27.ランドリザードが話せるようになりました
さて、テイニーは無事にランドリザードを使役する事が出来た。
ただ、これで終わりではない。
「えっと、アークさん。またお願いがあるんですけど……」
「うん、どうしたのテイニー?」
「良かったらこの子……リザの合成をお願いできないでしょうか!?」
リザの合成……。
ああ、どうやらテイニーは従魔のランドリザードにリザという名前をつけたようだね。
テイニーとレクがランドリザードに興味を持ったのは、どうしてランドリザードが同じ洞窟を住処とし、そして争うのか知りたい為だ。
つまりはリザが話せるようになる事が必要な訳で、その為には僕にリザを合成をしてもらわないといけないという事なんだろう。
「そうだね……。しても良いんだけど、前にも言った通り、合成にはリスクがある。僕は最善を尽くすつもりではあるけれど、それでも失敗する可能性は否定はできない。そして失敗してしまったら、そのリザを倒さなければいけなくなる。それでも、本当に良いんだね……?」
テイニーは僕の言葉を聞き終わると、すぐにうなづいた。
まあ、それを考慮してリザを使役しようとしていたんだから当たり前か。
言っちゃなんだけど、テイニーにとって、出会ったばかりのリザへの思い入れはそんなにないだろうし、失敗しても別のランドリザードを使役すれば良い。
代わりはいくらでもいるのだ。
「ただ……できればやっぱり失敗はして欲しくないです。その為に出来る事ならわたし、何でもしますので、何でも言って下さいね!」
「……うん、優しいテイニーらしいね。分かってる。僕も極力失敗しないように頑張るよ」
合成に失敗して魔物が暴走する所なんて見たくもない。
特にそれが僕自身が行った合成によるものなら尚更だ。
リザにも申し訳ないと思うし、失敗して良い事なんて何もない。
だから全力を尽くして、必ず合成は成功させてみせる。
「それじゃ、まずは他のランドリザードを探そう。合成する魔物がいないと合成は出来ないからね」
僕の言葉にこくんとうなづくみんな。
そして僕達はそれからしばらくリザに合成をする為に時間を費やした。
ゴンに合成する時と同じ要領で、見つけたランドリザードを次々とリザに合成していく。
ちなみにその時間を使って、ラスには自分で合成をしてもらっている。
スライムってどこの場所でもいるからね。
合成する場所を選ばないのって便利だよなぁ。
そしてしばらくリザに合成を行っていたある時。
「……テイニー」
「はい、アークさん、何でしょう?」
「いや、僕は呼んでないけど?」
「えっ、でもこの声、レクでもないですし……まさかっ!?」
テイニーはそう言うとリザの方を向く。
するとリザはテイニーの方を向いたまま……。
「テイニー、腹減った」
……空腹を訴えるのだった。
というか、まさか第一声がそれなんだ。
きっとテイニーに使役される前からだいぶ腹を空かしていたんだろうな……。
「あっ、待ってて下さい! 今、食料を出しますから!」
テイニーは慌てて自分のバッグの中を漁り、保存食料を取り出す。
それから入れ物を開けて、中身をリザへと手渡した。
「……どうでしょう、美味しいでしょうか?」
「……ああ、悪くない」
リザはテイニーに渡された食料をあっという間に平らげてしまう。
やはり相当腹を空かせていたようだ。
ある程度食料を平らげた事で満足そうな表情を浮かべるリザ。
……さて、リザも喋れるようになった事だし、例の事を聞いてみるといいのではないだろうか?
「テイニー、リザにあの事は聞かないの?」
「あっ、はい、そうですよね。えっと……リザ、さん。ちょっと教えていただきたい事があるんですけど……」
「テイニー、何を聞きたい? あと俺に丁寧な言葉、使わなくていい」
「あっ、はい、そうですよね。リザはわたしの従魔ですものね。うーん、でも……」
テイニーはそう言ってどうしようか戸惑っている。
テイニーは誰に対しても丁寧語で話しているから、逆にそうしないでくれと言われると困るのかもな……。
「別に嫌なら、無理しなくてもいい」
「そ、そうですか……? すいません、それならそうさせて下さい。わたし、この感じの方が落ち着きますので」
「落ち着くように、すればいい」
「あっ……そういえば聞きたいんですけど、どうしてリザ達、ランドリザードは仲が悪いのに一緒の場所に住んでいるんでしょうか?」
仲が悪いのに一緒に住んでいる。
確かに簡単にいえばそんな感じか。
種族として離れて暮らしているだけで、本当に仲が悪いと言えるのかどうか微妙な所だけど。
「別に俺達、仲悪くない。ただ自分の領域侵されるのが嫌なだけ」
「そ、そうなんですか。でも結局リザは一人で生活しているんですよね?」
「そうだ。誰も自分の領域に入れたくないから」
「でもそんなに自分の空間を求めるのなら、自分で新しく洞窟を作ればいいんじゃないでしょうか?」
「……それは難しい。俺達の洞窟には水脈が通ってる。だからいつでもどこでも水が飲み放題。でも新しい洞窟に水脈通すのはとても時間がかかる」
水脈か……。
つまりはもう既に水脈の近くまで通路ができている既存の洞窟を使った方が早いという事か。
新しく洞窟を作り始めても、水脈を通さないとまともに使えないし、それまでには膨大な時間がかかる。
それなら既存の洞窟を拡張していけばいい。
そういう考えなんだな。
「テイニー、喉渇いた。俺の住処、行ってもいいか?」
「……あっ、確かに食べた後はそうなりますよね。アークさん、リザの住処に行ってみてもよろしいでしょうか?」
「うん、いいよ。ついでに首都デコラーダに抜ける道を案内してくれると嬉しいな」
「……という事みたいです。お願いできるでしょうか、リザ?」
「ああ、任せろ」
リザはそう言うと、洞窟の方へ向かっていく。
テイニーはそんなリザに慌ててついていこうとする。
僕やメルもテイニー達についていく事にした。
おっと、その前に――
「あっ、みんなちょっとだけ待って」
「ん? どうしたんや、アークはん? あっ、そういえばヴァルドはんの事を忘れてたな、ウチら」
「うん、そういう事なんだ。ヴァルド、これから僕達は洞窟の中に長時間入る。そこでヴァルドにお願いがあるんだけど……」
「……か、体を小さくするやつの事なら、俺様は協力しないからな!?」
ヴァルドは僕が言いたい事を察したのか、あらかじめ先手で断りの言葉を入れてくる。
だけどここは僕も退けない。
「ヴァルドの気持ちは分かる。どうしてわざわざ体を小さくしないといけないんだって話だよね? だけどこれから必要な事なんだ。これからもヴァルドでは入れないような所に行かないといけない機会も出てくると思う。ただ、もしそれでヴァルドが同行しないで、その間に大変な事が起こって僕達がもうヴァルドと合流できなくなったら、ヴァルドにとっても嫌だろう?」
「確かにそれはそうだが……」
少し悩む様子を見せるヴァルド。
どうやら交渉の余地はありそうだ。
「ヴァルドはん、あんさんは魔王や。とても凄い存在や。それは大きさが多少小さくなった所で変わらん」
「ええ、そうです! 大きさが小さくなっても力自体は確か変わらなかったはず……わたし達にはヴァルドさんの力が必要なんです!」
「そ、そもそもあっし達には魔王様の姿は見えないニャ。だから特に恥ずかしがる必要もないと思うですニャ」
僕がヴァルドと話している事を察し、メル達が交渉の手助けをしてくれた。
うん、これはとてもありがたい。
「まあ、確かにそれはそうだよな。……アーク、体が小さくなっても、俺様の事を決してバカにしないよな?」
「うん、しないよ。別にそういう意図で使うつもりはないから。ただ単純に狭い場所でも一緒に来てほしいというだけで」
「……なら、分かった。協力しよう。アーク、その体を小さくするものを貸せ。俺様自らが抵抗力を弱めないと、それは効力を発揮しないからな」
なるほど。
ヴァルドは世界最強の魔物。
つまりは自らに及ぼす悪い効果への抵抗力も相当あるはずだ。
となれば、僕が無理やりヴァルドにその道具を使った所で効果はないという事か。
交渉しようとして良かった。
僕はリュックから体の大きさを変える薬の瓶を一つ取り出し、ヴァルドに手渡す。
そしてヴァルドはその瓶の中身を一気に飲み干した。
すると、巨大なヴァルドの体がどんどん小さくなっていき……。
「うわぁ、何か親しみやすさを感じるかもしれない……」
ヴァルドは結局、僕と同じ位の大きさまで縮む事になった。
ドラゴンなのに、僕と同じ位の大きさって何だか違和感があるな。
でも、これはこれで親近感があるし、良いんじゃないだろうか。
「アーク、俺様の事を馬鹿にしたんじゃないだろうな?」
「いや、単純に言葉通りの意味だよ。本来の大きさだとヴァルドは一種の巨大建造物的な目で見ていたけど、今は一人の人物として見れているというかさ」
「俺様はどんな大きさでも俺様だ。巨大建造物なんかじゃねえ!」
そう言うと若干機嫌を損ねるヴァルド。
だって、数メートルもあるドラゴンを見て、それが僕と同じような一つの生物といっても実感が湧かないよね。
本当に同じ一つの生命体なのか疑わしくなってくるんだ。
「アークはん、ヴァルドはんは大丈夫そうかいな?」
「うん、何とかね。もう出発しても大丈夫そうだよ」
「そうか。なら早速行こか!」
「うん、そうだね! ヴァルド、それじゃ行くよ」
「あーへいへい」
こうして僕達は大きさが縮んだヴァルドと共に洞窟の中に入っていくのだった。




