71.ベルサの町に入ってみました
ベルサの町の中を歩いていく僕達。
ベルサの町は、機械仕掛けの町と言われるだけの事があって、そこら中に見た事のないものがたくさんあった。
金属でできた箱が動いていたり、所々に謎の暗い箱みたいなものがあったりした。
「この箱、何でしょう?」
「これは電話ボックスというものや。中に入っている緑色の機械は通信石と同様の役割を果たしてくれる便利なものやで。まあ、この町の住民相手にしか使えないけどな」
「そうなのですか……何かとても不思議な感じがするものですね」
「そやな。ウチも初めて見た時は戸惑ったけど、でも使い方が分かると便利やで! ほら、こんな感じでな!」
メルはそう言うと、暗い箱にある扉のようなものを開け、その中にある緑色の機械らしきものを操作していた。
そしてしばらくすると。
「……あっ、ウチや、メルやで。同行者二人やから三部屋一泊分確保したいんやけど、空いとるか? ……うん、それは良かったわ。それじゃ今からそちらに行くから、よろしゅうな!」
そう言ってメルは緑色の機械の操作をやめ、僕達の方へと向き直した。
「なっ? これで今日の宿は確保できたっちゅー訳や。とても便利やろ?」
なるほど、確かに便利だ。
まあ連絡石があれば良いような気もするけど、これも決して悪くはないものなんだろう。
……ガゥゥ!
「ウル、焦る気持ちは分かるけど、ちょっと待ってて。一旦宿屋に荷物置かないといけないからさ」
ウルは早く西側の草原に行きたくてうずうずしているようだ。
こりゃもたもたしていられないな。
僕達はメルについていって、先程メルが連絡をとった宿屋まで向かう事にした。
宿屋へと着いた僕達。
受付を済ませて、上の階へと上がろうとするのだが。
「……あれっ? 階段がない?」
そう、階段がないのだ。
辺りを見渡しても、階段らしきものは一切なく、ただあるのは奇妙な金属でできた閉じた扉だけ。
「アークはん、これを使って上へと行くんや。見てみい?」
メルは閉じた扉の近くにあるボタンらしきものを押すと、そのボタンが光る。
そしてしばらくすると、閉じていた扉が自動的に開いた。
「さあ、これに乗るで。これでウチらが目指す三階まで行けるからな」
メルはそう言うと、3と書かれたボタンを押し、扉が閉まる。
しばらく待っていると再び扉が開き、扉の先には先程とは別の光景が広がっていた。
「えっ? もしかしてもう三階に着いたの?」
「そういう事や。これは自動昇降機と言って、上り下りを機械が自動的にやってくれる優れものなんや。これがあれば階段いらずなんやで! まあ一応この宿には階段も用意はされておるんやけどな」
な、なるほど……。
確かに上り下りをしなくても良いというのは随分と便利だよなぁ。
それに代わる何かは見た事がないし。
さすがは機械仕掛けの町だ。
色々と変わった物があるものだな……。
僕達はそれからそれぞれの部屋へと入り、重い荷物を置いていく。
小さなリュックだけを持って、宿屋の外へと出た。
本来なら初めて町に来たら本屋に行く事にしているのだが、あまりにウルフが西側の草原に行きたがるので、先にそちらへ向かう事に。
ヴァルドも別に後で構わないと言ってくれているしさ。
という事で、僕達は町を西門から出て、草原まで移動した。
「うーん、爽やかな風が気持ちええな。この草原にウルフがいるんやったっけか」
「うん、そのはずだよ。ウルフとグレートウルフの生息地になっている。ウルを強化する為にはウルフを探さないとね」
「そういえばアークさん、いきなりグレートウルフを合成はしないんですか? アークさんの陣ならば、それでも問題ないように思えますけど」
「そうだね……。確かにそうかもしれない。だけどいくら同系統の魔物とはいっても、やはり異種の魔物との合成は体に負担がかかるんだ。それにもしヴァルドの考えが正しければ、合成をたくさん受ければ受けるほど、合成の時にかかる体への負荷に対する耐性ができる。なら、まずは同種との合成で合成に慣れさせるべきだと思うんだ」
ラスやゴンなど、今の僕の従魔達を合成するとき、今までよりも一層体が安定しており、全然不安定になっていないとヴァルドが言っていた。
その事からして、きっと魔物には合成に順応する力が備わっているとも言える気がするんだ。
だけど、その力は急にではなく、ゆっくりと身についていくもの。
ならば、やはり今まで通り、負担の少ない合成を繰り返す方法をとるべきだろう。
合成の失敗は一度も許されないのだから。
「それに僕は合成を失敗できない。より失敗しない方法をとるに越したことはないと思っているよ」
「……確かにそうですね。わたし、合成によって魔物さんがおかしくなった瞬間は見た事がないですけれど、でも想像しただけでそうなってしまうのは恐ろしいです」
「そやな。そんな場面を見ても、誰も得しないやろ」
「そういう事。だから着実に、同種から合成していく事にするよ」
グレートウルフがいても、いきなりグレートウルフを合成対象とはしない。
必ずウルにはウルフの合成から始める。
合成回数が相当多くなって、体が合成に慣れ始めたら、上位種族との合成を考えてもいいかもしれないな。
「あっ、アークさん、あそこにいるのはウルフじゃないですか!?」
テイニーが指さした先には、確かに灰色の毛並みを持つ獣、ウルフの姿があった。
どうやらウルフは集団になっているようで、五体ほどが一緒に行動しているようだ。
さて、これからどうするべきか。
まずは連携を断ち切る必要がありそうだな。
「レク、すまないけど、ウルフの連携を崩す技をお願いしても良いかな? 五体だけならまだしも、さらに周りにいるウルフを呼ばれたら面倒だからさ」
「うむ、分かったのニャ。任せると良いニャ!」
「ありがとう、レク。それじゃウル、いくよ! ラスはサポートをお願い!」
ガゥ!
「うん、わかったー」
レクが技を使ったのを確認してから、僕達は一気に攻めた。
ウルは混乱しているウルフに対して不意打ち攻撃。
呆気なくウルフの一体が倒れる。
近くにいた一体のウルフがそれに気付き、ウルに攻撃しようとするも、ラスが立ち塞がって、攻撃を許さない。
ラスに意識が集中しているうちに、ウルがそのウルフを素早く仕留める。
他の三頭のウルフの処理もそのまま順調にいって、その三体は合成するのにちょうど良い位に弱らせる事に成功した。
そのウルフに対してはラスが分体を使って身動きを封じている。
「さて、ウル。これから君に合成しようと思うんだけど、覚悟は良いかい?」
ウルは僕の言葉を聞き、嬉しそうにこくんとうなづいた。
ウルには合成の危険性なんて知ったこっちゃなく、ただ強くなりたいという思いがあるようだ。
そんなんで大丈夫だろうかと不安になるけど、そこは僕がしっかりすれば良い話だな、うん。
それじゃ早速、合成を始めようか。




