66.防具はもう完成していたようです
僕達は西門から出て、町の外へと出た。
そして人目につかなそうな場所まで移動した所で立ち止まる。
「……この辺りまで来れば大丈夫やろ。さて、存分に練習するとしよか!」
「はい、お願いします、メルさん!」
こうしてテイニー達の魔法実践訓練が始まった。
どうやら最初のお題はファイアらしい。
ちなみにファイアはエルフに由来する魔法である。
以前戦ったエルフが炎魔法を使ってこなかったのは戦いの場が森の中だったからだろう。
洞窟とか、炎の技を使っても支障がない所では遠慮なく放ってくるのだとか。
メルがまずはお手本を見せ、それからテイニー達が見よう見まねでファイアを放とうとする。
だが、なかなか上手くいかないようだ。
「……ううっ、やっぱり難しいです、魔法は」
「最初からできる人なんてそうそうおらへんよ。安心するんや。ファイアを撃つコツは、放つ場所に対してエネルギーを集める意識をする事や。そしてその塊を放出する。そういうイメージができると良いと思うで」
「イメージですか。……とりあえず、やってみます!」
メルのアドバイスを受けながら、テイニー達はひたすら魔法の特訓に励む。
すると、少しずつではあるが、ファイアを使える兆しは見えてきた。
何といっても、手から煙が出たり、ちょっとした赤い塊みたいなものが出現し始めているのだから。
そして一時間ほど経った頃……。
「……おっ、リザはん、ファイア出来たんちゃうか!?」
「できた、のか? テイニー、俺、ファイア出来た」
「ほ、本当ですか!? わ、わたしにも見せて下さい!」
リザは再びファイアの詠唱を始める。
そして詠唱が終わった瞬間。
……ボッ!
「す、すごいです、リザ! 本当にファイア出来てますよ!」
「り、リザだけずるいニャ! あっしにもそのファイアのコツを教えるんだニャ!」
「こ、コツ……? 俺、よく分かってない。けど、出来た」
リザにはまだファイアを使えている実感が伴っていないみたいだ。
やはり、テイニーパーティの中ではリザが一番早く習得できたか。
地図にしろ、何かしらの理解力はリザが一番優れていそうだったからなぁ。
「わ、わたしも負けていられません! すぐに出来るようになってみせるんですから!」
「あ、あっしも負けないニャ! どちらが次に使えるようになるか勝負だニャ、テイニー!」
「も、もちろんです! わたし、負けないんですからっ!」
どうやらテイニーとレクは次にファイアを使えるようになるのか勝負をするようだ。
果たして、どちらが勝つんだろうか……。
テイニーとレクはそれからもひたすら頑張っていた。
二人とも、赤いエネルギー的な何かは出せるようになっていたのだが、それが炎として具現化させるまでには至らない。
そんなこんなで、いつの間にか、もう日が暮れようとしていた。
「アークさん、すいません。わたし、もう少し頑張りたいんです。先に部屋に戻ってもらっていてもいいですか?」
「あっ……うん。頑張るのは良いけど、でもほどほどにね?」
「もちろんです! 心配しないで下さい!」
うーん、テイニーって頑張り過ぎるから、心配になるんだよなぁ。
頑張り過ぎて日が昇っていましたとか、本当になってしまいそうでちょっと怖い。
まあ、さすがにその前までには戻って来るか。
とりあえず、僕達は先に宿屋で休んでいるとしようかな。
僕は従魔を連れて、宿屋の自分の部屋へと戻り、自分の部屋へと戻る。
そして翌日。
「ふぁぁあ、アークはん、おはようさん」
「おはよう、メル。あれ、随分と眠そうだね?」
「そりゃ夜明けまで付き合わされたらこうもなるわ。ウチは外で寝袋持っていって、時々眠りについていたからまだマシやけど」
「そ、そうなんだ……。テイニー達はまさか今も!?」
「いや、さすがにもう寝たで。日が昇り始めた位の時に、ウチは一旦起こされて、宿屋に戻ろうとテイニーはんに言われたもんでな」
まさか本当に夜明けまで特訓を続けるとは……。
テイニー達、恐るべし。
「それだったらメルはまだ部屋でゆっくりしていった方がいいんじゃないの? そろそろ出発はしたい所だけど、この様子だと早くて明日の方が良いだろうし」
「せやな。そうさせてもらうわ。すまへんな、アークはん」
「いや、良いんだよ。しっかり体を休めてきてね」
メルはそれから上の階へと上がっていった。
恐らく自分の部屋に戻って、もう一眠りといった所だろう。
さて、そろそろ昼頃になるし、防具も出来ているかな?
さすがに早すぎるし、あまり期待をし過ぎるのはいけないけど、一応防具屋を訪ねてみようか。
僕は宿屋を出て、防具屋を訪れる。
すると、中に入って早々、防具屋の主人が話しかけてきた。
「おう、随分と遅かったじゃねえか」
「えっ……まさか本当に出来たんですか、防具!?」
「当ったり前よ! お前さんが渡してきたスライムの素材の質が良いおかげで、防具の形も作りやすかったし、時間に余裕が出来た位だ! その時間を使って、少し質を高めておいたぜ! ほら、これが頼まれたものだ!」
防具屋の主人がそう言ってカウンター越しから僕に青い防具を渡してくる。
それを受け取る僕。
その防具は頑丈そうな見た目に反して、すごく軽いものだった。
「随分と軽いんですね、これ」
「その防具はそれが売りだからな! まあ、特にスライム素材のおかげでより効率の良い形を細かく調整する事ができたから、普通のそれよりもかなり性能は良いはずだぜ!」
「そ、そうなんですか……ありがとうございます」
「それはそうと、早速装着してみないか? 魔物使いさんなら、今着ている服よりもその防具の方がきっと似合うぜ?」
まあ確かにそうなのかもしれない。
魔物使いは外に出て魔物と対峙する危険な場面に立ち会う事が多いので、自身の防具に気を付ける人は多い。
だからこそ、防御力に優れる魔物の素材を使った防具を身につける人がほとんどなのだ。
魔物使いでありながら、一般人と大差ない服を着ていた僕やテイニーが特殊だといってもいい。
この防具は、見た目からしても、自分が魔物使いだと証明するようなものだ。
あまり重要視はしていなかったけど、先程戦ったグリフォンの時に命の危険を感じた事もあって、今ではその重要性を身に染みて感じている。
この防具を使って万が一の時に備えるのはもちろん、自分自身の観察眼も養わなくては。
「ありがとうございます、早速装着してみます」
「それなら、あそこが試着スペースになっているから、そこで着替えると良いぞ」
僕は早速、試着スペースにて、防具を装着した。
装着し終わってから、動きの感触を確かめる。
……ちょっとだけ硬い感じがするけれど、でも普段着とほとんど変わらない感じで動く事はできそうだ。
これなら常に装着していても問題なさそうだな。
僕は防具屋の主人にお礼を言って、店を出た。
さて、今日は特にする事もなさそうだし、どうしたものかな。
僕が町を適当に町を歩いていると、ホクが僕の肩に乗ってきて、じっとこちらを見てきた。
そ、そんなに至近距離で見られると怖いんですけど。
どうやらホクには何かしたい事があるらしい。
僕はホクが向いている方向に向かう事にした。




