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78.テイニーとレクは苦労してきたみたいです

 森を抜け、歩く事、三十分ほど。

 僕達はようやくレクレスの町にたどり着いた。



「……ついに、レクレスに帰ってきたんですね」



 そう言ってしみじみと町を眺めるテイニー。

 やはりずっといた故郷だけあって、数日しか離れていなくても、とても懐かしく感じられるのだろう。



「さて、ひとまずはどうするんか、テイニーはんとアークはんは?」

「わたしはひとまず自分の家に帰ろうと思います。そこでゆっくり休めると良いと思いまして」

「僕は宿屋を確保しようと思う。歩き続けて疲れたから、ちょっと休憩しないとね」

「なんや、アークはん。テイニーはんの家に泊まるんやないんか? テイニーはんに泊めてもらえたら、宿代も浮くで? それにアークはんがいればテイニーはんは家までまっすぐ帰れるやろ」

「そ、それはそうかもしれないけど……ねえ、テイニー?」

「せ、狭くても良ければ……別に構わないですよ」



 へっ?

 そ、そんな軽いものなの?


 まあ、別にいつも一緒に過ごしてきたし、その場所が家なのかそうでないかの違いでしかないんだろう。

 テイニーにとっては。

 せっかくだし、少しお邪魔させてもらう事にしますか。



「なら、テイニーの家に少しお邪魔しても良いかな?」

「はい、構わないですよ!」

「ええな、アークはんだけ。ウチも一緒にお邪魔したらあかんか?」

「いえ、是非来て下さい! みんな一緒の方がわたしも嬉しいですから! それでは案内しますので、わたしに付いて来て下さい!」



 そう言って張り切って家へと向かおうとしたテイニーだったのだが、早速レクに方向を修正されていた。

 ……テイニーの方向オンチは相変わらず健在か。

 一時期直りかけていたような気がしたんだけど、気のせいだったみたいだ……。



 こうしてレクに方向を修正されること数回。

 ようやくテイニーの家の前へと到着する。

 テイニーが鍵を開け、僕達はテイニーの家へとお邪魔する事になった。



「狭くてすいません……」

「そ、そやな……これは想像以上やわ……」



 テイニーの家は、一人暮らし用のサイズみたいで、家の中には部屋が一つあるだけ。

 正直みんなが入るだけで精一杯で、これじゃ自由に身動きもとれないよなぁ。



「そういえばテイニーはんはずっとここで一人で暮らしていたんか?」

「はい、そうです。とはいっても、わたしが15歳になってからの事ですから、そんなに住んでから長くはないんですけど」

「へえ、そうなんや。そういえばテイニーはんに家族っておるのかいな?」

「はい。両親がいますよ。今は両親とも恐らくドクトマリンにいると思います」

「ドクトマリンにいるって事は、もしかしてテイニーの両親って魔法使いなの?」

「そうなんです。訳あってレクレスに住む事になったわたし達なのですが、その時にレクに出会いまして。レクを従えたいわたしと両親の溝は埋まらず、わたしは一人この町に残された感じです」

「そ、それはひどいね……」



 魔法使いの両親ともなれば、娘には魔物使いになって欲しくないんだろう。

 魔法使いは魔物使いをだいぶ嫌っているだろうし。


 それにしてもテイニーが魔法使いの家系だったとは驚いたな。

 でも魔法使いの家系ならば、テイニーが魔力に優れるのもうなづける。



「この町であっしはテイニーと一緒に必死に生きてきたニャ。あっしもテイニーも日雇い仕事を何とかこなして、お金を稼ぎ、ギルド入会試験を受けてきたのニャ」

「はい。ギルド所属の魔物使いになれれば、できる仕事が増えます。安定した収入が得られると思ったんです。ですからわたしはどうしても魔物使いになりたかったんです!」

「そしてアークと受けた入門試験でようやくギルド所属の魔物使いになれたという訳だニャ。本当、アークには頭が上がらないのニャ」



 なるほど……。

 テイニー達、とても大変な思いをして生きてきたんだね。

 親の稼ぎで暮らしていた僕とは違い、魔物使いになるまでに自力で稼ぎ、何とか生きてきたのか。

 そりゃ、テイニーと旅している時、所々にたくましい所が見られる訳だ。



「そういえば、だいぶ生活が苦しかったみたいだけど、今もお金は大丈夫なの? 僕、テイニーとレクから多額のお金をもらっちゃったんだけど……」

「あっ、まだ大丈夫ですよ! 心配しないで下さい! ただ、そろそろ余裕がないので、稼ぎたい所ですけど……」

「そ、そうだニャ。あっしの残金はあと300Fといった所だニャ。実は結構ピンチなのニャ……」



 どうやら、テイニーとレクはそろそろ所持金に限界がきているらしい。

 こりゃ、ただ依頼を達成するのではなく、しっかりとお金を稼ぎにいかないといけないな。



「それじゃ、明日から早速どんどん依頼を受けていこう。討伐した魔物の剥ぎ取りもしっかりと行ってさ!」

「そやな。お金を稼ぐ事に関してはウチに任せてや。効率良く、魔物の素材を剥ぎ取るコツ、教えたるで!」

「アークさん、メルさん……すいません、気を使わせてしまって」

「いや、いいんだよ。むしろ僕の方こそ事情を知らなくてごめん。知っていたらもっと気を使えたかもしれないのに」

「えっ、いえ、むしろその方が良かったんです! わたし、アークさんに迷惑をすごく掛けていましたから! い、今もまだ迷惑をかけていますけど……。ですからそのお礼はしっかりとさせていただきたいんです!」

「そうだニャ。それに今のように色んな町を冒険するっていうのはアークがいなければできなかった事なんだニャ。それだけでもアークには結構感謝しているんだニャ?」



 なるほどね。

 確かに僕が初めてテイニーに出会った時は、テイニーは自力では試験を突破する事もできなかったし、レクしか使役していなかったから攻撃手段もなかった。

 それが今や、魔物使い兼魔法使いだもんなぁ。

 随分と変わったものだ。



 それからテイニー達と少し話してから、僕達はテイニーの家から出る事にした。

 僕や従魔達がテイニーの家に泊まろうとしたら、寝っ転がるスペースすらなくなってしまうからね。

 さすがにそれは僕も嫌だし、テイニー達にも迷惑をかけてしまうから避けた方が良いだろう。


 前に泊まっていた宿の所に行き、僕は宿を確保する。

 そして自分用の部屋に行って、ベッドでくつろいでいると。



「おい、アーク。本当にお前、有名人になったみたいだな」

「ん、どうしたの、ヴァルド?」

「ちょっと飛んできて、町の様子を見てきたんだよ。そしたらな、先程のベルサではもちろん、隣のティズの町でも噂になっていたぜ? こりゃ、このレクレスに情報が拡散するのも時間の問題だろうな」

「ふーん、そうなんだ……」



 噂が噂を呼ぶ。

 そんな状態になっているのかもしれないな、今は。


 あの戦いを直接見た者は、その様子を面と向かって語り、周囲の人に情報を広める。

 その様子を見て、周囲の人も信じるのだろう。

 そしてベルサの近くにあるティズではそのようにして情報が広まったという事か。


 ただ、連絡石という道具があるから、既にこの町、レクレスにも情報が広まっている可能性はある。

 もしかしたらあまりゆっくりはできないかもしれないな……。


 これからも旅を続けるつもりだし、あまり有名になり過ぎると旅に支障がでる可能性があるな。

 でもだからといって、大会に参加した時に手を抜いて中途半端な順位にとどめるなんて事もしたくないし。

 何か良い方法は……うん、あれを買ってみようか。

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