60.テイニーはこっそり頑張っていたようです
昼食をとり終えた僕達は、それから港町ティズの有名所などをシェルザルに案内してもらう。
そして日が暮れる頃、宿屋の前までたどり着いた。
「シェルザル、今日は色々とありがとう」
「いやいや、それほどでもねえよ。随分と面白いものも見せてもらったしな」
「ハハハ……あれは正直、僕も驚いたよ」
「そりゃ誰だって驚くわな、あのスライムの大群を見たらさ! ……ところですまないな、明日からはちょっとさすがに依頼をこなさないと厳しそうだから、案内してやれそうにない」
「僕も事情は分かっているし、気にしなくていいよ。むしろ今日一日案内してくれてありがとう」
「良いって事よ! その代わりといってはなんだが、依頼達成の時には是非、俺達のギルドを応援してくれ!」
そう言うと、シェルザルは腕をまくる。
すると腕には黄色いリボンがつけられていた。
服に隠れて見えなかったけど、ちゃんとリボンはつけていたんだね。
「あっ、一応アーク達の分も用意しているぞ。ほら、受け取ってくれ」
「えっ……でも……」
「遠慮するなって。別にそれを受け取ったからといって、他のギルドに所属してもらっても構わない。その時はどこかに捨てちまえばいいんだ」
「捨ててしまうなんて……そんな事されてもいいの!?」
「大事なモンだから、できればそうして欲しくはないが……まあ渡しちまった後の事は俺には分からねえしな。アークに任せるさ。まあアークならそんな事はしないとは俺は思うがな!」
シェルザルはガハハと笑う。
ギルドの証という大事な物を預けた上で、その処分は任せる、か。
それに僕なら勝手に捨てたりしないと思っている、ね。
僕がジェネラル・レノスに入ると信じているのかもしれないな、シェルザルは。
とりあえず、このリボンはリュックの中にしまっておこう。
「ウチにもくれるなんて随分と気前がええんやな、シェルザルはん? 魔法使いは嫌いじゃなかったのかいな?」
「魔法使いは嫌いだが、メルは別だ。メルはアーク達の魔物の事を悪く見ていない。むしろ好感を持って見ているようだ。魔物好きならば誰でもウェルカム。それがジェネラル・レノスなのさ!」
「なるほどなぁ。うん、そういう事なら一旦もらっておくで! まあその後の処分をどうするかはまだ分からんけどな!」
「おいおい、転売とかは止めてくれよ、メル。まあその今はそのリボンに大した値はつかないから、売っても意味ないだろうけどな」
「そんなのは分かってるって。このリボンの価値を上げる為にシェルザルはんは頑張っておるんやろ? 諦めたらいけまへんで!」
「分かってるよ。明日から頑張るさ。……それじゃ、みんな、またどこかで会おうぜ!」
シェルザルはそう言って、どこかへ去っていく。
シェルザルと別れた僕達は、宿屋の中に入り、一晩を過ごした。
そして翌朝。
部屋から出て、一階の待合スペースで待っていると、テイニー達が近付いてきた。
「す、すいません、遅くなりまして!」
「ああ、いいんだよ。気にしなくて。僕が早く起き過ぎているだけだからさ」
「あと、いきなりで悪いんですけど、一つお願いをしてもいいでしょうか?」
「お願いだって? 内容を聞いてもいい?」
「はい。アークさん、どうかわたしに一日時間をいただけないでしょうか!?」
一日時間が欲しいだって?
何かしたい事でもできたのだろうか?
テイニーっていつも僕に付いて来ているイメージがあったから、少し意外だな。
「何かしたい事ができたの、テイニー?」
「はい。わたし、メルさんからもらった本、大体読み終わったんです。ですからメルさんに直接ご指導をお願いしようかと思いまして……」
「……ええっ!? あの本を全部読んだっていうの、テイニーは!?」
「……まあ、もちろん大雑把にですけどね。あまり重要そうじゃない所は飛ばしましたし。リザが重要そうな所を教えてくれたので、そこを頑張って読み終わった所なんです」
リザが教えてくれた……?
という事は、リザはその本を全部読み切ったという事じゃないか!?
でないと、重要そうな部分がどこなんて分からないだろうし……。
よくよく見れば、テイニーはもちろん、リザもレクもとても眠そうだ。
睡眠時間を削って、ずっと魔法の本を読みふけっていたんだろうな。
何て根性なんだ……。
「そういう事なら、いいよ。別に出発を急がないといけない理由もないし、好きにすると良いよ」
「本当ですか……!? ありがとうございます、アークさん!」
「そんなお礼をしなくてもいいよ。それより、肝心のメルがいないと話が進まないよね。まだ戻って来ないかな?」
メルは僕と同じ位早起きをしていたのだが、ちょっと買い出しに行ってくると言ったきり、まだ戻って来ていないのだ。
だが、テイニーと少し話をしているうちに、メルが帰ってきたようだ。
「待たせたな、アークはん! おっ、テイニーはんも起きたようやな! おはようさん!」
「おはようございます、メルさん。えっと、実はわたし、メルさんにお願いがあるんですけど……」
テイニーはそれから先程僕に伝えた事をメルにも伝えた。
するとメルは――
「ほ、ホンマかいな!? だってウチが本を渡してから、まだ二日も経ってないで!?」
「全部は読んでいないですから……。でもやっぱりそれでも読み通すのはだいぶ厳しかったです。その分達成感はあったんですけどね」
「そうなんか……。それなら、その情熱に応じて、ウチもビシバシと基本を叩きこんだる! 覚悟しとくんやで!」
「はいっ! 望む所です!」
そう言って張り切るテイニーとメル。
どうやらメルもテイニーを教えるのにだいぶ乗り気のようだ。
という事で、二人とも今日は一日魔法修行に没頭する事になるんだろう。
「二人とも頑張ってね。ちょっと僕でやることがあるから、一旦失礼するよ」
「やること、ですか? 何か手伝う事がありましたら、手伝いますけど?」
「いや、テイニーは修行を頑張って続けて。僕だけで大丈夫だから」
「そうなんですか? なら、必ずこの宿屋に戻って来て下さいね!」
「別に勝手にいなくなったりしないからそんなに心配しなくてもいいよ……。とりあえず、また宿屋で合流しようか」
「はい、そうしましょう!」
僕はこうして宿屋を後にした。
これでここにいるのは僕と従魔達だけか。
ひとまずDランク昇格試験も終わったし、次の町までは距離もあるから、もちろん今日は何かをして一日町やその周辺でつぶさないといけない。
なら、ちょっとアレの素材を集める方法について探してみようかな。
僕はバッグの中をのぞき込む。
するとそこには大量のサハギンの鱗が入っていた。
恐らく千はあるだろう、その大量の鱗を活用する為に、他の素材も揃えないとな、
ひとまずギルドに向かってみるとしようか。




