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プレッパータウン

「プレッパータウンへようこそ、サバイバー!」

 ペッパーでもラッパーでも無いじゃないか、と内心でスティーブに文句を呟いたのはそれから二日後の事だった。

 異変後に急いで搔き集めたのであろう、トタンや鋼板、廃車を利用して築き上げたバリケードが満の視界に見えてきた。それらは長い年月の間に風雨にさらされたせいで赤錆びていたが、周囲を森林やその土、斜面に囲まれているためか、割と目立たない色合いとなっていた。

 そのバリケードの上、屋根付きの見張り台から旧式の迷彩服にベスト、ガスマスク付きのヘルメットを装着した屈強な男が満に呼び掛けてきていた。

「プレッパータウン?」

 更なる生存者に出会えた興奮を抑え、何も知らない風を装って聞き返す。

 プレッパータウンなる物は知らないが、プレッパーという単語は聞き覚えがあった。確か、この国で起きるであろう”終末”に備え、必要な物を可能な限り備蓄し、極限状態での自給自足を目指して生活する人々を指す言葉だったはずだ。

 見張りの男の銃口はそれとなく満の方を向いていた。米軍や特殊部隊で一般的に使われる軍用カービンか。とても、腰の拳銃一つでは万に一つも勝ち目がない。プレッパータウンなる名前が嘘でないならば、武装しているのはこの男だけでは無い筈だ。

「そうだ。ここではサバイバーを歓迎するが、町の一員になるか、信用できる立場になるまでは武器は預からせてもらう」

 町へ入れてもらえる代わりに、武器を取り上げられる。

 大きな賭けだ。その言葉の意味するものを想像し、満は唾を呑み込んだ。


「ナイフもか?」

「町へ入っている間だけだ、約束する。出て行きたくなればその時に全て返すさ。錆も付けさせやしない。嫌なら、別に入らなくてもいいんだぞ」

 嫌な言い方だが、その通りだ。だが、情報は欲しい。

「・・・若い女の二人組、若しくは女二人以上を含む団体が入ってこなかったか?」

 そう問いかけると、見張り台の男が高笑いしながら答えた。

「それが目当てか?生憎だが、すくなくともここ二年は女は来ていないね」

「・・・そうか、忘れてくれ」

 落胆も相まって、忘れかけていた疲労を思い出した。この二日間は昼も夜も野宿で、常に野生動物と感染者、居ないのか隠れているのかも分からない略奪者の気配に怯えて過ごす時間だった。

 マリン達と共に生活するまでは一人前のタフガイだったつもりだが、屋根の下で生活する時間が長くなる内に、自分の野性が下がっている事を痛感させられる二日間だった。

 考えてみれば、本来の自分は夜の森など一人で歩けない程の臆病者だった。

 だが今は、目の前に曲がりなりにも”町”がある。この男は知らなくとも、町の住民の中には二人の情報を持っている者が居るかも知れない。

 それに、ここで旅の用意を整えられるようなら、整えていった方がいい。

 リスクも忘れた訳では無かった。彼らが人の皮を被った怪物なら、町に入ったら最期、二度と日の目は拝めない。

『虎穴に入らざれば虎子を得ず、か?』

 疲労もあったが、一刻も早く情報を得たいという焦りもあった。いくつかの簡易な人格チェックと思われる他愛もない質問に答えた後、見張り台の下、満の正面に設置された、手製と思われる頑丈な鉄格子のゲートが左右にスライドして開かれた。


「ようこそ。私は保安官のジョンソンだ。…正確には保安官補だが。君は?」

 それとなくゲートの死角に待機していた、恰幅の良い保安官が声を掛けてきた。歳は五十代だろうか。サングラスをしていて視線は捉えられないが、手にした散弾銃をそれとなくこちらの足元に向けている。

「ミツル・アオイだ。しばらく世話になりたい。どうかよろしく」

「俺は警備のダニエルだ。ちなみに上にいたのはウィーバー。それではミツル、早速だがウィーバーの説明通り、武器を預からせてもらう」

 反対側の死角に気配を消していた痩せぎすの男が隣に立った。口元と声色こそ穏やかだが、ネコ科の動物を思わせるような雰囲気で、どことなく危険な雰囲気がした。おそらく軍経験者だろう。手には四十五口径の自動拳銃を下げている。

「ああ、もちろん」

 抵抗感を抑えつけ、ホルスターごと拳銃とナイフを装具から外し、ダニエルに手渡した。これで自分のイニシアチブは完全に彼らに移った。更に隠し持った凶器が無いか、簡易なボディーチェックまでする念の入り様だ。

 これしか方法が無いとは分かっていても、気持ちの良い事ではないな、と思いながらボディーチェックが終わり、彼らの次の挙動に注意する。

「どちらも命の恩人から貰った、大切な武器なんだ。くれぐれも保管には注意してくれ」

 念を押すと、ダニエルは真剣な面持ちになって頷いた。

「ああ。任せてくれ」


「協力に感謝するよ、満。よし、次は町を簡単に案内しよう」

 ジョンソンに先導され、その後に続いた。案の定、満の背後にはダニエルが油断なく追随している。

 町を見回すと、まばらに人が見られた。住宅の中からこちらを覗っている者もいるようだが、ざっと十数人はいるだろう。

「ベッドタウンを要塞化したのか?町の人口は?」

 何気なく尋ねてみた質問だが、保安官の返事は慎重なものだった。

「満。気を悪くしないで欲しいが、我々はまだ君をよく知らない。町の防衛に関わる質問にはほとんど答えられないんだ」

「なるほど、確かに」

 門から百メートルほども歩くと開けた公園が広がり、その奥にベリーヒル公共センターと書かれた二階建ての堅牢な建物が見えた。

芝生の公園もフットボール場とまではいかないものの、ちょっとしたスポーツができるほどの広さで、公共センターも住宅街に建てられる公共施設としてはかなりの予算を必要としただろう。とするとここはただの住宅街ではなく、プレッパーの団体と不動産業者、行政で計画して立てたモデルタウンのようなものかもしれない。

「ここが広場だ。奥に見える公共センターで夕方、君を皆に紹介しないとな」

「歓迎してもらえるといいのだが」

「それを勝ち取るのは君の誠意と貢献次第だな」

 そう言われてしまえば返す言葉も無く、公園を抜けてしばらく歩いた先にある、平屋住宅が立ち並ぶ区画に案内された。


「さあ着いたぞ。ここが君の住まいになる」 

「俺一人に?」

 動揺を隠しきれず、ジョンソンに疑問を投げかけた。監視しやすくするためか、町を囲う壁沿いの一角ではあるものの、一軒家を与えられるとは思わなかった。

「ホームステイは受け付けていないんでね」

 ダニエルが冗談交じりに答えた。

「実際の所、十分に居住する場所はある。どこもパンデミックの一年前に完成したばかりだし、管理係を組織してメンテナンスもしているから、老朽化もほとんど進んでいない」

「住居まで余分に備えるとは、大したものだ」

 素直に感心すると、ジョンソンが顔を綻ばせながら頷いた。

「備えあれば憂いなし、さ。場所は言えないが、本格的な核シェルターもいくつかある。武器も、警備隊も十分に揃っている。私達を襲う愚か者は後悔する事になる」

「違いないな」

「六時に迎えに来るから、それまでは家の中か庭先くらいで大人しくしていてくれ。まだ君を見ていない住人とトラブルになったらお互いに困るから」

 聞き込みをしたかったのだが、こう言われては大人しくしているしかない。早合点した住人に撃たれたら目も当てられない。

「了解、保安官」

「俺は向かいの家にいるから、何かあったら呼んでくれ」

 遠回しに見張っていると言い残し、ダニエルは道路を挟んだ向かい側の家に去っていった。保安官も頷き、去っていった。


 例の管理係が定期的に手入れをしてくれていたのだろう4LⅮKの住居には、埃もほとんど見当たらなかった。生活に必要な家具は揃っており、バストイレまで完備され、驚いたことに水道も機能していた。下水・排水の方は分からないが、少なくとも上水と水道インフラは確保・維持しているという事だ。

 まさかと思い照明ボタンを確認しようとすると「節電を心がけて」と貼り紙があった。明り取り窓から差した光に照らされたソーラー式の壁掛け時計は午後二時十六分を過ぎて時を刻み続けている。約束の時間まではまだ時間がある。家から出られない以上、できることは限られている。

「何でも揃っているな…」

 水道には節水を呼び掛ける貼り紙も無かったので、シャワーを浴びて身だしなみを整え、ベッドで体を横たえた。

 二人の安否を確かめるためにはここで情報を探し、町の外に出ていかなければならない。だが、町を守る立場になって考えてみると、そう自由に出入りできるとも思えない。


 今の所、ここは楽園のような場所だが、果たしてこの選択は正しかったのか…


「満、私だ。ジョンソンだ。迎えに来たぞ」

 玄関からの呼びかけで目が覚めた。見てみると外は暗くなり始めている。身を起こして玄関に向かい、扉を開けるとダニエルを引き連れた保安官が待ち受けていた。散弾銃は無く、二人とも腰のホルスターに拳銃を収めるに留まっていた。

「既に皆には話をしてある。簡単に自己紹介してくれればそれでいい」

「わかった」

 転校生にでもなった気分だな…などと思いながら二人の後に続いた。そういえば、かつてのグループに身を寄せた時もこんな感じだったか、と思い出した。明かり

 広場に差し掛かると公共センターに明かりが灯っていた。

 玄関を抜けると、一階ホールとプレートに書かれた扉が開けられ、数十人の住民がパイプ椅子に腰かけているホールへと促された。フロアの奥に椅子があり、どうやらそこに座れと言う事らしい。様々な視線に晒されながら椅子に着いた。新参者が受ける通過儀礼だと頭では理解しているものの、こちらを見る視線には不安と警戒、好奇心があり、居心地の良い物では無かった。

 住民の人数は百人近かった。そのうち三十人ほどは迷彩服を着こんでおり、町の防衛要員だと分かる。六十人ほどは私服で、年齢も性別もまちまちだった。黒人はもちろんだが、自分のようなアジア系も何人か見受けられた。


 満の隣に腰かけたジョンソンが良く通る声で切り出した。

「皆、集まってくれてありがとう。この町に半年ぶりに生存者が訪ねてきた。皆も承知の通り、この町は来るもの拒まずの方針で、彼を受け入れた。かつてこの町に流れ着いた人々がそうであったように、彼もきっと我々に報いてくれると信じている」

 保安官に目顔で促され、満は咳払いを一つして立ち上がった。考えてみれば好都合だ。この機に情報を募ってみよう。

「ミツル・アオイです。農業交流事業中にアウトブレイクに巻き込まれました。ここに辿り着けて幸運に思っています。実はここに辿り着く一ヶ月前に二人の連れとはぐれてしまいました。二人とも若い女性なのですが、誰か何か知っている事があれば教えて頂きたいのですが」

 残念ながら声は上がらなかった。ウィーバーの言った通りだった。という事はここにいる住民も兵も、町の外に頻繁に出入りすることは無いのかもしれない。

 ジョンソンによって解散が告げられ、住民たちは思い思いに立ち上がってホールを出て行った。すると、ジョンソンが満に補足してくれた。

「実はまだ帰っていない防衛隊がいる。彼らは今、町の外でミッションを遂行している。彼らが何か情報を持ち帰ってくれるかもしれないな」

「そうだったのか…ところで、俺が町を出て彼女らを探しに行くことはできないのか?」


 案の定、保安官は表情を翳らせながら首を振った。

「残念だが、それはまだ無理だ。君には町の様子を見せてしまったからね。町を去るにしても、少なくとも一週間は君を見定めさせてもらう必要がある」

 一週間も…。想像していたとはいえ、あまりの長さに言葉を失った。しかしすぐさま茫然自失の状態から立ち直り、懸命に訴えた。

「しかし、外にはギャング崩れの略奪者も車で徘徊しているんだ…!彼女らが見つかってしまうのも時間の問題だ。その前に何とか見つけ出して保護しないと…」

 ジョンソンは考え込み、ホールを退出しようとしていた若い兵を呼び止めた。

「すまんが、トラヴィス隊長を呼び戻してくれんか?」

 兵は頷くと、足早に公共センターを出て行った。

「それが本当なら確かに見過ごす訳にはいかんな。そのギャング共の規模は分かるか?」

「俺が略奪に逢った時は全員武装して2台のトラックに分乗していた。十五人前後だった」

 保安官に説明していると、迷彩服姿の大柄な男がホールに入ってきた。歳は三十代か。引き締まった屈強な体格をしていた。厳めしい顔にブルーの瞳が精悍な、いかにもと言った雰囲気の軍人だった。ダニエルもその後に続いている。 

「ミツル・アオイだったな?トラヴィスだ。このベリーヒルの防衛隊の指揮を執っている。話を聞かせてもらおうか。十五人、と聞こえたが」

 逸る気持ちを抑えつつ、ボミットスと自分たちの関係、経緯を打ち明けた。下手な嘘や隠し事は後のトラブルと信頼を失うきっかけになり得ると判断したからだ。ただし、万一にもウィルソン夫妻に危害が及ばぬよう、彼らの事だけは伏せておいた。

 一週間もここで手をこまねいている訳にはいかない。最悪、追放されても構わない。

 

「話は分かった」

 四人しか居なくなった薄暗い公共センターのロビーにトラヴィスの重々しい声が響いた。

「結論から言うと、君をすぐにここから出す訳にはいかない」

 トラヴィスの返答に絶望しながら、満は自らの判断の迂闊さを呪った。こんな事ならここへ来るべきでは無かった。よくよく考えれば最初から分かっていた事だ。敵の偵察かも知れない人間を、どうしてすぐに帰せるか。殺されなかっただけ幸運だったのだ。

「しかし…」

 絞りだした満の声を遮り、トラヴィスは続けた。

「しかし、放っておく訳にもいかん。明日、偵察隊を組織して救助対象の救出・及び脅威への警戒、状況によっては無力化する必要がある。捜索と救出は我々に任せてくれ」

 自分が同行できないのは歯がゆいが、この上ない申し入れだった。彼らのグループに押し掛けておいてこれ以上何かを求めるのも気が引ける。トラヴィスの決定を受け入れ、自分に与えられた住居に戻る他無かった。

『すまない、マリン、ミカエラ…』

 ベッドの上で無事を祈る事しかできない無力感を嚙み締め、眼を閉じた。


「さて、昨日は説明しそびれてしまったが、ここにいるからには誰しもが町の為に貢献しなければならない。昨日あそこに集まった彼らも何らかの技術を持ち、仕事に従事している者たちばかりなんだ」

 翌朝、すっかり自分の目付・世話役となってしまったジョンソン保安官とダニエルと共に、満は町の中を移動していた。遠くに見えるゲート前にはSUVや軍用車両などが並び、捜索とパトロールに向かおうとしている所だった。

「ある程度の事は何でもできるつもりだが、君らの基準から見れば特別な技術は無いだろうな。農業の知識も、この地でどれだけ通用するか分からない」

 出発していく三台の車両には十二人の兵が乗り込んでいるとダニエルが教えてくれた。人数こそ劣るが、何かあれば無線で連絡を取り合い、応援要員が更に十二人待機している。いざとなっても第一陣だけで、ギャング紛いの略奪者程度なら余裕で撃退できる、と自信を持って語った。

「構わないさ。必要なのはいつでも若い労働力だ。今の所、農場と水道部の方で募集がある。仕事の需要は日々変わるからその都度選んでくれ。今回は私が教えているが、普段は自分で各部署の窓口に出向いて仕事を探してくれ。仕事を終えるとここでの通貨になるチケットを渡されるから、それで食料や日用品を買い求めるといい。あまりお勧めはしないが、それをバーや遊技場で泡にするのも君の自由だ」

 ジョンソンは肩をすくめながら公共センターの方を顎で示した。公共センターの裏手に店があるらしい。ダニエルが補足した。

「遊技場で賭けをしている奴らもいる。もしかしたら億万長者になれるかも」

 全く興味が無いではないが、カモられるのがオチだろうな、と思った。

 仕事か…。だが、あの二人が無事に見つかってここへ来たときに、自分が少しでも稼いでおけば、二人にもその分楽をさせてやれるなら、やる価値はある。同行を許されず、できる事が他に無い以上、やるしかない。

「…どっちが稼げるだろうか?」

 ダニエルとジョンソンは一瞬顔を見合わせ、それから肩をすくめながら同時に答えた。


「今回は、水道部だろうな」


「そうだ、そのポンプを引き上げてくれ」

 実に酷い臭いだ。だが家畜の世話で慣れている分、耐性はあった。支給された作業着に着替えた満は、下水の補修・メンテナンス作業に従事していた。今は上司にあたる住民の指示の下、とある住宅の故障した圧送ポンプ交換作業を実行していた。これが終われば昼休憩を挟み、夕方まで下水配管の修理点検作業に従事する。

「どうだ、ひでぇモンだろ新入り?辞めたくなったか?」

 悪戯っぽい笑みを浮かべながら監督が満を見下ろした。

「途中退社でも給料は出ますか、ボス?」

 冗談で返しながら工具を使って取り外しを進めると、上から高笑いが返ってきた。

「出る訳ねぇだろ!こんなのは綺麗な方だ、午後は楽しいツアーに連れてってやる。しっかり昼飯を食っておくんだな」

 仕事に従事する際、昼食分と予め想定された場合の残業分だけはその部署から食料が配給されるのだという。

昨夜は夕食を摂り損ねたが、今朝はマリアが持たせてくれた食料で済ませ、自前の食糧は三日分以上あった。

「機械を取り外すのも大変だが、こんなものを直す治具や設備があるのか?」

 ポンプを地上に引き上げ、手渡されたエンジン式の家庭用洗浄機で丹念に汚れを落としながら尋ねた。このくらいなら防衛機密には当たらないだろうが、監督は勘案する様子もなく朗らかに答えてくれた。

「大がかりな整備場がある。自動車や武器までそこで整備できるのさ。各種部品も備えているし、必要があれば外から調達して来る。ちょうど今、調達の部隊が遠征しているよ」

 どうやら監督は、自分の仕事振りに満足してくれているようだ。

『ミッションというのは調達の事だったか』

 ポンプをトラックの荷台に乗せると、監督は運転席に、満は荷台に飛び乗り、車は走り出した。


『仕事をしている間は気が紛れるのだけはありがたい』

 薄くも濃くもないコーンスープと、ベーコンとレタスのサンドイッチを頬張りながらそんな事を思った。下水作業員特典という事で一口分のピーナツバターが提供されたが、それは荷物と共にロッカーにしまっておいた。満はシャワーを提供されると作業着を一旦替え、水道部の管理棟の外で町を眺めながら昼食を摂っていた。待機しているという後詰の部隊が動く様子も無い。出動したからには状況のやり取りが行われている筈だが、下っ端の自分にそれが逐一知らされるとは思えない。

 食事を終えた水道部の職員は三、四人でバスケットボールで汗を流したり、ポーカーか、カードゲームに興じているグループもあり、横になって過ごしている者もいる。

 満も食事を終えると食器を食堂に返し、業務再開時間である一時になるのをベンチに腰掛けて待った。


 ビニール製の防護服と下水用マスクを与えられ、悪臭立ち込める下水道内を進む。作業灯は一定間隔に存在するが、節電の為か配電系統が違うのか、消えたままだ。先を進む先輩作業員のエイデンと自分の持つマグライトのハロゲン球の明かりだけが頼りだった。

「地上…町の方でかなりの予算を使って、下水の方は古いままなのさ。だから作業灯は俺たちの持つ町の電源と繋がっていない。町で暮らす分には水質とかは気にしなくていいからな。でも、漏水や詰まりを放置しておくと地上の住宅に影響が出かねないから、念のために定期的に見回るんだ」

 自分の疑問を察したか、エイデンはそう説明してくれた。剥き出しの作業灯ケーブルの上を、ハツカネズミが駆け抜けていった。

「…思ったんだが、町の外からでもマンホールを伝って町に侵入しようと思えば侵入できるんじゃないか?」

「…町周辺のマンホールは溶接して封鎖してあるが、見落としている場所が無いとも限らないな。後でトラヴィス隊長に相談してみよう。まっ、ネズミが網目から入れたッて、感染者や略奪者は入れないだろ」


 何度目かの曲がり角を曲がったところで人影が見えた。一瞬、もう片方のチームと合流したのかと思ったが、先を行くエイデンが茫然として立ち尽くした。満も目を凝らすと、それは全身汚水塗れになった感染者だった。ふらつきながらこちらへ向かってくる。

「クソッ、どこかから迷い込んだんだ!」

 元来たルートを二人で後退し、満はマグライトを警棒代わりに構えて感染者を警戒し、エイデンは携帯無線機を取り出し、押し殺した声でもう一方のチームに呼びかけた。

「こちらエイデン。ベイカー、聞こえるか!?俺たちの担当するW16に感染者がいた。一旦引き上げよう」

 間もなく返事が返ってきた。

『マジかよ…!こんな事初めてだぜ?どこから入り込んだんだ…』

 相手も困惑と怯えを露わにしていた。下水内には矢印が所々にペイントされており、仮にはぐれても明かりさえあれば満でも何とか出口に辿り着けそうだった。ただしそれは、仮に略奪者がここに入り込んだ時にも言える事だな、と思った。

「とにかく避難しよう。お前らはすぐ逃げて周りにこのことを知らせてくれ。俺は今からトラヴィス隊長に報告する」

 そう言い放つと携帯無線機のチャンネルを操作し、再び呼びかけた。

「緊急事態です!こちら水道部のエイデン。トラヴィス隊長応答願います、どうぞ!」

 即座に応答が返ってきた。

『こちら警備隊本部。トラヴィス隊長は席を外している。取り次ぐので状況を知らせ』

 その時、別の下水路からも感染者が姿を現し、こちらに向かってきた。距離は離れているものの、挟まれる形になってしまった。前後の敵を確認し、満は手近な前方の感染者に向かって突進した。


「W16区画下水道作業中に感染者に襲撃された!現在、二体の感染者に挟まれている!救助を頼む!」

 エイデンの悲鳴に近い交信と感染者の呻き声が通路内に反響する。防護服のせいで動き難さはあるものの、感染者に辿り着く。緩慢な動作で向かってくる感染者の顔面に抜き技の要領でマグライトの柄を叩きつける。昔の警官や警備員が夜間の警棒代わりにしていたような代物だ。耐久性は勿論、肝心な照明にも影響がない事は分かっている。

 僅かに仰け反った感染者の背後に回り、その片腕と後頭部を掴み、遠心力と体重を乗せて下水の壁面に顔を叩きつける。手応えはあったが、止めとしてそのままもう一度叩きつける。

 力なく顔面から崩れ落ちる死体を放棄し、エイデンの方へ向き直る。

 エイデンは興奮した様子で無線機にがなり立てながらこちらへ後退して来る。それを追ってもう一体の感染者…声に引かれてやってきたか、遅れてもう一体の感染者が水路の奥に見えた。

『増えてやがる…!』

 背筋に寒気を感じながら後退る。無慈悲な事に、奥の感染者は軽度感染者か、奇声を上げながら猛然と走ってきた。先にいた感染者と衝突し、一旦は共に転倒したが、踏み越えて突進してくる。

 エイデンも悲鳴を上げながらこちらに逃げてきた。さながら地獄絵図だ。


 「落ち着け!先にもいるかもしれない、気を付けて進め!こいつらは食い止める」


 エイデンを先に行かせ、満は感染者を待ち受けた。落ち着いて間合いを見計らい、体を沈めてタックルを仕掛けた。汚水に塗れながらも相手を跳ね上げ、感染者は派手に転倒した。すかさず駆け寄り、起き上がる前に頸椎を踏み抜いて始末する。支給された鉄板入りの安全長靴は最適な凶器となった。


 遅れていた感染者が迫ってくるが、それは一体目と同じ要領で壁に叩きつけ、難なく始末した。

 水路内に静寂が戻った。聞こえるのはアドレナリンによって増した自分の脈拍とマスク内の荒い呼吸。今更マスクの息苦しさに気付く。アンモニアはそれほど充満していないようだったのでマスクを外し、悪臭のする空気を吸い込んだ。遠くから複数の足音が響いてくるが、声から味方の物だと分かる。

「大丈夫か!?」

 振り返ると防護服に自動小銃や散弾銃を構えた兵が二人、それにエイデンが通路の曲がり角に姿を現した。唖然とした様子の三人に向け、親指を上げて見せた。

「ああ、無事だ」


 その後、下水道の構造を知る水道部の職員8名と、8名の兵で四班に分かれての大規模な調査が行われた。構造を知らず、疲労していた満は調査から外され、水道部の管理棟で休憩を許された。その後の話で町から一キロ近く離れた下水処理施設の入り口に繋がり、その施設が年月の劣化と略奪者によって荒らされた為にそこから侵入してきたという事が判明した。

「扉はしっかりと封鎖したよ。今度は大丈夫だろう」

 監督から事の顛末を聞かされながら、満は修理されたポンプを取り付けた。

事件から一週間が経とうとしていた。事件直後にはエイデン達作業員を保護したとしてジョンソンとトラヴィスから感謝され、町の住人とも馴染みつつあった。それは喜ばしいことであったが、依然としてマリンとミカエラの情報はおろか、ボミットスの連中に関する情報すらなかった。二人の行方が掴みづらいのは分かるが、車二台で移動する連中が見つからないという事は、この近辺から離れたのか、それともどこかで身を隠しているのか。

 あれだけの人数で野営をするにも相当な食料が必要になる筈だ。安定的な調達か略奪をしなければ長くは居られない。

 奴らがどこかへ去るなり行き倒れるのは結構なのだが…

 町での信頼を積み重ねつつも、不安と焦燥は日に日に募っていった。捜索隊は何をやっているのかと、つい疑ってしまう。

「ご苦労さん。今日はこれで終わりだ。下水関連はお前のおかげで大方片付いたから、次は水源か上水道関連の仕事だろうな」


『次は水死体ゾンビとの死闘か?』


 そんな下らない事を考えながらシャワーを浴びて日当であるチケットを受け取り、帰途に付いた。マリアから貰った食料は保存食の缶詰以外は食べ尽くし、ここ四日間の朝夕はダイナー通いだった。

 食料店に行って食材を買えばいくらか安く上がるのだが、早朝から自分一人の為に食事を作る気も起こらず、疲労困憊して帰宅してから自炊する体力もなく、足は自然とここへ向かった。


 やはりダイナーに通うのは同じような顔ぶれの独身作業者ばかりで、稀に家族で食事を楽しむ光景が見られる程度だ。今日も家族連れか、奥まった六人掛けのテーブルに人だかりがあった。メニューも決して豊富ではなく、シチューとドライフーズに手を加えた物がメインだが、農場エリアで飼養しているという牛や豚、鶏が町の中に運び込まれて解体され、立派な料理として並ぶ事もある。勿論チケットは高くつく。


 今日はポークステーキか。 朝食時に匂っていた香ばしい香りを思い出したせいか、思わず腹が鳴った。ラップをかけられ、カウンター奥に見せつけるように置かれたステーキの上にはメッセージボードがあり「残り1食!」とあった。


 誰もが嫌がる下水作業の仕事は割高で、独り身の労働者としてはかなりの稼ぎとなった。今日で下水作業も区切りがついた。自分への褒美としても罰は当たらないのではないか。そう自分を唆しながらカウンターに向かった。


 国籍は違えど故郷を思い出させる、整った丸顔の若い女性が顔を綻ばせた。

「ハイ、満。お疲れ」

「そっちもお疲れ、キム」

 すっかり顔なじみになったオーナーのキムと挨拶を交わし、満はポークステーキの皿を指さした。

「そのポークステーキを頼むよ」


 ブーツの靴音が聞こえたかと思うと、人だかりから抜けてきた人影がカウンターの反対側に立った。自分の声など吹き飛ばすような良く通る快活な声が響いた。

「キム、ポークステーキをお願い!遠征終わりにパーッとやらないとね!」



 懐かしい声だった。


 周囲の顔も喧噪も消え、あの日差しと家畜の匂い、トウモロコシ畑の騒めきさえその場に甦ってくるように感じた。


 相手の顔を凝視する内、相手もこちらに気付き、眼を見開いた。


「残念ね、ベティ。たった今売り切れちゃった」

 事情を知らないキムが肩をすくめたが、二人のただならぬ様子に気付き、怪訝な面持ちで二人を見比べた。


「嘘…カカシ…?」


 肩まで掛かったブロンドの髪は相変わらずだが、その顔は六年近い歳月を経てあの頃の無邪気な少女らしい面影を残しつつも、落ち着いた大人の女性のそれへと変わりつつあった。

「そ、その節はどうも…」


 よう、美人さん…などと気障に決めてやりたかったが、動揺したボキャブラリーではそんな間の抜けた返事しかできなかった。

 カウンターを迂回し、ベティが駆け寄ってきた。自分達に気付いたギャラリーの注目が集まる中、ベティは構わず満に飛びついた。

 唖然としつつも肉感的な彼女の体を辛うじて受け止めた。以前の自分だったら完全に倒れ込んでいただろう。

「なんてこと!信じられない!カカシ!ううん、満!こんなにでっかくなって!英語までちゃんと喋ってる!?」


 満の顔を抱き締めたまま、ベティは興奮した様子で絶叫に近い感嘆の言葉を並べた。ひとしきり喋らせた後、自身の腰に注意しつつ満はゆっくりとベティを下した。

「か、簡単な会話くらいはな。…君も無事で良かった。 …それにすっかり美人さんになって」


 ようやく離れたベティが、まじまじと満を見た。

「ありがと。…しかし、本当にあの頃のカカシとは思えないわね…顔つきも結構変わっちゃったし、何より体格がスーパーマンみたい」


 スーパーマンと比べるのは彼が気の毒というものだが、確かに鏡で自分を見た時、パンデミック前とは別人のようになっていたのは思い出した。食生活はシビアになり、日々過酷な生存競争を強いられたせいか。顔つきは厳めしくなったようだし、かつての体型とは真逆になり、測ってはいないが身長も伸びているかもしれない。


「そういえば食事がまだだった」

「一緒に食べよ。久しぶりに色々話したいから」

「わかった。ああ、すまないキム。それとシチューを。ベティ、君は?」

「燻製ハムサンドとシチューをお願い」

「オーケー。ごゆっくり」

 二人で店の隅、窓際のテーブルに落ち着いた。どれも作り置いてある品なので、加熱するだけでほとんど待たずに運ばれてくる。

「これは私からのサービス」 

 事情を汲んだキムが赤ワインのグラスを二人分付けてくれた。

「ありがとう、キム」

 乾杯し、グラスを傾けた。

「冷めたら勿体ないから、食いながら話そう。半分食べてくれ」

 ポークステーキを分けてやると、ベティは燻製ハムサンドを半分くれた。

「日本に帰らなかったの?」

「混乱があって、最後の飛行機に間に合わなかったんだ。日本のスタッフとも音信不通になってな。まぁ…あの様子じゃ飛行機に乗った所で無事に帰国できていたか怪しいが」

「でも、まさか私が遠征に出ている間に満が来ているなんてね。いつ来たの?」

「ちょうど一週間前だ。あぁ、ウィーバーが見張りの日だったな。ダニエルとジョンソン保安官に案内してもらった」

「という事は私が出て3日後ね。ダニエルはここの警備隊のエースよ。元海兵遠征部隊の偵察隊だった」

「最精鋭じゃないか…道理でな」

「私はここの副隊長をしているって訳。十六人の部下と一緒に定期的に調達遠征に出るのが仕事」

 ベティはポークステーキを頬張りながら事も無げに語った。

「副隊長だったのか…恐れ入った」

「普段はダニエルも行くんだけど彼、体を壊してリハビリ中だったから」

 あの痩せぎすな体つきは病み上がりだったこともあるのかもしれない。

「あとは私とダニエルでここの格闘訓練の教官もやってる。いつでもトレーニングに付き合ってあげるよ」

 満面の笑みでそう言われ、強張った笑みで頷くしかなかった。


「それで、一人で今まで生き残ってきた訳?クールじゃん」

 食事を平らげ、ワイングラスを空にしながらそう評するベティに対し、満は苦笑で返した。

「いや。飛行機に乗れなかった後、しばらくしてからとあるグループに世話になっていた。ここには及ばないが、ちょっとした砦を造って自警団を組織していたグループだ。…壊滅したがね」

「それは…気の毒だったわね」

「ラフレシアとか呼ばれているらしいが、感染者の成れの果てで胞子を飛ばす厄介な物を使われてな。俺は辛うじて逃がれたが、ほとんど感染した」

「そんな事が…」

「狡猾な略奪者のグループさ。戦力で勝てないと知って、最低だが最も効果的な戦術を使ってきた。…ここは大丈夫だろうか?」

「…トラヴィスに報告する。ガスマスクはあるけれど、そんな攻撃考えも付かなかったから」

 ベティは深刻な表情で考え込んだ。確かに、少しでも人の心が残っていれば考え付いても実行しないだろう。

「…実はそのあと、二人の女性に助けられた。彼女らがいなければここまで生きて来られなかった。その彼女らの行方を捜してここに来たんだが、捜索部隊に任せるしかないと言われて、こうしている」


 今にして思えば、ジョンソン達に言われた一週間はここにいろ、というのはベティ達が離れて町の戦力が減退していたからだったか。そのベティらが帰ってきた今、自分も町を出られる可能性がある筈だ。たった一週間だが、下水道での大立ち回りもあり、住人の信頼も少なからず得てきている。

 無力感を嘆いていたが、ここに来た事は決して無駄では無かった、と思い直した。現に今、こうして思わぬ再会を果たせた。


「ここでの生活は悪くないし、捜索隊も懸命に探してくているのは理解しているが、外は危険に満ちていて、彼女らを付け狙う略奪者もいるんだ。何とか俺も彼女らを捜しに行きたい。ベティ、こんな事を頼むのは身勝手だとは思うが、俺も外へ行けるように君からも口添えしてもらえないだろうか」

 心から切実に訴えた。奇跡的に再会できた知人を利用するようで気が引けたが、いつまでも安全なここで自分だけのうのうとしている訳にはいかない。

 ベティは真剣な面持ちで聞いてくれていた。満が話し終えるとテーブルの上で僅かに身を乗り出して頷いた。

「確かにアンタが助けに行かなければダメね。任せて。協力するから」

「ありがとう!恩に着る」

「さっきの略奪者の戦法も報告しに行かなきゃいけないし、早速トラヴィスに相談しに行こう」

「了解だ」


 時刻は8時となっていた。

 町の奥にある3階建ての堅牢な鉄筋コンクリート造りの建物に警備隊本部はあった。3階の司令室へと二人が通されると、ドアの前に立っていた衛兵が扉をノックし、トラヴィスに呼び掛けた。

「入ってくれ」

 トラヴィスはベティが前もって渡していた調達リストの目録に目を通していたが、それをデスクの上に置き、手を組んで二人に向き直った。

「ん?珍しい組み合わせだな、ベティ?本当にご苦労だった。損害も無く、物資もよく見つけてきてくれた。まだ何か?」

「はい。トラヴィス隊長、実は満とはパンデミックの直前に知り合っていたんです。彼の農業交流のホームステイ先が私の実家でした」

 思いもしない事実を知らされ、トラヴィスは面食らった様子だった。

「それは…偶然というか奇跡的というべきか…。確かに素晴らしいことだが、わざわざそれを報告に?」

「いえ、先ずは満から知らされた情報が重大だと判断したので報告に。略奪者の戦術についてです。町の安全保障と優位性を根底から覆しかねないかと」

 満はベティの横顔を盗み見た。出会った時から再会した先刻もそうだが、普段は人懐こく大らかな物腰だが、今は凛々しい軍人のそれになっている。

 おそらくトラヴィスは防衛部隊の士気と統率を維持するために軍紀にも一定以上の厳しさを求めているのだろう。

「確かにそれは聞き捨てならんな。話してくれ」

 ベティは満から聞いた事をそのまま、トラヴィスに報告した。報告を聞き終える頃にはトラヴィスの端正な顔に隠し切れない動揺が滲み出ていた。


「そんな事が…生き残るためとはいえ、悪魔の所業だ…」

「ラフレシアは特定の条件が揃わなければそうそう発生できないし、利用するにも一定のリスクがあるから、そうそう起きる事ではないが、生物兵器代わりに利用することで対象のインフラと物資を傷つけずに丸ごと手に入れられるという絶大なメリットがある。人間以外の動物や家畜、水は汚染しないようだ」

 満が補足するとトラヴィスは重々しく頷いた。

「合理的という訳だ。すぐに対策を施さねばな…気密性を確保できる避難所と警備隊のガスマスク標準装備、警戒の為の監視所の増設と言った所か」

「前者二つはすぐにでも実施できますね」

 ベティがやや安堵したように応じた。ジョンソンが言っていた核シェルターか。それなら本物のNBⅭ兵器であっても対処できるだろう。

「うむ。だが、肝要なのは事前に察知することだ。風向きを利用されて遠方から胞子が届けば対処できないまま一方的に壊滅してしまう。今ある監視塔から見渡せる範囲も限界があるしな…森林を伐採して見通しも良くするか。明日、関係要員を集めて会議を開かねばな」

「そして、もう一つは満の事なのですが」

 トラヴィスは満に向き直った。

「未だ、捜索隊から新たな情報が無い。君はこの短期間で我々に多大な貢献をしてくれた。それに、ベティの知己だというのならば間違いない」

「では…」

「ああ。君も捜索隊に同行することを許可する」


「ありがとう、トラヴィス隊長。しかし、俺は独自に捜索をしたい」

 軍隊であれば絶対に許されない我儘だが、自分はここの居候であり、彼の兵ではない。ここに二人が居ない以上、自分のやり方が許されないなら追放された方がマシだ。

「…余程大事なんだな。だが、危険すぎるぞ。ろくな武器も無しに徒歩で探すのか?その二人が何らかのトラブルに遭って身動きできなかったらどうする?」

「それは…」

 そこまでは考えていなかった。二人が無事でないなどあってはならない事だ。だがトラヴィスの指摘通りだ。

「…条件がある」

 トラヴィスはブルーの瞳で満を見据えながら続けた。

「どのような形であれ二人を見つけた後、戻ってくる事。そしてここの警備隊に入隊する事だ」

 示された条件は悪くない。無事に見つけたとして二人がここを気に入ってくれるか分からないが、その時はその時だ。このままでは再会できるかすら怪しい。

「では…」

「もう一つ。ここにいるベティとダニエルを連れていくこと」


 自分は勿論、ベティも唖然としてトラヴィスを見つめていた。その顔が面白かったのか、トラヴィスは鼻で笑うとベティに苦笑を向けた。

「そういう訳だ、ベティ。帰還早々すまないが、力になってやってくれんか?」

「あ…私は平気です」

「しかしベティは…」

 満の抗議をトラヴィスは手で制し、厳しい眼差しを向けた。


「二人を同行させる理由は二つある。一つは腕が立つ事。もう一つは君に軍人としての責任感と矜持を持ってもらうためだ。私の部下となる以上、二度とこんな勝手はさせんからな」


 異論を挟む余地も無かった。

「ありがとう、トラヴィス隊長」

「ベティも疲れている。今日はゆっくり休め」

 退室を促され、二人は司令室を後にした。


 警備隊本部を後にしてどちらともなく並んで歩いていた。

「すまない、ベティ。まさかこんな事になるとは…」

「へ…?あぁ、その事は全然気にしていないから」

 ベティは本当に気にした様子も無く、淡々としていた。気を使っての事かもしれないが。

「むしろ、あのトラヴィス隊長がここまで入れ込むなんて、一週間の間に余程頼りにされていたんだね」

「…大した事をした覚えはないが、厚意に報いなければな。巻込んでしまった君にも」

「だから、気にしていないって。どうせ私も付いていくつもりだったし」

「な…」

「じゃあ私はこっちだから。おやすみ、カカシ」

 頬に暖かな感触があった。

「明日の七時に迎えに行くから!」

 それだけ言い残すとそのままベティは振り返らず、一軒の住宅に駆け込んで行ってしまった。家の明かりは既に灯っていた。

 リビングの窓に人影が見えた。自分と同じような年頃の男とベティが抱き合っているのが見て取れた。無意識に自分の頬に触れると、消え入りそうなほどに微かな温度があった。


 一連の出来事を理解するのに暫く掛かった。なんとも複雑な感情と、それ以上に深い後悔が押し寄せてきた。


 自分は一人の女性を、自分の都合で危険に巻き込んでしまった。


「カカシさん、起きてる?」

 玄関から聞えてくるベティの声で目覚めた。服を着て起き上がると、時刻は七時に差し掛かろうとする所だった。

「ああ、今行く」

 バックパックを取り上げて玄関に向かう。外での生活に必要な日用品は全てまとめてある。ベティは旧式の迷彩服の上下に同じくバックパックを背負っていた。満と違い、彼女は武装を許される立場だからか、既に拳銃と軍用カービン、ナイフも装備していた。

「おはよう、ベティ」

 ふと、昨夜感じた温かみを思い出しかけたがすぐに打ち消した。

「おはよう、満。さ、警備隊本部に行くよ」

「出発の報告か」

「それもあるけどアンタの装備を整えないとね。ダニエルが手伝ってくれる」

 武器庫は警備隊本部にあったのか。そこに自分の拳銃とナイフも保管されているのだろう。


 警備隊本部のエントランスにはダニエルが待っていた。既に事情を聞いているらしく、訳知り顔で二人を見ている。

「ダニエル、満の装備を整えてあげて。私はトラヴィスに届出をしてくる」

「了解だ、副隊長。さぁこっちだ、満」

「すまないな、ダニエル。ベティもそうだが、巻き込んでしまって」

 ベティと別れ、ダニエルの案内に続く。

「なに、丁度いいリハビリさ。しかしまさかお前がベティの知り合いだったとはな。手荒に扱わなくて正解だったぜ」

 冗談交じりに言うダニエルに続きながら満も応じた。

「俺も驚きさ。それに、そっちは海兵遠征隊の偵察隊出だというじゃないか」

 どこの軍隊でもそうだが、存在を悟られずに敵情を探って帰還しなければならない偵察隊は平凡な兵には務まらない。必然的に優秀な兵が選抜される。ましてや海兵隊は他のどの部隊よりも一早く敵陣に乗り込むのだから。

「まぁ、期待してくれていいぜ。ここだ」

 ダニエルが予め用意していた書類を衛兵に提示すると、頑丈なドアが解錠された。電灯が点けられ、ガンラックに掛けられた銃器類が部屋中所狭しと並べられている。

「まず、お前から預かった武器を返すよ」

 ロッカーの一つを開け、その中からホルスターに収まったままの拳銃とナイフが取り出され、手渡された。それを元通りに身に着け直しておく。

「これは余り物だ。サービスしてやる」

 黒色のタクティカルベストを手渡された。防弾性能は無いが、その分動きやすく、弾倉や小物の収納、ライトを取り付けるのに何かと便利だ。

「次は武器だな。ARは人気だから殆どないが、何かあるだろう」

 様々な種類のライフルが並べられた一角に案内されたが、満は目についた特徴的な暗緑色の自動小銃を手に取った。

「いや、俺はこれでいい」

「随分と渋いな。威力は申し分ないが、とにかく重いぞ。後で後悔しないか?」

「ああ」

 ダニエルは自分の持つ軍用カービンの他に予備のライフルと散弾銃を一つずつ取ると、散弾銃の方を満に背負わせた。更に各種必要な弾薬を充分に確保すると、それをナップザックに詰め込んだ。

「こんな所だな。外でベティが待っている筈だ、いこう」


「乗って」

 本部前に停まったハンヴィーの運転席からベティが声を掛けてきた。既に荷台には食料や雑貨が詰まっていると思われる収納箱が詰まれ、ダニエルはその荷台に余分な武器と荷物を放り込んで後部座席に乗り込んだ。満もそれに倣って荷物を荷台に載せ、小銃を掴んだまま助手席に着いた。それを合図にベティの運転するハンヴィーが町のゲートに向かって走り出す。

「それで、探す当てはあるの?」

 鹿肉サンドが入った紙袋を渡され、一つを取ってダニエルに渡した。

「適当にドライブしてくれ。捜索隊の捜索範囲と被っても構わない」

「そんなんでいいの?」

「普通は捜索隊とは別の範囲を捜すもんだがな」

 ダニエルが鹿肉サンドを頬張りながら肩をすくめた。

「普通はな」

 それだけ言うと満も鹿肉サンドにかぶり付き、ゲートを通過した車窓の外に目を凝らした。自分の元来た道も気になるが、別の道から先に進んで貰うことにした。

 数キロほど進むと、森林の中に違和感を感じた。

「停めてもらえるか?」

 車が路肩に寄って緩やかに停車した。草木に覆われて見えにくくなっているが、森へと続く道があった。道が狭く、小さいながら木も茂っているため、車では入れそうにない。

「少し見てくる」

「俺も行こう。ベティ、車を頼む」

 ダニエルが後部座席から降り立った。道をしばらく進み、ハンヴィーが見えにくくなった頃、林の中に気配を感じた。

「いるな…」


 四体の感染者がまばらに徘徊している。こちらに気付いて向かってくるが動きは緩慢で、走り出す様子は無い。

「ナイフで。俺は左を。そっちは右を頼む」

 ダニエルは腰から大型ナイフを抜きながらそう言い放ち、声を掛ける間もなく三体いる感染者に向かって進んでいった。

 割り当てられた感染者に向かってナイフを抜いた時、くぐもった水音がした。

 横目に見ると、ダニエルは既に一体を始末し、次の標的にナイフを突き立てる所だった。防いだり抑えたりなどせず、相手の動きを見切って一方的にナイフを側頭部に突き立てていく。

『速ぇ…!』

 自分も感染者の背後に回り込みながら頸椎部にナイフを突き立てて捻った。その直後、背後で最後の一体が崩れ落ちる音がした。

「終わったな。…ああ、確かに廃屋らしい物が見えるな」

 ダニエルの目線の先にくすんだ白い壁面が見えた。木造の二階建て家屋が見える。かなり古いようで窓は殆ど無くなり、枯葉や蔦で屋根の一部が見えなくなっている。


 玄関を調べてみるが、人が立ち寄った痕跡は一切無かった。一瞥しただけでも手掛かりになるものは見当たらず、調べる価値が無い事は明らかだった。

「外れだ。戻ろう」

 分かってはいたつもりだが、最初からそう思い通りにはいかないか。

 ダニエルを促して元来た道を足早に戻った。

 

「どうだった?」

 サンルーフの銃座から周囲を警戒していたベティが訊ねてきた。

「いや、外れだ」

 それを聞くとベティは銃座から降り、再び運転席に着いた。自分達も乗り込み、車は再び走り出した。

「捜索隊は道路沿いを回って捜索するのがメインだろうから、今みたいな場所を見つけて探していればヒットするかもな」

 奥まった場所か。もし自分が今も彼女らと行動を共にしていれば可能な限りそうするだろう。だが、はぐれてから既に四十日も経っている。彼女らとて手持ちの食糧が尽きている頃だ。物資を求めて移動しているだろう。

 ウィルソン農場やプレッパータウンを見落として通過し、州境を越えたか?

確かにどちらも自分たちの進んでいた主要道路からは離れており、道なりに進んでいては辿り着けない。手掛かりが、情報が少なすぎる。地図を開いて考え込んだ。

「…小さな町もあるな。川沿いの道を進めば峡谷か」

 農場地帯を抜けると峡谷があり、その先は一本道で州境に行き着く。それなりに距離があり、間違っていたら大きな消耗になる。予備の燃料は積んであるが、どこかで補給できるという保証も無い。捜索隊も一週間の捜索で資源を消耗し、手掛かりも無い為に今日で捜索活動を打ち切るという。

「…この町へ向かってみてくれ。手掛かりがあるかもしれない」

 地図で示すと、ベティは表情を曇らせた。

「生存者の縄張りだね。あまり干渉はしたくないけど」

「接触したことがあるのか?」

 ダニエルが後部座席から身を乗り出して答えた。

「集落を要塞化して一人で自給自足しているようだ。接触した時にこちらと合流しないか誘ったが、全く聞く耳を持たなかった」

 一方的に制圧して略奪することは容易であっただろうにそれをしないのは、それだけプレッパータウンが紳士的な理念を重んじているという事か。満自身もその方針には賛成だったが、ともすればそれは付け入られる甘さにもなり得ると自覚していた。


 西日が穏やかに町を照らしていた。町の入り口にあたる道に乗り入れた。

 建物の様子を眺めていると、微妙な所だが町と言うよりは集落か、と思った。町の全てではなく、一部の区画をバリケードで封鎖してある。本当に一人でこの町を支配しているのであれば、どんなに高度な建設技術を有していたとしても、可能な建設作業は限られてくる。

 塀に囲まれた住宅と住宅の間を走る路地や道路さえ封鎖してしまえば、車輛や大人数での移動は制限できる。人間であれば住宅内に侵入する事もできるが…どうやら住宅の中に感染者を閉じ込めてあるらしい。番犬代わりか。

 バリケードにより先に進めなくなり、車はそこで停まった。再びベティを残し、ダニエルと共にバリケードを乗り越えて町の「正門」に向かった。比較的軽量な鉄骨材を組んで溶接したゲートの上部に有刺鉄線を絡ませ、南京錠を掛けてある。中々立派な代物だ。何気なく触れようとして、ゲート脇の犬小屋から伸びる細い配線に気付いた。犬小屋の中に光っているのは犬の眼ではなく、バッテリーの作動ランプだった。

「電流だ」

 ダニエルに注意を促し、バッテリーの電源を落とした。 

「前に来た時より遥かに厳重になっているな。この分だとブービートラップもまだありそうだ」

 日常的に防衛を強化しているだけなのか、それとも何かトラブルがあっての事なのか。いずれにせよ、ここの主がいる事だけは確かだ。話を聞くことはできる。ダニエルが車の荷台からボルトクリッパーを持ってきて錠を破壊した。

「ここの主には悪いことをしたな」

「インターホンが無かったからな。詫びの物資も持ってきた。行こう」


 ゲートを越えて進むとすぐ突き当りに三階建ての家があり、周囲は感染者の気配がする塀かバリケードによって塞がれ、道らしい道が見当たらない。


「これは…迷路か?」

 困惑を露わにするダニエルだが、満は正面突き当りに佇む頑丈な三階建て住宅を見てすぐに否定した。


「いや。虎口…キルゾーンだ」


 こちらから身を隠す物はゴミ箱一つ無い。そんな路地が突き当りまで五十メートル程も続く。

 キルゾーンと聞いた途端、ダニエルは飛び退った。満もゲート脇に飛び退った。

 何事も無ければ大の男が二人、青ざめながら蛙のように跳ぶ滑稽な絵面だったが、それは銃声と同時だった。

 道理でトラップが分かりやすかった訳だ。あれ自体が警告だったのだ。ダニエルが南京錠を工具で破壊せず、銃で破壊していたら跳び退る暇もなく撃たれていただろう。

「待て!プレッパータウンの者だ、話を聞きたいだけだ!」

 ダニエルが大声で呼びかけたが、反応は無かった。

「大丈夫!?」

 低倍率照準器付のカービン銃を携えたベティが物陰を伝って満の元に駆け付けた。車は施錠してきたという事だ。

 辺りは徐々に暗くなってくる。このままだと埒が明かない上に、銃声に釣られて町の外から招かれざる客が来ないとも限らない。

「このままじゃ時間の無駄だ。俺が奴の元まで直接訪問するから、二人はここで警戒と、可能な限り奴の注意を引いてくれ」


 満の提案にベティは絶句し、ダニエルは冷静な表情で首を傾げた。

「注意を引くのは良いとして、どうやって辿り着く?この分だと白旗持って両手を上げても撃たれ兼ねないぜ。…明らかに以前より気が立っている」

「周りにある住宅エリアを抜けて行く」

「無茶だ。腹を空かせた番犬がうようよ居るぞ?」

「実は前に居た町でこんな防衛手段を見慣れている。対処できるさ」

「感染者の他にトラップがあったら?」

「住宅に感染者を放り込んでおいて、その中で仕掛け作業をするなんて絶対にできない。先に仕掛けたとしても、今頃は感染者が引っかかっているさ」

「…確かに。場数はお前の方が上らしいな。分かった、任せる。俺は適当に説得を続けてみる。ベティ、好都合だ。アンタはそのままそこにいて、声は出さず、銃の先だけ露出して、そこに満がまだ居続けるように見せてくれ」

「…オーケー、分った。満…十分に気を付けて」

「イェッス、マム」

 相手は三階から撃ってきている。下手に塀を乗り越えてしまえば発見されかねない。相手の死角を意識しながら一軒の住宅に目を付けた。劣化により柵の一部が壊れたらしい。当然外側から板を打ち付けて補強はしてあるが、中に感染者が居るために本格的な修繕はできなかったのだろう。隙間にナイフを刺し込み、釘ごと板を剝ぎ取った。二体の感染者は銃声の発した方角に当たる塀の隅に移動している。

 この二体は自分の侵入した穴を辿ってベティ達を襲いかねない。他の気配と死角に注意し、姿勢を低くして背後から一体を始末した。振り向いたもう一体は足を取って転倒させ、覆い被さって始末した。

 住宅内に侵入し、隣接する住宅への侵入経路を探った。


 見たところ、このような住宅を利用した障壁がこちら側だけでも十二はある。ダニエルが居た反対側のエリアにも同程度があるだろう。一軒当たりにニ、三の感染者を閉じ込めて封鎖してある。資材の調達なども考えると、相当な時間と労力を費やしたことだろう。閉じ込める際に感染者に襲われるリスクも免れられない。

『よくもまぁ、これだけの障壁を作ったものだ…』

 半ば呆れ、半ば感心しながら裏口のドアを僅かに開け、裏庭の様子を探った。死角であることと感染者が他に居ない事を確認し、外に出た。やはり隣家とは塀で隔てられている。今度は抜け穴になりそうな場所も無く、早くも行き詰ってしまった。相手に近づきつつあるため、そう大きな物音も立てられない。

「なぁ、返事をしてくれないか?人捜しをしているだけなんだ。鍵を壊しちまった詫びの品もある」

 ダニエルの声が響いたが、返答は無い。ダニエルが言ったように気が立っているのか?

 ふと、庭の一角にある一本の樹と小さなツリーハウスが見えた。ロープは見当たらないが、これなら素早く乗り越えれば自分の姿を隠してくれる。

 物音に耳を澄ませてみるが、塀の向こうの様子は分からない。ダニエルの呼びかけによる陽動直後だ。やってみるしかない。素早く塀によじ登り、飛び降りた。幸いにも庭先に感染者はなく、住宅が死角になってくれている。家伝いに進むと、道路を隔てて問題の三階建て住宅が見えた。この道路を素早く渡って相手の眼下に潜り込むのと、更に隣家へ迂回するのとどちらが良いか…。

 逡巡したが、隣家に面する塀までは開けており、十数秒は身を晒した上で塀を乗り越えることになる。必然的に答えは決まった。

 相手がこちらを見ていない事を祈りつつ塀を乗り越え、すぐさま道路を駆けた。一階部分に辿り着くが、銃撃は無かった。 


 窓や玄関部は当然の如く封鎖されており、内部からも外側からも板を打ち付けて補強されている。敷地に侵入するため、塀によじ登った時、違和感を覚えた。塀の下の地面が妙に膨らんで見えた。他と同じように芝生は生えていたが、言い知れない不気味さを感じた。

『飛び越えれば何とかなるだろうか…』

 意を決し、塀の上から飛び越えると、何も起こらなかった。そのまま足元にも注意しながら出入り口を探ると、裏口が見えた。恐る恐るドアノブを回すが、何も起きない。内部に侵入すると、裏口の脇に水と食料、弾薬箱が置いてあった。

 拠点の一つとして使っているのなら、さすがに家の中にトラップや感染者は無いだろう。いくらか安堵しつつも慎重に上階に向けて進んでいく。

 

「動くな」

 男の頭部に拳銃の銃口を向け、鋭く呼びかけた。三階の窓辺に二脚付カービンライフルを構えて伏せていた男が身を震わせた。その体勢からならそう素早い反撃は受けない。

「誰も傷付かなかったから殺しはしない。ただ…」

 視界の端に映った物を見て一瞬、思考が途切れた。ナイフを抜き放ち、男の背中に馬乗りになり、まだ血が生乾きの刃先を顔の前に突き付けた。

「見ての通り、その辺の家に配置していた感染者を始末してきた。これが掠ればどうなるかな」

 マスク越しでも男の恐怖と動揺が伝わってきた。


「正直に答えろ。あの散弾銃はどうしたんだ?」

 マリンとミカエラが持っている筈のタクティカルショットガンがあった。その特徴的な外見と光学照準器ですぐに分かった。

 刃先を男の皮膚に軽く押し付ける。少しでも引けば感染するだろう。

「わ、わかった…!答えるから…!」

 感染の恐怖と満の豹変に怯えながら男が声を絞り上げた。

「ひ、一月くらい前に若い女達が迷い込んできたんだ…その時に…」

「女達に何をした」

 満の強烈な憎悪と殺意を感じたか、男は涙声になりながら声を上げた。

「何もしていないっ、本当だ!ただ…その銃だけ置かせて追い払った!」

「…女達について他に知っていることは?」

「すまないが分からない…本当に追い払っただけだからどこへ行ったか…」

 確かめようもないが、男が嘘を言っているとは思えなかった。ナイフを収め、男に座るよう促した。安堵の息を漏らしながら男はベッドに座り、満はトランシーバーでベティとダニエルに向けて男に無事接触したことを伝えた。

「女達の特徴は?」

「それぞれブロンドとブラウンの、トップモデルみたいな女だった」

 間違いない。二人はここに立ち寄っていた。これは大きな手掛かりだ。そしてこの一週間プレッパータウン周辺で手掛かりが無い以上、州境側に向かった可能性がある。とはいえ、二人に関する情報はこれ以上得られないだろう。

「分かった。しかしゲートを壊したとはいえ、何故いきなり撃ってきた?」

 反応が遅ければ恐らく負傷していたか、下手をすれば死んでいた。男はマスクを外した。四十代の疲れた顔があった。

「女達が去った二日後に二台のトラックがやってきた。そいつらは警告しても撃ってきて、何とか追い払ったが警戒を強化せざるを得なかった」


 ボミットスの連中だ。

 背筋に悪寒を感じた。マリン達の行方を知ってか知らずか、奴らは二人に迫りつつあった。それがもう一月以上前…それならとっくに追い付いていてもおかしくは無い。

 貴重な手掛かりを得たが、懸念も現実味を帯びてきた。だが、これ以上の情報は得られないだろう。日も暮れようとしているし、話を切り上げてベティとダニエルの元に戻らなければならない。

「…分かった。門の事はすまなかった。門の所に詫びの品を置いていくから受け取ってくれ」

「あ、ああ」

 背を向けずに出入口を潜り、互いの姿が見えなくなってからふと思い付いて尋ねた。

「そういえば…柵の下が膨らんでいたようだが、何かトラップが?」

「ああ…手製の地雷を二か所な。踏めば、運が良くても足は使い物にならなくなる」

 ナイフを突きつけられた仕返しか、脅かすような口調だった。実際、今更ながら血の気が引いてくる。しかも、一つは見つけられたが、もう一つの存在は分からなかった。真実なら、これほど恐ろしい事は無い。

 溜飲を下げたか、男は続けた。

「今度は家伝いに反対側のフェンスにある出入口の内鍵を開けていけ。そっちは何もトラップが無い」


 男が言うようにすると、頑丈な金網フェンスの扉があった。内側の閂を外し、そのまま外へ出た。背中を見せてキルゾーンを歩くのは少なからず抵抗感があったが、3階に男の姿はもう見えず、満はそのままベティとダニエルの待つゲートへ駆け足で戻った。満に気付いたダニエルとベティが僅かに顔を覗かせた。万一の場合に援護できるよう警戒してくれているのだろう。

 しかし銃撃は無かった。ダニエルは食料の入った袋をゲートに掛け、三人で車に乗り込んだ。

 陽は既に山陰に隠れ、夜闇が迫りつつある。車が走り出すと男から得た情報を二人に説明した。

「…なるほど。奴が攻撃的だったのはその連中のせいか。奴もヤバかったが、そいつらも厄介そうだな」

「15人は居る。軍や警察から略奪した武器や装備を持っているから、手強いだろうな」

「とりあえず今夜の夜営ができる場所を探そう。適当な廃墟でもあればいいんだけど」

 ダニエルが地図を覗き込み、ベティにとある一点を示した。

「少し山に入るが、ここにキャンプ場がある。ロッジもある筈だ。幹線道路沿いでキャンプして、そんな小隊単位の連中に襲われたら一たまりも無い。次の分岐を左だ」

「オーケー、そこにしよう」

 満は助手席から夜闇に包まれた外の景色を見つめた。自分達もそうだが、あの二人もボミットスの連中も夜は移動しない筈だ。


 ベアレイクキャンプ場、と物騒な名前の看板を下げたアーチを潜り抜け、管理人小屋に差し掛かった。管理人小屋は小さく、とても三人で休むには適さない。しかも壁の一部が焼け落ちていた。

 満が降り、管理人小屋の中を調べた。鍵棚を見つけ、その中から残っている適当な鍵をいくつか抜き取った。

 管理人小屋を通り過ぎると、薄暮の中にいくつかのロッジと穏やかな湖のほとりが見えてきた。

 手に入れた鍵の番号に当たるロッジの前で車を停車させ、例によって満とダニエルが警戒しながらロッジを調べた。

「外観は問題ないな」

「六号ロッジ…」

 6と刻印された鍵を差し込んで回すと、当然の如く鍵が外れた。戦闘経験豊富なダニエルがバックアップに回り、満が拳銃を手に建物内に滑り込んだ。一階にはバストイレの他、ベッド付きの部屋が4部屋あったが気配と痕跡は一切なく、埃が薄らと溜まっているだけだ。二階部分も確認するが、やはり何も無い。

「クリア。大丈夫だ、ベティを呼んできてくれ」

「よし、食料と荷物は任せろ」

「誰も居ないとは思うが、念のために周囲だけ見て来ようか?」 

 満が申し出ると、ダニエルは少し考えてから首を振った。

「いや、必要ないだろう。代わりに、それこそ何も無いだろうが使えるものが無いか見て回ってくれ」

 そう言い置いてダニエルは出て行った。しばらくすると怪訝な面持ちで戻ってきた。

「今、定時連絡をしたんだが、来てくれ。本部からお前に問い合わせたいことがあるそうだ」


 ハンヴィーに駆け寄ると、運転席にはベティが座ったまま、こちらを手招いていた。助手席に乗り込んで送受器を受け取った。 ダニエルは車の傍らで周囲を警戒しながら耳を聳てているようだ。

「こちら満。本部どうぞ」

『こちら警備本部。通信要員が定期通信を実施していた所、応答があった。ウィルソン農場のスティーブという人物だ。君の所在を尋ねてきたが、君の知人か?』

 ほんの十日前に別れたばかりだというのに、やけに懐かしく感じられる。不機嫌な表情にぶっきらぼうな口調で無線交信をするスティーブの様子が目に浮かぶようだった。

「肯定です。町に辿り着く前、事故に遭って死にかけていた自分を介抱してくれた恩人です」

『了解した。周波数を伝える。後は君が応えてやるといい』

 周波数を伝えるとトラヴィスからの通信は途絶えた。周波数を操作し、無線を送った。

「こちら満。ウィルソン農場応答願います」

 間を置かず、スティーブから応答があった。

『無事だったか。リッパ―の町にいるのか?』

 無線の向こうの声は幾分穏やかに感じられた。

「お陰様で無事です。それと、プレッパーです。今は町の住人や警備隊に協力してもらって、彼女達を捜索しています」

『うぅむ…まだ女達は見つからんか…だが焦らずに捜せ。焦りは足元を見失い…待て、女房がお前を心配しとった。声を聞かせてやってくれ』

 安心したようにダニエルは車から離れ、ロッジに戻っていった。ベティはこちらを冷やかすような笑みを浮かべて残っている。


『…ここを押せばいいの? …いいのよ、そんな細かい事は!ああ、坊や…満さん、聞こえる?』

 上ずったマリアの声が聞こえてきた。隣のベティは「坊や」呼ばわりされている自分を見て楽しんでいるようだ。

「聞こえています。その節はありがとうございました。お陰様でこうして無事に他の生存者と合流できました。何と感謝してよいものか」

『ああ、良かった!あなたが居なくなってから寂しいのと心配で…この人なんて私よりもすっかり気落ちしてしまって、それはもう気の毒だったわ…なによ、本当の事でしょ。 …ガールフレンドはまだ見つからないのね?』

「ええ。しかし、今はここの人達の協力を得て捜索しています。すぐに見つかりますよ。 代わりに…というか、古い知り合いに再会しました」

 思わぬ反撃を受け、隣で身じろぎする気配があった。

『まぁ…!それは凄い!どんな人なの?』

「マリアさん程ではありませんが、美人です。ここの警備責任者の一人です」

 マリアから無線機を取り上げたか、再びスティーブの声に代わった。

『こっちも二人にプレッパータウンに合流するよう定期的に呼び掛けてみよう。ギャング共が聞いているかもしれんが、町にさえ合流できれば問題なかろう。…お前も気を付けろよ。以上、ウィルソン農場』


コンロで温めた保存食で簡単な夕食を済ませた後、ダニエルは一階の一部屋に陣取って仮眠を始めた。最初の見張りは自分という事もあり、満は小銃を手に窓から周囲を見渡せる、二階のフリースペースに陣取った。

 とはいえ、状況からして襲われる可能性は限りなくゼロに近い。建物も堅牢で、見張りもあくまで念の為としてのものであり、一人が目を覚ましてさえいれば良いという程度のものだ。今日はベティだけが運転を担当したので、ベティの仮眠時間が長めになるようシフトを組んである。町で譲り受けたソーラー式の腕時計を確認し、椅子に腰かけたまま窓から周囲を眺めた。

 満天の星空に天の川が鮮明に煌いていた。あまりの輝かしさに一種の畏怖さえ感じる。日本の、空気が凍てつく冬ですらこんな星空は見たことが無い。世界から文明の光が消え、この星自体が闇に包まれているが故に星々の煌きが一際輝いている。

『マリン達もこの星を見ているだろうか…』

 ふと、古代人が天体観測に明るかった理由が分かったような気がした。陽が沈んでしまえば今の自分達同様、他にやることが無いからだ。望遠鏡どころか双眼鏡すら無かった頃から観測技術に優れていたのは原始的な高視力とこの原初の暗闇のお陰だったのかもしれない。

 取り留めもない憶測をして星空を眺めていると、階下に気配があった。星明かりに照らされたベティが階段を上がってくる。

「寝なくていいのか?それともプラネタリウムをご利用か?」

「プラネタリウムで」

 そう言うとベティはリクライニングチェアを倒して寝そべり、星空を見上げた。

「さっきの夫婦、良い人達だったね。仲も良かったし。こっちに合流する気は無いのかな?」

「…俺もそうして欲しいが、絶対に離れないよ。亡くなった息子さんとの思い出が詰まった農場だ。でも、折をみて説得はしてみる」

「そう…」

 ベティも農場に暮らす家族が居た。亡くなった兄弟も居た。彼らがどうなったかは満には分からない。


 話題を変えようと口を開いた。

「あー、そういえば少し驚いた。まさか結婚しているとは」

「結婚…?あぁ、ビリーの事ね…結婚なんて大それたものじゃないけど、町で出会って意気投合して、同棲している。もう半年くらいかな」

「事実婚ってやつだな。せっかく遠征から帰ってきたばかりなのに、引き離してしまったな」

 改めて心苦しさが込み上げてきた。しかし星明かりに照らされたベティの横顔は満と違い、淡々としていた。これが彼女の芯の強さか、と思った。


「そうだね」


 初めて聞く声だった。どんなつまらない軽口の応酬にさえ無邪気に応じてくれたベティだったが、その生返事には何の感情も感じられなかった。


 奇妙な居心地の悪さを覚え、思わず身じろぎした。やはり内心では自分を咎めていたか…?責められて当然だとは理解しているが…

「それで、二人の女の子ってどんな人達?」

 話題を変えてもらえた事に安堵し、救われた思いで応えた。

「うむ、君や俺と同じ年頃だ。一人は冷静かつ強かに行動するリーダーで、もう一人は狙撃の名手で医療の心得もある。出会った時はどちらも一人でサバイバルしていた。俺より余程強い」

「町に合流してくれると思う?」

「そこなんだが…俺は二人を見つけたらトラヴィスとの契約がある。彼女らだって町には留まるとは思うが…万一、そうでないにしても、二人の意志を尊重する。無事に再会できればそれ以上の事は無い」

 その時俺は絶望せずにいられるだろうか…無理だろうな…

「…大切な人達なんだね」

「ああ。なんとしても見つけ出す」

 ベティはチェアから身を起こし、満に向かって微笑んだ。

「ありがとう。話せてよかった。おかげで眠れそう」

「良かった。おやすみ」

 軽く手を上げ、ベティは階段を降りて行った。


 時刻は六時を過ぎ、周囲は十分に明るくなった。既に全員が荷物をまとめ、朝食を済ませてからキャンプ場を後にした。

「このまま州境に向かってくれ」

 今日はダニエルが運転席に着き、ベティは後部座席で何やら衣擦れの音を響かせている。

「ここから先は俺達もまだ行ったことが無いな」

「調達には行かないのか?」

 百人規模のグループがあれだけの経済と生活を維持するためには相当な物資を消耗する筈だ。いくら終末前から膨大な物資を蓄えていたとはいえ、五年以上経っている。

「日本ではどうか知らないけど、この国ではプレッパー向けのビジネスが盛んだったの。シェルターとか保存の効く物資は勿論だけど、ちょっとした資源を製造する機械設備とか、必需品の工場もある。調達は最低限で済むから。理想は自給自足だしね」

 プレートキャリアを着込み終えたベティが応じた。

「まだ出会えてはいないが、友好的なグループがあれば物々交換なんかをして交流する用意もある。昨日の、お前の知り合いの農場なんかとも交流ができるだろう」


 広い一本道を進むうち、それは唐突に見えてきた。峡谷と農地が続く中、路肩に一台のトラックが打ち捨てられていた。満が指示するまでも無く車は速度を緩め、二十メートルほど手前で停車した。

「こんな何もない所に…ただの廃車か、罠か…」

 ダニエルはそう訝しんだが、満にはその車に見覚えがあった。

「いや、あれは…」

 満が車を降り、車に駆け寄った。ベティもカービンを手に後に続く。

 間違いない。ミカエラと共に苦労して手に入れた四人乗りのピックアップトラックだ。車上には一切の荷物は無いが、爭った痕跡も無く丁寧に駐車してある事から、二人はここで立ち往生して車を放棄したのだろう。車内に積もった埃と車の汚れ具合からして数週間は経っているだろう。

「二人の車?」

「ああ。このルートで間違いないようだ。先へ進もう」

 再びハンヴィーに乗り込み、先へと進む。

「手掛かりがあったのはいいが、ここからは追い越しにも注意しないとな。二人は徒歩なんだろう?どれだけの時間が経ったか分からんが、すれ違ってしまったら余計に分からなくなるからな」

 ダニエルの指摘はもっともだ。ここからは怪しい場所を見逃すわけにはいかない。まず、二人が徒歩になってから野営する拠点を探した筈だ。地図に目を落とし、指でなぞった。徒歩で行ける範囲に何か建物か施設は無いか。

「…少し川に下った場所に発電所があるな。それかそこを通り過ぎて小さな集落か」 

 食料の問題から、そのどちらにも既に二人は居ないだろう。だが、もしかしたら手掛かりがあるかもしれない。発電所へ向かうように頼んだ。

 

 幹線道路の脇から舗装されていない道が続いている。小さな表示板に「変電所→」とそっけなく記されているだけだ。名前からして物資の類も望めず、建物すらないかもしれない。しかしフェンスに覆われた敷地内であれば一晩の野営くらいは安全に過ごせるだろう。

 荒れた砂利道に乗り入れ、しばらく道なりに進んだ。ダグラスファーの樹林を抜けると、青々とした川辺と、フェンスに囲まれた小規模な変電所が見えた。コンクリート二階建ての管理棟もある。川辺の方からは感染者の気配がまばらにあるが、フェンスの周りには一体が所在なげに徘徊しているだけだ。騒がれては面倒になり兼ねないので、痕跡を探しがてらに背後から忍び寄り、手早く始末した。ナイフの血を相手の衣服に擦り付け、改めて中の様子を確認した。変電所はとうに機能を失っており、フェンスゲートも南京錠を掛けられたままだが、フェンスは3mほどで、乗り越えられない訳ではない。小銃を背負うと金網を掴んで登り、内部に侵入した。感染者はもちろん、他の生命の気配も無い。

「大丈夫だ、外の警戒を頼む」

 外で待つベティにそう言うと、先ず管理棟に向かった。一階は恐らく器具置き場だろうが鍵がかかり、階段を上った先の管理室も鍵がかかっていた。ドアノブに何かを叩きつけたり、鍵穴に何かを差し込んだ微かな傷があったが、侵入はできなかったようだ。そのまま振り返り、二階から施設内を見回した。隅に簡易車庫らしき小屋があった。二階から降り、その車庫へ向かうと、管理用ボートが一艘保管されていた。この中で横になる事もできただろう。見ると、脇にはゴミが落ちていた。自分が切り分けた鹿肉の包み紙と、ボミットスで得た食料の内のチョコバーの包み紙。ふと、鹿肉の包み紙にか細い字があった。

「グレッグ&ウォレンスホテル」

 それを握りしめ、フェンスへと向かった。


 


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