深海の追跡者
午前2時13分。
海底都市。
宿泊区画。
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「……眠れねぇ」
リオは天井を見ていた。
隣の部屋からは、
ガン!!
ドゴォ!!
「エナァァァァ!!」
「ちょっ、待っ、違っ――!!」
という騒音が聞こえてくる。
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リオは嫌な予感しかしなかった。
部屋を開ける。
案の定だった。
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エナが床に転がっていた。
頭から煙。
顔面に工具箱。
ガルドが腕を組んでいる。
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「何したんだよ」
リオが聞く。
エナは親指を立てた。
「義腕の出力テスト」
「船でやれ」
「壁が吹き飛んだ」
「見りゃ分かる」
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宿の壁には大穴。
向こうの部屋のネレイス住民がキレている。
「出ていけ!!」
「申し訳ございません!!」
エナが土下座。
リオは頭を抱えた。
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その時。
ミラが突然立ち止まる。
「静か」
「え?」
空気が変わった。
ミラの表情が固まる。
嫌な種類の警戒。
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次の瞬間。
都市全域停電。
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真っ暗。
警報。
悲鳴。
混乱。
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「うわっ!?」
リオが叫ぶ。
「誰か照明!!」
「騒ぐな」
ガルドが冷静に言う。
「お前夜目効くの!?」
「効かん」
「じゃあなんでそんな落ち着いてんだよ!」
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その時。
エナの義眼が赤く光る。
「んー」
「これ停電じゃない」
「何が違うんだ?」
「通信網ごと落ちてる」
空気が変わる。
それは事故じゃない。
攻撃だ。
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ミラが低く言う。
「来た」
その声だけで、
リオの背筋が寒くなった。
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窓の外。
海。
暗闇。
その中に赤い光。
一つ。
二つ。
十。
二十。
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何かいる。
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エナがモニターを展開する。
顔色が消える。
「嘘でしょ」
「なに」
「ユニオン特殊部隊」
「は?」
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正式名称。
《中央同期保安局特殊回収班》。
通称。
“回収者”
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噂だけは聞いたことがある。
国家機密。
危険人物。
研究対象。
全部連れていく連中。
帰ってきた者はいない。
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「なんでこんな所に」
リオが言う。
ミラは静かに答える。
「私」
全員が黙る。
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リオは少しイラッとした。
「お前毎回そうだな」
ミラが見る。
「え?」
「お前追われてる」
「お前秘密ある」
「お前何か知ってる」
「でも何も言わない」
珍しく強い口調だった。
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ミラは少し驚いていた。
リオは基本的に怒らない。
だから。
余計に。
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数秒。
沈黙。
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ミラが言う。
「……怖いから」
リオが固まる。
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「言ったら」
「みんな巻き込む」
「だから言えない」
その声は小さかった。
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エナも。
ガルドも。
何も言わなかった。
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その時。
爆発。
宿泊区画の外壁。
海水侵入。
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「うおおおおお!?」
リオが吹っ飛ぶ。
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特殊部隊突入。
黒い装甲。
白い発光ライン。
完全武装。
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先頭の兵士が言う。
「対象ミラ確保」
「R-09確保」
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「またそれぇぇぇ!!」
リオが叫ぶ。
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戦闘開始。
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ガルドが即射撃。
一人沈む。
二人目。
三人目。
相変わらずおかしい。
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「おっさん強すぎだろ!!」
「今さらか」
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エナは義腕展開。
六本全部。
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「はいはい暴れますよー!!」
ワイヤー射出。
銃奪取。
感電。
壁叩き付け。
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「うわエグっ」
リオが引く。
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「褒めて?」
「怖い」
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ミラは影みたいに動く。
静か。
速い。
正確。
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その姿を見て、
リオはふと思う。
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この子。
ずっとこうやって逃げてきたんだ。
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子供の頃から。
たぶん。
ずっと。
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その時。
特殊部隊隊長が前へ出る。
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他と違う。
背が高い。
白い仮面。
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隊長がミラを見る。
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「久しぶりだな」
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ミラの顔色が消える。
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「……兄さん」
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全員が固まった。
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リオ。
「は?」
エナ。
「え?」
ガルド。
「チッ」
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仮面の男は静かに言う。
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「帰るぞ、ミラ」
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ミラの手が震えていた。
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その頃。
ユニオン中央同期塔。
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暗い演算室。
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モニターにはミラ。
そしてリオ。
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《N.O.AH適合率》
48%
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研究員が言う。
「予想より早いです」
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奥の人物が答える。
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「当然だ」
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「兄妹は引き寄せ合う」
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画面の中で。
仮面の男が静かに微笑んでいた。




