マンション
雨音が心地良い日、僕は部屋で目を覚ました。今日は仕事が休みだったので、一日中家でゆっくり過ごす予定だった。
僕はベッドから出ると、リビングに向かった。ソファーに座ると、窓から外を見た。雨が降っていた。
「まだ雨か……」
そう呟くと、僕はコーヒーカップに口を付けた。すると、電話が鳴ったので受話器を取った。相手は友人だった。彼は僕と同じマンションに住んでいるためよく一緒に酒を飲むことがあるが、今日は特に用事はなかったはずだ。
「どうした?」
「悪いな、急に電話して。実はちょっと聞きたいことがあるんだ」
友人はそう言うと、僕の近況について尋ねてきた。最近何か変わったことでもあったのか?と聞かれたので、僕は少し考えた後こう答えた。
「いや、特にないよ。ただ最近は仕事が忙しいから、なかなか自分の時間が取れないんだ」
「なるほどな。まあでも無理せず頑張ってくれよ」
友人はそう答えると電話を切った。僕も受話器を置くと、再び窓の外を見た。雨は止む気配がなかった。
「さて、今日は何をしようか」
僕は独り言を呟くと、コーヒーカップを持って立ち上がった。キッチンに向かいながら、僕は頭の中で様々なアイデアを思い浮かべた。
しかし、どれもしっくりくるものはなかった。結局、何も思いつかなかったので再びソファーに座り直すことにした。
ポケットからスマホを取り出し、アプリを立ち上げると音楽を流した。静かな雨音を聞きながら、僕は目を閉じて音楽に浸っていた。すると、突然電話のベルが鳴った。
「誰だろう?」僕は不思議に思いながらも、電話に出た。相手は女性で、僕の名前を知っていた。「もしもし」と僕が言うと彼女は答えた。
「こんにちは、お久しぶりですね」
その声を聞いて、僕はすぐに思い出した。彼女は俺がこのマンションに来る前の以前同じマンションに住んでいた女性だった。名前は思い出せないが、よく挨拶を交わす程度の仲だ。
しかしなぜ急に電話してきたのだろうか? 疑問に思ったが、とりあえず話を続けることにした。
「お久しぶりですね。最近見かけませんけど、どうされたんですか?」
僕が尋ねると、彼女は少し黙り込んだ後で答えた。
「実は急な転勤になりまして……夫と一緒に越してきたんですけど、なかなか会う機会もなくて」
なるほど、そういうことだったのか。僕は納得しながらも返事をした。
「なるほど、そうだったんですね。今ご自宅はどこなんですか?」
「もうすぐ駅に着くところなんですけど……」
「ああ、そうですか。それはちょうど良かったですね。これから僕たちと合流して食事でもどうですか?美味しいワインが飲める店があるんですよ」
僕が提案すると、彼女は少し悩んだ後で答えた。
「そうですね……お邪魔でなければご一緒させてください」
一時間後、僕たちは駅の近くで待ち合わせた。古びたレストランに入ると、カウンター席に座ってワインを飲みながら彼女のことについて聞くことにした。
「すみません、突き合わさせちゃって。お時間のほうは…?」
「いえ、大丈夫です。周辺を視察していただけなんで。」
彼女はそう答えると、グラスのワインを口に含んだ。
「それで、旦那さんはどうされたんですか?」
僕が尋ねると、彼女は少し間を置いてから答えた。
「夫は今出張中でして……」
僕はそれを聞いて納得した。
「ああ、そうだったんですね。それは失礼しました」
「いえ、気にしないでください。それよりも、あなたは何のお仕事をされているのですか?」
「エンジニアです。今はプロジェクトのチームリーダーを任されています」
「へえ、すごいですね。それだったら会社の知名度も高いんじゃないですか?」
「まあ、それほどでもないですけど……」
僕は少し照れ臭くなりながらも答えた。
「でも本当に羨ましいです。私なんか、毎日家事と子育てで手一杯ですから……」
「えっ、子供さんがいらっしゃるのですか?」
僕は驚いて聞き返した。彼女が結婚していたことも知らなかったし、子供までいるとは思っていなかったからだ。
「はい、もうすぐ2歳になる娘がいます」
彼女はそう言うと微笑んだ。とても幸せそうな表情だった。
「今は家でゆっくり育てていこうかと思ってます」
「なるほど、良い決断ですね」と僕は答えた。
その後、世間話に花を咲かせてワインを飲み続けた。
「そろそろ帰りましょうか?」
彼女がそう切り出すと、僕は時計を見て答えた。
「そうですね、あまり遅くなるといけないですし」
僕たちは席を立つことにした。会計を済ませると店を出た。外は雨がまだ降り続いていたが、すっかり暗くなっていた。駅に向かって歩きながら、彼女は僕に言った。
「今日は本当に楽しかったです。ありがとうございました」
僕も笑顔で答えた。
「こちらこそありがとうございました。また機会があったら是非ご一緒しましょう!」
そして僕たちは手を振って別れたのだった……




