57.試験内容が変更されたようです
リザに何度か修正されながらも、テイニーは無事に宿にたどり着く。
その宿屋に泊まる事にした僕はそこで一晩を過ごした。
それから翌日。
僕達は朝食をとって、重い荷物は宿屋に置き、身軽な格好になって外へと出る。
「アークはん、今日は何をするつもりなんや?」
「うーん、そうだね……。シェルザルさんに町を案内してもらうって約束だったけど……。でもよくよく考えれば集合場所や時間を全く決めてなかったんだよね」
場所も時間も決めてなければ、まずシェルザルと会う事ができるかすら怪しいもんね……。
昨日は疲れていて、そんな事にまで気が回らなかったよ。
「そりゃ、約束してないのも同然やな……。とにかく過ぎた事を気にしてもしゃあない。アークはんの好きな所に行ったらどうや?」
「好きな所か……。そうなるとまずは本屋かな。ここの町でしか読めない本もあるだろうし、呪いの手掛かりも探したいからね」
「そうですよね。わたしも探すの手伝いますよ、アークさん! 確か存在が消える呪いに関する本を探していたんですよね?」
「うん、そうだけど、テイニーは自分の好きな事をしていていいよ。その事に関しては僕だけでも十分探せるからさ」
「そ、そうですか……? でも……」
「テイニーは魔法を使いたいんだよね? それに関する本もたくさんあるから、ちょっとのぞいてみるといいんじゃないかな?」
「そ、そうなのですか? それならそうする事にします! わたし、一晩あの本を眺めていてもよく分からなかったですから……」
そう言ってしょぼんとするテイニー。
テイニーがちょっと眠そうにしているのは、きっと睡眠時間を削って本を読もうとしていたからなんだろうな。
まあ、本を眺めていたという表現からして、全然内容は頭に入っていなさそうだけど。
「では本屋に行く事で決まりやな? ちょっとウチは寄る所があるさかい、また後で合流しようや」
「うん、そうだね。合流の集合場所と時間はどうする?」
「せやな……ほんなら、ギルド前に13時集合でどうや? いつかはギルドによるやろ、アークはん達は?」
「確かにね。ようやくDランク昇格試験を受けられるだろうし……って、多分もう報告できるんだろうけど」
Dランク昇格試験の内容は、確かオーガ二体の討伐だったはずだ。
僕達はオーガ四体の討伐を証明できるので、依頼を受けたらすぐに報告する事も可能って訳だね。
まあ、いつでも報告できるだろうし、あまり急がなくていいか。
僕はこうして一旦メルと別れ、テイニー達とともに本屋へと向かった。
テイニーが早速この町の地図を購入していたので、それを頼りに移動する事に。
本屋近くまでたどり着いて、早速本屋の中に入っていく僕。
港町ティズには本屋は一つしかないそうだが、その本屋の中はだいぶ広かった。
きっと一つにまとまっているといった感じなんだろうな。
さて、早速本を探すとしますか。
本屋の規模が大きめとあって、呪い関連の本も比較的多くあった。
その中で目につくものから目を通してみる。
……しかし結局、残念ながら、この本屋では呪いに関する情報を新たに手に入れる事はできなかった。
うーん、なかなか見つからないものだな。
簡単には見つからないと思っていたけど、これは思ったよりも時間がかかりそうだ。
もう約束の時間になりそうなので、僕は児童書コーナーにいるテイニーと合流し、ギルドへと向かった。
ちなみにテイニーは”3さいでもわかるまほうのほん”というものを読んでいた。
3さいシリーズって結構色々あるものなんだな……うん。
本屋から歩く事、数分。
僕達はギルド前にたどり着いたのだが。
「おっ、やっと来たか、アーク! ずいぶんと遅く起きるもんなんだな、お前!」
そう話しかけてきたのはシェルザルだった。
シェルザルはどうやらギルドの建物前で僕達を待っていたようだ。
「あっ、すいません……僕、本当はだいぶ早く起きていたんですけど、集合場所が分からなくて」
「ああ、そういえば決めてなかったな! まあ、アークの事だから、ギルドにいつかは来るだろうとは思っていたから、俺の読みは間違ってはいなかったみたいだが!」
シェルザルは愉快そうにガハハと笑う。
まあ確かにジェネラル・レノスをたずねる程だから、依頼をこなしにいつかはギルドを訪れるだろうけど、ずっとそこで待っているというのはねぇ……。
「というか、アーク、ため口でいいって言っただろう?」
「あっ、すいま……ごめん。こんな感じで本当にいいの?」
「ああ、ばっちりだ。こうじゃないと、親しみが湧かないだろ? 俺だけ一方的に親しくなろうとしているみたいでバカバカしいじゃねえか!」
……まあ、その気持ちは分かるかな。
僕の場合、テイニーと話している時にそう感じたりする。
でもテイニーは僕だけじゃなくて全員にそういう話し方をしているから、そういうものだと諦めているけど。
「とにかく、早速町案内といこうか、アーク?」
「あっ、ごめん、ちょっと待ってもらってもいい? 実は僕、人と待ち合わせをしていて……あっ、来たっ!」
「いやぁ、待たせたな、みなはん! おや、昨日のシェルザルはんもご一緒だったんか?」
「おう、昨日の威勢の良い姉ちゃんだな。そういえばアーク、三人で旅しているのか。まさに両手に花って奴だな」
「従魔達もいるけどね。まあ、そういう事になる……のかな?」
「うちが花やてー? 照れるやないか、シェルザルはん! そんなに褒めても何も出えへんで?」
そう言って嬉しそうにするメル。
そういえばメルって、結構美人なのに男が寄り付かないよな……。
多分その豪快な性格故、なかなかお近づきになれないのだろうか?
ちなみにテイニーは、ちらちらと町の人の視線を集めている事からして、一人でいたら声をかけられる事は間違いないだろう。
まあリザが常にボディーガードのようにそばについているから、話しかけたくても話しかけられないんだろうけど。
「さあ、これで全員揃ったみたいだな。それじゃ町案内するとするか! まずはどこへ行きたいんだ、アーク?」
「うーん、特にどこっていう訳じゃないんだけど……一番したいのはギルドの昇格試験というか」
「おお、そういえばジェスが昇格試験を受けさせてあげられなかったとか言ってたな! それならさっさと昇格試験を受けに行って来い! 町案内は後回しでいいからさ! なんなら俺も協力するぞ!?」
「いいの? それならお言葉に甘えさせてもらう事にするよ」
町案内は結局後でいいという事なので、僕達はとりあえずギルドの中に入る事にした。
受付の列にしばらく並び、そしてようやく僕達の順番が来た。
「お待たせ致しました。ご用件はどのような内容でしょうか?」
「えっと、Dランク昇格試験を受けに来たんですけど」
「Dランク昇格試験ですね。確認致しますので、お名前をお伺いしてもよろしいでしょうか?」
「アークです。あと、こちらにいるテイニーも一緒に受けようかと」
「……あっ、はい、テイニーです」
「かしこまりました。……はい、確かにお二人とも資格があるようですね。ではDランク昇格試験の依頼はこちらになります」
そう言った受付嬢が僕達に一枚の紙を渡す。
そしてそこに書いてある内容とは――サハギン50体の討伐。
あれっ?
オーガ二体の討伐じゃないの?
しかも50体ってなんだよ、50体って。
「あれっ、オーガ二体の討伐じゃないんですか?」
「実は最近サハギンが大量発生していまして……それで昇格試験もそれに伴って、一部変更させていただいている次第になります」
そ、そうなんだ……。
オーガ二体の討伐だったらすぐに報告できたのになぁ……。
でも過去の事を気にしても仕方がない。
後はこの試験を受けるかどうかなんだけど……。
「シェルザル、試験を受けるとだいぶ時間がかかってしまいそうなんだけど、後回しの方が良いよね?」
「いや、受けちまえよ。俺も協力するからさ」
「えっ……でもシェルザルはたくさん依頼をこなさないといけないんじゃ……」
「良いって事よ。一日か二日できない位で大差ないしな。どちらにしても正直必要なポイントまで届く気がしねえしさ!」
そう言ってガハハと笑うシェルザル。
必要ポイントが足りないって笑っている場合なのか?
いや、もう笑うしかないんだろうな。
頑張っているのがシェルザル一人みたいだし。
必要ポイントがどんなに頑張っても七割は足りないとジェスから聞いた気もするしさ。
「分かった。それじゃ受けさせてもらうとするよ。テイニーとメルもそれで大丈夫?」
「はい、大丈夫です。わたし、精一杯頑張ります!」
「もちろんや。例え50体であろうと、100体であろうと、どんとかかってこいっちゅー事や! まとめて焼き払ってくれるわ!」
おお、頼もしい発言。
サハギンはEランク魔物だし、それに炎系の攻撃に弱いから、メルのファイアやフレイムの魔法が大活躍だろうな。
これは頼りにさせてもらっても良さそうだ。
僕はそれから昇格試験の手続きを済ませ、ギルドの建物から出る。
さて、それじゃ早速サハギン討伐に行きたい所なのだが……。
「シェルザル、サハギンがどこで大量発生しているのか分かる?」
「ああ、それなら北東の海岸で大量にいやがるぜ。あまりにたくさんいるもんだから、海岸だけでなく陸の通路にまで押し寄せてきやがってな。今じゃ北への道は通行止めになっている位だ」
「北への道だね。それじゃ早速そこに向かうとしよう」
あまりにたくさんいるから陸の通路まで押し寄せてくるとか、どんだけサハギンがいるんだよ……。
サハギンは大量発生する時があるとは聞いていたけど、まさかそこまですごいとはね……。
とにかく、早くそこまで行ってみるとしようか。




