48.遺跡の中に入ってみました
遺跡の近くまでたどり着いた僕達。
そこには石畳の床が広がっており、等間隔に柱が並んでいる。
その先には巨大な建物がそびえ立っていた。
ちなみに全部年季の入った感じの白色をしている事から、作られた当初は白一色の建物だった事が想像できるね。
この柱や建物ってどんな素材を使っているんだろう?
今ではあまり見ない素材を使っているみたいだけど……。
「ヴァルド、この建物って何の素材を使っているのか分かる?」
「はっ、そんなもの知るかよ!? 俺様、これを作った奴らがいた時から生きている訳じゃねえから分かる訳がねえだろ?」
「まあそりゃそうだよね。いくら魔王とはいっても、分からないものは分からないか」
ヴァルドは数十年魔王をやっていて、恐らく百年以上は生きているとは思う。
だけどこの建物を作った人達、恐らく魔物使い創世期の人達はそのさらに前の時代に生きていた人達だ。
きっとその時に豊富にあった何かの素材を使って作られているんだろうな、これは。
「……うーん、これはなかなか年季を感じる建物ですね」
「そりゃ遺跡なんだから当たり前の事なのニャ、テイニー」
「それは分かっていますよ、レク。なんと言うか、何か神秘的な物を感じるんですよね、この建物からは。アークさんもそう思いませんか?」
「うん、何となくそんな感じはするよね」
「確かにその感じは分かる気がするニャ……」
不思議とこの建物からは神秘的な何かを感じる。
きっとこの時代の人達が生きていた当時、何か大事な事をこの建物で行っていたのかもしれないな。
どういう事があったかは今では知る由もないけどさ。
「とりあえず中に入ってみいへんか? ここでずっと立ってても面白くないで!」
「確かにそうだね。早速建物の中に入ってみるとしようか」
僕の言葉にこくんとうなづくみんな。
早速遺跡の建物の中に入っていく事にした。
建物の中は教会を連想させるような空間になっていて、大部屋に長椅子らしきものがたくさん並んでいた。
もちろん年月が経っているので、崩れていたり、跡形もなくなっている長椅子も多くあったのだが。
壁や床にはツタのようなものが見えていて、所々にヒビが入っている。
「何か崩れそうで危ない建物やな。まあ相当昔に作られたものやから無理もないんやろうけど」
「うん、そうだね。頭上には気を付けて。ここまで来るのに魔物と戦う必要があったり、倒壊の危険があるから、あまり人が寄り付かない場所だったりするんだよね、ここ。だからこそ情報もそのまま残っていると踏んでいたんだけど」
「そういえばアークはんはフィアス様について調べたいんやったな」
「そうだよ……って、メルが様付けするなんて珍しいね?」
「そりゃ様付け位するやろ。何て言ったって、ウチらがここまで繁栄するきっかけをくれた人やで!? その人いなければ、ウチらが今頃どんな生活しておったか想像がつかへんわ!」
うん、確かにそうだ。
フィアスがいなければ魔物使いは誕生しなかったと言われている。
この事は恐らく間違いない。
ちなみにフィアスに関しては他にも色々伝えられている事がある。
いまいちどれも信憑性が欠けるけど。
例えばフィアスは魔物を新しく創造したとか。
フィアスは最強の魔物を従えていて、どの相手も寄せ付けなかったとか。
フィアスは自らの力を人類全員に分け与えたんだとか。
どれが本当で、どれが嘘なのかは分からないけど、とにかくフィアスが重要な人物であることは確かだろう。
さて、メルがフィアスの事を尊敬しているのは分かった。
だが、そうなると納得いかなさそうな者が一人いそうなものだけど。
「メル、そういう理由だとヴァルドを様付けで呼ばないと不服に思われるんじゃないかな?」
「あっ、そういえばヴァルドはんは魔王様やしな! 確かに様付けで呼んだ方が良いのかもしれんな! すまへんすまへん! うっかりしてもうたわ!」
「そ、それはつまり、ヴァルドが魔王だっていう事をただ忘れてただけっていう事……?」
「うーん、まあ正確に言えば、ウチがそう言いたいから言っとるだけやな。ヴァルドはんが魔王なのは知っとる。せやけど、ヴァルドはんはうちらの仲間や。確かに敬う必要はあるんやろうけど、仲間に対して様付けは堅苦しいやろ? せやからできればこのままの呼び方でいきたいと思っとる。どうやろ?」
なるほど。
確かに仲間を呼ぶ時に様付けというのも不自然だもんね。
そう考えれば納得がいきそうだが、果たしてヴァルドはどう思っているのか?
「そういう事みたいだよ、ヴァルド。どうする?」
「どうするって、そんなの勝手に呼べば良い事だろ。俺様の事は好きに呼べば良い。忘れてさえいなければどうだっていいんだ」
そう言うと後ろを向くヴァルド。
その背中からは哀愁が漂っているように感じる。
……まあ、存在を忘れられるっていうのは辛い事だろうし、存在を認めてくれるのなら、その言い方は大した問題じゃないって事か。
ちなみに遺跡に入る前にヴァルドには念のため僕達と同じ位のサイズにまで体を縮めてもらっている。
大した魔物はいなくても、一緒についてきてもらって遺跡の文章の読解を手伝ってもらえたら助かるからね。
「あっ、アークさん、これを見て下さい! これって文字じゃないですか?」
テイニーがそう言うので、テイニーに近づいてみる。
すると確かにそこには古代文字が刻まれていた。
「これは確かにそうだね。見つけてくれてありがとうテイニー」
「いえ、これ位の事はどうって事ないですよ!」
「でも見てもよく分からないニャ。あっしが知っている今の文字とはどこか違うようだニャ」
「うん。それは古代文字だから、今の文字とは違うよ。今、解読してみるからちょっと待っててね」
僕はリュックから古代文字に関する本を取り出す。
そしてその本を片手に、古代文字の解読を始めた。
ちなみに解読した内容は、人類初めての魔物使いが現れた事を人々が喜ぶ様子が事細かに書かれているものだった。
僕はその内容をみんなに話す事にした。
「なるほどなるほど。つまりは古代の人も魔物使いの誕生を喜んだっちゅー訳やな?」
「うん。あらゆる生物に対して抗う力を持たなかった人類は、魔物使いの誕生をとても喜んだみたいだ。これはあらゆる本に書かれている内容と一致するね」
古代の人も魔物使いの誕生を喜び、そして崇めた。
それはこの世界の人にとって周知の事実ではあったが、こうやって改めて古代文字でも確認できた形だ。
やはり当時としては相当なインパクトだったんだろうな、魔物使いの誕生っていうのは。
僕達はそれからも建物の中にある古代文字の文章をいくつか読み解いていった。
すると時々本に書かれているものと違う内容もあったが、大体は本の内容と同じような事が書かれていた。
多少は作者が内容を改変する事もあるだろうから、全く同じ内容にはならないとは思っていたけど。
でも、まさかこんなデタラメな内容のいくつかが本当の事だったなんて。
いや、もしかするとここにも大げさに書いてある内容はあるんだろうな。
正直書いてある内容はちょっと信じがたいからさ。
建物にあるほとんどの古代文字を解読して、満足した僕達は、遺跡を後にしようとしたのだが――
「ねえ、あーく」
「ん? どうしたの、ラス?」
「したのほうからおとがきこえるよー」
下の方から音?
それってどういう事なんだろうか?
僕は地面に耳をつけてみた。
すると確かに何かの音が響いている。
「確かに聞こえてくるね。もしかしてこの遺跡には地下があるのかな?」
「な、なんやて!? そんな話、ウチ、聞いた事ないで!?」
「僕もだよ。今まで本を読んできた中で遺跡に地下があるなんて話は聞いたことがない。一体どういう事なんだろう?」
遺跡に地下がある、という事は、誰にも知られていないようなエリアが遺跡にあるという事になる。
もしそういう空間があるのなら、まだ読解されていない古代文字の文が眠っているかもしれない!
これは調べてみる価値がありそうだな……。




