18.テイニーとレクの思いを受け取りました
ゴンの強化も十分行ったし、僕達は一旦レクレスの町まで戻る事に。
とりあえずメルやテイニー、レクが持っているジャイアントの素材を処分しないと身動きがとりにくいからね。
少し歩いて町に着くと、メル達はアツメル総合店に一直線に向かう。
そして店にどさりとリュックを置くと、ジャイアントの部位を取り出してはその活用方法を何やら販売役の人と話し始めるメル。
販売役の人は最初、ジャイアントの部位を見てだいぶ困惑しているようだったが、すぐさま気持ちを切り替えたようで、どのように活用すれば良いのかメルと話し合っていた。
そして活用方法が決まったのか、販売役の人が、メルのリュックからジャイアントの部位を全て取り出して引き取る。
またテイニーやレクの分も引き取ってくれていた。
その間、メルはテイニーとレクにお金が入っているであろう小袋みたいなものを渡していた。
部位の売却分のお金を二人に渡したという所だろう。
すると、お金を受け取ったテイニーとレクは僕の所へやってきた。
「……アークさん、これ、受け取って下さい!」
そう言うとテイニーは先程メルから受け取った袋をまるごと僕に渡そうとしてくる。
……へっ?
いきなりどうしたんだ、テイニーは?
「えっ、いや、これはテイニーが持って来たものを売って手に入ったお金だよ? 受け取れないって」
「いや、これはわたしのお金なんかではないです! ジャイアントはわたしが倒した訳ではないですし、わたしはただ運んだだけ。それにいつもアークさんにはお世話になりっぱなしですし、これ位のお礼はさせてもらえませんか!?」
そう勢いよく言ってくるテイニー。
……うーん、困ったな。
まさかそんな事をテイニーが考えていたなんて思いもよらなかった。
すごく重そうにしていたから、町まで戻ってくる途中で持とうかと僕が言っても、頑なに拒んでいたし。
てっきり自分のお金にしたいからそう言っているのかと思っていたのに。
「アーク、ここは受け取っておくべきだニャ。テイニーはアークに少しでも役に立ちたいと思って、グロくても頑張って剥ぎ取りをしていたんだニャ。その思いを断るのは逆に罪なのニャ」
「……そ、そうなんだね。それならここはありがたく受け取っておくよ。ありがとう、テイニー」
僕が両手でテイニーから袋をもらうと、その上からレクが自分の持っている袋をどさっと乗せてきた。
「れ、レク……?」
「ちなみにあっしも同じ気持ちなんだニャ。この思いを受け取らないのは許さないのニャ?」
「レクまで……。うん、ありがとう。受け取っておくよ」
「……か、感謝されるまででもないのニャ。今まで迷惑をかけてきた分、当然なのニャ」
そう言って僕に背中を向けるレク。
その様子を見て、ふふっと笑みを浮かべるテイニー。
レクって照れ屋なんだろうな、きっと。
メルが販売役の人と色々と何か作業をしばらくしているのを眺める事、十分ほど。
ようやくメルはやるべき事を終えたようだ。
「すまへんな、だいぶ待たせてしもて!」
「もう大丈夫なの?」
「バッチリやで! 今すぐ行ける――と言いたい所やけど、ちょっとリュックの中身だけ洗ってきてもええか?」
「あっ……そうですね。わたしも洗いたいです」
「もちろんあっしもだニャ……」
テイニー達が使っていたバックやリュックにはジャイアントの血生臭いにおいが充満しているからね。
そりゃあ洗いたくもなるだろう。
「ここで待ってるから、洗ってきていいよ」
「すまへんな。すぐに戻ってくるから待っててや!」
「め、メルさん、私も一緒に行きます!」
「あっしも置いて行かないでくれニャ!」
メルの後を追うように急ぐテイニーとレク。
僕はヴァルドと共にアツメル総合店の近くで待つことになった。
「……足が痛ぇ」
「どうしたのヴァルド? もしかして筋肉痛?」
「そうかもしれないな。何せこんなに足を使ったのは生まれて初めてかもしれない」
「確かにヴァルドがこんなに長距離歩き続けるのって見た事ないかも。なんだかんだで空中にいる事が多いもんね。町の中では歩いているけど、町の中での移動距離はそれほどでもないし」
飛べないせいで、ひたすら道を歩く事になったヴァルド。
普段歩かない上に、いつもより重い体を支える必要があった為、足に大きな負荷がかかったのかもしれない。
ヴァルドは僕以外の人からは見えない存在ではあるけれど、体の重さというか、そういうものは普通に存在するみたいだからね。
「だが、だいぶ体は軽くなってきた。もう歩く必要はねえかもな。少し試してみるとしようか……ふんっ!」
ヴァルドはその場から勢いよく飛び上がる。
どうやら空を飛べるほどまで体は軽くなったらしい。
一通り空を堪能してからヴァルドは再び僕の近くに着地するのだった。
それからその場で待つこと数十分。
ようやくテイニー達が戻ってきた。
「いやぁすまん! 待たせたな、アークはん! いやぁ、なかなか汚れが落ちないねん。汚れ落とすのにだいぶてこずってしもたわ」
そう言って苦笑いを浮かべるメル。
まあ、ジャイアントの部位からはだいぶにおいが感じられたし、汚れも簡単には落ちない事が容易に想像はつくんだけど。
テイニーとレクはげっそりとした顔をしていた。
そりゃあ、ずっと重い荷物を運んだ上に、長時間洗い物なんてしたら疲れ果てるよなぁ。
本当はすぐにでも出発したい所だったけど、ここは小休止が必要そうだ。
「ねえ、テイニー。レクレスの町で美味しいお菓子のお店とか知らない?」
「お菓子のお店ですか? えっ、はい。いくつか知っていますけど……?」
「ちょっとそこで休憩しない? みんなだいぶ疲れただろうし、少し休んだ方が良いかと思って」
「そうだニャ! そうすると良いニャ、テイニー!」
僕の提案にレクはノリノリな様子だ。
先程までの疲れた顔が嘘のように元気な様子を見せているレク。
よほど休みたかったのか、それとも甘い物を食べたかったのかどちらかなんだろうな。
「そうですね……。その方がわたしも良いと思います」
「頑張った後のご褒美って奴やろ? とってもええな! 行くと決まったならさっそく行こか?」
「分かりました。では、わたしが案内しますね!」
みんな乗り気だったので、僕達はこれからお菓子の店に行く事に。
案内してくれるのは、地元の店に詳しそうなテイニー。
……って、ちょっと待てよ?
何だか嫌な予感がするんですけど……。




