70.テイニー達の魔法にはそれぞれ特徴があるようです
「あっ、スレイプニルだ」
Dランク魔物であるスレイプニルと僕達は遭遇した。
スレイプニルは僕達の方をじっと見て、今にも襲い掛かってきそうな雰囲気だ。
「アークさん、ここはわたし達に任せてもらえませんか!?」
「あっ、うん、いいけど、大丈夫?」
「もちろんです! わたし達の努力の成果、とくとご覧下さい!」
テイニーはそう言って、前線に立つ。
そしてリザとレクもテイニーと共に、スレイプニルに近寄る。
どうやらテイニー達は学んだ魔法を早速使ってみようという所なんだろう。
まあ相手はリザ一人でも倒せそうなDランク魔物だし、ちょうど良いか。
ここはゆっくりと見物といこう。
「ふふふ……あっしの攻撃を食らうがいいニャ! 燃えよ、ファイアだニャ!」
レクはそう言って、右手をスレイプニルに向ける。
すると手から小さな火の玉が現れ、それがスレイプニルにゆっくりと向かって当たった。
ブルルルル!
「ぜ、全然効いてないニャー!?」
レクの小さな火の玉ではスレイプニルをただ怒らせるだけだったようだ。
怒ったスレイプニルはレクの方めがけて突進してくる!
「レク、俺が守る」
突進してくるスレイプニルをリザが押さえつけ、レクは難を逃れた。
「た、助かったニャ、リザ」
「……俺が抑える。二人は攻撃してくれ」
「わ、分かったニャ」
「ま、任せて下さい!」
レクの魔法は発動はするものの、威力が弱すぎてスレイプニルに全く効いていない。
テイニーの魔法はそもそも発動すらしていない。
このままだとリザも限界が来るのでは――
「テイニー、焦らずにゆっくり想像するんや! イメージや! 炎が燃えるようなイメージを持つんやで!」
「イメージ……イメージ……」
テイニーは目をつぶって、精神を集中させているようだ。
すると、テイニーの右手には膨大な火の玉が現れて――
「今や、テイニー!」
「燃えよ、ファイア!」
テイニーから放たれた巨大な火の玉がスレイプニルに直撃する!
するとスレイプニルは吹き飛ばされ、その場で動かなくなった!
「……す、すごいニャ。テイニー、魔物を倒したニャ!」
「お、驚いたよ……。まさかテイニーが魔物、それもDランク魔物を一撃で倒してしまうなんて……」
「わ、わたし……やったんですか? 本当に?」
「ああ、間違いないで! ウチはしっかり見とった。テイニーはんが自身の力で魔物を倒したのをな!」
テイニーは倒れたスレイプニルと自分の手を交互に見る。
どうやら、自分が魔法を使って、魔物に打ち勝ったという事実が信じられていないようだ。
それにしても、先程のファイアの威力、すごかったな……。
あれって普通のファイアなのか?
レクのファイアとは雲泥の差過ぎて、とても同じ技とは思えないんだけど……。
「……何あっしの事をじっと見ているんだニャ? アーク?」
「い、いや、何でもないよ」
「きっとテイニーのファイアに比べて、あっしのファイアが弱すぎると言いたいんだニャ? ふん、どうせあっしは弱いニャ!」
そう言うとぷいっとそっぽを向くレク。
やっぱりテイニーと同じ技を使って、技の威力が余りにも違うから、嫌になっちゃうんだろうなぁ。
「レクはんは少し焦り過ぎやな。別に魔法の使い方は間違ってはいないけど、だいぶ省略しとるやろ?」
「そうだ。魔法の詠唱、大事。省略するのは、ダメ」
「むむむ……だって長いのは面倒なんだニャ! 大事な所だけ抑えれば発動は十分できるし、良くないかニャ!?」
「確かに発動はできとるし、レクはんの言う事も一理あるかもしれないな。せやけど、より良い魔法を使うにはもうちょっと頑張らなあかん。まあレクはんの魔法の発動の速さも十分武器になる。あともうちょい精度を上げれば十分戦えると思うで?」
「そ、そうかニャ? ……そ、そういう事なら、もうちょっと頑張ってみるニャ」
レクはどうやら自分の良さを指摘してもらった事で、落ち着きを取り戻したようだ。
確かにメルの言う通り、威力は弱いものの、レクのどの魔法も発動自体はしている。
しかもその一つの魔法までにかかる時間がだいぶ短い。
その精度が良くなって、一つの魔法がそこそこの威力になるだけでも、だいぶ頼りになる事だろうな。
テイニーが強力な一撃で攻めるパワータイプだとすれば、レクは手数で責めるテクニックタイプといった所だろう。
色々と知恵の回るレクらしい戦術に魔法をうまく組み込めたら相当強くなりそうな気もするね。
スレイプニルを倒した事で、再び先に進む僕達。
それからこちらへ襲ってくる魔物は、全てテイニー達が処理してくれていた。
テイニーは発動は遅いが、威力に優れるパワー系。
レクは発動は速いが、威力に乏しいテクニック系。
リザは発動も威力も平均的なバランス系といった所か。
それぞれ場数を踏むにつれ、魔法を使うのに慣れてきたのか、短所も目立たなくなりつつある。
特にテイニーは目をつぶらなくても魔法を放てるようになったので、だいぶ進歩をしている事が分かるね。
さて、そんなこんなしているうちに、次の町、機械仕掛けの町ベルサが見えてきたようだ。
「あっ、あれがもしかしてベルサじゃないかな?」
「おっ、そのようやな。テイニーはん達が頑張ってくれたおかげで、あっという間にたどり着けたわ」
「と、とんでもないです。でも、役立てたのなら、何よりです」
「ありがとう、テイニー助かったよ。……って、あっ、ウル! そんなに急いで突っ走らないでよ!?」
ウルは町の方へと走っていこうとする。
本当に待ちきれないんだな、ウルは……。
放っておく訳にもいかないので、僕はウルを追いかける事にした。
ベルサの門番の人にチェックを受けてから、僕達は町の中に入っていく。
ベルサの門は金属でできた頑丈なもので、僕達を通す許可が下りると、その門がギシギシと音を立てながら自動的に開いていった……!?
その門について疑問に思った僕は門番の人に聞いてみる事にした。
「す、すごい門ですね……。これ、誰かが頑張って開けているんですか?」
「いや、まさかそんな事はしないさ。この門は電気というエネルギーを使って開けているんだ。別に誰かが直接力を使って門の開閉をしている訳ではないよ」
なるほど、電気か。
そういえば本で読んだ事はある。
機械仕掛けの町ベルサには、機械を動かす為のエネルギー、電気が存在するって。
電気を使った色々な道具もあるみたいだから、そういうものもちょっと見てみたいんだよね。
正直そういうものがあるのなら、他の町でも使えればいいんだけど、電気が切れたら使えないから、他の町では道具があっても意味ないんだとか。
うーん、ちょっと惜しいよね。
とりあえず、町の中に入ってみるとしますか。




