82.ゴンは合成にある未知の可能性に気付いたようです
それにしても何か様子がおかしい。
合成が失敗したなら、こうなる事はある程度予測がつくはずだし、こんなに挙動不審になる事もないだろう。
ここは一旦事情を聞く必要がありそうだ。
「ごめん、ゴン、やっぱりこの人を運ぶのを手伝って。ラスは、しばらくの間、そのゴーレムを抑えていて欲しい。出来るかい?」
ラスとゴンは黙ってうなづく。
ゴンは僕のサポートをしようとする。
一方でラスはゴーレムに分体を飛ばして、早速身動きを完全に封じていた。
……って、これじゃ、わざわざ避難する必要もないじゃないか。
という事で、男をその場におろす僕とゴン。
そしてゆっくりと問いかける事にした。
「あのゴーレムはあなたの従魔で間違いないのですね?」
男はこくんとうなづく。
やはり、ゴーレムはこの男の従魔だったのか。
「あなたはゴーレムに合成しようとして失敗した。そうではないんですか?」
「ご、合成なんてするもんか……! お、おれが朝起きたら、その時からゴーレの様子がおかしくて、それで……!?」
「えっ、という事は、あなたは合成をした訳ではないんですか!? 詳しくこれまでの事をお聞きしても?」
こくんとうなづく男。
そして、事細かに今までの経緯を僕達に話し始めた。
その話によれば、今日の朝からゴーレムの様子がおかしくて、そしてしばらく連れ歩いていると、突然見境なく攻撃をし始めてしまったのだとか。
「でもそれなら、どうしてこんな事に……」
「お、おれも分からねえ……おれ、合成なんて一回もやった事ねえし……でも、朝からゴーレに変な黒い何かがついていたんだよな……」
そう言ってゴーレムの左腕を指差す男。
確かにそこを見れば、腕に何か黒いものがついている。
あれは、小さな翼だろうか?
となると、やっぱり……。
「ちょっと待っていて下さいね」
僕はその場から少し離れ、ヴァルドに問いかける。
「ねえ、ヴァルド。あのゴーレムってやっぱり……」
「ああ。体が非常に不安定になっている。合成による暴走で間違いないだろう」
やっぱりそうか。
あのゴーレムについていた黒いものは、大きさこそだいぶ違うが、ワイバーンのものに似ているような気がしたのだ。
となれば、あのゴーレムは何者かによって、ワイバーンと合成をさせられた事になる。
となると、そんな危険な合成を人の従魔に勝手にした奴がいるという事になるだろう。
「そんな身勝手な奴がいるなんて……人の従魔を何だと思っているんだ……。許せない!」
「まあまあ、気持ちは分かるが、まずは落ち着けって。それよりあのゴーレム、どうするんだよ? 今はラスが抑えているからいいが、いつまでもそんな事をしていられないだろ?」
うん、ヴァルドの言う通りだ。
いくらラスでも、ずっと拘束し続ける事なんて出来ない。
さすがに気力が持たないだろうからね。
そもそもそんな事をしていたら、僕達もここで身動きが取れなくなってしまうだろう。
そんな事をするのは現実的ではない。
ならば、どうするか?
ラスの拘束を解いたら、ゴーレムは再び暴れ出すだろう。
そしてそんなゴーレムを放っておく訳にはいかない。
となれば、やはり倒すしかないのだろう。
でも、そうなるとあの人はとても悲しむ事になる……。
一体どうすればいいっていうんだ、僕は?
そんな頭を抱える僕に、下から見上げてくる僕の従魔、ゴンがいた。
ゴンがつんつんと僕の体をつついてくる。
「ん? どうしたんだい? ゴン?」
「…………おれに考え、ある」
「えっ、考えだって? 内容を聞かせてもらってもいいかい?」
こくんとうなづくゴン。
そしてゴンが話した内容を聞いた僕は――
「た、確かに理屈だとそうなる可能性はあるけど。でも、そんな事をしたら!?」
「…………どうなるか分からない。…………アークとラス、優秀。…………きっと大丈夫」
ゴンがいった案はこうだ。
まず、ラスが分体を使ってゴーレムに擬態する。
そしてそのラスが擬態したものとゴーレムを僕が合成する。
それを繰り返せば、ゴーレムはゴーレムとしての形に戻っていき、合成に体が慣れていく事によって、合成による不安定さは解消されるのではとの事だった。
確かに、僕の合成によって不安定になる度合は非常に低く、ゴン達、魔物の合成対応力の方が上回るので、常にゴン達は不安定な部分がない状態で過ごしている。
それはヴァルドに聞いた内容なので、間違いないだろう。
しかもゴン達とは違って、今のゴーレムは元々の体とは大きく異なった状態にある。
ゴーレムを元の体に近付けるような合成をすれば、より体は安定しやすくなるような気がしないでもない。
だけど、既に限界を超えてしまっている魔物に対して、僕の合成はしっかりと機能するんだろうか?
それに擬態するとはいえ、スライムという全く異種の魔物を合成している事には変わりない。
そう考えると、いくら僕が合成した所で、ゴーレムの体をより不安定にさせてしまうだけのような気もする。
やっぱり、リスクが大きすぎる気がするんだよな……。
しばらく悩んでいると、ラスも僕の近くに寄って来た。
多分本体のラスなのだろう。
「あーく、なになやんでいるのー?」
「あっ、ラスか。実はね……」
僕はゴンの考えを簡単にまとめてラスに伝えた。
するとラスは。
「なるほどー。おもしろいことかんがえるねー、ごん! もしかしてべんきょーしたほんにかいてあったのー?」
「…………ここにあった」
ゴンは背中に結んでいる本を手にとって中を開き、ラスに本の内容を指差す。
するとラスもなるほどーと言うかのような表情をしている。
確かに、そういう仮説があることは僕も知っている。
魔物には合成に適応する能力があるのではないかという事。
そしてその仮説は僕も正しいと思っている。
「あーく、きっとうまくいくよー! そしたらきっと、あのひととってもよろこぶよー!」
「そ、それはそうかもしれないけど……でも、本当に出来るんだろうか?」
「できる! あーくならきっとできるよー! それになにもしなかったとしても、けっきょくごーれむをころすんだよね? なら、かのうせいがあるほうがいいとおもうよー」
確かに、行きつく先は同じだ。
合成をしなかったとしても、合成を失敗したとしても。
なら、どうしたいのか。
その答えは何となく想像はつくだろう。
「よし、分かった。とりあえずはあの人と話をしてみる。その答えによって、僕はどうするのか決めるよ」
「わかったよあーく。もしではんがきたら、ぼく、せいいっぱいがんばるからねー」
「うん、頼りにしてるよ、ラス。それとゴンもありがとう。僕だけじゃその事に気付けなかった」
ゴンは黙ってこくんとうなづく。
まさか、ゴンにこんな形で助けられるとは。
僕もまだまだ勉強しないといけなさそうだな……。
「よし、それじゃ、行こうか!」
僕は気持ちを新たに、みんなが待つ所へと向かっていった。




