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クローバーの約束~あなたのファンです~  作者: 阿衣真衣


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8/13

芽生えはじめる

連絡先を交換した日から距離が縮まり、風月(かづき)泉水(いずみ)はいろいろな話をするようになった。


「明日からいよいよ文化祭だね~」

明日からはじまる文化祭に向けて、校内では飾り付けをしたり、リハーサルをしたりと準備で賑わっている。

展示会をするうちの教室には、みんながキャンバスに自由に制作した作品が集まった。

みんなで作品に合わせてレイアウトを考えたり、飾り付けをしたりと、クラス一丸となって準備に取り掛かる。


「泉水のめちゃいい! なんか、思いが込められてるって感じ!」

キャンバスの真ん中にシロツメクサとクローバーで作った花冠と、右下に四つ葉のクローバーを貼り、その隣に小さくテントウムシとBelieveの文字が描いてある泉水の作品。

何を作ろうか考えた時、風月と話すようになってよく見るようになった小さいときの夢を思い出し、このイメージがパッと浮かんだ。

「ありがとう。探すの大変だったけどね」


飾り付けの作業をしながら話していると、作品を並べていたメンバーが急に盛り上がった。

―「やっぱ上手いね~」「すごっ」

皆の声に反応して、一緒に作業をしていた友だちと遠くから作品を覗く。


その視線の先には風月の作品があり、アーチを描く二つの虹の周りをクローバーが額縁のように囲んでいて、淡い色合いに優しいタッチは、見ていて癒やされる。


「おおー さすが風月くんだねー」

「ホント、綺麗…」

風月の絵を見て、前に公園で一緒に虹を見たことを思い出した。


「虹」

呟くように言う風月の視線の先に目を向けると、うっすらではあったが虹が架かっていた。

「ホントだ!いいことありそう」

「夕方の虹は晴れらしいよ」

「そうなんだー 知らなかったなぁ…あっ、よく見ると二重虹だよ! いいことあるかもね」

「…うん」


(もしかして、その時のこと覚えて…っていうのは自意識過剰か…)

少しドキドキしたが、すぐに冷静になった。

泉水がそんな事を考えていると、また別の歓声が


―「おおーすっげぇ!」パチパチ

その声に、みんな作業の手を止めて黒板を見る。


『ようこそ 3年3組フリー展示会へ』と書かれた周りにはたくさんの花が描かれているが、文字が目立つようにバランスよく描かれていて素敵なデザインだった。

完成した黒板アートを見て、「すごーい」「きれい」「めっちゃいい」と拍手とともに絶賛の声を、文字を担当した書道部と周りのイラストを担当したメンバーに送る。風月もイラストを担当していた一人だった。


(黒板に絵を描くの初めてだったけど楽しかったな。それに…)チラッ

泉水の笑顔を見て嬉しくなる風月。


すると、泉水がふと風月の顔を見て、目が合った。

風月と目が合った泉水は、「すごいね」と口で伝え、拍手を送る。

それを見た風月は、ドキッとしたあと、胸の辺りがムズムズするような不思議な感覚になった―

(まただ…)


そうして準備が終わり、文化祭が始まったー


文化祭二日目の今日は家族など外部の人も参加し、より盛り上がりをみせる。

「泉水~」

友だちと一緒に回っていると、前方から兄が手を振り歩いてきた。


「お兄ちゃん!なんで来たの?」

「母さんが来れなくなったから、代わりに~ 久しぶりに母校も見たかったし! ってことで、泉水のクラス案内して?」

「えっと…」友だちの方をチラッと見ると


「昨日は一緒に回れたし、今日はうちら二人で回ってくるから、泉水はお兄さん案内してあげて! またあとで~」

ペコッと兄に会釈をし、手を振りながら離れていく二人。

「ありがと~ あとでね」

二人に手を振りながら、兄と教室に向かって歩き出す。


「ここが泉水のクラスか~ いろんなのがあるな」

兄と教室に一緒に入り、ゆっくりと作品を見る。


(そういえば、こうやってゆっくり皆の作品見る時間なかったから、一緒に来れて逆によかったかも…)

「泉水の作品も、なかなかいいじゃん。…おっ、この絵とか泉水好きじゃない?」

そう言ったのが風月の作品だったので、泉水はドキッとした。


「あっうん。やさしい雰囲気がいいよね」

泉水の少しギクシャクした反応に、

「(あれ?もしかして…)この絵描いたやつのこと好きなの?」


泉水はコソッと耳元で言われ、顔が一気に赤くなっていくのを感じた。

「! いや、違っ…」

バッと兄に顔を向けると、受付のところに風月がいてこちらを見ていた。

泉水は余計に恥ずかしくなり、慌てて兄の手を引っ張り教室を出る。


(桜樹くん、担当の時間だったんだ… お兄ちゃんが変なこと言うから…慌てて出ちゃったけど、聞かれてないよね!?)

兄に言われたことと風月の顔を思い出して、泉水はドキドキが止まらなかった。


担当の時間になり風月が教室に行くと、泉水が男性と一緒にいるのが目に入った。

(一緒にいるの誰だ…? なんか仲良さそうだし… 前野の顔赤いし、手繋いで出て行ったし…)

二人が教室を出る姿をじーっと見ていると、風月は何とも言えない胸の違和感を感じた。

(なんだこれ?)


「―…っき!風月!聞いてるか?」

一緒に担当するクラスメイトに肩を叩かれハッとする。

「ほら、お前は受付担当。何人入ったかメモ頼んだぞ。 しっかりしろよ~」

「…ああ」

受付をしながらも、風月は胸の違和感の正体とと二人の関係が気になって仕方なかった…


文化祭も無事終わり、賑わっていた校内は一気に片づけモードに。


片づけ中も風月は、泉水と一緒にいた男性が誰だったのか気になって仕方なかった。

チラッと泉水の方を見ると、友だちと話しながら飾りの回収をしている。

「もう終わりか~早いね~」

「だね。 でもほら、この後は後夜祭があるし」

黒板を消しながら二人の会話が聞こえる。


「それで?お兄さんは満足してた?」

「うん。あの後、教室で作品見てからいろいろ回って、お昼食べたら満足して帰って行ったよ。ずーっと懐かしいって言って、あっちこっち振り回されたからちょっと疲れたかも…」

(あの後も揶揄われて、それが一番疲れたけど…)

ため息交じりに笑いながら言う泉水。


「そっか。よかった~」

「ありがとね。そっちはどうだった?」

「ああ、あの後…」


(一緒にいたのお兄さんだったんだ…)ホッ

気になっていたことが解決したからか、風月の胸はスッキリと軽くなった。

(?なんで今、安心したんだ?)


「作品は各自持ち帰りで~」「はーい」

「ねぇ。桜樹くんの作品、しばらく教室に飾らない?」「それいいな!風月飾ろうぜ」

作品を回収していた女子が提案して、みんなもそれに賛同していた。

「…ああ、別にいいけど」

「よしっ! いいですよね?先生」「いいぞ~」

担任の先生から許可も出て、風月の絵はしばらく飾られることに。


「そういえば桜樹くん、文化祭の間何人かにサインお願いされてたよ。別クラスとか後輩は、こんな時じゃないと貰えないからね~ 貰った子達も嬉しそうだったし。」

「そうなんだ~(みんなすごいなぁ… そういえば回っている間、一回も桜樹くん見れなかったな…)」

「卒アル貰ったら、みんなサインお願いに来るんじゃない? 私たちも卒業前にサイン貰っておかないとね~」

「そうだね~(卒業か…)」


「文化祭おつかれ様でした。 後夜祭に参加する人は体育館へ移動して、帰る人は気を付けて帰るように」

後夜祭に参加するため、友だちと一緒に体育館へ。

バンド演奏やダンスが披露されたり、ミスミスターなどの発表があって後夜祭は盛り上がった。


後夜祭が終わり、友だちと電車で帰る。

「そういえば、明日の文化祭の打ち上げ、泉水は参加できないんだっけ?」

「うん、明日は夕方まで用事があって… だから、どんな様子だったか教えてね」

明日からアルバムリリースに向けて、ジャケット写真や曲順決め、レコーディング、MV制作などで忙しくなる。

「オッケー じゃあ、明後日ね~」

「うん。バイバイ」「「バイバーイ」」


友だちと別れて、電車内をチラッと見渡すと友だちと一緒にいる風月を見つけた。

(明日、桜樹くんも打ち上げ行くのかな… しばらく、公園にも行けなさそうだし、また学校で見るだけになるな…)


「なぁ風月~明日、打ち上げ行くだろ? クラスほとんど来るしさ」

肩に手を回しながら「なぁなぁ」と言ってくる友だちに風月は反応せず、チラッと目線を動かすと、友だちを見送る泉水の姿が目に入った。


(ほとんどってことは、前野も来るのかな…)

「…わかった、行くよ」

「よっしゃ!みんな喜ぶわ~」

クラスのみんなから風月を打ち上げに呼ぶことを頼まれていた友人は一安心。


(明日、何着て行こう…)

泉水と会うときはいつも制服かジャージ。

今まで私服なんて適当に着ていた自分が、何を着ようか考える日が来るなんて思いもせず、風月は自分にもこんな一面があったんだと初めて知った。


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