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7.わあい、ウサギさんだ

一話抜けしております。六話を差し込みました。

 そんなこんなでリュックにタオルだけ入れてウエストポーチとサバイバルナイフを腰に装着し外へ出てきた。

「今後のことを考えて、どれくらいの時間でポップアップテントに避難できるか実験だ」 

 ポップアップテントに手を当て「収納」と宣言する。

 すると、ポップアップテントが忽然と姿を消す。もちろん、ポップアップテントの中のものは予め収納している。

「ポップアップテントも俺の持ち物だったから収納できるのは予想通り。問題はここからだ」

 まずはスマートフォンの電源を入れる。お次はウエストポーチからポップアップテントを取り出す。

 畳まれたポップアップテントが地面に落ち、ひとりでに組み立てられた形となった。

「お、おお。俺の知るどんなポップアップテントよりすげえ」 

 ポップアップテントを取り出してから開くまで、手元のスマートフォンのストップウォッチによると1秒。開いたポップアップテントにできうる限り素早く中に入る。

「実験完了。かかった時間は三秒か。これならいざという時に逃げ込むことはできそうだな」

 ポップアップテントが自動的に開くのは幸いだった。元々持っていたキャンプ道具は全てレベル2になっていただろ。ポップアップテントについても同じくレベル2になっていたんだよね。レベルがあがってどんな強化なのかと思ったけど、自動展開の機能と速度が爆上がりしたようだ。

 通常のポップアップテントも展開が早いは早いけど、形を整える必要もあるし地面に固定するためにペグをうたなきゃならない。

 一方、チートポップアップテントは完全自動展開な上に地面に固定される。

 ピンチになった時、3秒で退避できると覚えておこう。繁みの向こうに猛獣が見えたら、即ポップアップテントを展開し立てこもる。

 しっかりと記憶したぞ。

 スマートフォンの電源を落として、ポーチから方位磁石を出し手に取る。スマートフォンの機能で方位を知ることはできるけど、スマートフォンのバッテリーはなるべく節約したい。持っててよかった方位磁石。

 電源を節約するといっても、スマートフォンの機能でよく使うものって時計の機能くらいなんだよね。時計はソーラー式の置時計がウエストポーチに収納されているから代替がきく。

 他には必須ではないが、景色を写真に収めて、なんてことをしても楽しいよな。充電の目途が立たないといずれ撮った写真を見ることができなくなってしまうから、いずれソーラー式の充電器を手に入れよう。

「すぐに外へ出たいところだが、焦らず、装備の指さし確認をしておこう」

 最重要の腰に巻いたポーチだろ。焦った時のためにリュックを背負って、リュックの中にはタオルなどを入れている。そして、腰に固定したサバイバルナイフの様子を確かめた。よし、問題なし。

 いざ、ポップアップテントの外へ。前方を指さし得意気に胸を張る。

「川か湖を目指して進むとしよう」

 水の流れる音が聞こえれば音の方向へ進むのだが、そのような音は聞こえてこない。

 かといって何も考えずに進むと同じ場所へ戻ってくる可能性がある。

 そこで方位磁石を使うことにしたんだ。方向はどちらでもよかったのだけど、北に向けて進むことにした。

 崖とか進むことができない地形に遭遇するまでは、北へ北へ向かおう。

 

 ◇◇◇

 

 山間部なのかなあ。1時間くらい道なき道を北へ進むと山間で見るような景色になった。

 切り立った崖にポツポツと低木があり、ウネウネとした隘路。隘路といっても体が何とか通るみたいなものではなく、軽自動車なら余裕で通ることができるくらいかな。

 いかにも何か起きそうな場所で嫌な予感がする。

「しかし俺は北へ進むことをやめない」

 特徴的な地形だったら逆に覚えやすい。北へ行って行き止まりなら、ここを目印にして探検するのもありかなってね。

 

 嫌な予感的中か……いや、気のせい気のせい。1時間以上進んでいるけど、小動物にさえ遭遇してないものね。

 ここなら左右は崖なので左右の藪の中から突然魔物が! ってことはなくなる。といっても、崖を駆けおりてきたり、空から急襲を受ける可能性があり、全力で警戒しなきゃならないことは変わらないのだけどね。それでも、森の中を歩くよりは全然マシである。このまま何事もなく進むことができればいいのだけど……。

 そんな俺の想いはすぐさま裏切られる。

 前方に倒れている人を発見。人の手が全く入っていない山間部で倒れている人がいるなんて。

 何らかの罠かもと警戒しつつも、倒れている人をそのままにしておけない俺である。一日一善を誓ったばかりだしさ。

「うーん、コスプレ……? いやそれにしては」

 うつ伏せに倒れているのは女の子だった。タイトスカートに腰の上くらいの丈のベスト。こげ茶色の革ベルトをつけている。

 足元はひざ丈くらいのロングブーツで靴底はゴム製ではなさそう。

 亜麻色の長い髪から真っ直ぐ伸びているのはウサギのような耳だった。ウサギ耳を頭につけているのかな、と思ったのだけどそれにしてはリアルすぎて……片側が半ばほどで折れ曲がっているし……。

 彼女はぐったりしたまま動かない。崖から滑落して気絶したのかも。

 崖を見上げ、ぞっとした。この傾斜を登ったり降りたりなんて俺には無理だ。見た所彼女は腰にロープを巻きつけているわけでもなく、命綱無しで登ったのかなあ?

「んー。やっぱり見えないな……あれ、何?」

 上にも道があるのか気になって背伸びして見ていたら、ひょっこりと顔を出す白いもふもふした何か。

 崖に張り付くようにして見えたそいつは彼女と同じようなウサギ耳だった。しかし、ウサギとは明らかに違う。

 そいつは真ん丸でサーベルタイガーのような鋭い牙が生えている。大きさは中型犬くらいかな。

 牙ウサギとでも名付けようか。牙ウサギは崖を転がるようにして降りてきていたが、低木に引っかかってギーギーと歯をこすり合わせたような唸り声を出していた。

 スパアアン。

 次の瞬間、低木が真っ二つになった。あの牙でやったのか?

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