56.シェルザルをみんなに紹介してみました
シェルザルと共に港町ティズの門まで来た僕。
検問を当然受ける事になったのだが、全くトラブルなく入る事ができた。
そして門から出て町の通りに出ると――
「あっ、アークさんが来ました!」
「どれどれ? おっ、ホンマや。アークはんこっちやでー!」
テイニー達が僕に向かって呼びかけてくる。
そういえばみんなをだいぶ待たせてしまっていたな。
それにこの事情についても話しておかないと。
「仲間が呼んでいるみたいだが、いかなくていいのか、アーク?」
「あっ、そうですよね。それではちょっと合流してきます!」
そう言った僕は小走りになって、テイニー達の方へと駆け寄っていった。
「ごめん、みんな、待たせたね!」
「いえ、これ位いいんです。それよりもアークさん。ウルフくん、連れて来る事にしたんですね」
「うん、ちょっとこれには色々事情があってね……」
僕はそう言った後、シェルザルの方を向いた。
シェルザルがいなければ、野生の魔物を町の中に入れるという発想にならなかったからね。
出来なくはないとは思っていたんだけど、実例がなかったから、あまり危険は冒したくなかったし……。
「そういえばアークはん、ケンタウロスを連れた男性と一緒に出てきおったな? アークはんの知り合いなんか?」
「いや、初対面だよ。でも名前はみんなも聞いた事があると思う」
「えっ、それってどういう意味ですか? アークさん?」
「それはね……あの人はジェネラル・レノスのエース、シェルザルさんだと言えば分かってもらえると思う」
「おお、そういう訳やな! 納得したわ!」
シェルザルの事を聞いて、うんうんとうなづくメル。
対するテイニーはリザに隠れながら恐る恐るシェルザルの事をじっと見ているのだった。
……この感じだと、直接挨拶をしてもらった方がいいかもしれないね。
僕は近くにいるシェルザルを呼んで、テイニー達の近くまで来てもらった。
そして軽く自己紹介をしてから、事の経緯を簡潔に話す。
ただ聞かれるとまずい内容を話す事になるから、その間はメルに魔法を使ってもらって、周囲に声がもれないようにしておいたけど。
「――という事なんだ」
「なるほどなぁ。まさかそのケンタウロスも従魔ではないとは驚いたもんやな。魔物使いってそういうもんなんか?」
「いや、そうではないはずです。わたし、そんな話、聞いた事がないですから」
「僕もそうだったよ。だからこそ驚いた。そんな事ができるのかって」
「やってみれば大した事ねえだろ? 分かり合える魔物とは自然と分かり合えるもんだ。その絆があれば、カリスマ力なんていらねえ」
カリスマ力なんていらない、か。
確かに今のウルフとの関係を見ているとそう思ってしまうかもしれないな。
カリスマ力を使わないで、こんなにもみんなと仲良くやれている。
そんな関係が築けるのであれば、カリスマ力なんていらないんじゃないかって。
ただ、やはり僕にとってカリスマ力は大事だ。
カリスマ力がなくて、それを渇望したからこそ、恐らくヴァルドとこうして旅する事になったんだし、ラスやゴンにも出会えた。
カリスマ力を最初から必要だと思わなければ、こうした今の仲間達とは出会えてはいなかっただろうから。
それにシェルザルとは違って、僕が従えずに慕ってくれるような関係を築けた魔物はウルフ以外にはいないのだし、シェルザルが特殊なだけかもしれない。
「そういえば、もう日が暮れそうだな。申し訳ないが、アーク、町案内はまた明日でもいいか?」
「はい、構いませんよ」
「そうか、それは良かった。それじゃ、また明日会おうか! あとアーク、俺にもため口で話せ。気を使われるの、俺、苦手なんだよ」
「あっ、でもシェルザルさんはギルドのエースですし……」
「そんなの関係ねえよ。俺はアークと血のつながりも少しはあるんだし、兄貴的な存在だと思ってもらえればいい。兄弟に敬語なんて使わないだろ?」
「えっ、アークさん、シェルザルさんとご兄弟なのですか!?」
「い、いや、テイニー、そういう訳じゃ!?」
「まあ、そういう訳だから、もっと気を楽にして話そうぜ、アーク? それじゃ、またな!」
そう言ってケンタウロスに乗って、遠くに去っていくシェルザル。
なんかちょっと面倒な事を残して帰っていったものだなぁ……。
別に隠す事ではないんだから、いいんだけどさ。
僕はそれからみんなに血縁について話す事にした。
僕の母がフィアスの血統であるという事や、シェルザルがフィアスの血統である事などをだ。
「なるほどなぁ。そうなると、アークはんはフィアス様の特徴を色濃く受け継いでおるのかもしれんな」
「フィアスの特徴を受け継いでいる? 僕が?」
「そうや。だってフィアス様は力を失ったんやろ? その影響を受けて、きっとフィアス様自身はカリスマ力が0になっていたはずや。そしてアークはんもカリスマ力は0やった。これはそう考えてもおかしくあらへんやろ?」
まあそういう考えも出来なくはない、か。
だからといって何があるという訳でもないけど。
この世界は魔物使いである事が求められていて、そしてその力、カリスマ力に優れた者ほど、多くの栄光を手にする事ができる。
逆にいえば、それに劣っている場合、他の能力がどんなに優れていても、そこまでの活躍は見込めないだろう。
少なくとも今までにカリスマ力で劣っているのに名を馳せた人なんて聞いた事がない。
どちらにせよ、僕には何か他に優れている能力があるって訳でもなさそうなので、血統は僕にとって単なる足枷にしかなっていないような気もしたりする。
「それで何か特別な力があればいいんだけどね。残念ながら、特に何もなさそうなんだ。だからあんまりそういう事は重要じゃないかなって」
「そうやな……。アークはんはむしろそれのせいで色々と苦労してきはっているんやもんな……。本当、ご苦労様やで」
「本当です。とても苦労されてきていますものね、アークさんは……」
「まあ苦労したのは過去の事だし、もう僕は気にしていないよ。それより、宿屋ってもう決めたの?」
「そりゃもうバッチリやで! 今すぐに部屋で休む事もできるけど、どうするんや?」
「ちょっと休みたいかな。さすがにずっと歩きっぱなしで疲れちゃったからね」
「なら、早速宿に向かいましょう! こっちですよ!」
テイニーがそう張り切って、どこかへ向かっていく。
そしてリザがいつもの通り、進行方向の修正を――しなかった。
あれっ、テイニーが正しい方向に進んでいるなんて珍しいな。
もしかして少し方向オンチさが解消されてきているんだろうか?
「……あっ、リザ、分かっていますって! ちょっとここは自信なかったですけど、大丈夫ですって!」
あっ、結局リザにまた注意されてる。
僕がそう思ったのは気のせいみたいだな。
テイニーの方向オンチが治る訳ないか。




