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N.O.AH  作者: トマト


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7/9

深海の追跡者

午前2時13分。


海底都市ネレイア


宿泊区画。



「……眠れねぇ」


リオは天井を見ていた。


隣の部屋からは、


ガン!!


ドゴォ!!


「エナァァァァ!!」


「ちょっ、待っ、違っ――!!」


という騒音が聞こえてくる。



リオは嫌な予感しかしなかった。


部屋を開ける。


案の定だった。



エナが床に転がっていた。


頭から煙。


顔面に工具箱。


ガルドが腕を組んでいる。



「何したんだよ」


リオが聞く。


エナは親指を立てた。


「義腕の出力テスト」


「船でやれ」


「壁が吹き飛んだ」


「見りゃ分かる」



宿の壁には大穴。


向こうの部屋のネレイス住民がキレている。


「出ていけ!!」


「申し訳ございません!!」


エナが土下座。


リオは頭を抱えた。



その時。


ミラが突然立ち止まる。


「静か」


「え?」


空気が変わった。


ミラの表情が固まる。


嫌な種類の警戒。



次の瞬間。


都市全域停電。



真っ暗。


警報。


悲鳴。


混乱。



「うわっ!?」


リオが叫ぶ。


「誰か照明!!」


「騒ぐな」


ガルドが冷静に言う。


「お前夜目効くの!?」


「効かん」


「じゃあなんでそんな落ち着いてんだよ!」



その時。


エナの義眼が赤く光る。


「んー」


「これ停電じゃない」


「何が違うんだ?」


「通信網ごと落ちてる」


空気が変わる。


それは事故じゃない。


攻撃だ。



ミラが低く言う。


「来た」


その声だけで、

リオの背筋が寒くなった。



窓の外。


海。


暗闇。


その中に赤い光。


一つ。


二つ。


十。


二十。



何かいる。



エナがモニターを展開する。


顔色が消える。


「嘘でしょ」


「なに」


「ユニオン特殊部隊」


「は?」



正式名称。


《中央同期保安局特殊回収班》。


通称。


“回収者”



噂だけは聞いたことがある。


国家機密。


危険人物。


研究対象。


全部連れていく連中。


帰ってきた者はいない。



「なんでこんな所に」


リオが言う。


ミラは静かに答える。


「私」


全員が黙る。



リオは少しイラッとした。


「お前毎回そうだな」


ミラが見る。


「え?」


「お前追われてる」


「お前秘密ある」


「お前何か知ってる」


「でも何も言わない」


珍しく強い口調だった。



ミラは少し驚いていた。


リオは基本的に怒らない。


だから。


余計に。



数秒。


沈黙。



ミラが言う。


「……怖いから」


リオが固まる。



「言ったら」


「みんな巻き込む」


「だから言えない」


その声は小さかった。



エナも。


ガルドも。


何も言わなかった。



その時。


爆発。


宿泊区画の外壁。


海水侵入。



「うおおおおお!?」


リオが吹っ飛ぶ。



特殊部隊突入。


黒い装甲。


白い発光ライン。


完全武装。



先頭の兵士が言う。


「対象ミラ確保」


「R-09確保」



「またそれぇぇぇ!!」


リオが叫ぶ。



戦闘開始。



ガルドが即射撃。


一人沈む。


二人目。


三人目。


相変わらずおかしい。



「おっさん強すぎだろ!!」


「今さらか」



エナは義腕展開。


六本全部。



「はいはい暴れますよー!!」


ワイヤー射出。


銃奪取。


感電。


壁叩き付け。



「うわエグっ」


リオが引く。



「褒めて?」


「怖い」



ミラは影みたいに動く。


静か。


速い。


正確。



その姿を見て、

リオはふと思う。



この子。


ずっとこうやって逃げてきたんだ。



子供の頃から。


たぶん。


ずっと。



その時。


特殊部隊隊長が前へ出る。



他と違う。


背が高い。


白い仮面。



隊長がミラを見る。



「久しぶりだな」



ミラの顔色が消える。



「……兄さん」



全員が固まった。



リオ。


「は?」


エナ。


「え?」


ガルド。


「チッ」



仮面の男は静かに言う。



「帰るぞ、ミラ」



ミラの手が震えていた。



その頃。


ユニオン中央同期塔。



暗い演算室。



モニターにはミラ。


そしてリオ。



《N.O.AH適合率》


48%



研究員が言う。


「予想より早いです」



奥の人物が答える。



「当然だ」



「兄妹は引き寄せ合う」



画面の中で。


仮面の男が静かに微笑んでいた。

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