表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
消える煙  作者: ゆずさくら


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

3/6

推定因果

 俺は気を失っていたため病院に運ばれた。

 自ら転んだだけで、体自体は正常だった。

 警察がやってきて、状況を訊ねられた。

 俺は状況をそのまま話した。

「店長と知り合いとか、そう言うこともないですか?」

 先輩と飲みに行ったことはあるが、一、二度だ。

 店長があの人だとは今日知ったぐらいだ。

 一通りの質問をされ、警察は去っていった。

 俺は院内の時計を見て気がついた。

「あっ! 先輩」

 俺は慌ててスマホを見た。

 たくさん着信があった。

 折り返し電話すると、先輩がでた。

「大丈夫なのか!?」

「ええ、目の前で人が刺されているのを見て、気を失ってしまって」

 先輩にさっき警察に話したのと同じように、事実の説明をした。

 先輩は、事件が起こっている間、ずっとトイレにいたらしい。

 騒ぎが静まってトイレを出ると、静まり返った店内で現場検証をしていたので驚いたそうだ。

 勤務中も長トイレをするので、たまに部長がトイレに行って直接先輩と話をしていた。

「先輩らしいですね」

 俺はほっこりした気分になって通話を切った。

 病院の外に停まっていたタクシーを使って家に帰った。

 家に帰ると、寝ているかと思っていた母が起きていた。

「よかった。無事で」

 警察から話がいったのだろうか。

 俺は言った。

「びっくりしたよ、目の前で人が刺されて」

「えっ!? 目の前でって、あんたなんで裏の家に上がったの」

「裏の家? なんの話し?」

 裏の家とは、今朝、落ち葉をブロアーで吹き飛ばしていた爺さんの家だ。

「裏の爺さんがどうしたの?」

「何言ってるの? ニュース見なかったの?」

 母は何度も話したかのように饒舌に事件を語った。

 雑にまとめるとこうだ。

 家の中に若い男が押し入り、爺さんの体を刺して殺した。

 犯人と思われる若い男はまだこの辺をうろうろしているらしい。

「とにかく、捕まってないそうだから気をつけるんだよ」

 俺は自分の部屋に戻った。

 裏の家が見える窓を見つめながら、俺は考えた。

 偶然…… だろうか。

 バッテリーが切れそうになっているスマホに充電ケーブルを刺し、俺はSNSを確認した。

 俺がした居酒屋の『クチャラー』投稿に、リプがついている。

 リプを見ていくと事件後の時間帯に、気になるものがあった。

『どうです。静かになったでしょう?』

 俺は念の為に、スクショをとった。

 そのまま朝の『ブロアー』についたリプを調べ始めた。

 事件が起こったと見られている時刻にリプがあった。

『どうです。静かになったでしょう?』

 二つのリプは、同じ同じアカウントから発せられていた。

 いや、同じアカウントに見えるもの、からと言った方が正しいかもしれない。

 プロフィール欄のアカウント名に「@」しか表示されていないのだ。

 これがあり得るのか、ありえないものなのか。

 プロフィールには『あなたの声、聞こえていますよ』とだけ書いてある。

 ゾッとした。

 セミの投稿をした時は気持ち悪いと思って無視していたが、改めてリプを見返してみる。

 同じプロフィールだ。

 二度あることは三度ある、いや、もう三度起こっている。

 俺は部屋を見回した。

 隠しカメラ、盗聴器、あるいは窓の外からこっちを見ている人物……

 違う。

 俺はSNSをさらに探した。

 確か、ワイヤレスイヤホンに対してもSNSで文句を書いた。

 見ていくと、リプがある。

『どうです。静かになったでしょう』

 それは確かにイヤホンが壊れたと思われる時刻だ。

 どうやってワイヤレスイヤホンを壊しに来たのか、までは分からない。

 だが、この不気味なアカウントは、俺のSNS投稿を見て、なんらかの反応をしたのだ。

 いや、ありえない。

 しかし、実際に今日二人も殺されている。

 俺は、否定と肯定を繰り返しながら、こんなことが他にあったりしないのか、調べたりした。

 寝たり起きたりしながら、気がつくと夜明け前になっていた。

 あり得るのか、ありえないのか。結論は出ない。

 だが俺は、一つだけ決めたことがあった。

 もうこんな投稿はやめよう。

 そう。やめればいいだけの話だ。

 とりあえず、今日のこの気持ちを覚えている間だけでも……




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ