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第3話

ネロが自害した夜、3人の心は沈んでいた。


「邪神に心を乗っ取られてしまうと人間というのはあんな風になってしまうのか?」マウスが問いかけた。


ドリスは小さな声で答えた。「人間の心というのはとても弱いものなのだろう。」


しばらくの沈黙の後、マウスが口を開いた。「しかし、大きな事件が起きるまでマーラに乗っ取られた人間が分からないというのはもどかしいな。」


「待つのをやめて、世界中を回ってみるというのはどうだ。」トリスが提案をすると、


「そうだな、やってみようか。早速明日から旅に出よう。」マウスもドリスも同意した。


翌日3人は出発した。


人間の歩く速さとは次元の違う3人はすぐに東の大きな国に着いた。


しばらく歩いていると、年老いた男が家の前に椅子を出して座っている。日向ぼっこでもしているのだろう。


ドリスはこの年老いた男に尋ねた。「今、この国は平和ですか?」


「ええ、平和ですよ。ただ私が子供の頃は大変な時代でした。」


その年老いた男はこの国に起こった事件について教えてくれた。


この国には父の急死によりわずか13歳で王になった者がいたという。


その若き王が初めてやった残虐な行為は、母の不倫相手を八つ裂きにした事だと言う。その若き王はそれだけにとどまらず、不倫相手の父母、兄弟、妻子までも皆殺しにした。


その後もこの王は自らの脅威となる者を八つ裂き、生き埋め、その他の様々な残酷な方法で殺戮を繰り返した。


しかし、非道の限りを尽くしたこの王はなぜか50歳の若さで謎の死を遂げてしまったというのだ。


それからしばらくの戦乱の後、この国に平和が訪れたという。


「この国にそんな大事件があったとは。」しかし、残念ながらその王がマーラに乗っ取られていたのかどうか、今となっては分からない。


その残虐な王の名前は秦の始皇帝であった。



3人は旅を続けるしかなかった。


その後も3人は残虐な王の話を聞くことは出来たが、マーラの肉体を回収する事は出来ずにいた。


そんな時、大事件が起きた。


教会が西の国の女性を虐殺し始めたのだ。魔女狩りである。


3人はすぐに西の国に向かった。しかし、3人はこの虐殺が奇妙な事に気づく。


教会に行っても、裁判の場に行っても、処刑の場所に行っても、マーラの影はどこにも見当たらないのだ。


結局、100年以上も続いたこの大虐殺に一度もマーラの影を見る事は出来なかった。


「いったいどういう事なんだ?何かがおかしい。」3人は混乱した。


マウスが叫んだ「結局、ネロ以来、一度もマーラの肉体を回収できていないじゃないか。」


「我々のやり方が何か間違っているのだろうか?」ドリスにさえ理由が分からなかった。




3人の息子はそれからも人類の様々な残虐な行為を見る事になる。


白人によるネイティブアメリカンの虐殺。


KKKクー・クラックス・クランによるアフリカ系アメリカ人に対する襲撃、暴行、リンチ。


しかし、どの現場に駆けつけてもやはりマーラの影が見つけられないのだ。


突破口を見つけられないままの3人はついに人類最大の愚かな行為を目の当たりにしてしまう。


世界大戦である。しかし、国対国の大きな戦いの中では責任の所在が誰にあるのか、首謀者が誰なのか、見当もつかないのだ。当然、この戦争の中にマーラの影を見ることなど無理であった。


戦死者は1000万人にも届くような大殺戮である。にもかかわらず邪悪の神の姿は見えないのだ。


3人は混乱するばかりだ。「もはやこれらの残虐な行為は邪悪の神マーラすら超えてしまっているのではないのか?」


5年間続いたこの殺し合いもようやく終わった。



しかし、20年も経たずにまたも始まってしまったのだ。第2次世界大戦である。


3人が目を付けたのは1000万人にも及ぶユダヤ人を殺害した男である。アドルフ・ヒトラーだ。


ナチスが劣勢になるとヒトラーは地下(ごう)に逃げ込んだ。


地下壕に逃げ込んだヒトラーを追い詰めた3人はヒトラーの体の中からマーラの肉体を取り出す事に成功した。取り出せた肉体の一部はマーラの頭部だった。


正気に戻ったヒトラーは拳銃自殺を図った。ヒトラーはこの時56歳だった。


3人はマーラの頭部を「神の箱」に封印した。


ドリスは2人に言った「頭部を封印したんだ。これで人類から邪悪な心は無くなるんじゃないのか?」


「確かにマーラの魔力の影響はかなり薄れるだろうね。」トリスは頷いた。




しかしそれから3か月後、3人は信じられないものを目にする事になった。


全能の神ジアスが放つ「神の怒りの雷」に勝るとも劣らない閃光を見たのだ。


アメリカが広島に原子爆弾を投下したのだ。一瞬で7万人の命が奪われた。


その3日後アメリカは長崎にも原子爆弾を投下した。やはり7万人の命が一瞬で奪われたのだ。


もはや、人類は全能の神と同じ力を持ってしまったのだ。


3人はただ立ち尽くすしかなかった。「全能の神ジアスと同じ力を持ってしまった人類を我々がどうやって救えるというのだ。」


その時、天から声が聞こえてきた。全能の神であり、3人の父であるジアスの声だった。


「息子たちよ、長い間ご苦労だった。もう天界に戻ってくるが良い。」


「どういう事ですか?」


つづく


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