本当は誰かに聞いてほしかった
とはいえ、課外活動については評価を上げるために本当に必要だと分かってもらえたから、現在行っている分を辞めなくて済むから助かった。
先生たちからの評価が低い私は、奉仕活動をして点数を補充しないと本当に進級が危ういのだ。
「疲れた……」
つい本音が口から洩れる。
セナと会話をするといつもこうだ。疲労感に襲われて気分が悪くなる。深呼吸していると、頭上から声が降ってきた。
「えっと、大丈夫?」
「ひゃっ!」
驚いて小さく叫び声をあげてしまった。
顔をあげると、そこにはベアトリス先生とマチアス先生が並んで立っていた。引きつった表情で私を見ている。
彼らの指には火をつける前の煙草。
一服するつもりだったようだ。
私の目線に気づくと彼らは慌てて煙草をケースに戻して、喫煙所が無くて……となぜか言い訳をしていた。
「通りがかったらちょっと話してる内容聞こえちゃって……わざとじゃないんだけど、盗み聞きみたいになってごめんね」
「あ、いえ。すみません、お見苦しいところを」
裏庭でこっそり一服しようとしたら、たまたま私たちの会話が耳に入ってきたと早口に説明される。
決して後をつけてきたわけじゃないと、またなぜか言い訳をしていた。
「いやいやいや。えーっと、どうしようかな。内容的に、聞かなかったことにはできないなあ。申し訳ないけど、お話聞かせてもらっていい?」
「え……」
ベアトリス先生が近づいてきたので、押されるように後ずさる。すかさず私の後ろにマチアス先生が道をふさぐように立った。
決して逃がすまいとする二人の息の合った連係プレーに、私はすぐ白旗をあげた。
「顔が真っ青だ。保健室で休んだほうがいい」
「う……はい」
しっかり二人に両側を挟まれ、保健室へ連行される。
「カモミールティーだけど、飲める?」
「あ、はい……」
「まずお茶を飲んで。話はそのあとで」
椅子に座らされ、温かいお茶を出されてしまえばもう逃げようがなく、二人に見つめられながらちびちびと熱いお茶を飲む。
先日とは違い、今日は全部話すまで逃がさないぞという圧をひしひしと感じる。
カップ半分ほどお茶を飲んで、冷えていた指先が温まってきたあたりで先ほどの件についてベアトリス先生が話を切り出した。
「それで、だいたい聞こえていたんだけれど、役目だとか? 役割って何? この間のトラブルの原因ってさっきの彼と関係あるんじゃないの? どうしてそんなことになったの?」
どうやら一から十まで全部聞かれていたようだ。
「ええと……はい」
「嫌われ役になれって彼に命令されているの? そんなのどう考えてもおかしい役割じゃない」
「色々と、事情がありまして」
「「その事情とやらを説明して」」
二人して声を揃えてぐいっと顔を近づけ迫ってくる。
どうしてこの先生たちはこんなに私の事情に首を突っ込んでくるのだろう。
クラスの先生も、教科担任の先生たちもクラスで浮いている私を疎ましく思っていて、授業で困っていても助け舟を出してくれることはない。
まったく関わりのないこの人たちがこんなに事情を聞きたがる意味が分からない。
――――でも、関わりがない人なら、セナのことを話しても大丈夫かもしれない。
ベアトリス先生は保健室の先生だし、秘密を守ると自分で宣言したのだから、言い触らしたり担任の先生にも勝手に伝えたりしないだろう。
それに正直、私自身が誰かに愚痴を吐きだしたいと内心思っていた。誰にも「つらい」と言えない状況に限界がきていた。
「えっと……話せば長くなるんですけど、聞いてもらえますか?」
「「聞くよ」」
膝を揃えて聞く姿勢になる二人に苦笑しつつ、私は過去を思い出しながら口を開いた。




