77.テイニー達は魔法を使いこなしているようです
「そういう事やけど、テイニーはん、どうする?」
「もちろんやります! ……あっ、でもそれだと町に着くまで時間かかっちゃいますよね」
「僕の事なら気にしなくてもいいよ、テイニー。僕もテイニー達がどう魔法を学んでいるのか気になるしさ」
「そ、そうですか? そうであればメルさん、是非その課題をやらせてもらっても良いでしょうか?」
「良い心意気やな。そんなら、早速エルフの生息地まで目指そか? ウチらは観察する事が目的やから、くれぐれも相手を刺激しないように気をつけるんやで?」
「はい、分かりました!」
こうしてメルが先導するような形で、僕達はエルフが生息する場所へと向かう。
それから数分歩くと、メルが立ち止まる。
「おったで、エルフ。それに見てみい。あの様子、木の実を取る気や。よーく見ておくんやで?」
メルが示す先には、上を見上げているエルフがいる。
少し待っているとある時、エルフは手を上にかざし、白い冷気を出す。
すると白い冷気から氷の柱が複数発生する。
そして、その柱が宙を飛ぶと、どさっといくつかの木の実が地面に落ちていた。
そんな木の実をエルフは拾うと、その場からそそくさと立ち去って行った。
「ほらな? ええもの見れたやろ?」
「本当ですね……。もしかしてあれがアイスニードルの原型なんですか?」
「そや。手のそばに冷気の入口を作る。そしてそこから氷の柱をいくつか出す。これがエルフの技なんや」
「なるほど。でも、それだとメルさんが使っているような複数の所から氷の柱が出るアイスニードルとは少々違う気が……」
「それはウチがアレンジしたからや。まあ、別にそのアレンジ自体は別に他の人でもできるほど、メジャーなものやけどな。なに、単に氷の入口を自分から離れた場所に複数作り出しているだけっちゅー事や。そんな難しく考える事ないで?」
なるほど。
魔物から技を学びつつも、それを自分流にアレンジするのか。
そうやって魔法使いは自分の力にしていくんだろうな。
どうしても魔法使いが使う魔法は、その学び元である魔物の技よりも威力は劣る。
だけど、その分、技の出し方を変えたりする事で、魔物の技に負けず劣らず使い勝手の良い技へと変えていくんだろうな、きっと。
「テイニーはん、さっきのエルフの技を見て、何となくアイスニードルの使い方は分かったか?」
「……いえ、全然分からないです。正直、魔法ってすごいなとしか思っていなかったです」
「まあ、初めはそんなもんやろな。何度も同じものを見て、少しずつコツをつかんでいく。それが魔法使いの醍醐味っちゅー訳や。一目見ただけで分かる奴なんて早々おらん――」
「メル、俺、できるかもしれない」
「……へっ!? な、なんやて!?」
リザの突然の分かった発言。
まさかそんな事を言われるとは思わなかったであろうメルはだいぶ動揺していた。
……リザの奴、本当に一目見ただけで分かってしまったのか?
「リザ、本当に分かったの?」
「ああ。試しにやってみてもいいか、テイニー?」
「は、はい……。安全な所であれば、やっても構わないですよ」
「なら、あそこでやる」
リザは近くにある少し開けた空間に向かう。
それからリザは目をつぶり、手をかざすと、リザの手の近くには冷気が集まってくる。
そして、冷気が集まってきたら、今度はそれが氷の柱となり、それがいくつか生み出された。
リザが目を見開くと、その柱は地面に向かって進み、地面に氷の柱が刺さった。
「メル、俺、できた?」
「まさか、信じられへん。ホンマに一回見ただけで理解しよったのか……」
「俺、できたのか。良かった」
リザはそう言うと、テイニーの近くまで戻っていった。
どうやらこの事はリザにとってはそんな大した事ではないらしい。
「すいません、リザ。もう一回見せてもらっても良いですか? もう少しでわたし、掴めそうな気がするんです」
「あっしからも頼むニャ! あっしも、もう少しで分かりそうな気がするんだニャ!」
「分かった。二人がそういうなら、もう一回やる」
それからはリザが使うアイスニードルを何度も見ては、自分も試してみる事を繰り返すテイニーとレク。
すると、少し経つと、テイニー達はアイスニードルを使えるようになっていた。
テイニー達、飲み込み早すぎだよね……。
「め、メルさん、できました!」
「……ほ、ホンマにできたみたいやな。正直信じられへんわ。何か野生の魔物から技を学ぶという趣旨からは思いっきり外れとるけど、結果オーライやし、まあええか!」
そういえば、当初はそういう目的で来たんだったね。
なのに、まさかのリザが一目見ただけで技を習得してしまったから、後はそれを見てテイニーとレクが学ぶ展開。
……まあ、リザがその野生の魔物から技を学ぶ事に成功しているし、テイニー達はそのリザから学べばいいんじゃないかな、うん。
ちなみにテイニー達三人が技を使えるようになってからも、技の練習はしていた。
途中で襲ってくるアルラウネやマンドラゴラも相手に戦っていても苦になっていないようだ。
テイニー達、本当に強くなったな。
そしてテイニーは相変わらずの高火力の魔法で魔物をなぎ払い、レクは素早く色んな場所から発動させる魔法で相手を惑わす。
リザは飲み込みの速さから、森の様々な魔物の技を習得していくのだった。
三人とも、もうすっかり魔法を自分の物にしているようだね。
テイニー達が魔法修行しているうちに、僕達は森から出た。
さて、もうすぐでレクレスに着きそうだな。
「そういえば、ここでヴァルドさんがグリフォンを持って来たんですよね、アークさん?」
「うん、確かにそうだったね。そういえばヴァルド、あのグリフォンって、港町ティズの北側の森から狩ってきたの?」
「ああ、そうだ。ちょっとばかし山を越えていけば、あそこまでは数分でたどり着くからな。まあ帰りはグリフォンがダメにならないようにゆっくり飛ぶ必要があったが」
そ、そうなんだ……。
あそこまで数分、ね。
歩いて行くと丸一日はかかるであろう、その距離を数分で移動できてしまうとは、やはり空を飛んで移動するって早いんだな。
父のフレーズヴェルグに乗った時もだいぶ移動は早かったし。
僕もホクで空が飛べたら良いんだけどな……。
僕はホクをじっと見る。
するとホクは首をかしげて、僕の方をみつめ返してきた。
「どうしたの、アーク?」
「いや、別になんでもないよ」
「そうなのかい? 明らかに何かアタイに言いたい感じだったけど。別に何言ってもアタイは怒らないから話してみてよ」
「そうだね……それじゃ、話すけど。ホクって僕を乗せて飛べたりしないよね?」
「そっ、そりゃ、当たり前だよアーク! いくらウチが強くなっても、さすがに自分の体より大きなアークを運んで飛ぶなんて事はできないよ!?」
「そうだよねー。うん、言ってみただけだよ、気にしないで」
ホクの言う通り、ホクの体は小さい。
具体的に言えば、僕の肩に乗れる程のサイズしかないのだ。
そんなホクに乗って空を飛ぶなんて、現実味がなさ過ぎるだろう。
ホクに上位種族を合成して、ホクの体がだいぶ大きくなったら、ようやく空の旅が視野に入るかもって所だろうな。
「ホクさんに乗って、空の旅ですか……。わたしも空の旅、してみたいです」
「ウチもや。大空を飛んで移動するって、何だかとってもロマンがあるやろ! 一度、ウチもそんな体験してみたいわぁ」
テイニーとメルもそう言ってうっとりとした表情をしている。
やはり空を一度飛んでみたいというのは誰も同じか。
まあ、それはそうだよね。
もしホクが父さんのヴェル並のサイズになったら、みんな一緒に空の旅でもしてみたいものだ。




