26.テイニーの従魔が増えました
「良かったね。テイニーはカリスマ力的にランドリザードを使役できるみたいだよ」
「そ、そうなのですか!? それは良かったです……!」
「アーク、そこでお願いがあるニャ。ランドリザードを使役するのを手伝ってほしいニャ」
まあ、そうなるだろうな。
何しろテイニーはレクしか使役していないから、攻撃手段を持たない。
だから自力で他の魔物を新たに使役する事ができないのだ。
魔物を弱らせないと従魔の儀式はできないからね。
「うん、もちろんだよ」
「……ありがとうございます、アークさん!」
僕の返事に喜ぶテイニー。
まあテイニーのカリスマ力に嫉妬して協力しない程、僕も子供ではない。
ぜ、全然羨ましくなんかないんだからね。
戦闘は僕が受け持つとして、後は肝心の使役するランドリザードを決めないといけない。
そこはテイニーに自分でやってもらう事にした。
「テイニー、良いランドリザードは見つかったかニャ?」
「うーん、えっと……あっ、あの子が良さそうです! 何だか強そうですし!」
テイニーが指差した先には一回り大きなランドリザードがうろついているのが見えた。
確かにテイニーが言う通り、強そうだ。
「テイニーの奴、なかなか強い個体を選んだものだな」
「確かに見るからに強そうだよね。ちなみにあのランドリザードを使役するにはどれ位のカリスマ力が必要なの?」
「そうだな。あいつを使役するには78のカリスマ力が必要だろう」
「78……。ランドリザードの必要カリスマ力が40~80という事から考えると、相当強い個体なんだろうね」
見た感じ強そうで、実際強いようだが、その分、使役する為には当然多くのカリスマ力を必要とする。
だが、テイニーはそれを上回る豊富なカリスマ力を持っている。
だからこそ、ランドリザードの中でも強そうな個体を使役したいという事も平気でできてしまうのだ。
というか、カリスマ力に恵まれた普通の魔物使いはこんな感じで強い個体を選んで使役するんだろうな……。
何か感覚の違いを思い知らされるんだけど。
「テイニー、あのランドリザードで本当に良いんだよね?」
「あっ、はい! ……ダメでしょうか?」
「いや、特に問題ないと思う。それじゃ僕は戦ってくるから、テイニーは従魔の儀式をする心の準備だけしておいて!」
「はい、分かりました!」
僕はラスとゴンを連れて、ランドリザードの近くまで駆け寄る。
するとランドリザードも僕達の事に気付いたようだ。
「さあ、二人ともいくよ! ラス、分裂して相手の足元を封じて! ゴンはその後にゴブリンパンチで相手に攻撃!」
「りょーかいだよー」
「…………一撃当てる」
僕の指示に従って、ラスは分裂させた体を相手の足元にしっかりと吸着させる。
急に足を動かせなくなったランドリザードはひるみ、その隙を狙ってゴンがパンチでランドリザードをなぎ倒す。
倒れたランドリザードの手足など主要な場所をラスの分体でさらに拘束していく。
うん、これでもう完全に身動きがとれないだろう。
「テイニー、今だよ!」
「あっ、はいっ! それではわたし、頑張ります!」
テイニーは倒れたランドリザードの周辺に駆け寄り、そして従魔の儀式を始めた。
随分とぎこちない動きだったので、見ているこちらがハラハラとしてしまうのだが、何とかなったようで……。
「……ふう、これで終わりなはずです。アークさん、わたし、しっかりと使役出来てますよね?」
儀式が終わったテイニーはその場にへたり込む。
僕はラスに拘束を解かせ、ランドリザードの様子を観察してみる。
するとランドリザードはすくっとその場に立ち上がる。
ランドリザードは先程まで必死に抵抗しようとしていたのが嘘のように、おとなしくしている。
その感じからすると、恐らく使役出来てはいると思うのだが。
「テイニー、ランドリザードに何か命じてみて」
「えっ、命じるって、何をですか?」
「別に何でも良いんだよ。ただ指示に従うかどうかを確認したいだけだから。例えば、レクを肩車してみるとかさ」
特に逃げようとしたり、敵意をむき出しにしてこない辺りから考えると、従魔関係が恐らく結べているとは思う。
だけど結局の所は、指示に従ってくれるかどうか見ないと分からないんだよね。
自分が魔物を従える時は、その魔物と繋がった独特な感覚があるから分かるんだけど。
他人が魔物を従えているかどうかはそういった事を試してもらわないと分からないのだ。
従魔関係が成立したら、基本的に従魔はその従者の指示に従って行動するはずだ。
気ままに行動するヴァルドという例外もあるけど、ヴァルドは特殊な例だから考えない事とする。
「わ、分かりました。それではランドリザードさん、レクを肩車してもらえますか?」
テイニーがそう言うと、ランドリザードはこくんとうなづき、レクへと近付いていく。
そしてレクを軽々と持ち上げ、レクを自身の肩に乗せるのだった。
「どうやらテイニーの指示に従っているようだね。従魔の儀式は成功したと言っても良さそうだ」
「本当ですか!? な、何とか出来たみたいで良かったです……」
そう言ってホッと胸をなでおろすテイニー。
従魔の儀式をする事に相当不安を抱えていたようだな……。
「テイニーってそんなに従魔の儀式をする事に不安を感じていたの?」
「はい。何しろ儀式をするのは随分と久しぶりのものですから……」
「そりゃそうだよね。そういえばテイニーって、レクをどうやって使役したの? だいぶ前に従魔にしたみたいだけど?」
「そ、それは――」
「ふむ。その事に関してはあっしから説明するニャ」
テイニーの言葉を遮って、そう言い始めるレク。
まあ、テイニーはだいぶ精神的に疲れているみたいだし、ここはレクから話を聞いた方が良さそうか。
「レク、よろしく頼むよ」
「頼まれたのニャ。それじゃ、早速話す事にするニャ」
レクはそれからしばらく話を始める。
その内容が以下の通りだ。
テイニーが15歳になってカリスマ力調査に行こうとした時、その調査してもらう場所までたどりつかずに町外れまで来てしまった。
その時、レクレスに棲みついていた野生の魔物であったレクは、そんなテイニーが困り果てている様子を見かけたので、声をかけ、目的地まで一緒に行ってあげる事にしたようだ。
しかし、二人とも方向オンチだったため、その日のうちに目的地にたどり着けず、カリスマ力調査をしてもらえなかったそうだ。
途方に暮れるテイニーだったが、そんなテイニーに自分を使役してみないかとレクが提案したのだという。
ケットシーの使役が出来る程のカリスマ力があれば、魔物使いとしての適性は十分ある事が分かるからだ。
そしてテイニーはレクの使役を試みようとした。
しかし、その儀式のやり方がなっておらず、失敗する事となる。
そこでレクはテイニーと一緒になって従魔の儀式のやり方を学び、二人で協力して儀式を何度も試したのだという。
こうして何度かやっていくうちにレクはテイニーの従魔になる事が出来たのだとか。
「なるほどね。確かにそれは儀式が成功するか心配にもなる訳だ」
「そういう事だニャ。正直一回で成功できるとはあっし、思ってなかったニャ!」
「れ、レク、酷いですよ!? わたし、あれから何度も本を読んで勉強したり、練習したんですから!」
「知ってるニャ。だからこそ曲がりなりにも一回で成功したのニャ。本当によく頑張ったニャ、テイニー」
ぶーっと頬を膨らませて不満げなテイニー。
でも、ちょっと経ったら笑顔を見せていたので、あんまり怒っている訳ではなさそうだったけどね。
「そういえばレクが従魔になったって、どうやって分かったの?」
「うむ、良い質問だニャ。それはあっしが明確にテイニーを仕える主だと認識できるようになったからだニャ」
「そういうものなの、ラス、ゴン?」
僕が自分の従魔に聞くと、こくりとうなづいていた。
なるほど、従魔にするとそういう効果があるのか。
「まあ従魔になる前と後でもそんなに関係性は変わらなかったけどニャ。別にもしテイニーにカリスマ力が足りなかったら、従魔のフリをしてそのままテイニーを助ける事も視野に入れていたニャ」
従魔のフリをしてテイニーを助ける、か。
確かにそういう事も出来てしまうのかもしれないな。
かつてのレクみたいに町に棲みついている野生の魔物の存在がいるとは本で読んだ事がある。
その例としてはケットシー、グレムリン、ドワーフなど、比較的友好的で、脅威にならずに共存出来る魔物が該当する。
そんな魔物が気に入った人に従魔のフリしてついていった所で、きっと町の人達も違和感を持たないだろう。
従魔であるかそうでないかが重要視されるのは、魔物が町に脅威をもたらさない事を保証できるか判断する為なのだから。
元々野生でも害をもたらさないそういった魔物の場合、従魔になってもならなくてもさほど変わらないんだろうな。




