「うーん、僕は異種魔物との合成をする自信がないから、あまりやりたくはないんだけど……」
「危ないんですものね。もちろん冗談ですよ、冗談。レクにそんな危ない事をさせたくはないですから。ただ、少し魔物の合成の良さについて分かった気がします」
そう言って微笑むテイニー。
異種との魔物の合成は見た目が変化する関係上、どうしてもグロテスクな見た目の組み合わせも存在する。
テイニーが初めて見た合成魔物が遺跡の地下で見たそういう魔物だったんで、異種魔物との合成に対して忌避感を持っていたんだろうな。
そんな気持ちがこういう本を読んで、和らいでくれたのなら良かった。
パミランの町には本屋はここの一つしかないので、本屋めぐりはこれで終了。
さて、本屋めぐりが終わったら次は……。
「テイニーは次はどこに行くの? 僕はギルドに行くつもりだけど」
「あっ、そういえばアークさん、ガルーダになったホクさんがいますからCランクになれますものね!」
「うん、そういう事だよ」
「わたしもギルドに行きます! 本屋もこんな感じですから、この町のギルドがどうなっているのかちょっと気になりますし」
うん、確かにそうだ。
町中を見ても、合成されたらしき魔物で溢れている町なのだから、ギルドともなればより多くのそういった魔物で溢れているんだろう。
本屋の中でもそういった魔物をつれて来ている人もいる位だしさ。
最初は異種との合成に対してちょっと見慣れない所もあったけど、こうして何度も見ているとだいぶ慣れてくるものだな。
別にもうその事に対して何とも思わなくなったかもしれない。
テイニーもギルドに興味があるようなので、僕はテイニーと一緒にパミランの町のギルドへ向かう事にした。




