74.Aランク魔物使いがやって来たようです
それからゴンはひたすら勉強していた。
内容が難しすぎるからか、僕は同じような内容をゴンから何度も聞かれる事になる。
それでもゴンは理解出来るようになるまで諦めなかった。
ちなみにラスは途中で飽きたのか、勉強を諦め、部屋のあちこちをせわしなく動いていた。
どうやらラスは勉強が苦手なようだ。
いや、こんな難しい内容を学ぼうとするゴンの方が異常なのかもしれないけど。
だって人間でも理解出来る人はそんなに多くないような内容なのだから。
ゴンは一通り僕から学んだ後は、自分で専門書を開いて読もうとしていた。
ただ相変わらず少し経たないうちに首をかしげていたり、途中でうとうとしてしまう事もあったが。
……まあ、自分のペースで好きなようにやらしてあげた方が良いだろうな。
そういえば、ヴァルドに聞いた所、ゴンにはカリスマ力が3ほどあるらしい。
魔物にもカリスマ力があるものかと驚いたけど、別に魔物にカリスマ力がある事はそこまで不思議な事ではないのだとか。
意味ない数値だからあまり気にした事はなかったとヴァルドは言っていたが。
僕は自分でも本を読みつつ、時々ゴンに教えながら、今日はゆっくり過ごした。
途中でホクとウルが帰ってきて、二人がゴンのしている事に興味を持ったのだが、そんなに経たないうちに諦めていた。
やはり難し過ぎるんだろうな、内容が。
そしてある程度読書をした所で、一定の区切りをつけ、僕は睡眠をとり、翌朝を迎える。
さて、今日は外に出て、本屋めぐりでもしますか。
ホクとウルはテイニーと共に外に出て、修行に行ったようだ。
僕はラスとゴンを連れて、町の本屋へと向かう。
この町に本屋は二ヶ所あるので、その二ヶ所の本屋をめぐって、呪いに関する本がないか探した。
だが、やはりこの町にも手がかりになるような本はなかったようだ。
実に残念。
だけど、機械仕掛けの町だけあって、機械に関する本は豊富に取り揃えていた。
僕はそんな本を少し読んで、興味の持った本を宿屋に戻った時に読む用に購入しておく。
そして本屋を出てから僕は、町を少し歩き回って観光する事にした。
せっかくベルサの町に来たんだから、町を楽しまないと損だよね。
ベルサの町の至る所にある機械に目を奪われつつ、観光を楽しむ僕達。
するとそんなある時の事。
「おい、あっちの方に有名な魔物使い様がいるらしいぞ!」
「えっ、どんな奴なんだ!?」
「えっと何だっけ……と、とにかくすげえ奴だよ! サラマンダーを連れた!」
「ああ、あいつか! それはすげえな! そいつが町に来ているっていうのか! えっと名前は……」
「とにかくそんな事はいいから見に行こうぜ! 滅多に見れないぞ!」
町の人がそう言ってどこかへと走っていく姿が見える。
Aランク魔物であるサラマンダーを連れた魔物使い……。
しかも有名人といえば、恐らくAランク魔物使いボルージの事を言っていたんだろう。
ボルージは僕の父さんと並ぶ程の数少ない実力者のうちの一人だ。
とても正義感があり、なおかつ親しみやすいという事で有名なのだとか。
是非、僕も一度お目にかかってみたいものだ。
「ラス、ゴン、ちょっと野次馬しに行ってもいい? 一目見てみたい人がいるんだ」
僕がそういうと、こくんと了承するラスとゴン。
という事で、早速町の人が向かった方向に行ってみる事に。
しばらく進んでいくと、町にはすごい人だかりができていた。
道には溢れんばかりの人がいて、その道を少し移動するだけでも一苦労だ。
人混みをかきわけつつ、何とか良さそうな位置までたどり着く。
それからしばらく待っていると。
「……おっ、来たぞ! ボルージ様だ!」
町の人がそう叫んでいる声が聞こえる。
それから間もなく、僕にもその姿を確認する事ができた。
全身フェニックスの素材でできた淡紅の鎧に包まれ、長い赤髪が風になびくボルージ。
まさしく好青年といったような見た目をしているように見えるね。
そして彼の周囲にはAランク魔物のサラマンダー、フェニックスがいる。
さすがはトップクラスの魔物使いだけあって、従える魔物には貫禄みたいなものがある。
彼は彼を一目見ようと集まってきた町の人々に対して、ウインクをしたり、手を振ったりしていた。
そんな彼を興味津々で見つめるラス。
一方でふてくされたように不機嫌なゴン。
何かが気に食わないんだろうか?
そして彼が町を凱旋し、僕の近くまで来た所で、僕と目が合う。
すると――
「おお、君はオレと同じ魔物使いのようだな!」
そうボルージが言うと、僕の方に近付いてくる。
僕の周囲にいた人達は、彼の邪魔にならないようにと、僕の周囲から距離を置く。
まさかボルージに話しかけられる展開になるなんて思わなかった。
そういえば、この町には魔物使いの人の姿がそこまでみられないので、魔物を連れているだけでも目立つのかもしれない。
「あっ、はい、そうです」
「名は何というんだ? オレはボルージ。ちょっと観光がてら、この町に寄ってみたのさ」
「僕はアークと言います。よろしくお願いします」
「アーク……なんかどこかで名前を聞いた事があるな。あっ、そういえばサイガルの息子の名前と同じだな!」
「あっ、はい。サイガルは僕の父親です」
僕の言葉を聞き、ボルージは目を見開いて驚く素振りを見せる。
この人、なかなかオーバーリアクションをする人だな……。
とても感情が顔に表れていて分かりやすいというか、何ていうか。
「おおおっ! そうか! お前さんがアークか! いやぁ、サイガルがとても嬉しそうな顔をして話すんだよ! とても強くなっていて嬉しかったって言ってたな!」
「そ、そうなんですか。父さん、結構僕の事を喋っているんだな……」
寡黙に見える父さんではあったが、意外と僕の事を話しているみたいだ。
まさか、ラス達が喋れる事も話していないよね?
あまり知れ渡るとよろしくないんだけど。
「それだけお前さんの事を期待しているって事さ! 今度会う時にはお前さんに勝てるかどうか分からないとか言っていたしな! お前さん、一体どんだけ強いんだ? 見た所、スライムとゴブリンがいるようだが?」
僕の周囲を見渡して、ラスとゴンしかいない事に疑問を抱くボルージ。
まあ、魔物の中でも相当弱い方に入るスライムとゴブリンしか連れていないのは不自然だよね。
その様子から見ると、あまりラス達の事を詳しく父さんは話している訳ではなさそうだ。
「他にもホークとウルフがいるんですが、ちょっと他の仲間に預けていまして」
「なるほどな。さすがにこの二匹じゃ、ここまで来れないだろうしな。納得がいったぞ! ガハハ!」
きっとボルージは僕がDランク魔物のウルフを従えていると聞いて、ウルフを主力にここまで旅してきたと思ったんだろう。
まあ普通はそういう発想にもなるよな。
無理もない。
そして自分の事を軽んじられていると見たのか、ゴンは一歩前へ出て、ギロリとボルージの事をにらむ。
おいおい、ゴン、そんなケンカ腰になるなって!
「ゴン、気持ちは分かるけど、ちょっと失礼だよ!?」
「おやおや、まるで自分の事を馬鹿にされて怒っているみたいだな、君のゴブリンは。……強いのかい?」
「はい、とても頼りになる存在です。いつもは冷静なのですが、何か気に障る事があったみたいで……何かすいません」
「いやいや、いいんだよ。それより、君のゴブリンの実力、気になるな。サイガルは君の魔物をとても個性的で面白いと言っていたしさ。……どうだい? ちょっとオレの魔物と手合わせをしてみないか?」
「えっ……でも……」
まさかの、いきなり模擬戦する展開だって!?
いや、これってちょっと困るんじゃないかな……。
だってこんなに町の人の目があるような所で派手にやったら……。
僕はゴンの方を見る。
だが、ゴンは闘志に燃えていて、今にも飛び出していきそうな勢いである。
……これはやるしかないだろうな。
それにゴンの気持ちを察するに、手加減してゴンが普通のゴブリンらしく無残にやられるという展開もできそうにない。
ゴンは本気で戦いたがっている。
これは、相当目立つ事は避けられないだろうな……。




