17.ゴンも喋れるようになりました
「アークはん、ちょっとウチ、あのジャイアントの所に行って来てもええか?」
「あっ、素材の回収って事だよね? うん、行って来てもいいよ」
「わ、わたしもアークさんの邪魔にならないように行ってきますね。レク、行きますよっ!」
「ま、待つんだニャ、テイニー!」
ジャイアントの方へと駆け出すメルと、そのメルを追いかけるテイニーとレク。
ジャイアントはAランク魔物だし、その素材ともなれば、きっと十分な値段がつくんだろうな、きっと。
でも僕には時間がない。
とりあえずはゴンの育成を優先しないと。
僕はラスとゴンをいつも通り連携させることで、特に苦もなくゴブリンの身動きを封じる事に成功。
そしてゴンとゴブリンを合成させる。
それを何度か繰り返す。
すると――
「…………アーク」
ゴンがついに言葉を発したのだ!
最近は僕だけでなく、テイニーやメルが話す言葉に対しても聞き耳を立てているようだったので、言葉を理解し始めている事には気づいていたけど、ついにこの時が来たか。
これで僕の従魔は二人とも話せるようになったみたいだね。
さて、まだゴブリンの姿はあるようだし、もうちょっと合成を頑張って――
「あーく、あそこにぼくのなかまがいるよー。いっしょになってきてもいいー?」
ラスがそう言うので、辺りを見渡すと、確かに遠くにスライムが数体いるようだった。
だけど今の目的はゴンの強化だし、ラスの強化に回す時間はないだろう。
「ごめんね、ラス。ちょっと僕は手を離せないんだ」
「ぼく、きょかがあれば、かってにいっしょになることができるんだけど、だめかなー?」
……えっ?
許可さえあれば勝手に一緒になるだって?
確かにスライムって単細胞って感じだから、くっつくだけで一緒になったりする事もあるんだろうか?
ただ、それでも合成には変わりないだろうし、ちょっと不安だな……。
何か良い方法はないものか……?
……そうだ!
僕は先程ゴンを合成する時に使った陣の所まで向かう。
陣は基本的には使った後に消しておくものだが、直前に使った陣はまだ残っており、それならばまだ効力は残っているはず。
「ラス、それだったらここにある合成の陣を使って! この陣の中で一緒になる分には構わないよ!」
「ほんとー? ならそうするー」
そう言うとラスは体をぷにぷにさせながらスライムの方へと向かっていく。
果たして、ラスに任せて大丈夫なんだろうか?
ちょっと一回観察してみよう。
ラスはスライムの近くまで近付くと、ラスはまた引き返してくる。
すると複数体のスライムもこちらの方に向かってくる。
そして陣の所までたどり着いたラスは、同じく陣の所まで来たスライムを飲み込んでいく。
それを待っているスライムの数だけ繰り返していた。
どうやらラスは僕の指示通り、自分の力だけでスライムを陣の中に呼び込んで吸収しているようだ。
ただ、これって合成と言えるんだろうか?
「ヴァルド、この行動でラスは強くなっているの?」
「……そうだな。わずかではあるが、確かに強くなっているぞ。それほど体が不安定になっている事もないようだ」
「へぇ、そうなんだ。それなら合成とほぼ同じ効果があるという事か。こんな便利な事ができるんだなぁ。知らなかったよ」
ラスは自分だけで他のスライムを取り込んで強くなることができる。
この事が分かったのはだいぶ大きい。
この様子なら、余程強い魔物が生息している場所じゃない限りはラス単独で仲間集めをしてもらった方が効率が良さそうだな。
この作戦の欠点は、ゴンの強化をする時、ゴン単独で戦わないといけない事だ、
でもこの辺りのゴブリン位ならゴン単独でも余裕で勝つことができるから心配ない。
僕はこのままラスに自主合成をしてもらいつつ、ゴンの合成を続ける事にした。
ゴンの合成を続けて一時間ほど。
メルが声をかけてきた。
「いやぁ、待たせたな、アークはん。ジャイアントの体はホンマに大きいなあ。どこを剥ぎ取れば良いのかだいぶ迷ったわ」
そう言っているメルの背中に背負ったリュックを見ると、それは今にもはち切れそうなほどパンパンに入っていた。
後ろについてきているテイニーやレクのかばんにもグロいものの一端が少しのぞかせている。
「テイニーはそれをかばんに入れて大丈夫なの?」
「……は、はい! も、もう慣れましたから……」
「テイニーはこう見えても強い子だニャ。テイニーを侮るんじゃないニャ」
へえ、慣れたんだ……。
未だに僕は慣れないけどね、血で染まった魔物の部位を見るのって。
テイニーは僕が思った以上にたくましい性格をしているのかもしれない。
「部位の中でも価値の高そうな所だけは回収させてもろたけど、やっぱり回収できる部分はごく一部やな。割合にすれば一割にも満たないんちゃうか?」
「……となると問題は、残った死体をどうするかになるよね」
ジャイアントを倒したのはいいが、倒した後も当然死体は残る。
回収するにしても量が膨大過ぎるし、放置するにしても、あまりに巨大すぎるから人目につく事は間違いないだろう。
さて、どう処理したものか……。
「なあ、アーク。あのジャイアント、食ってもいいか?」
「えっ? 食べられるものなの?」
「俺様ほどになればほとんどの魔物は消化できるからな。で、どうなんだ? 俺様が食べきれば、死体も残らないし、特に騒ぎにもならないぞ? 何せ骨ごと食ってやるつもりだからな!」
骨ごと……か。
まあヴァルドは体も大きいし、消化の機能も優れているから、きっと巨大なものを食べるのには支障がないんだろう。
跡形もなくなって穏便に済ませられるのであれば、それに越した事はないか。
「うん、食べていいよ。できれば全部ね」
「よっしゃ! それじゃ食わせてもらうぜ!」
ヴァルドはそう言うと、すぐさまジャイアントの肉体にかぶりつく。
そしてその食べる勢いは衰える事なく、わずか数十分ほどで全てを平らげてしまった。
「信じられへんな。あの巨体を全て平らげてしもたんか、ヴァルドはんは……」
「フッ、これ位俺様にはチョロいもんよ」
ヴァルドはそう言って満足げな様子を見せていた。
やっぱりいくらヴァルドの体が大きいとはいっても、ジャイアントの体のほとんどを平らげたとなると、ヴァルドのお腹はぽっこりと膨らんでいて、飛ぶのが大変そうだ。
「ヴァルド、その状態で飛べるの?」
「あったり前よ! よく見ときな! ……って、あれっ、飛べねぇ!? な、なんだよ、これっ!?」
どうやらヴァルドは体が重すぎて飛べないようだ。
そりゃ、その見た目からして飛ぶのに苦労しそうだもんな。
無理もないよ。
「食べ過ぎたんだよ、ヴァルドは。しばらく消化されるまではおとなしくしていた方がいいね」
「く、くそー! まだ全然余裕で食えるってのにそんなのアリかよ、おいっ!」
いや、別にあとどれ位食べる余裕があるかは関係ないと思うんだけど。
どれ位食べたかが問題なのであって。
案外ヴァルドってジャイアントを完食するような量までは普段は食べてないんじゃないだろうか。
ヴァルドって、結構強がりを言ったりするからね。
十分あり得ると思う。




