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幼馴染ふたりに溺愛されるヒロイン、の友人A  作者: エイ


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セナ・ブランシェから課せられた『役目』

 

「勉強がどーとか言い訳したみたいだけど、困るんだよね。ルイは単純だから納得してたけど、僕は許してないから」

「言い訳じゃなくて……本当に私、成績に不安があるから、予習も奉仕活動も必要なの。クラスで浮いているから、先生からの評価も低いし……」

「嘘だよね。成績だけなら上位クラスに滑り込める順位だって知ってるんだけど? 辞退したのはさ、僕たちと同じクラスになりたくなかったのかな」

「……そんなことないよ」


 否定するが、どうせセナには嘘だと見抜かれる。そもそも、上位のAクラスを辞退した件も話していないのに当たり前のように把握されていた。

 人心掌握術に長けている彼には、私の愚かな考えなど全部見透かされているのだ。


「アンナは余計なことは考えなくていいんだ。今までどおりココの良き友人としての役割を果たしてくれればいい。君にだって僕らと一緒にいることでメリットがあるだろう?」

「メリットとか……むしろ私にとっては、デメリットのほうが大きいよ。女生徒たちに私がどんな目で見られているか、分からないわけじゃないでしょ。今日だって……」


 今日の出来事で気持ちがささくれていた。普段なら言い返したりしないのに、つい不満を口にしてしまうと、セナの顔から表情が消えた。

 ひゅっと息を呑んで口を噤んだ。


 セナは無表情のまま、距離を詰めてくる。


「それも含めて、僕が君にお願いしたことなんだけど、まだ理解していなかった? ココを守るために君が女生徒たちのヘイトを引き受けるって約束したはずだよ。それがやっぱり嫌になったからって『役目』を放棄するの?」


 役目、という言葉にざあっと血の気が引く。

 その言葉は私につけられた首輪。この学校生活において、私はセナに手綱を握られている。

 セナたちと一緒にいることで私にはデメリットしかない。それなのに離れられないのは、このセナと無理やり結ばされた約束があるから。


「そ、そんなの最初から嫌だったよ! セナがそう仕向けてきただけで、嫌われ役を引き受けるなんてしたいわけないじゃない!」

「でもアンナは断ることだってできたのに、保身のために僕と約束をしただろう? 君はココを守るために僕らのそばにいる。その代わり、僕は君が無事に学校生活を送れるよう守る。少なくとも僕はその約束を守ってきたつもりだよ」

「だ、だって……」

「約束をなかったことにしたい? だったら僕も君から()()()()けど、それでもいいの?」


 手を引くという言葉は私にとっての死刑宣告だ。

 この言葉を言われたら、何も逆らえなくなる。

 全面降伏の姿勢で頭を下げた。


「ごめん、ごめんなさい。でも本当に、私皆から嫌われてるせいでペーパー試験以外の評価が下がっているの。グループで作業する課題ができなくて、協調性ないせいだって先生にも怒られて最低評価になるし……課外活動で点数をもらわないと、下位クラスへ落ちるどころか進級できなくなるかもって注意されて……怖くて」


 涙声で必死に謝罪すると、それまで無表情で見つめていたセナの頬がふっと緩む。


「そっか、確かにグループ活動の点数がアンナは足りないか。ごめんね、僕が気づいてあげればよかったね」

「っ、うん、そうなの」

「もっと早く相談してくれれば良かったのに。アンナはなんでもひとりで解決しようとするから僕も心配しているんだ。もっと僕を頼ってよ」

「ごめんなさい、精神的に余裕がなくて。それに、あの、皆の前で私のほうからは、セナに話しかけられないから……」


 私が彼に話しかけることなどできない。そんなことをすればどれだけの反感を買うか分からない。セナはその意味を理解したらしく、更に態度が軟化した。


「そうだね、僕がもっと気にかけてあげなきゃいけなかったね。ごめんよ、最近鬱陶しい人が増えてきていたのに対応が遅れたな。君の気持ちも考えず、キツイことを言って悪かったね」

「あ、ううん、分かってもらえて嬉しい……」


 セナに優しい言葉をかけられると嬉しくてたまらない気持ちになる。この状況に追い込んでいる張本人だというのに……。

 私を追い詰めているのは、この人。でも私を助けてくれるのも彼しかいない。


「ココには上手く言っておくよ。アンナの心配事も僕に任せてくれていいから」

「あり、がとう……」


 ことさら優しい声で呼びかけられ、苦々しい気持ちで頷く。

 従順になった私に満足したのか、セナは大きな手で頭を撫でて微笑んだ。


「つい感情的になっちゃったけど、僕はアンナのことを気に入っているし、とても信頼しているんだよ。だからもっと心を開いてくれると嬉しいな。じゃあ、僕は行くから。奉仕活動頑張ってね」

「う、うん。ありがとう。頑張るね」


 完璧な笑顔のままセナは踵を返して去っていった。

 彼の姿が見えなくなるまでその背中を見送り、完全に姿が消えたところで大きなため息をついて地面にしゃがみこんだ。


 ――セナに反論するなんて、馬鹿な真似をした。


 とはいえ、課外活動については評価を上げるために本当に必要だと分かってもらえたから、現在行っている分を辞めなくて済むから助かった。



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