92.合成の町パミランに到着しました
問題が一段落した所で、僕達はフィラミルから出発する事にした。
フィラミルから直接パミランの町を目指す事も出来るので、フィラミルから北西方向に進み、パミランを目指す。
もちろんその道中で出会ったガルーダは必ずホクに合成しておく。
ホクがどこかから持ってきた弱らせたガルーダを定期的に持ってくるので、それも合成する事になるのだが。
結構頻繁にホクがガルーダを持ってくるので、町まであと半分という所まで来た時点で、ホクには何十体ものガルーダを合成する事になった。
そしてそこまで合成した影響で、ホクの見た目はもはや野生のガルーダと見た目も大きさも変わりなくなっていた。
これなら、ホクに乗って空を飛ぶ練習もそろそろ出来そうだね。
ちなみにフィラミルから通るこのルートではグレートウルフの亜種であるグレートレッドウルフとも遭遇する。
そのためそのウルフと出会ったら、ウルに合成をしてあげる事にした。
グレートウルフとは違って毛の色は赤みがかっているが、グレートレッドウルフはほぼグレートウルフとそれ以外は変わらない。
故に、特に問題なく合成をする事はできた。
連続した合成は精神的にだいぶ負担がかかるが、適度に休憩を挟む事で、疲れを溜め込まないように出来ている。
たまにウルの背中にラス達と一緒に乗ったりする事で、楽させてもらったりもしているしさ。
「アークさん、大丈夫ですか?」
「うん、大丈夫だよ。しっかりと休めているからね」
「それは良かったです。アークさんが休んでいる時、わたし、頑張ってアークさんを守りますから、安心して下さいね!」
「うん、頼りにしているよ、テイニー」
テイニーは道中でホクが処理しきれなかったガルーダを普通にレク達と連携して倒していたし、正直僕がいなくても荒野を切り抜ける実力はあるだろう。
本当、最初の頃とは見違えるような強さだ。
「あっ、見えてきたんじゃないですか、パミランの町!?」
「どれどれ……確かに、あれはパミランで間違いなさそうやな。独特な色の煙が見えるし、間違いないやろう」
どうやら僕達はパミランの町の近くまでたどり着いたようだ。
遠くから見た感じ、パミランの町からは赤、緑、青、黄色といった様々な色の煙が立ち上っていた。
あの煙が一体どうして発生するのか不思議だな……。
それから数分歩くと、パミランの町までたどり着いた。
そしてパミランの町にも門番がいるのだが、二人いる門番はともに白衣を着ていて、その脇にはオークが一緒に立っていた。
「魔物使い達よ、ようこそ、パミランの町へ。君達も合成に興味があって、ここまで来たのか?」
「そうですね。ここならば面白い知識が学べると思って来ました」
「……うんうん、なるほどな。しっかりと学んでいくといいぞ。あと、合成をしっかりと学べれば、おれのこのオークみたいに、魔物がさらに強くなれるからな」
そう言ってオークを僕達の前に来るように指示をする白衣の門番。
よくよく見れば、そのオークの右腕は鱗に覆われている。
その感じからすると、このオークをリザードマンと合成したって所か。
「リザードマンと合成したんですか?」
「ご名答。このオークはリザードマンと合成した事によって、右腕がリザードマンの鱗で覆われているんだ。そのおかげでその右腕から繰り出される攻撃はとても鋭い。タフなオークにリザードマンの攻撃が加わって、まさに向かう所敵なしって訳さ!」
「まあガルーダには敵わねえようだけどな」
「お、おい、それは言うなよ!? さすがに元々がEランクのオークじゃCランクのガルーダに勝てっこねえって!」
威張っていた門番はもう一人の門番にツッコミを入れられる。
まあ、恐らくこの様子じゃ、合成した回数は一回か二回程度だろうし、格上に勝てないのも仕方ないだろうな。
全く別種の魔物と合成するのは魔物の体に負荷がかかりすぎるから、合成を成功させられる回数は相当少なくなるしさ。
見た目的に強さが分かりやすいのはいいんだけど。
それから門番達に簡単な荷物チェックを受けてから、僕達は町の中へと入っていく。
町の中は様々な色の建物が立ち並んでいて異様な雰囲気だった。
赤一色の建物、青一色の建物など、そのような建物がずらっと並んでいる。
そして行き交う人達は皆魔物を連れていて、白衣を着ている人もちらほらといるようだ。
「みんな魔物を連れているんだね。パミランにいる人達はほとんど魔物使いなのかな?」
「そやな。パミランは合成の聖地として知られておるから、合成をしたい人達が集まってくるんや。合成ができるのは基本的に魔物使いだけ。となれば、魔物使いだらけになるやろな」
ふーん、なるほどね。
合成の町って、言い換えれば魔物使いの町とも言える訳か。
そう考えると、魔法使いしかいないとされる町、ドクトマリンとは正反対にある町とも言えそうだな。
僕達は町を歩いていき、とりあえず宿を確保する。
そして重い荷物を置いて身軽になり、これからの予定を話し合うため、一旦僕の部屋の中に集合した時の事。
「アークさん、わたし、この町ちょっと苦手かもしれないです……」
テイニーはそう言ってうつむいている。
一体どうしたというのか?
「どうしてなんだい、テイニー?」
「この町の魔物って、何か異様な雰囲気があるじゃないですか? 殺気だっている魔物ともさっきすれ違いましたし……」
「うーん、まあ、本来合成ってこういうものだからね。体が不安定になるほど魔物は気性が荒くなる傾向にある。見た感じ、ここの町にいる魔物はみんな合成された魔物みたいだし、そんな魔物がいても不思議ではないよ」
魔物には時間を経るごとに合成された体に適応する力が備わってはいるんだろう。
ただ、それによって取り戻す安定さは通常の合成一回分には程遠いと思っている。
だからこそ、通常の合成を数回したら、相当体は不安定になるし、魔物はその体に適応するまでには膨大な時間を必要としそうなのは想像に難くない。
それにラス達を合成して分かったことの中に、合成された魔物の記憶が入ってくるという事がある。
もしまったく別種の魔物を合成した場合、生き方、考え方が全く異なる記憶が頭の中に入ってくる事になるだろうし、頭は相当混乱するだろうね。
「合成っていうのは合成された魔物の記憶が入ってくるもの。それで間違いないよね、ラス?」
「うん、そうだよー」
「違う性質の体を持った異種の魔物は全然異なる記憶を持っている。そんな記憶がいきなり入ってきたら、頭は混乱するだろう。それに体が自分のものではなくなるような妙な感覚もあるだろうし、心穏やかでいられないのも無理ないと思うよ」
「確かに言われてみればそうですよね……。でもそう考えると、アークさんの従魔達はどうして大丈夫なのでしょう? きっとものすごい量の記憶が入っているでしょうに?」
「確かに僕もずっと不思議に思っていたんだよね。そこの所はどうなんだい、みんな?」
僕がそうたずねると、ラス達はみんなうーんと悩むような仕草を見せる。
その反応からすると、記憶が入ってくるという事に対して何の疑問も持っていなかったように感じられるんだけど……。
「えっと、ぼくのばあいはねー。とてもかしこくなったきがするんだよー」
「賢くなったって、どういう事?」
「そうだねー。たとえばあそこのみずはおいしいとか、ここにはがるーだがすんでいるとか、そういうじょーほーがはいってくるんだー」
「なるほどね。つまりはその周辺の情報について知る事が出来るという感じか」
「そういうことー。あとはみんないっしょになってうれしいってかんじかなー? ぼくのなかになんにんもぼくがいるかんじー。いっぱいふえるごとににぎやかになっていくから、もっとなかまがふえるとぼくはうれしいなー」
自分が何人もいる感じ、か。
ラスの場合、一緒になったスライムの数が既に数万、数十万になるだろうから、もはや賑やかというレベルの話ではないんだろうけど……。
ただ、ラスの様子を見るに、その事を受け入れて歓迎しているし、対応出来ているという事なのかもしれないね。




