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大英雄のスキルに目覚めた俺を追放!? 〜無能なのは俺じゃなくて、このスキルなんだが!!〜  作者: 夕暮れタコス
第三章 魔国領連邦

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第39話 背負う覚悟

「俺はこの戦争の『構造』そのものを、外側からひっくり返したいと考えている」


 魔王ハウ・アゼルヴの言葉を鵜呑みにはできなかった。俺は奴の心の内を見透かしたくてジッと瞳を抉るように見つめた。その視線を躱すことなく魔王は言葉を続けた。


「簡単には信じられんか? まぁそうだろうな。だが今はそれで良い。今後の私の動きを理解してもらうための布石だからな」


「……私達にチャンスを与えたのもその一環、ということでしょうか」


 テスの言葉を魔王は頷いて肯定した。


「えーと、アンタの考えはわかったけどよ、結局俺の要求はどうなるんだ?」


「何を勘違いしている。私が決闘の報酬として承諾したのは対等な会話だ。要求を呑むことではないぞ。だが、魔国領連邦内の馬鹿げた謀殺計略は俺としても望むところではない。先の要求への答えは、こうだ」


 魔王は再び玉座に腰を下ろし、頬杖をついて言った。


「この馬鹿げた戦争を終わらせたあかつきには、尽力してみせよう」


 ――結局そこに行き着くわけか。


 テスの表情を伺うと、同じ思いを抱いている様子だった。


「オーケー、ならこっちも尽力してみるさ」

「しかし閣下、戦争の構造をひっくり返す、その手段はあるのでしょうか?」


「現状のままいくならば、敵の殲滅となるな。しかしこの道は単純ではあるが険しい道だ。あとは交渉、か……。スキル『バベル』が手の内に入った事で現実味を帯びたが、険しき道であることにはかわりない」


 魔王は口の端を上げて、邪悪に微笑む。その言葉の裏にある意図を感じ取り、怒りが込み上げてくる。


「……さっきの決闘はテメェにとっては、『バベル』を、テスを手に入れるための茶番だったわけか」


 歯茎を剥き出しにした俺を魔王は嘲笑う。


「おいおい、落ち着けよ。その娘は死んでいたはずだろう?俺があの場で『バベル』の存命を知ったのも偶然。俺がした事はお前らが生き長らえる理由を与えてやった事くらいだ」


「なんとも押し付けがましい親切だなぁ、おい!テメェはネクロードの想いを何だと思って――」

「リングスさん、落ち着いてください!」


 前のめりになる俺の腕をテスが抑える。その様子を見て魔王はため息混じりに呆れた声を出した。


「はぁ、まったくだ。感謝はされども何故そこまで怒る?……ネクロードに何か思い入れでもあるのか?」


 指摘された事実に対してゾクリと背筋に寒気が走る。


 頬杖を解き、真っ直ぐ俺を見据える魔王の目には、ただの好奇ではなく、新しい兵隊を品定めするような冷徹さが見えていた。

 でも寒気の原因はそれじゃない……。


 ……なんで俺はこんなに怒っているんだ?ネクロードに肩入れしている?


 流れ込んできた記憶の影響なのか?自分の記憶が薄れたからこそ、影響を受けているのか?

 ……だけどそれがなんだ。俺は背負うと決めた。ネクロードの言う負の連鎖に足を踏み入れたからこそ、いや、元々踏み入っていたのかもしれない。人生、命、矜持、譲れないものがあるからこそ衝突する。でもだからこそ踏みにじるのではなく、背負い乗り越える。このスキルならそれができる。


「……世界の構造をぶっ壊すんだろ?俺はその犠牲になった奴らの想いを背負って闘う、それぐらいの覚悟は必要だろ?」


「ふっ、良い目になった。そうだ、これから先、どれ程の犠牲が出るか予測もつかない。だが、だからこそ立ち止まる事は許されない。とはいえ、お前らと馴れ合うつもりもない」


 魔王が側近の女へと手を煽り、指示を出す。一歩前に出た女は表情を変えずに口を開いた。


「現在、レッドフォールラインでの戦闘に変化が起きています。具体的には、魔獣の乱入により我等の部隊に混乱が起こり、それを機に聖族が一大攻勢に出ています」


 俺とテスは目を見開いて顔を見合わせる。


「おい、その魔獣ってまさか」

「……閣下、お耳に入れておきたい情報があります」


「話してみろ」

 テスの進言へ真面目な顔を返す魔王。


「聖族の賢者と呼ばれる追放者から聞いた情報なのですが、聖族は人工的な魔獣の製造を研究しています。バンダースナッチ、かの有名な魔獣がその成功例なのです」


「ほう、興味深いな」


「俺らは一度その魔獣を撃退した。だが奴らのその研究施設を叩く事には失敗した」


 口いっぱいに広がる苦い思いに拳を握り締める。


「さらにその研究施設では……広範囲を焼き払う魔力爆弾の研究をしていると、マァルさん……その恩人の賢者様は言っていました」


「廃墟都市のアレか……」

「ご存知なのですね」


 魔王の苦虫を噛み潰したような顔にテスが驚く。側近の女がその魔王の表情を伺いながら、控え目に報告した。


「報告では、聖族の後方部隊は何か巨大な荷物を護る陣形を取っているとの情報があります」


 魔王は大きくため息をついて、玉座に背を預けた。そして側近の女へと伝えた。


「ヘルン、研究施設を叩くための精鋭を集めろ。それと……お前等――」


 魔王は俺とテスを順番に見て、託すように言葉を並べた。


「――すぐにレッドフォールラインへ向かって、事態の収拾に当たれるか?」


「いいぜ、だが一つだけ条件がある」

「……なんだ」


「魔獣、バンダースナッチを倒したら現地の部隊は下げろ。やってもせいぜい防衛線を立て直すくらいだ。侵攻はさせねぇ」


「クハハッ、面白い!魔獣の討伐だけでなくあの戦場を切り拓くと言うか。いいだろう、だが保険の為に後続部隊は送る」


 盛大に笑った魔王は真顔になり指を鳴らす。すると再び側近――ヘルンと呼ばれた女がゲートを作り出した。


「聖族……リングスと言ったか?お前の言葉が戯言ではない事を期待しているぞ」


「ハッ、報告を楽しみにしてろ」

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