65.防具は一日でできてしまうようです
「ラス、栄養も十分とったし、いけそう?」
「うん、だいじょうぶだよー。そういえばあくあすらいむのねんえきってどういうものなのー?」
……えっ?
ラス、もしかして分かってなかったの?
というか、分かってないのにできるって言っていたのか、ラスは……。
「そうだね、アクアスライムの粘液っていうのは、アクアスライムの体液っていった所かな。スライムを倒した時に手に入る、まあ本体みたいなものだよね」
「なるほどー。なら、ちのうとかはひつようなさそうだねー。からだのせいぶんだけをつくればいいかなー?」
「うん、それで十分だと思うよ。できるかい?」
「らくしょーだよー。ちょっとまっててねー」
ラスはそう言うと、体から水色をした分体を作り出した。
それを繰り返すこと十回。
どうやらもう用意ができたみたいだ。
「できたよーあーく」
「ありがとう。これがアクアスライムの粘液で間違いないんだね?」
「ねんえきがよくわからないけど、あくあすらいむのものでまちがいないはずだよー」
確かに見た目は半透明の水色の物質で、アクアスライムの素材そのものである。
ちなみにヴァルドにも聞いてみたのだが、アクアスライムの物で間違いないという。
なら、これで必要な素材は全て揃ったみたいだな。
ラスにお礼を言って、みんながスイーツを食べきったのを待ってから、僕はギルドで待つシェルザルの所に向かった。
「……おっ、アーク。意外と早かったな!」
ギルドの中で腰かけて待っていたシェルザルは、僕を見つけると立ち上がって話しかけてきた。
「ごめん、だいぶ待たせてしまって」
「良いって事よ! それじゃ、早速防具屋に行くとするか!」
「うん、よろしく頼むよ」
ギルドから出て、町をシェルザルと共に歩いていく。
すると、とある建物の前でシェルザルは立ち止まった。
「着いたぜ、ここが防具屋だ」
「えっ? でも看板がないんだけど?」
「そうだな。常にここにいる訳でもないし、看板を出すほど活動もしてはいねえ。だが、その腕は一流だから、知る人ぞ知る、まさに隠れた名店っていう所なんだよな!」
ふーん、なるほど、隠れた名店か。
さすがはシェルザルも自信を持って紹介するような防具屋といった所か。
「……でも、今日はやっているんだよね? 来たは良いけど、やっていなかったじゃ話にならないからね?」
「当然だろ? ちゃんとアポもとってある。俺の自慢の後輩がしばらくしたら訪ねて来るからよろしくってな!」
ガハハと笑うシェルザル。
おいおい、僕の事をもうすっかり後輩扱いか、シェルザルは。
こちらはまだそうと決めた訳ではないんだけどなぁ、うん。
「そういえばアーク、金は持っているか? 俺、金に余裕はねえから、防具代は自分で何とかしてほしいんだが」
「あっ、うん。それはもちろん。そういえばシェルザルはギルド本部にお金を送っているんだったっけ?」
「そうだ。だけど、ちょっと今月分がまだ持って行けてねえから、きっとジェス達困っているだろうな……あいつら、辛くても言葉には出さずに結構無理するから」
「そうだろうね。僕が出会った時、手持ちが1000Fしかないとか言っていたし、だいぶ厳しそうだったよ」
「なにっ!? たった1000Fだと!? こりゃもたもたしていられねえ! アーク、すまないが今から首都デコラーダに向かってくる。防具屋の主人と話はつけてあるから、後はよろしくな!」
そう言うとシェルザルは全速力で町の西門の方へと走っていった……。
というか、今まで気付いていなかったのか、シェルザル。
連絡石で定期的に連絡をとっていたから、その事情は分かっていたとは思っていたんだけど。
まあ、もしかするとジェスが今の手持ち金額について伝えずに我慢していたのかもしれない。
シェルザルに心配させまいとジェスが気を遣っていた可能性も十分あり得るだろう。
……さて、僕は僕のやるべき事をしないとね。
早速防具屋の中に入ってみますか。
僕は防具屋の扉を開き、中へと入っていく。
中には数多くの防具の模型や盾が展示されていて、いかにも防具屋って感じのラインナップである。
そしてそんな防具を眺めていると。
「来たか、客人」
声をかけてきたのは、身長が2メートル弱もあり、体もがっしりとした大柄の男だった。
緑色の防具に包まれており、その体格も合わさって、まさに鉄壁の守備を連想させる風貌をしている。
「あっ、はい。シェルザルさんの紹介で訪ねさせて頂きました」
「うむ。話は聞いている。確かアクアメイルズの装備を希望しているようだな」
「はい。材料は揃えてきました。こちらがそうです」
僕は店の奥にあるカウンタースペースに、手持ちの素材を出していった。
すると防具屋の主人は。
「……うむ、どれも及第点といった所だろう。これなら十分作れそうだ」
「本当ですか!? ありがとうございます!」
「だが気になるのは、このアクアスライムの粘液は何だ? とても純度が高いように見受けられるが?」
「え、えっと……それではまずかったでしょうか?」
「いや、とんでもねえ。むしろ上質だと言いたいんだ。作る上で支障は全くねえよ」
「そ、それは良かったです……」
正直アクアスライムの粘液だけは、ラスが再現をしてくれたものだから、本当に大丈夫かヒヤヒヤした。
でもこの様子だと問題なさそうで良かった。
僕はその後お代を払い、そして明日の朝に防具を受け取る事になった。
防具って、作るのに数日かかると聞いた事があるのに、まさか一日でできてしまうとは。
あの職人、やはり只者ではないのかもしれないな。
やるべき事を終えた僕は休む為に宿屋へ向かっていると、その途中でどこかへ向かうテイニー達の姿を見かけた。
ちょっと話しかけてみようか。
「おーい! テイニー、メル!」
「あっ、アークさん! ご用事は済んだのですか?」
「うん、ばっちりだよ。テイニー達はちょっと気分転換をしている感じかな?」
「いや、ちゃうで、アークはん。一通り学び終わったから、次は実践あるのみってな。外で実際に魔法の練習をするつもりなんや」
「へえ、そうなんだ。随分と早いんだね?」
「ウチも正直驚きやわ。しかもレクはんもリザはんも基礎を理解できとるときた。これはもしかして、三人同時に魔法使いになれるんちゃうか!?」
三人同時に魔法使い……ってそれってレクもリザも魔法を使えるかもしれないって事!?
魔法とは魔物の力を人間が再現した技である。
それ故、魔法とは人間が使うものという先入観があったけど、確かに言葉を解するレクやリザが魔法を使えてもおかしくはないのか。
むしろ身体的なスペックは当然魔物であるので、人間よりもレクやリザの方が魔法の適性は当然高いとも言える。
魔法を使う魔物か。
これは色々と面白い事になりそうだ……!




