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クローバーの約束~あなたのファンです~  作者: 阿衣真衣


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6/13

やっぱり話したい

風月(かづき)が公園で女の子と会っていたという噂は広がったが、相手も分からないためそれ以上は膨らまなかった。

そして教室での風月の一言が効いたのか、その話題に触れることもなくなり、噂は一日で収まった。


その日以降も風月は変わらず公園のベンチを確かめる。


いつの間にか、泉水(いずみ)がベンチに座っているのを見るだけで嬉しく、いないと寂しく感じるように…そして別の人だとガッカリしている自分がいることに気付いた。


今まで絵を描くことが一番楽しいと思っていたのに、最近では泉水と公園で話をしたり、写真を撮ったりして過ごす時間が不思議と心地よく、楽しいと感じるようになっていた。

それなのに、騒がれたあの日以来、公園に行っても泉水を見ることがなくなった。


(やっぱ、気まずいかな…)

そのまま黙っていたほうが良かったかも、別の言い方があったかもと考えると、胸のあたりがズキッとした。

(もしかして、もう俺と話したくなくなった?)


そして、いつの間にか学校で泉水を目で追うように…

これまで放課後にしか通らなかった公園だったが、もしかしたらと思い、休日や夏休みの間も通った。

しかし、泉水がそこに座っていることはなかった…


泉水は、あの日の風月の言葉と声が頭に残ってしまい、意識せずにはいられなかった。

これからどんな顔をすればいいのか、どう接したらいいのかを考えると緊張で空回りしてしまいそうで、風月から距離をとることに…


自分から遠ざかっていたのに、いざ離れると余計に風月のことを考えていた。

本当は会って話をしたかったが、そんな勇気もなく…


そうしているうち夏休みに入ってしまい、歌詞を書いたりレコーディングに行くなどHaruとしての活動で忙しくなってしまった。


夏休み明け、電車で久しぶりに泉水を見かける風月。

久しぶりに泉水の顔を見た瞬間、トクンと鼓動を感じる。


(桜樹くん、髪切ったんだ…)

ホームに着くと、真っ先に風月の姿が目に入った。

夏休み中、一度も会うことがなかった風月を久しぶりに見た瞬間、ドキッと胸が高鳴る。


久しぶりに風月の顔を見ると、話したくなってしまった。

(もしかしたら、桜樹くんはもう話してくれないかもしれないけど…)


夏休み明け、一番大きなイベントである文化祭。

「文化祭、うちのクラスはキャンバス作品を展示するってことで、よろしく」

「特に風月!頼んだぞ~」


「なんの絵描く?」「絵じゃなくて、文字描くのもありじゃね?」

「写真貼るとか!」「そしたらさ…」

クラスでの出し物も決まり、皆それぞれ何を作るか早速話し合い、盛り上がる。


「風月の絵はセンターに置く予定だから、頼むぞ~」

帰り支度をしている風月にクラスメイトが声をかける。


(前野はどんな作品を作るんだろう… どんな絵が好きかな…)

なぜかふと、そんなことを考えると、自然と視線が彼女に向いていた―…


(桜樹くんの作品か… 何を描くのかな…

 というか私も作品考えないと。どうしようかな…レコーディングもあるから忙しくなりそうだし…)

高校卒業のタイミングで、これまでリリースした曲に新曲をプラスしてアルバムをリリースする予定になっていて、制作期間がちょうど文化祭期間と重なっている。


(ー…こんな状態じゃ、桜樹くんが好きなHaruとしてもよくない気がする…

 やっぱり、本格的に忙しくなる前に一度でいいから、桜樹くんと公園で話したい!

 よし、今日は公園に行こう!)

そう決心して、泉水は教室を飛び出した。


泉水が教室を出るのを見て、風月も追いかけるように教室を出る。

(避けられているかもしれない… でも…)

いつもは美術室で絵を描いてから帰るが、そのまま駅へ向かった。


学校から駅まで走った泉水。

(家に帰って着替えてから行こう。そして、もし公園で会えたら私から声を掛けよう… あとは…)

決心が揺るがないように、心の準備を念入りにしようと、電車を待ちながらイメージしていると…


「前野」

後ろからずっと聞きたかった声で名前を呼ばれた。

(―…そのパターンは想定していなかった…)


隣で並んで歩く風月の顔をチラッと見ながら、さっきのことを思い出す。


「前野」

公園で話していたときと同じ、ずっと聞きたかった優しい声で名前を呼ばれた瞬間、胸が高鳴る―

振り向くと、今日一日遠くから見ていた顔が近くにあった。


「急にごめん。少し話したいんだけど、いい?」

これまで勢いで何か行動をすることは、あまり無かった。

(思わず追いかけて声かけたけど、迷惑じゃなかったかな…) 


泉水は呼び止められたことも、風月から誘われたことも、夢なんじゃないかと思った…

頭が真っ白になりながらも、何とか「うん」とだけ返事をする。


電車が来て二人で乗る。周りに知り合いはいない。


あの公園は前に見られたので、どこか別のところにしようと、泉水の近所の公園に一緒に向かうことに。

(! 一緒に歩いてるの見られたら、また勘違いされて迷惑をかけるかも… とりあえず眼鏡は外して、髪は下ろしたままで大丈夫かな? あとは…)

電車で一緒の時は、急な展開に考えもしなかったが、泉水は風月と一緒に歩いている状況に、いきなり冷静になった。


風月が泉水が隣にいるのを確認するようにチラッと見ると、泉水は、さっきまで掛けていた眼鏡を外し、髪を触ったりしていた。

(何やってんだろう…?)


駅から公園まで無言になってしまったが、隣で考えごとをしながら表情を変え、謎の行動をしている泉水を見ていると、楽しかった。


泉水は気が付いていなかったが、風月の顔には自然と笑顔が浮かんでいた―

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