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29.ラスとゴンは予想以上に強くなっていたようです

 グランドリザードは僕達の方をチラリと見てくる。

 するとその次の瞬間、地面に潜ってきた。



「みんな、気を付ける! あいつ、どこから来るか、分からない!」



 リザがみんなに注意を促す。

 ここは洞窟であることから、足元だけでなく、頭上から現れる可能性だってあるのだ。

 これはだいぶ厄介だな……。


 魔物がどこから来るか分からないという状況の最も辛い所は、普段攻撃を食らわない僕達が攻撃を受ける可能性がある所だ。

 普通は従魔に戦ってもらう関係上、距離さえとっていれば、早々相手の魔物の攻撃がこちらまで届く事はない。

 だけど今の状況は違う。

 相手のグランドリザードが僕やテイニー、メルを直接狙ってくる可能性だってあるのだ。


 頑丈な装備を身につけていない僕達がただでさえ強いグランドリザードの攻撃を受けたら大変な事になるのは想像に難くない。

 早く対策をしなくては。



「ラス、前と同じように僕達を囲って守って!」

「うん、りょーかーい!」



 アルラウネ戦の時にテイニー達を守った時と同じ作戦。

 つまり、スライムの檻作戦を僕は今回も使う事にした。

 スライムの体には弾力性があり、その体に触れればどんな攻撃でも威力は軽減されるだろう。

 身動きがとれなくなるのが欠点だが、元々そんなに動かない僕達であればさほど問題はない。


 ラスの檻の中に入ったのは僕、テイニー、メル、レクの四人だ。

 外にいるのはゴン、リザである。

 さて、この状態でどう出てくるんだ、グランドリザードは?



 僕達がスライムの檻の中に入ってから、しばらく沈黙状態が続く。

 すると突然リザの背後からグランドリザードが現れ、リザに爪攻撃を食らわせてきた!



「ぐっ……!?」

「だ、大丈夫ですか、リザ!?」

「大丈夫。それより、まだ攻撃、終わってない」



 リザに一撃を食らわせた後、グランドリザードは再び地面に潜り、今度はゴンの背後に回ってきた。

 そしてグランドリザードによって再び爪攻撃が繰り出されたが、ゴンはその攻撃をギリギリで避け、すかさず棍棒による強打のカウンター攻撃を命中させる!



 ギッ……ギャウッ!?



 大きなダメージを受けたであろうグランドリザードはたまらず、再び地面へと潜って、身を潜める。



「ごん、さすがだねーすごーい」



 ゴンを褒めたたえるラス。

 だがゴンの表情はまだ緩まない。

 まだ相手を倒し切っていないのだから。



「…………来るっ!」

「こんどはぼくのほうにきたのかー」



 グランドリザードは今度は僕達の背後に現れ、そして僕達が入っているラスの檻に向かって突進してこようとする!



「ラス!」

「だいじょうぶ、まかせてー」



 ラスは檻の形状を変化させ、グランドリザードが突っ込んでくる方に厚みを置いたいびつな形状をとった。

 一方でグランドリザードはラスの体に向かって勢い良く爪を突き立てて突っ込んでくる。

 すると、グランドリザードはラスにある程度めりこむと、ラスの弾力性に阻まれ、今度はその勢いのまま壁に叩き付けられる事になった!


 恐らく全力でラスの方に向かっていったんだろう。

 そして、その勢いがそのまま壁に激突する力となって跳ね返り、グランドリザードはたまらずダウン。

 どうやら勝負あったようだ。

 ……何か意外とあっけなかったな。



「ヴァルド、グランドリザードの様子はどう?」

「……まだ生きてはいるが、そう長くは持たないだろう。もう放っておいても大丈夫な位だ」



 なるほど。

 どうやら演技とかではなく、本当に虫の息らしい。

 あっけなかったけど、どうやら僕達は勝ったようだ。


 ヴァルドの言葉をみんなに伝えて、警戒心を解く僕達。

 そして僕はラスに檻状態を解除してもらった。


 ほっと一息つく僕達。

 そんな中、リザだけが倒れているグランドリザードの方へと向かう。



「り、リザ、危ないです! まだ完全に倒れてはいないんですから!」

「テイニー、大丈夫。アーク、お願いがある」

「ん? 僕にお願いだって?」



 僕の問いかけにこくんとうなづいたリザ。

 そしてリザが言った事とは――



「このグランドリザード、俺に合成してくれ。俺、強くなりたい。俺、みんなを守れなかった」



 そう言ってうつむくリザ。

 確かにリザはグランドリザードに対し、一撃も攻撃を与える事ができなかった。

 というよりも、リザが出る幕もなく、ゴンとラスが倒してしまっただけなんだろうけど。

 別に気にする事ないと思うんだけどな。



「別にリザは悪くないよ。ゴンとラスがあっという間に倒しちゃっただけだし」

「でも俺、あいつの動き、読めなかった。このままじゃ、みんなを守れない」



 どうやらグランドリザードに対し、自分では敵わないと悟ったらしいリザ。

 グランドリザードはリザの上位種族なんだし、敵わないのは当然だとも言えるんだけど、彼にはそんな事を言い訳にしない使命感みたいなものがあるんだろうな。


 僕は判断をテイニーにしてもらう為、テイニーの方を見る。

 するとテイニーは。



「アークさん、私からもお願いします。リザを……リザを強くしてあげて下さい!」

「……うん、分かった。ただ安全性は保証しないのは以前と同じだ。それでも、いいんだね?」



 僕がそう言うと、テイニーとリザが同時にうなづく。

 覚悟ができているなら、よし。

 それじゃあ早速始めようか。



「ラス、いつも通り拘束を手伝ってもらってもいい?」

「うん、まかせておいてー」



 ラスが分体を作り、グランドリザードの手足を拘束。

 そして、僕はその間に陣を描き、陣を描き終わった所でラスにそこまでグランドリザードを運んでもらう。



「準備ができたよ、リザ」

「ああ、分かった。ありがとう、アーク」



 リザは指定の場所につく。

 これで準備は万端だ。

 さて、いつも通り始めますか。



 ………しばらくして、儀式は無事終わった。

 それによりグランドリザードの体はリザの体に吸収され、リザの体は一回り程、大きくなる。

 元々リザはランドリザードの中では大柄な方だからか、グランドリザードを一回合成しただけでグランドリザードの見た目に大きく近付いた。

 とにかく、合成によってリザがさらに強くなった事は間違いなさそうだね。



「ありがとう、アーク。俺、強くなれた」

「うん、良かったね、リザ。その力でみんなを守ってね」

「ああ、約束する。俺、みんなを守る」



 より強い力を身につけ、張り切るリザ。

 満足してくれたようで何よりだ。



「アークさん、ありがとうございます。わたしからもお礼を言わせて下さい」

「いや、別にいいよ。いつもの事だし」

「それにラスさん、ゴンさん、二人ともありがとうございます。リザがご迷惑をおかけしました」

「きにしなくていいんだよーまたいっしょにがんばろー」

「…………みんな無事が一番」



 ゴンがつぶやいたように、みんな無事なのが一番だよね。

 僕もそう思うよ。



 無事グランドリザードを倒す事ができた僕達はリザの案内により、さらに先へと進む。

 そしてついに僕達は洞窟から出る事ができ――



「うわぁ、これが首都デコラーダかぁ……何て大きい街なんだ……」



 洞窟から出た瞬間、遠目に見えたのは巨大都市だった。

 数えきれない程の建物が並び、中央には丸く大きな建物みたいなものが建っている。

 一体あれは何に使う建物なんだろう?

 色々と興味が湧くなぁ……。



「首都デコラーダ……すごい迫力ですね……」

「あっしも初めて見たけど、ド迫力だニャ!? これじゃアークも迷っちゃうんじゃないかニャ!?」

「そうかもね。とりあえず街についたら地図を買っておかないと、本当に迷ってしまいそうだ。……そういえばメルは驚いていないようだけど、やっぱり何度か来た事があるの?」

「まあウチは全国を回っとるからな。でも久しいわぁ、この感じ。色んなものがスケール大きいから、店を運営するのも大変やけど、売上もすごいんよな、この街は」



 そう言ってしみじみと思い出に浸っているメル。

 きっとこの街には何かしらの思い出があるんだろうな。

 初めてここに来た僕達はこれからその思い出を作りに行きますか!


 初めての大都市に胸を踊らせつつ、僕達は首都デコラーダへと向かっていくのだった!

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