19.エルフ対策を考えてみました
「そういえばテイニーはどの名前のお店に行こうとしているの?」
「えっとですね……確かフルーツパフェ・レクレクという名前のお店だったと思います」
「レクレクやて? それならさっきの角を左に曲がった所にあるはずやで?」
「あれっ、そうでしたっけ……?」
「とりあえずメルが言ったルートを通ってみよう」
僕達はメルが言った曲がり角まで一旦戻り、そしてメルが言った方向へと進んでみた。
すると――
「あっ、ここです! わたし、ここに行きたかったんです!」
どうやら目的地に着けたらしい。
本当、メルがいて助かったよ。
メルがいなければ、また到着するまでに数時間は平気でかかっていただろうな……。
もしそうなっていたら、とても休む所の話ではなかった。
というか、そもそも店の場所を方向オンチのテイニーに聞いた僕が馬鹿だったな。
今後は気を付ける事にしよう。
僕達はパフェのお店の中に入り、それぞれ食べたい物を注文していく。
ちなみにみんなのパフェ代は僕が払っておく事にした。
テイニーとレクからたくさんお金をもらったというのもあるし、みんなに恩返しをしておきたいからね。
「いやあ、このパフェ美味いなぁ。アークはん、本当ごちそうさんやで!」
「本当に美味しいです。アークさん、ありがとうございます」
「いや、これ位どうってことないよ。みんな、頑張ってくれたからね」
椅子に腰かけ、甘いパフェを頬張るみんな。
疲れた体にその甘さが染みわたる。
……さて、休んでいる所申し訳ないけど、ちょっと話し合っておかない事があるんだよね。
「ねえ、みんな、話し合っておかなければいけない事があるんだけど……」
「そやな。エルフの髪をどうやって確保するか。それをアークはんは話し合いたいんやろ?」
「うん、そうなんだ。エルフはDランクの魔物。それに集団性を持つ魔物でもあるんだ。だから作戦を立てておきたいと思って」
メルは僕が話したい事に気付いていたみたいだ。
やっぱり随分と勘が良いみたいだな。
「集団性を持つ魔物ならば、またレクの技を使えばいいのではないでしょうか?」
「普通そう思うやろな。せやけどエルフの生息する地域はそんな単純な話やないねん」
「えっ? それはどういう事です?」
「レクの技を使えば、確かにエルフの連携を断ち切る事はできる。だけどそうする事によって、音に敏感なマンドラゴラが襲い掛かってくるリスクがあるんだ」
僕の言葉にうんうんとうなづくメル、対しておろおろと戸惑うテイニー。
どうやらメルはこの厄介な問題について気付いていたようだ。
まあ、メルは魔物の技を模倣する魔法使いだからこそ、魔物の生態には人一倍詳しいんだろうな。
「えっ、それじゃあどうすればいいんですか?」
「だからそれで困っているんだよ。レクの妨害技を使わなければ、エルフは連携をしてくるから複数のエルフと戦わなければならない可能性が高い。技を使えば、大量のマンドラゴラに襲われるかもしれない。どちらも厳しい状況になる事は間違いないと思うんだ」
「せやな。どちらも非常に厄介な事になりそうや。それに森の中やから、ヴァルドはんは連れて行けない。そういう事やろ、アークはん?」
「うん。森の中はヴァルドが入れるほど広くないからね。むしろこういう状況でも今後も連れていけるように、頑張らないといけない事なんだから」
直近で言えば、洞窟を通る時に同行してもらう為。
今後もまた別の森の中に入ったり、狭い所に入る機会もあるだろうから、その時にも同行してもらえるよう、このヴァルドの大きさを変える為の道具は早い段階で用意しておきたいんだよね。
「そういえばこういう話ってしてもいいもんなん? ヴァルドはん、嫌がっておるんやろ?」
「まあヴァルドはこの話を聞き流しているみたいだから問題ないよ。そもそも今はこの場にいないしさ」
「そうなんか? どこかへ飛んで行ったという事なんかいな?」
「うん。まあ食べた後はするべき事があるだろうから、そういう事じゃないかな……。きっと少ししたら戻ってくると思うよ」
ヴァルドはこうやって僕達がしばらくその場から動かない時を見計らって、遠くに出かける事がある。
普段はそういうタイミングで食事などをしているんだと思う。
僕に食事を寄越せみたいな事を言った事はないからね。
「テイニー、一つ確認しておきたいことがあるんだけど、いいかな?」
「はい、何でしょう?」
「前、レクの技を使ってもらった時、僕達はレクの技の影響を受けなかったよね? あれってどういう事なの?」
「あっ、はい。あれはですね、あらかじめ味方を指定しておくことで、その味方だけは技の影響を受けないようにする事ができるんです!」
「なるほどね。逆に技の影響を与える人を指定する事はできないかな? そうすれば特定の相手、つまりエルフだけに技の効果を与えられる。そうしたらマンドラゴラも呼び寄せないで済むんじゃないかな?」
「おー、確かにそうやな! どうなんや、テイニーはん!?」
僕がそうテイニーに聞くと、テイニーは難しい顔をしていた。
その感じからすると、あまり期待できそうにないか……。
「すいません。それはちょっと厳しいと思います……」
「そうだニャ。音色は基本的には届かせる事が前提になっているから、特定の範囲にだけ届かせるという事は、特定の範囲以外の範囲を全て味方指定しないといけなくなるニャ。それはさすがに厳しいのニャ……」
なるほど、やっぱり厳しいか。
テイニーがレクの技を使う時、味方の指定をするみたいな事をつぶやいていた事がある。
だからこそ、基本的には全範囲に技を届かせる事前提の技なんだろうという事は何となく察しはついていた。
ただ、そうなるとどうすれば良いんだろう?
エルフの集団と戦った方が良いのか、それとも何体来るか想像もつかないマンドラゴラの集団を相手にする方が良いのか……?
「やっぱりそうなるよね。僕も何となくそうなんだろうなと思っていたよ」
「す、すいません……。お役に立てなくて」
「いや、気にしなくていいんだよ。技自体がそういうものなんだし、テイニー達にはどうする事もできないのだから。でも、そうするとどうしたら良いんだろうなぁ?」
「……アークはん、ウチにちょっと考えがあるんや。聞いてくれへんか?」
「何か考えがあるの、メル?」
「そうなんや。ここはウチの出番と思ってな。ただ、この作戦をする場合、ウチはテイニーはんとレクはんをかばう余裕はなくなるねん。つまりはテイニーはん達は自分で自分の身を守らなくてはならなくなるんや」
「……詳しく内容を聞いてもいい、メル?」
テイニーとレクも、僕と同様、メルの話を聞こうと、固唾を呑んで見守っていた。
そんな状況を確認した後、メルはゆっくりと口を開く。
「分かった。それじゃ言うで? 簡潔に言えばな、ウチが上級魔法を使えば、一体のエルフだけを隔離する事ができるんや。その状況の中で、アークはんがそのエルフと戦い、エルフの髪を得る。そういう作戦や」
「なるほど。そして上級魔法という位だから、魔力消費も激しいし、集中力が必要となる。だからこそテイニー達を守る余裕がないと?」
「そういう事やな。いくらエルフを一体隔離したからといって、他の魔物がその間に襲ってこないとも限らん。そうなるとテイニーはんを守る人がいなくなる。ちなみにその技を使っている時のウチは無防備な状態やから、ウチも危ない状態になる。せやからこれは一種の賭けになる訳や」
なるほど。
確かにメルが起こせる現象は、マンドラゴラを刺激せずにエルフだけに隔離効果のある、まさに理想的な技。
ただその技を使うにはかなりの集中力が必要となり、メルはテイニーを守るどころか、自分自身も危なくなる。
上手くいけば最高だが、下手すればみんな共倒れにもなりかねない、言葉通り、一種の賭けになるようだ。
さて、これはどうしたものか……。




