28.もっと強いリザードマンがいるようです
洞窟に入り、しばらく歩いていく僕達。
かなり洞窟は入り組んでいて、分かれ道がいくつもあったのだが、そんな中をリザは迷う事なく進んでいく。
「着いた。それじゃ、水飲む」
リザは洞窟の壁から流れ出ている水をペロペロとなめていた。
こうやって水分補給しているのか、ランドリザードって……。
「美味しいんですか、その水?」
「美味い。テイニーも飲むか?」
「そ、そうですね……。遠慮しておきます。すいません……」
魔物の体は丈夫だし、いくらリザにとって美味しく飲める水だとしても、僕達人間も問題なく飲めるとは限らない。
そもそもその水を飲む為には壁をなめる必要があるし、なるべく遠慮したい所だ。
「そういえばリザってどうしてここが自分の住処って分かるの? ここまで歩いてきたけど、どこがどこなんだか僕にはさっぱり分からなかったよ」
この洞窟はすごく入り組んでいる上、同じような道が続いている。
だからこそ、テイニーやレクみたいに方向オンチな人でなくても、迷う事は避けられないような場所だ。
だけどリザは迷わず自分の住処までたどり着いた。
何かを目印にしているんだろうか?
「……勘だ」
「……勘?」
「ああ、勘だ。俺、何となくここまでの道が分かる。何となくたどり着ける」
「それで大丈夫なものなの?」
「……多分。実際、俺、ここにたどり着けてる」
まあ確かにそれはそうなんだけど。
リザの言う事から考えれば、リザはここまでの道順を意識して覚えている訳ではないようだ。
野生の勘ってやつなんだろうか?
「まあ理由は何でもええやないか! リザはんは理由はよく分からんけど、ここにたどり着けとる。そして同じような感じで首都デコラーダに通じる道順も分かる。そういう事やろ?」
「ああ、メルの言う事、正しい」
「という事だそうや。つまりは何の心配もあらへんっつー事やな! 順風満帆、実に順調って訳や!」
「いや、メルの言う事、違う」
「……ん? 違うって何が違うんや?」
そう言って首をかしげるメル。
リザの言葉からすれば、リザはデコラーダまでの道順は分かるのに、順風満帆ではないという事なんだろうか?
「何か心配な事でもあるの、リザ?」
「ああ。俺、デコラーダへの道、分かる。でも、そこまで行くのは簡単じゃない」
「行くのを難しくする何かの原因があるって事だね」
「その通りだ。デコラーダへ行くには地底湖を通る必要、ある。でもそこの地底湖に続く道にはとても強いリザードマン、いる」
「とても強いリザードマン……でもリザも相当強い方じゃ?」
ランドリザードの必要カリスマ力は40~80で、リザはそのうちの78必要な個体にあたる。
確かに最強ではないかもしれないが、相当強い方にはなるはずだ。
「確かに俺、強い。だけどそいつ、もっと強い。だから順調じゃない」
「なるほど。だけど、僕達はどうしてもデコラーダに行かないといけないんだ。そのリザードマンが邪魔をするというのなら戦うしかないよね」
僕がそう言うと、メル達はこくんとうなづいた。
するとリザはそんな僕達の様子を見て……。
「……分かった。それなら案内する。あと俺、精一杯頑張って、テイニーと、テイニーの仲間をリザードマンから守る。それでいいか、テイニー?」
「はい。そうしてくれるとわたし、とても嬉しいです」
テイニーの言葉を聞いて、水を飲むのをやめたリザ。
それから決意をしたように前の方へと向いた。
「テイニーの言葉、受け止めた。俺、全力でみんなを守る」
そう言ってリザは唐突に前の方に歩き出した。
恐らく休憩が終わって、デコラーダへの道を歩き出したんだろう。
リザに置いて行かれたら僕達はここから出られなくなってしまうし、僕達は急いでリザを追いかけていくのだった。
それから歩く事、数十分。
リザが立ち止まった。
「どうしたんですか、リザ?」
「例の場所、着いた。あそこにいるのが、強いやつ」
そう言ってリザが指差した方向を見ると、確かにそこにはリザよりもさらに一回り二回りは大きな体をしていそうなランドリザードがいた。
一体あいつはどれ位の強さになるんだろうか?
「ヴァルド、あいつを使役する場合の必要カリスマ力はどれ位?」
「そうだな……ざっと見た感じだと120といったところか」
「ひゃっ、120だって!? それじゃCランク級の強さを持つって事じゃないか!? そんなランドリザードがいるものなのか?」
「アーク、あいつはランドリザードじゃない。グランドリザードだ」
グランドリザード。
ランドリザードの上位種でもあるその種族。
ランドリザードの中でも極一部の強い個体がその種族になると言われている。
そんな奴がこの洞窟にいるっていうのか。
「Cランク級やて!? それじゃ荒野を通るのと結局同じ位の危険度があるって事か? このルートは?」
「いや、そこまでではないよ。荒野にいるガルーダはCランクでも上位の強さを持つ魔物で、確か必要カリスマは150~250。だからガルーダよりは強くはないけど、簡単には倒せないだろうね……」
あのグランドリザードはCランク下位の強さを持つ。
だがいくら下位といっても、CランクはCランクだ。
今まで戦った魔物よりもだいぶ強い事は間違いないだろう。
「アーク、俺様が力を貸そうか? あいつさえ倒せれば、あとはそんなに大した奴はいないんだろ?」
「ありがとうヴァルド。だけど大丈夫。ここは僕達で何とかする。メル、テイニー、一緒に戦ってもらってもいい?」
「……もちろんや! 総力戦っつー事やろ? 実におもろいやないか! ウチの腕の見せ所やな!」
「はい、頑張ります! レク、リザ、わたしに力を貸して下さい!」
「もちろんだニャ! 今回は森の時みたいに音を出しちゃいけない訳じゃないからあっしのラッパが火を吹くニャ!」
「レク、ラッパは火を吹かない」
「そ、それ位分かってるニャ!? モノの例えってやつだニャ。それ位、リザも理解した方が良いニャ!」
「モノの例え……とりあえず理解、頑張る」
リザはレクの言葉を聞いて頭を悩ませているようだ。
どうやら比喩表現の事は理解出来ていないみたいだね。
「リザ、申し訳ないけど、悩むのは後にしてもらってもいいかな?」
「……あっ、すまない。俺、頑張ってみんなを守る」
「うん、その意気だ。それじゃみんな、行くよ!」
こうして僕達はグランドリザードの方へと駆け出していく。
初めてのCランク魔物との戦いが今、始まろうとしていた!




