47.テイニーは魔法使いを目指すようです
「テイニーはん、力が欲しいか?」
「メルさん……? あっ、はい。とても欲しいです。わたし、何の役にも立てなくて、でも何をする事もできなくて……」
「そうか。それはどんな困難も乗り越えてでも力が欲しいという解釈でええんやな?」
「はい。皆さんのお役に立てるのであれば、どんな困難も乗り越えてみせます!」
「よっしゃ、それじゃその言葉を信じるで! テイニーはん、よかったら魔法使いにならへんか? 魔法が使えればテイニーはん自身が力になれるし、頑張れば色んな技を習得できる。今のテイニーはんにぴったりやと思うんやけど?」
「えっ……!? でもそれって……!?」
メル、そうきたか。
確かに魔法使いになれば、テイニー自身が力を手に入れる事になるし、自身で状況を打開できる可能性も出てくる。
自分が役に立ちたいと思っているテイニーには魔法がぴったりの力になるという訳か。
「で、でも、それって魔物使いを諦めるって事ですよね?」
「いや、そうはならないよ、テイニー。魔法使いと魔物使いを兼任する事は可能だ。ただ、人間関係的に苦労するから、そうする人がほとんどいないだけで」
「アークはんの言う通りや。別に魔法が使えるようになっても、魔法が使える事を公にしなければええ。ウチを見ていればそうできる事は分かるやろ?」
「あっ、はい、それはそうですけど……」
「基本的には魔法は使わん。でもいざとなった時、その魔法を使って困難を切り開く。そういう時の為に学んでおくってのも悪くないと思うで? 今ならウチという専任の敏腕家庭教師もおる訳やしな!」
そう言うとえっへんとした態度をとるメル。
確かにメルならば上級魔法も使える程だし、テイニーに魔法を教えるというのも容易い事なんだろう。
さて、テイニーはどうするんだろうか?
「確かに魅力的ですし、できる事ならば家庭教師をお願いしたいです。でも、わたしに才能はあるんでしょうか? 才能がないと魔法使いにはなれないと聞いた事があるんですけど……」
うん、確かにテイニーの言う通りだ。
人には生まれ持ったカリスマ力の他に魔力もある。
カリスマ力同様、魔力も15歳ほどで能力の有無を判断できるとされている力だ。
魔力を知りたい場合は教会の牧師では分からないので、魔法使いギルドに行く必要があるとされているが。
「確かにこの場やと分からへんな。アークはん、どうにかならへんか?」
「ヴァルドが魔力の有無を判断できるはずだよ。僕も見てもらった事があるし」
「そうなんですか!? でしたら是非ヴァルドさんに調べてはいただけないでしょうか、アークさん!」
「うん、分かった。ヴァルド、そういう事だからさ、テイニーの魔力について教えてくれないかな」
僕はヴァルドの方を見る。
するとヴァルドはじっとテイニーを見始めた。
「任せておけ。……えっと、そうだな。テイニーからは溢れ出んほどの魔力を感じる。これ程のものはなかなか見ないぞ?」
「えっ? という事は……」
「ああ。テイニーの魔法使いとしての適性は相当なものだ。まあ元々分かってはいたんだが、俺様が余計な口出しをするのもどうかと思って言わないでおいた」
「えっ、なんだよ、それっ! 分かっているなら言ってくれてもいいのに!」
「だって魔物使いと魔法使いは相容れない関係だってアーク言っていたじゃねえか。そもそも、現状魔物使いとして頑張っている奴に魔法使いの方が向いていると伝えても聞く耳を持つと思うか?」
まあ確かにそうだよね……。
僕だって魔物使いとしての才能は皆無で、魔法使いとしての才能はそこそこなんだ。
それを見れば、魔法使いになった方が良いと言われる立場なんだろうけど、そんな言葉に僕は耳を貸さないだろうからね。
テイニーに出会う前に出会った僕がそういう人間だったんだ。
だったらテイニーの事もわざわざ言おうとは思わないよな……。
「ごめん、ヴァルド。でも言ってくれて助かったよ、ありがとう」
「まあ、役に立てたなら、良いんじゃねえか? 別にアークが何言った所でいちいち気にする程、俺様の器は小さかねーよ」
そう言ってぷいっと顔をそらすヴァルド。
出会ったばかりのヴァルドはちょっとした言葉に色々反応していた気がするし、いまいちヴァルドの言葉に信憑性はないけど……。
でも気にしていないようで何よりだ。
「えっと……アークさん、結局どうだったんです? 分かったんですか?」
「あっ、うん。テイニーは魔法使いとしての適性があるってさ。それに他の人よりも相当優れた魔力を持つらしい」
「えっ……それってわたし、魔法使いも目指せるって事ですか!?」
「うん、そういう事になるね」
「良かったな、テイニーはん! これでウチと一緒に一人前の魔法使いを目指せるやないか!」
「そ、そうですよね……。ほ、本当に嬉しいです……」
テイニーは力が抜けたように、その場に座り込んだ。
きっと緊張で張りつめていたんだろう。
良い結果を聞いて、気が緩んだといった所か。
「まあ、魔法は一朝一夕で簡単に身につくものではあらへん。ゆっくりと頑張っていく事にしよか!」
「あっ、はいっ、メルさん!」
「では早速で悪いんやけど、この本を一応渡しとくわ。この本には魔法使いとしての基礎が詰め込まれとる。それさえしっかりと覚えれば、後は実践あるのみや。テイニーはんの魔法使いデビューの日は近いで!」
「……はい、頑張って読んでみます!」
テイニーは早速本を読み始める。
しかし、読み始めて早々、テイニーの顔が横に傾き始めた。
「……テイニー、早速内容が理解できていなさそうだニャ」
「……さ、最初だけですから! そう言うレクも読んでみて下さいよ! 絶対分かんないですから!」
「どれどれニャ。………………」
本を手に持ったレクの顔も横に傾き始めた。
どうやらレクにも理解できなかったらしい。
結局、最終的にはこの輪の中にリザも混じって、三人で一緒に読む事となる。
リザが一番読解力があるようなので、リザにリードしてもらいつつ、テイニーとレクも本をゆっくりと読み進めているようだった。
「あの様子だと、理解できるのはまだまだ先になりそうだね、メル?」
「そやな。魔法使いとしての基礎を覚えるのは最初が一番大変や。そこを乗り越えられるかどうかで魔法使いになれるかが決まってくる。逆に一回コツさえ掴めれば、意外とスイスイといくものや。コツが掴めるかどうかはセンスにかかっているんやけどな」
「ふーん。もしセンスがあった場合、どれ位であの本の内容を理解できるものなの?」
「そやな。早くて三日という所やろか。あくまで驚異的なスピードで読み進めた場合の話やけど。もちろん、そんな早くできるとは思ってへん。正直、この旅を一緒にしていく中でいつか魔法が使えるようになったら御の字やと思っとる」
「……うん、そうだよね。あの内容、ちらっと覗いた感じでも結構難しそうだったからさ」
僕は興味本位で魔法使いの本をちらっと読んだ事がある。
だけど専門用語がたくさん出てきてちんぷんかんぷんだった。
魔法使いになる気がなかった僕は、その時点で読むのを諦めたんだよね。
それ以来、魔法使い関連の本はほとんど読んでいない。
テイニー達が読んでいる本を覗いてみた感じだと、その本もその例に漏れないようだった。
つまり内容は相当難しいもののはずなのだが、テイニーは果たして理解ができるのか……?
それはきっとしばらくしたら分かってくるだろう。
それから僕はゴンとホクの合成をしつつ、もうしばらく進んでいくと、ついに例の場所近くまでたどり着いたようだ。
「おっ、そんなこんなしているうちに、見えてきたんやないか、遺跡?」
「あっ、確かにあれは遺跡みたいだ。行ってみよう!」
ようやく見えてきたのは港町ティズに向かう途中にある遺跡、ザスザン遺跡。
遺跡には特に魔物が特別生息している訳ではないと聞いた事があるので、さほど脅威はないはずだ。
まあ遺跡の周囲の魔物が棲みついている可能性はあるけど、それでも強くてDランクのオーガのはずだし、全く問題ないだろう。
さて、早速遺跡に向かうとしようか!




