25.テイニーとレクはランドリザードにご執心のようです
翌朝。
僕は出かける支度をして、外へと出る。
さて、今日はついに首都デコラーダを目指す日だ。
まずはみんなと合流しないとな。
とりあえずはテイニー達と合流しよう。
僕はテイニーの家の前までたどり着くと、そこには家の入口の前で立って待っていたテイニーとレクの姿があった。
「おはようございます、アークさん!」
「おお、今日は随分と起きるのが早いんだね?」
「はい! 今日は旅立ちの日ですから、いつもアークさんが来る時間よりも一時間は早く起きる事に決めていたんです!」
「まあ、テイニーがすぐに起きないから、結局出かける準備が終わったのは五分前なんだけどニャ」
「ちょ、ちょっとレク、余計な事言わないで下さいよ!?」
そう言うと顔を赤らめて恥ずかしそうにするテイニー。
……結局いつもとそれ程変わらない時間に起きたのか。
でもしっかりと休む事も大事だし、その方が良いんじゃないかな。
よく眠れなくて調子が出ないって方が辛いだろうからね。
こうしてテイニー達と無事に合流した僕は、今度はメルと合流する為、アツメル総合店に向かう。
メルはいつも通り店の宣伝をしていた。
そういえばこの店って不定期でやってるって本には書いてあったはずなんだけど、毎日やってるよね。
全く、どこが不定期なんだか。
「メル、おはよう」
「おお、アークはん、おはようさん。準備は出来たんかいな?」
「うん、ばっちりだよ。テイニー達も大丈夫?」
僕の言葉にこくんとうなづいて答える二人。
どうやら特に町でやり残した事はないようだ。
「みんな、大丈夫だって」
「よし、それじゃ行くとしよか。あっ、ちょっとだけ待っててや!」
メルはそう言うと、販売役の人と話をする。
すると販売役の人は何やら荷物をまとめ始めた。
その様子を見たメルは僕達の所に駆け寄って来る。
「待たせたな、それじゃ行こか!」
「メル、さっきはお店の人と何を話していたの?」
「ん? ああ、これからウチが旅立つ事を伝えたんや。そしたらそろそろ店自体を移動させようって事になってな。あっ、アークはんは気にせんでええよ? 店に関しては、いつも通り適当に護衛役の人を雇って移動させるからな!」
店を移動……?
メルのお店ってレクレスじゃない所でも販売をしているんだろうか?
「それって、お店がレクレスの町から移動するという事なの?」
「何や、アークはん知らんのか。ええか、アツメル総合店というのはな、定期的にあちこちの町をめぐって販売をする、いわば動く店なんや! だからこそ、全国のありとあらゆる物を取り揃えることも出来るんやで!」
ふーん、そうなんだ。
正直僕が住んでいた町にはそういう店に関する本が全然なかったから、知らなかったな。
移動する店、か。
そんな店をやってるなんて、メルって案外凄いんじゃ?
「メルって結構凄かったりする?」
「当たり前やろ? 何を今更な事を言っとるねん! まっ、ただそんな凄いウチでも、戦闘はそれほど得意ではあらへん。だから旅する時はまたグイグイ引っ張ってくれよな、アークはん!」
みんなを引っ張る、か。
まあ僕の旅にみんなが付き合ってくれているみたいなものだし、僕が頑張らないといけないという事だろうな。
僕達はそれからも適当に話しながら町を出て、目的地に向かって歩いていく。
ちなみにその中でメルの店に関する話題が出て、僕達がメルの店を守りながら行った方が本当は良かったのではと僕は言ったのだが、そうする訳にはいかないとの事。
荷物も多いし、比較的狭い洞窟を通るルートは厳しいらしい。
「きっと西側ルートを通る事になるやろな。つまりは荒野を突っ切るルートや」
「荒野を通るルートか……。僕もそのルートを選んでいたら守れたかもしれないんだけど、ごめん」
「いや、気にせんでええから。万が一同じルートを通るとしても、そんなアークはんに迷惑かけるような事はしたくあらへん。そもそもアツメル総合店にはたっぷり金があるから、強い護衛を雇うのなんて朝飯前なんや!」
「そ、そうなんだ……。それなら安心か」
レクレスのギルドの中には、だいぶ強そうな魔物使いがたくさんいた。
そういう人を複数雇えるのなら、きっとCランク魔物のガルーダに襲われても何とかなるんだろうな。
「……あっ、あそこに見えるのは洞窟の入口ではないですか!?」
テイニーがそう言うと前方の方を指差す。
するとその先には、確かに洞窟の入口らしき所が見えた。
「なるほどね。それじゃあそこに――」
「ニャニャ!? テイニー、あっちにも入口があるニャ! それにあっちにもそっちにも、たくさんありすぎるニャー!?」
洞窟の入口らしき所に近づいて行くと、また別の入口らしき所が目に入ってきたのだ。
果たして、どこが入口なんだろうか?
これじゃどこから入ればいいのか分からなくて迷うよなぁ……。
「たくさん入口があるみたいなんですけど、わたし達、どこに入ればいいんでしょう?」
「そうだニャ。入る場所を間違えたらダメだと思うけど、こんなにいっぱい入口があったら正しい入口なんて分からないニャ!」
確かに、入口がこんなにたくさんあって、その中の一つだけしか首都デコラーダにつながっていないというのならば、正直相当辛いものがある。
だけど僕はそんな事にはならないと思っている。
「テイニー、レク、そんなに心配しなくてもいいよ?」
「……えっ? でも、こんなに入口がいっぱいあっては……」
「大丈夫。確かに入口がたくさんあるけど、どの入口から入っても、首都デコラーダには到着できるはずだから」
「そ、そうなのですか? それって、好きな入口を選んでも問題ないという事でしょうか?」
「うん。そういう事。どうしてかというとね――」
この首都デコラーダまで続く洞窟というものは、人間が作ったものではない。
ランドリザードが作った巣がたまたま首都デコラーダまで通じていたから、それを人間が利用する事があるというだけなのだ。
ランドリザードは洞窟を巣としているが、食料は洞窟の外から調達する。
実際、レクレスの町からここに来るまでに、ちらほらとランドリザードの姿を見かけた。
そしてランドリザードは群れない。
まあ、つがいを見つけて、一時的に二体が一緒になる事があるけど、基本的には単独行動を好む魔物なのだ。
そんなランドリザードがみんな同じ洞窟を住処に選んでいる。
するとどうなるか。
ランドリザードは自身の縄張りを広げようと同種族と争う事もある。
だがそれにも限界があるだろう。
そこで、洞窟自体を拡張する道を選んだ者もいるのだ。
また、他のランドリザードと遭遇しないように洞窟の新たな入口を作る者もいた。
その結果、今見えるように、たくさんの入口が存在する事になったという訳である。
「なるほど……。つまりはどの入口もランドリザードの巣の入口ですから、どの入口から入っても正解だという事ですか」
「争わない為にこんなに入口を作るなんて変わった奴らだニャ。そんな事をする位なら自分で新しい洞窟を作ればいいのにニャ」
「僕もそう思うけどね。だけどランドリザードは喋れないし、どうしてそうしないのか聞く事もできないから、分からずじまいだね」
何でわざわざ同じ洞窟を好んで巣にするのか?
同じ洞窟を巣にして、同種族で争うなんてちょっと馬鹿らしい話だと僕もレクと同様思っていたりする。
だけどランドリザードは知能がそこまで高い魔物ではないから、言葉を話す個体はいないだろう。
故にその理由も知る事はないのだ。
……まあ、ラスやゴンと同じように、一体を使役して、ひたすら合成を繰り返せば、会話できるようになるかもしれないけど。
でもそこまでして知りたいとは思わないしなぁ。
そもそも僕のカリスマ力ではランドリザードを使役する事はできない。
ランドリザードを使役する為に必要なカリスマ力は40~80。
Dランク魔物だからこそ、使役するにはだいぶ多くのカリスマ力が要求されるのだ。
ちなみに最近ヴァルドから聞いた話によれば、今の僕のカリスマ力は12とのこと。
余剰カリスマ力が9しかない僕がランドリザードを使役するなんて夢のまた夢という話である。
「でも使役して、アークのラスやゴンみたいに合成を繰り返せば、言葉を話せるようになるかもしれないニャ?」
「う、うん、それはそうかもしれないけど。でもそんなに気になるの? それにそもそも僕のカリスマ力が足りないから、ランドリザードを使役なんてできないよ?」
「……アークさん。そういう事なら、わたしがランドリザードを使役します。そ、それなら問題ない……ですよね?」
そうおどおどしながら遠慮がちに言うテイニー。
そういえばテイニーはレクしか使役していないけど、テイニーってどれ位のカリスマ力があるんだろう?
始めからケットシーのレクを使役している位だから、僕みたいにカリスマ力に乏しいとも思えないけど。
「ヴァルド、テイニーってランドリザードを使役できそうなの?」
「ああ、全く問題はないぞ。カリスマ力的にはな。まあ、実際に使役して扱いきれるかどうかは別問題だろうが……」
「そうなんだ。ちなみにテイニーの今のカリスマ力ってどれ位あるものなの?」
「そうだな……テイニーのカリスマ力は100といった所か」
ひゃ……100だって!?
僕の十倍近くのカリスマ力があるって事じゃないか!?
才能がある魔物使いってそんなにカリスマ力があるものなのか。
なら確かに上位種族が現れたら、その強い魔物を使役すれば良いし、合成なんてする必要もないよな……。
聞かなければ良かったかもしれない。
ちょっとへこんだよ……。




