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30.リザに地図の見方を教えてみました

 洞窟を抜け、デコラーダの検問所近くまでたどり着いた僕達。

 その時にテイニーがリザに話しかける。



「リザは本来話せない種族なんですから、話しちゃダメですよ?」

「ああ、分かった。俺、話さないようにする」



 そういえばリザに注意喚起をまだしていなかったな。

 話してはいけないのはラスとゴンも同じだけど、二人はもうその状況に慣れているみたいだし。


 リザに注意を促した所で、僕達は検問所へと向かった。



「荷物チェックをしますので、荷物を出してください」



 全身鎧を身につけた人が二人、門を守っているようだ。

 フィラミルやレクレスにも門番の人はいたけど、その人達が軽装なのに比べると、随分と物々しい雰囲気が漂っているよな……。

 さすがは首都。

 守りもしっかりとしているという事か。


 しばらくすると無事に荷物チェックは終わり、通って良い事になったのだが。



「それにしても皆さん、ずいぶんと軽装ですね。大変失礼ではあるのですが……どこからいらっしゃったのですか?」



 あっ、やっぱり気になりますよねー。

 僕もテイニーもメルも一般市民とさほど変わらない服装をしている。

 普通は門番の人ほどではないにしても、多少はがっちりとした防具を身につけるものだろう。

 だから僕達がこんな頼りない格好でデコラーダまでたどり着けたのが不思議なんだろう、門番の人にとっては。



「ウチらはレクレスから来たんや。この二人の魔物使いさんに守ってもろた感じやな」

「ほう、それはそれは! 随分と強そうなリザードマンを連れていらっしゃいますものね! あなたの従魔なんですか?」

「えっ? あっ、はい、そうですけど……」

「なるほど。あなたの実力ならきっとどこのギルドからも引く手あまたでしょう! ご自分の納得できるギルドを是非選ぶと良いと思いますよ!」



 そう言って、僕達を見送る門番の人。

 当の言われた本人であるテイニーはきょとんとしていて言われている内容を理解できていないようだったが。


 僕達は軽く礼をしつつ、門から街の中へと入っていった。





「……えっと、アークさん。先程の言葉ってどういう意味でしょう? ギルドを選ぶってどういう事ですか?」

「ああ、テイニーは知らないんだ。いいよ、教えてあげる。この街、首都デコラーダにあるギルドは一つじゃない。四つあるんだ」

「えっ、四つもですかっ!? 一体何の為に……!?」

「うん、それはね――」



 首都デコラーダには魔物使いのギルドが四つあり、それぞれのギルドには名前がついている。

 そしてその四つのギルドは定期的に大会を開催し、どのギルドが一番なのかを争うイベントも開催されているのだ。

 その四つのギルドを簡単に紹介しておこう。


 まずはブレイブ・ディスター。

 赤色のリボンがトレードマークになっていて、ポリシーは勇敢な戦士。

 ここは僕の父親が所属している所でもあり、血気盛んな人達が多く所属しているようだ。


 次にウイング・サーデュラス。

 緑色のリボンがトレードマークになっていて、ポリシーは天駆ける翼。

 ウイングと名前につく事もあって、鳥系の魔物を従える人が多く所属しているらしい。


 三つめにアビス・アーノン。

 青色のリボンがトレードマークになっていて、ポリシーは全てを飲み込む深淵。

 何かを深く追求したり、探求するなど、研究者のような人が多く所属していると言われている。


 最後にジェネラル・レノス。

 黄色のリボンがトレードマークになっていて、ポリシーは普遍の機会。

 あらゆる人には魔物使いになるという機会があるという事を売りにしているようだが、いまいちパッとしないギルドだ。

 特徴がないというか……何というか。

 一時期栄えていた時はあったみたいなんだけどね。

 でもその時のギルドに関する記載があまりなかったので、どう凄かったのかよく分かってなかったりする。



「……なるほど。そんな事になっていたのですか、首都デコラーダって。レクレスとは全然違うんですね……」

「まあ、こんな事になっているのはここだけだよ。デコラーダ以外の町はレクレス同様、ギルドは一つだけだし、チーム分けなんてされていないから。知らなくても気にする事はないよ」

「そ、そうですよね。本当、首都って色々すごいんですね……」



 うん、首都デコラーダって今までの町とは色々違うと思う。

 僕達は門から出てだいぶ歩いて来てはいるけど、未だに遠くから見えた丸い巨大建造物の所までたどり着かないし。

 洞窟から遠目に見た感じだと、デコラーダの町はその建造物を中心に放射状になるような形をしていたから、このまま歩いて行けばそこまで必ずたどり着くと思ったんだけど。



「……あっ、あそこを見るニャ! あれって遠くから見えた丸くて大きい建物だニャ!?」



 レクが指さした方向には、確かに丸い巨大建造物があるようだった。

 という事は、もう少しで街の中心部にたどり着くという事だよな。

 本当に長かった……。



 その建造物の近くまでたどり着いた僕は、すぐそばにある店に立ち寄って地図を購入した。

 さて、これからどうしたものか。



「アークはん、とりあえず宿を探さへん? さすがに少し休みたいんよ」

「確かにそうだね。なら宿は……うん、この辺りが良いかな」



 地図によれば街の東部に宿が多くあるエリアがあるみたいだ。

 という事で、僕達はそこへ向かう事に。

 ちなみにメルとテイニーも地図を購入していた。

 といっても、テイニーが地図を持っていても仕方がないので、リザが地図を持つ事になったが。

 テイニーパーティの中において、方向の把握に関してはリザだけが頼りなんだ。

 頑張ってよ、リザ。

 頼りにしてる。



 宿をいくつかめぐって、良さそうな所を選んで泊まる事にした僕達。

 大きな荷物を宿の自分の部屋に置いて、必要そうな荷物を小さなバッグに詰め直し、再び外へと出る。



「さて、これからどうしようか? 僕は呪いの手掛かりを探す為に本屋めぐりをしようと思うけど」

「分かった。ウチも手伝うわ、アークはん」

「いや、僕一人で大丈夫。自分だけで探した方が隈なく探せると思うしさ。メルやテイニーは好きな事をしていて良いよ」

「なるほどなぁ。ほんならウチはちょっくら店に行ってくるわ」

「わたしは……あ、アークさんについていっても良いですか? 何かとっても迷いそうで不安なので……」



 そう言ってリザの方を見るテイニー。

 リザは頭にハテナマークをつけたような表情をしていて、地図をくるくる色んな方向に回していた。

 そういえばリザはランドリザードで、人間が作った地図なんて初めて見るだろうしなぁ。

 いきなり渡されても分かるはずもないか。



「えっと、リザ、これはこうやって見るんだよ」

「……そ、そうなのか?」

「うん。今いる場所はここなんだ。あそこに目印があるだろ? そうやって現在の位置を――」



 僕はリザに地図の見方の指南を行った。

 すると最初こそ戸惑っていたリザではあったが、少しすると。



「……分かった。俺の住処と仕組み、同じ」

「そ、そう? ま、まあ方法はともかく、理解してくれたならそれでいいけど」



 リザが住む洞窟とどう仕組みが同じなのかは僕には理解できないけど、何かしらのコツを掴んだみたいだね、リザは。

 これでテイニーパーティは安心か。



「リザはん、町中で話したらダメやろ。そういう時はジェスチャーか何かで反応するものや。話しかけたアークはんも少し声をひそめて話すようにした方がええな」

「……あっ、そういえばそうだね。用がある時は部屋に戻ってから話すように気を付けるよ」

「そうした方がええやろな。まあ今回はたまたま周辺に人はおらんようやし、大丈夫やろうけど。首都は広い分だけ色んな人がおる。つまりは悪い事を企む輩もいるっちゅーこと。十分警戒する事や」



 リザはメルの言葉を聞いてこくんと黙ってうなづいた。


 実際、メルの言う通りだ。

 首都には色んな人がいる。

 僕達が今いる通りはたまたま周囲に人がいない所みたいだったから良かったけど、そうじゃない所でリザが話している所を見られていたらどうなるか。


 本で読んだ事があるのだが、首都デコラーダには魔物さらいという、人の従魔を奪い取り、裏の世界で売買をする者がいるという。

 喋るランドリザードなんていたら、そういう人の目に留まってもおかしくないだろう。

 十分気を付けなくては。



「す、すいません、本当はわたしが注意すべき事ですのに……」

「気にせんでええって。ウチだって話すなと言われても話してまう事位あるからな。次、気を付ければええんや」

「そ、そうですね。わたしも十分気を付ける事にします」

「ごめんね、テイニー。僕が話しかけなければ良かったかもしれないのに」

「い、いえ、気にしないで下さい! わたしだっていつかは同じ場面になっていたでしょうから! アークさんは悪くありません!」



 僕を必死でかばうテイニー。

 そういえばテイニー達が三人で行動する場合、テイニーやレクがリザに行き先をたずねる事になるから、何かしらのジェスチャーでの答え方を考えた方が良いだろうな。

 リザが話したくなる場面は多くなるだろうから。



 こうしてリザは地図の見方を覚えたようだが、結局テイニー達は僕についてくる事になった。

 というのも、どこか行きたい所がある訳でもないからだそうだ。

 まあ行きたい所がないというよりは、どこに何があるか分かっていないというのが実情なんだろうけど。

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